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第50回AfDB・第41回AfDF年次総会 日本国総務演説(平成27年5月26日 於:コートジボワール・アビジャン)

第50回アフリカ開発銀行・第41回アフリカ開発基金年次総会 日本国総務演説
(平成27年(2015年)5月26日(木) 於:コートジボワール・アビジャン)

  1. はじめに
     議長、総裁、各国総務各位、並びにご列席の皆様、

     まず、今次総会のホスト国のコートジボワール政府及びアビジャン市民の皆様の温かい歓迎に対して心から感謝いたします。

     そして、アフリカ開発銀行(AfDB)本部のアビジャンへの帰還が成功理に行われたとともに、アビジャン帰還後初となる今次総会が当地で開催されることを祝福いたします。

     また、過去10年に亘りアフリカとAfDBの発展にご尽力されてきたカベルカ総裁に心より敬意を表します。カベルカ総裁は、力強いリーダーシップにより、AfDBのAAA格付を維持し、グループ初の長期戦略(Ten Year Strategy for 2013–2022)を策定するなど、アフリカが成長を加速させるための基盤作りに尽力されました。

     本年2015年は、ミレニアム開発目標(MDGs)を継承し、2015-2030年を対象とする持続的開発目標(SDGs)の設定が予定されており、開発コミュニティにとって大きな節目であると共に、50回目となる今次総会で新しい総裁を迎えるAfDBにとっても節目の年となります。このような記念すべき総会に際して、アフリカの開発に向けた日本とAfDBの協力を中心に日本の考え方を述べます。

  2. 日本がAfDBと連携して取り組むアフリカ支援
     昨年1月に安倍総理がアフリカを訪問した際、アフリカ全体へのメッセージとして総理は、アフリカ連合(AU)本部において『「一人、ひとり」を強化する』と題する政策スピーチを行いました。その中で、日本による支援と日本の企業文化は、人材を大切にし、ボトムアップの創意工夫を大切にするもので、アフリカの持続的成長に大きく貢献できると述べました。こうした観点から、日本がAfDBと連携して取り組むアフリカ支援として、セーフティネット構築、技術支援・人材育成支援、アフリカの成長支援の三点について申し上げます。

    (セーフティネット構築)
     第一に、セーフティネット構築についてお話しいたします。伝染病流行を含む大規模な災害は長年の開発成果を一瞬にして消し去り、貴重な人命を奪い、経済発展を阻害します。特定の感染症の封じ込めのみならず、中長期的に公衆衛生の改善とともに保健医療システム全般の強化が非常に重要です。この観点から日本は、これまで開発における「保健医療」と「防災」の重要性について主張してきました。

     昨年の西アフリカでのエボラ出血熱の流行は、平時よりセーフティネットを整備することを我々に促しました。この点、日本はエボラ出血熱に対するAfDBの迅速な初動対応とその後の継続的支援を高く評価します。日本としても総額約1億7,300万ドルの支援や日本人専門家の派遣を実施しております。その一部として、AfDBに設置のFAPA信託基金(Fund for African Private Sector Assistance)を通じ、エボラ出血熱が猛威をふるっていたリベリアで、マイクロファイナンス金融機関の業務継続に必要なノウハウを提供するプロジェクトなどの支援を迅速に行っております。

    (技術支援・人材育成支援)
     第二に、技術支援・人材育成支援について申し上げますと、「成長の質」を高め、アフリカの人々が主導する包摂的な成長を実現するため、日本はAfDBに設置の信託基金(FAPA及びPHRDG(Policy and Human Resources Development Grant))を通じた技術支援・人材育成にも力を入れています。

     FAPAでは、JICAによる円借款と連携しつつ、民間セクターの発展を促進しており、本年開始予定のトーゴの零細商店を営む女性に対する能力強化など、女性や若者といった社会的に脆弱な層に焦点を当てた案件も数多くあります。また、PHRDG信託基金では、日本の開発分野の技術と知識をアフリカに移転することに重点をおいています。PHRDGで支援中のESDAプロジェクト(Education for Sustainable Development in Africa)では、ナイロビ大学等アフリカ8大学において、1学年あたり約100人の学生が、東京大学を始めとする日本の4大学と国連大学が協働で開発した、都市、農業、天然資源管理の分野の修士号プログラムを学び、将来アフリカの持続可能な開発のためのリーダーとなることが期待されています。

    (アフリカの成長支援)
     第三に、アフリカの成長支援について述べますと、インフラの量と質をしっかり確保する点が重要です。この観点から、日本はアフリカ諸国とAfDBが「質の高いインフラ投資」を行うことを提唱します。こうした投資は、使いやすく、長持ちし、そして、環境に優しく災害にも備えになります。一見値段が高く見えますが、長期的に見れば安上がりです。
     先週、安倍総理は、インフラ促進策に関して4つの柱からなる新たな日本の取組みを発表しました。この取組みでは、「質の高いインフラ投資」を提唱しつつ、「量より質」という発想ではなく、民間資金・ノウハウを動員することにより、「質も量も」追求するという考えに基づいています。具体的には、マル1JICAによる円借款の手続き迅速化に取り組みつつ、マル2民間部門の資金・ノウハウの更なる動員をはかるためのJICAによるPPPインフラ投資支援、マル3JBICなどによるリスクマネーの供給等を推進するとともに、マル4このような質の高いインフラ投資のアイデアを国際社会に発信して参ります。その中で、AfDBをはじめとする国際機関とも協力してまいります。

     中でもAfDBとの関係では、民間主導の経済成長の実現に向け、日本は2005年にAfDBとともに立ち上げたEPSA(Enhanced Private Sector Assistance for Africa)の枠組みでの協力を重要視しており、本年も、昨年の同額に引き続きAfDBに約3億ドルの円借款を供与することを決定しました。

     また、日本の民間企業が持つ知見を活用する観点から、昨年6月にAfDBアジア代表事務所(ASRO)が開催した、「日本―アフリカビジネスフォーラム」のような日本とアフリカの民間企業同士のマッチングの機会を今後も設けること支援して参ります。

  3. むすび
     私は、人間と自然の調和をもたらしてきたアフリカにおいて、グリーンで持続可能かつ包摂的な発展は、世界全体の健全な発展にとって非常に重要と考えています。
     アフリカ随一の国際開発金融機関であるAfDBの役割は、こうしたアフリカの望ましい発展を後押しすることであり、ますます重要となっております。今次総会で選出される新総裁には、アフリカの開発に向け、強力なリーダーシップを持ってAfDBを牽引することを期待しています。

     ご清聴有難うございました。

(以上)