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第45回ADB年次総会 日本国総務演説(平成24年5月4日 於フィリピン・マニラ)

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第45回アジア開発銀行(ADB)年次総会における安住大臣総務演説
(平成24年5月4日(金) 於フィリピン・マニラ)

1.はじめに

 議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

 アジア開発銀行(ADB)第45回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して、ホスト国であるフィリピン政府及びマニラの皆様の温かい歓迎に心より感謝申し上げます。

 我が国とフィリピンは、貿易・投資・人的交流・経済協力等を通じ良好な関係を築いてきましたが、2008年の経済連携協定(EPA)発効等により更に緊密化しています。今後、益々両国の絆が強まっていくことを強く期待します。

 また、昨年3月に東日本大震災が発生してから約一年が経過しました。この機会に改めて、世界の皆様から頂いた温かい御支援に感謝の意を表したいと思います。

 

2.世界経済・アジア経済

 世界経済は緩やかに回復しているものの、欧州情勢等を背景とした不安定な状況はなお続いています。アジアは高い経済成長で世界経済を牽引していますが、欧州債務問題による影響が懸念されます。

 先日のG20や国際通貨金融委員会(IMFC)において、我が国の600億ドルの貢献表明に続く形で、多くの国々が貢献を表明し、結果として総額4,300億ドルを上回るIMFの資金基盤強化が合意されました。欧州のみならずアジアにとって、今回の合意は大きな成果です。

 

3.アジア開発基金(ADF)増資

 昨年11月に、黒田総裁は全加盟国の信任を得て再々任されました。黒田総裁のリーダーシップのもと、ADBは、過去一年間、第5次一般増資(GCI V)後の拡大する業務に対応するため体制強化を図りました。また、この度、アジア開発基金(ADF)の増資が合意に至ったことを大変喜ばしく思います。

 我が国は、東日本大震災からの復旧・復興への対応や厳しい経済・財政状況の中、アジアの貧困削減に貢献するため、国内の手続きが行われることを前提として、ADF増資におけるドナー貢献の35%、約1,571億円(約13億SDR)について協力する意図を表明いたします。ADBにおかれては、資金を有効に活用し、アジアの貧困対策・開発に向け、着実に開発効果(リザルツ)を生み出して頂きたいと考えます。

 今回のADF増資では、アジア諸国からの貢献が、域外諸国による貢献を大幅に上回り、ADF卒業国であるインドネシア・カザフスタン・フィリピンもADFへの早期返済を通じ貢献を行うことを表明しました。アジアの新興国は、二国間の支援である「南々協力」を積極的に行っていますが、マルチの開発金融機関の持つ専門性と知見を活用することも重要です。アジアの新興国は、ADF等マルチの機関を通じた貢献を更に増加させていくことが期待されます。

 

4.変容するアジアとADBの役割

(アジアの変容)

 ADBが40年後のアジアの姿と課題を分析し昨年発表した「Asia 2050」では、アジアの経済成長が継続し世界のGDPの半分以上をアジアが占める未来が描かれています。しかしながら、こうした未来は、努力なしに実現できるものではありません。

 現在、アジアは多くの面で変容を遂げています。経済成長の影で、多くの国々で所得格差は拡大しています。格差の拡大は、社会の一体性を損ない、社会を不安定にするとともに、持続的な経済成長を阻害する可能性もあります。また、南アジアでは若年層の人口増加が見込まれますが、東アジア等では今後急速に高齢化が進む見込みです。高齢化により、労働人口の減少、貯蓄率の低下、年金や医療負担増に伴う財政への圧力等が懸念されます。現在、我が国は高齢化対策に取り組んでいますが、我が国の課題はアジア各国の将来の課題を先行的に示しているものと言えます。

 ADBは、アジアの変容に伴う課題をよく分析し、貸付業務のみならず政策アドバイス等の知的貢献を通じて、加盟国への支援を強化する必要があります。そのためにも、ADB自身が知見(ナレッジ)を強化していくことが重要です。

 

(防災)

 当地フィリピンが昨年12月に台風の被害を受けるなど、アジア各国では多くの自然災害が発生しました。被災された方々に哀悼の意を表し、心からのお見舞いを申し上げます。また、昨年メコン諸国で大きな洪水が発生し、タイにおける洪水は国際的なサプライ・チェーンを通じ、世界経済にも大きな影響を与えました。こうした自然災害とその影響を目の当たりにし、改めて災害リスク管理と防災の主流化の必要性を実感しました。

