第46回AfDB・第37回AfDF年次総会 日本国総務演説(平成23年6月9-10日 於:ポルトガル・リスボン)
1.はじめに
第46回アフリカ開発銀行(AfDB)、第37回アフリカ開発基金(AfDF)年次総会の開催にあたり、主催国であるポルトガル政府及びリスボン市民の皆様の温かい歓迎に、心から感謝いたします。
2.東日本大震災
我が国では約3ヶ月前に東日本大震災が発災し、死者・行方不明者数が約2万3千人、未だ避難生活を余儀なくされている人々が約9万8千人に上っています。この未曾有の災害に際し、150以上の国・地域、AfDBを含む40近くの国際機関、そして世界中の方々から、我が国に寄せられたお見舞いと励ましのメッセージに、心より感謝の意を表明いたします。また、我が国支援のための募金活動に多くのAfDB職員から協力を頂いたことにも、大変勇気づけられています。
ここリスボンでも1755年に大地震と津波が発生し、西欧随一の美しさと謳われた
街はほぼ壊滅し、死者は当時の街の人口の20%超に当たる6万人にも及んだと記録されております。リスボンは、マルケス・ポンバル侯爵の指揮の下、震災後1年間で復興の基礎を固め、震災前に比べても一層整然と美しい現在のリスボンの原型を作ることに成功しました。我が国では、経済活動は急速に復興しており、新幹線は早期に全面的に復旧し、空港と港湾も活動を再開しました。被災地域の生産拠点も、6割強が復旧し、残り3割弱も夏までには復旧する見込みであります。今後も、一日も早い復旧・復興に全力で取り組んでまいります。
原発の事故については、国際社会に心配をかけたことを重く受け止めております。当面の課題として、原子炉を冷却し安定状況に持って行くことを目指し、来年1月までに、放射性物質の放出を抑制し、管理することを達成すべく取り組みます。原子力発電所の事故が及ぼし得る甚大なリスクは、我が国のみならず、世界のエネルギー政策及び気候変動対策にも影響を与え得るものと考えます。我が国は今回の事故を徹底的に検証し、そこから得られる知見や経験を、今後、透明性をもって国際社会と共有していきます。
自然の猛威に直面しているのは、我が国もアフリカも同じであり、アフリカは、世界の他地域と比較すれば自然災害による被害は少ないものの、干ばつや洪水の影響を受けやすい地域です。自然災害は、多くの人命や財産を奪い、それまでの開発努力を台無しにします。その意味で、防災は最も重要な開発課題であり、東日本大震災を契機として世界中が自然災害がもたらす災禍に注目している今は、まさに、防災のあり方について考える絶好の機会と言えます。AfDBが域内加盟国の開発政策における防災の主流化(mainstreaming)を支援していくことを期待します。我が国も、今回の震災と今後の復興を通じて得られる教訓を、アフリカの国々およびAfDBと積極的に共有していきたいと思います。
3.アフリカの開発課題およびAfDBへの期待
次に、アフリカの開発課題とAfDBに期待する役割について、我が国の考え方を述べます。
(アフリカの経済状況)
アフリカ地域では、リーマンショック後の世界経済危機からの影響は総じて軽微なものに留まりました。北アフリカ地域のいくつかの非産油国では政情不安によるリスクの高まりから、本年に入って観光や投資による海外からの資金流入が滞っていますが、他方で、サブサハラ・アフリカ地域は、特に低所得国の成長に牽引され、アジアの途上国に次いで世界で2番目の速度で成長を遂げ、更に成長が加速していくと見込まれるなど、開発・貧困削減を進めていく好機を提供しております。
(北アフリカ支援)
チュニジアおよびエジプトにおける政権交代に象徴されるような、民主的で開かれた社会および包含的(inclusive)な経済への移行を目指す大きな改革が、北アフリカ地域に始まっています。5月のG8首脳会議で合意されたように、我が国は、この改革の流れの中で、国際開発金融機関が協調して北アフリカ諸国の持続可能な包括的成長を支援していくべきと考えます。
北アフリカの国々における今般の政変の原因として、特に若年層に見られる高い失業率および行政や経済のガバナンスにおける透明性の欠如などにより、社会の一体性が損われていたのでないか、と指摘されています。その意味で、今回の総会において「アフリカにおける包含的成長(Inclusive Growth in Africa)」を議題に総務対話を行うことは極めてタイムリーであります。この議論の成果も大いに参考としつつ、他機関との効果的な連携の下、AfDBが、投資環境整備など経済分野に加え、労働セクターの改善、ガバナンス改革など社会開発分野の支援に、積極的に取り組んでいくことを慫慂します。昨年5月に合意された一般増資によりAfDBの資本基盤は3倍に増強されており、このように強化された業務のキャパシティを十分に活用して、AfDBは国際社会から期待される北アフリカ支援を力強く進めていけるものと信じます。
(サブサハラ・アフリカ支援)
サブサハラ・アフリカ地域は、2015年のミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて依然として遅れが認められており、MDGs達成に向けて国際社会は更なる努力が必要です。その際、政府の能力(キャパシティ)不足が貧困削減と開発を進めていく上での阻害要因となっていることは、複数の国際機関から指摘されている点であります。AfDBグループはサブサハラ・アフリカ諸国の支援においても、他の援助機関と協働し、政府の能力強化およびガバナンス改革を支援し、もって、AfDB自身を含め国際社会の援助が、期待される貧困削減効果をもたらすことのできる基礎を強化することに、力を尽くしていくべきと考えます。
