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第44回AfDB・第35回AfDF年次総会 日本国総務演説(平成21年5月13日 於:セネガル・ダカール)

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第44回アフリカ開発銀行・第35回アフリカ開発基金年次総会
総務演説(仮訳)
(平成21年(2009年)5月13日(水)於:セネガル ダカール)

 
1.序
 
 議長、総裁、各国総務各位、並びにご列席の皆様、
 
 第44回アフリカ開発銀行(AfDB)・第35回アフリカ開発基金(AfDF)年次総会の開催にあたり、主催国であるセネガル政府及びダカール市民の暖かい歓迎に対し、心から感謝いたします。日本政府を代表して、御挨拶を申し上げることを光栄に思います。

2.アフリカの概況
 
 アフリカ大陸では、過去5年に亘り、アフリカ諸国の経済改革や良好な外部経済環境にも支えられ、年平均6%の経済成長率を記録しました。先ずはアフリカ諸国の経済改革に向けた不断の意欲的姿勢を心より賞賛申し上げます。
 
 しかしながら、昨年秋以降の世界的な金融・経済危機により状況は一変しました。金融市場の動揺は実体経済に波及し、先進国のみならず新興国、途上国の成長見通しも低下するなど、我々は、世界同時不況の只中にあります。この難局を乗り越えるためには、先進国、新興国そして途上国が一丸となって、伝統的な手法だけでなくあらゆる政策手段を駆使して協働することが肝要です。
 
 ここアフリカでも、先ずマーケットアクセスのあるエジプト、ナイジェリア、南アフリカ等のフロンティア・新興市場国が信用収縮の影響を受けました。その後、世界的な需要の後退、一次産品価格の急落、そして海外直接投資の減退による実体経済の悪化は、大陸全体で観察されています。
 
 実際、国際通貨基金(IMF)は、アフリカ大陸の2009年の実質GDP見通しを2.0%とし、世界銀行(IBRD)は、ミレニアム開発目標(MDGs)の全ての分野で遅れが見られるとしています。この状況を放置すれば、MDGs達成に向けた開発パートナーとアフリカ諸国による過年の政策努力が水泡に帰す可能性があり、我々はあらゆる努力を傾けこれを阻止しなければなりません。
  
3.経済金融危機下における我が国の取組み
  
(1)国際金融秩序・マクロ経済安定のための措置
 
 我が国は、昨年夏以降の経済金融情勢の悪化に対し、先ず財政措置約12兆円(約1,200億ドル)を含む総額75兆円(7,500億ドル)の経済対策をとりまとめ、去る4月10日には追加の政策パッケージとして、事業費で57兆円、財政出動では名目GDP比3%の15兆円に上る過去最大規模の経済対策を新たに発表しました。
 
 また、我が国は、昨年来、世界経済の安定化のため、国際通貨基金(IMF)に対する最大1,000億ドル相当の貸付けや国際協力銀行(JBIC)による途上国銀行資本増強支援、貿易金融、環境投資の支援も進めてきました。

 我が国は、今後とも、対内・対外双方に亘る取組みを、諸外国や国際機関とも協力しつつ、全力を挙げて進めていく所存です。

(2)第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)のフォローアップ及び日本の追加支援
 
 昨年5月、「元気なアフリカ」を目指し、TICAD IVで取りまとめられた「横浜行動計画」は、「成長の加速化」と「MDGsの達成」などをアフリカ開発の重点分野としており、現下の金融危機という局面にあっても、有効な処方箋を提供しております。
 
 金融危機により我が国が受けた打撃を懸念し、「TICAD IVの約束が反故にされるのではないか」との声を多く聞きますが、我が国はこの約束を必ず実施するとの決意を改めて表明いたします。具体的には、アフリカ向けに、5年間で最大40億ドルの円借款実施を改めて確認します。
 
 また、機動的な円借款の活用とともに、金融・経済危機の影響が少なくとも今後2年間はアフリカ諸国にも及ぶことを想定し、無償資金・技術協力支援についても、今後2年間で20億ドルの支援を出来る限り早急に実施することを目指します。
 
 更に先般ボツワナで行われたTICAD閣僚級フォローアップ会合では、中曽根外務大臣より、社会的弱者への影響を緩和するための約3億ドルの食料・人道支援の実施、及び感染症対策として世界・エイズ・結核・マラリア対策基金に対し約2億ドルの拠出を内容とする追加支援策が表明されました。
 
 直後の4月2日に開催されたロンドン・サミットでは、ボツワナ会合の議論を踏まえ、世界的金融・経済危機の影響を受けるアフリカへの支援強化を麻生総理より呼びかけたことを、念のためここで繰り返させていただきます。
  
4.アフリカ開発銀行(AfDB)の課題
 
 
(現下の最重要課題:金融・経済危機への対応)

(1)民間資本フロー収縮への対応
 
 金融・経済危機の影響を受け、アフリカ大陸では民間資本流入の急減が観察されています。ガーナやケニアでは、対外借入計画が延期され、また、南アフリカやナイジェリアでは、事業会社や銀行セクターにおける対外借入が枯渇しつつあります。2009年の直接投資(FDI)は、2008年比で半分程度に落ち込むとの推計もあります。また、西アフリカ、特に、当地セネガルでは、欧州在外労働者からの送金が減少していると言われています。
 
 AfDBは、民間資本フローが再び正常化するまでの間、域内国の資金ニーズに迅速に応えていく必要があります。我が国は、先般、理事会承認された流動性供給ファシリティ(Emergency Liquidity Facility: ELF)が有効活用されることを希望いたします。
 
 同様の理由から、我が国は、先般立ち上げられた貿易金融イニシアティブ(Trade Finance Initiative: TFI)についても、その進展を期待します。ただ、貿易金融はAfDBにとって全く知見のない分野でもあり、1年間のパイロット期間を設けることは適切な判断であったと考えます。今後、国際金融会社(IFC)を始めとする他の国際開発金融機関(MDBs)や貿易振興機関と連携を図りつつ、効果的な支援を行っていかれることを期待します。

(2)今後の民間セクター支援のあり方
 
 今回の金融・経済危機を受け、世界の経済構造が大きな変革期を迎えている中で、途上国の経済発展のあり方やそのための開発課題も当然見直しが避けられません。AfDBも、危機後の世界経済のあり方を的確に見通し、今後のアフリカ支援のあり方について、不断に検証していただきたいと思います。

 どのような開発を目指すとしても、民間セクターは経済の主役であり、経済的活力の源です。これは危機後の世界でも変わりません。民間セクターは、貧困削減を可能にする持続的な経済成長の原動力(エンジン)であり、最終的にはアフリカ諸国の経済的自立を成し遂げるものです。
 
 この観点から、民間セクターの経済活動のボトルネックを除去するインフラの整備は、将来の経済成長を準備するために極めて重要です。今回の危機が各国経済構造に与える影響を見極め、今後、どのようなインフラが求められているのかを見通しつつ、インフラ整備に着実に取組まれることを期待します。

(3) EPSA for Africa
 
 我が国は、危機により厳しい状況に置かれているアフリカの民間セクターを支援するため、EPSA(Enhanced Private Sector Support Assistance for Africa)を拡充いたします。EPSAは、2005年、AfDBとともに立ち上げたイニシアティブで、日本の譲許的資金をアフリカにおける民間セクター支援のため活用するものです。

 同イニシアティブの下、ソブリン向け融資で6件(約236億円)、ノンソブリン向け融資(436億円)、技術支援基金(FAPA)20件(16.3百万ドル)の実績が上がっており、これらを通じてAfDBにおいて民間セクター業務が着実に根付いてきていることを誠に嬉しく思います。EPSAの円借款の活用にあたっては、今後はAfDBの流動性供給や貿易金融支援との協働等、同イニシアティブの更なる活用を図ってまいります。また、AfDBは、2年連続で、厳しい予算状況にも拘わらず、その純益の一部をEPSAの技術支援基金であるFAPAに移転することを決議しました。我々は、AfDBの「民間セクター主導の経済成長による貧困削減」に対する固い決意と受け止め、これを大いに歓迎いたします。
 