受益国の強化された能力とガバナンスの上に、AfDBグループが、昨年10月に合意されたアフリカ開発基金第12次増資(AfDF12)を最大限活用し、サブサハラ諸国に対して効果的かつ効率的な支援を提供していくことを期待します。
我が国としても、昨年、菅総理が表明した保健・教育分野における「菅コミットメント」に基づき、特に進展が遅れているとされる母子保健分野における我が国の支援モデルである「EMBRACE」の実施等を通じて、サブサハラ・アフリカ地域の貧困削減に一層の貢献を行っていく所存です。本総会直前の6月2−3日には、東京で、昨年9月のMDGsサミットのフォローアップ会合を開催し、我が国および参加国・機関は途上国の貧困削減へのコミットメントを再確認しています。
5月1日から2日にかけてセネガルにおいて開催された第3回TICAD閣僚級フォローアップ会合では、我が国は、2008年のTICAD Wにおけるコミットメントが順調に実施されていることを報告するとともに、大震災を乗り越えて、このコミットメントを引き続き誠実に実現していくとの決意を表明しました。
(気候変動への対応)
我が国は、アフリカ諸国にとって気候変動が死活問題であり、適応(adaptation)、特に農業分野の対策が喫緊の課題であると認識しています。特にアフリカでは、旱魃、洪水、水資源不足、疫病、海面上昇等、現に直面している課題や問題の深刻さが国や地域によって大きく異なるため、各国のカントリー・オーナーシップを尊重した国別に異なる支援を行っていく必要があります。我が国は、今年末に南アフリカ・ダーバンで開催予定のCOP17の成功に向け、緑の気候基金の設立にかかる交渉に参画してきており、本年7月には東京で移行委員会を開催するなど積極的に貢献をしてまいります。さらに、そのような努力が結実し、緑の気候基金を含む大規模な資金が利用可能となった際には、アフリカの国々への気候変動対策支援が迅速かつ適切に進められるよう、アフリカの国々が直面する課題に応じた、国毎の戦略策定の支援を行っていきたいと考えております。その際には、AfDBの知見・ノウハウも積極的に活用させていただきたいと考えます。
4.AfDBと日本の協力
(EPSAを通じたアフリカの民間セクター支援)
雇用創出を伴う持続的な経済成長を実現するためには、民間セクターの育成と振興が鍵です。このような考え方の下、我が国は2006年、AfDBとともにEPSA (Enhanced Private Sector Assistance for Africa)イニシアティブを立ち上げ、AfDBローンと我が国の円借款による協調融資やAfDBを通じたツーステップ・ローン、及び、我が国の拠出によるアフリカ民間セクター支援基金(FAPA)による技術支援を通じ、2010年までの5年間、アフリカ諸国の経済インフラ整備および中小零細企業支援等に大きく貢献してまいりました。特にFAPAは、民間セクター投資を促進するための制度整備に向けた技術支援を実施しており、アフリカにおける職業訓練及びマネージメントサービスに関するプロジェクト(ATMS)等の案件では、雇用機会の創設、被支援企業の女性職員の増加といった効果が確認され、中小企業の強化にも繋がっています。このような実績に鑑み、昨年10月には、オーストリアがFAPAのドナー国として参加を決定したことは喜ばしいことであります。
我が国は、EPSA の第2ステージを一層改善された形で立ち上げられるよう、昨年末までの成果を十分に検証した上で、EPSAがアフリカの民間セクターの育成・振興のために従来以上に高い開発効果を生み出すことを可能とする具体的改善策をカベルカ総裁及びAfDBマネージメントとともに議論し、EPSAを第二ステージに導いていくことを検討していきます。
(AfDB東京事務所の開設)
カベルカ総裁の強いリーダーシップの下、AfDBが東京事務所の開設の検討を進めていることを歓迎します。東京事務所は、世界の成長センターであるアジアとアフリカを結び、日本の技術や人材をアフリカの開発と貧困削減のために積極的に活用していく上で、大きな貢献を行うものと確信しています。アフリカの民間セクター支援に熱意を持つ日本企業にとって、東京事務所がアフリカとの仲介役を果たすことも期待します。震災後も、東京では、政府機関及び民間企業は震災後も平常通りの活動を行っており、心配いただく必要はありません。東日本大震災からの復興に全力を挙げている今の時期にAfDBが東京事務所を開設することは、我が国にとってこれ以上無い励ましとなることも、併せて申し上げます。
(日本人スタッフの採用・登用)
我が国は人材面で引き続きAfDBに協力する用意があります。開発の各セクターに関する知見や経験にとどまらず、アフリカ諸国が包含的成長を目指していく上で、我が国の専門家が自国の経験をもとにアフリカの開発に貢献できる可能性は大きいと考えます。カベルカ総裁およびAfDBマネージメントが、引き続き有能な日本人スタッフの採用および登用に積極的に取り組むことを期待します。
5.結語
アフリカ諸国は、MDGs達成に向けた貧困削減、資源および食料価格の高騰への対応等に加え、北アフリカ諸国で進行中の大きな改革といった新たな課題にも直面しており、AfDBに対する期待はこれまでに無く高まっています。我が国は、AfDBが地域の国際金融機関としての経験と知見を存分に発揮し、これらの課題に積極的かつ効果的に取り組み、成果をあげ、もって、真に「アフリカ第一の機関(premier institution)」となることを強く望みます。そのようなAfDBに対し、我が国は引き続き協力と貢献を惜しみません。
我が国は、震災による足下の困難を克服し、早期に復興を果たし、震災前よりも強い国になる決意です。その過程にあって、カベルカ総裁およびマネージメントの協力も得て、アフリカ諸国およびAfDBと我が国の関係も更に強化していきたいと思います。
ご清聴ありがとうございます。
(以上)