 更に、我が国は、FAPA設立当初にコミットした20百万ドルの拠出を既に行ってきましたが、昨今の危機的状況に鑑み、更に、本年度中に10百万ドルの追加の拠出を行う考えです。
 
 今般、拡充したEPSAにより、厳しい状況に直面しているアフリカの民間セクターが少しでも活力を取り戻していただくことを期待いたします。

(4)貧困層への支援
 
 現下の金融・経済危機の被害を最も受けるのは、社会的に脆弱な立場にある貧困層です。脆弱層の生命、生活、尊厳を守るためには分野横断的な包括的取組みを行う人間の安全保障のアプローチが重要であり、個人及び共同体(コミュニュティ)を保護するのみならず、能力強化を通じて自ら危機に対処する能力を構築することが重要です。

 AfDBグループでは、「低所得国(AfDF国)向け支援強化」を危機対応の柱の一つとして位置付け、既存ポートフォリオ・融資業務プログラムの見直し、AfDFにおける保証商品の導入の検討を行うとしていますが、貧困層が更なる生活苦に陥るのを防ぐため、今後更に検討を進め、これらの人々が直接裨益する事業及び能力向上への取組みを強化する必要があります。
 
 世界的な金融・経済危機が長期化するに伴い、AfDF国における影響は今後本格化してくるものと思われ、本年10 月に予定されている第11次アフリカ開発基金(AfDF XI)の中期評価(Mid-term Review)では、AfDF国の脆弱層が直面している問題を把握し、必要に応じAfDF XIの優先課題を見直すことを求めます。
 
  
(アフリカ開発銀行(AfDB)の資本の検証)
 
 金融・経済危機による域内の緊急の資金ニーズに対応するため、国際開発金融機関(MDBs)は、その持てる資金(リソース)を最大限活用し、当面、危機対応に専念していただきたいと思います。AfDBにおかれては、過度に制約的な財務関連規制が有れば、先ずはこれを見直し、資本の効率的活用を図ることを期待いたします。
 
 今次総会では、「一般増資(GCI)の必要性」につき今後検証を行う旨の総務決議に至りましたが、その検証においては、現下緊急の資金ニーズのみならず、域内国の中長期的な資金ニーズの分析とAfDBの業務のあり方につき、説得的かつ客観的な議論が展開されることを強く希望いたします。
 
 また、GCIの必要性の検証作業と並行して、AfDBの内部管理体制(ガバナンス)を強化していく必要があると考えます。GCIによる新たな資本が、より効果的かつ効率的に活用されるためにも、人事政策、リスク管理体制、予算執行における更なる改善が必要です。
 
 仮に、現下の金融・経済危機対応のためAfDBが大幅に融資規模を拡大させた結果、危機後に資金(リソース)不足が見込まれると判断される場合には、我が国は、主要株主としての責務を全うしていく所存です。
  
5.結び
 
 全てのアフリカ諸国が現下の金融・経済危機を克服するため、国際社会のパートナーとの協力関係を一層強化しつつ、自主性(オーナーシップ)を最大限発揮し、自国の開発政策を力強く推進されることを願って止みません。
 
 また、他の開発パートナー国、国際機関におかれても、アフリカへの援助を縮小することなく、我が国と同じ決意をもって、これまで以上に積極的に支援に取り組むべき、と声を大にして呼びかけたいと思います。
 
 アフリカの指導的開発金融機関たるAfDBにおかれては、アフリカ諸国の開発ニーズにきめ細かに応えられる地域密着型開発金融機関として、今後とも、その役割を大いに果たされることを期待しています。我が国としても可能な限りの協力を惜しまないつもりです。
 
 ご静聴ありがとうございました。
 

(以上)