 こうした状況の中、ADF増資交渉において、自然災害の影響を受けた低所得国に支援を行う「災害対応ファシリティ(Disaster Response Facility(DRF))」の設立が合意されたことを歓迎します。ADBには、DRF等を通じた自然災害発生後の復旧・復興支援とともに、災害リスク管理の強化と防災の主流化を進めていただきたいと考えます。

 防災への投資はそれ自体合理的なものですが、財政資金に限りがある中、如何に効率的に防災対策を実施するかが課題です。まず、災害リスクが国土のどこに存在するのかを把握し、関係者がそれを共有することが最優先です。その上で、各国の災害リスク等に応じて、限られたリソースを有効活用し、インフラ等のハード面での施策と避難警戒態勢の構築や防災教育等のソフト面での施策を有効に組み合わせ、対策を講じることが必要です。各国が適切な災害対策を取れるようADBが支援を行い、アジアが災害リスクに対しより強靭となることを期待します。

 また、ADBは、我が国と協力して、アジアの大都市における「自然災害リスク保険」の整備のための調査を開始しており、こうした取り組みの加速化・重点化を期待したいと考えます。

 本年10月に我が国で開催されるIMF・世界銀行年次総会では、我が国が東日本大震災から得られた教訓・知見を世界と共有するため防災に関する国際会議を開催し、被災地への訪問を行う予定です。皆様にも是非参加して頂きたいと考えます。

 

(気候変動への対応)

 洪水や台風等の自然災害の多くは気候変動にも起因しています。アジアによる温室効果ガスの排出量は他の地域との比較でも大きく、アジアが気候変動の要因を生み出しています。同時に、アジアは、気候変動の影響を大きく受ける地域でもあります。アジアが能動的に気候変動問題に取り組むことにより、アジアは気候変動の影響を回避することも可能です。アジアは自らの未来のためにも気候変動対策を強化する必要があります。

 気候変動対策を進める上で、アジアは、エネルギー等の資源の制約の中でどのように成長を実現していくかが問われています。アジアにおいて経済成長と環境保全を両立させる「グリーン成長(Green Growth)」の実現が必要です。ADBは、民間資金を動員しつつ「グリーン成長」を支援するため、「官民連携気候変動基金(Climate Public Private Partnership Fund)」への出資を本年決定しました。ADBには、民間資金を気候変動対策に動員する努力を継続してもらいたいと思います。

 また、ADBは、我が国が資金貢献を行う地球環境ファシリティ(GEF)の実施機関であり密接な関係にあります。現在、GEFのCEO選挙に我が国から石井菜穂子副財務官が立候補しています。開発分野での知見・経験を持ち、国際機関のマネージメント経験もあるため、次期CEOには最適な人物です。関係国からの支持をお願いします。

 なお、今月我が国は、太平洋島しょ国の気候変動等の問題を議論するため沖縄において「第6回太平洋・島サミット」を開催する予定です。

 

(地域金融協力の推進)

 先ほど述べたとおり、IMFの資金基盤の強化が合意されましたが、このようなグローバルな枠組みの強化に加えて、地域のセーフティーネットの強化も重要です。昨日、各国の中央銀行総裁も初めて参加したASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議において、チェンマイ・イニシアチブ(CMIM)の規模拡大(資金融通枠の2,400億ドルへの倍増)と危機予防機能の導入等が合意されたことを大変喜ばしく思います。更に、IMF等のグローバルな仕組みや地域の取組みを補完して、我が国ではアジアの金融市場の安定のため二国間での協力も進めており、昨年インド・韓国との二国間通貨スワップの拡充を図ったところです。こうした努力を通じ、アジアが経済危機に強靭な地域に変容することを期待します。

 アジア域内の豊富な貯蓄を域内の投資に活用する好循環のシステムを確立するため、域内の債券市場の育成が必要であるというのが、アジア通貨危機から我々が得た教訓です。2003年にスタートしたアジア債券市場育成イニシアチブ(ABMI)のもと、この10年間でアジアの債券市場は着実に成長しています。ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)や信用保証・投資ファシリティ(CGIF)等を活用して一層の具体的成果が出されるよう、ADBの一段の取り組みや協力を期待します。

 

(メコン地域への支援)

 我が国は、メコン地域を支援の重点地域としています。先月、我が国で第4回日・メコン首脳会議が開催され、域内の連結性を向上させることの重要性について合意を得ました。ミャンマーについては、現在、民主化、国民和解に向けた措置及び様々な政治・経済改革が進展しております。こうした動きを確実なものとするため、国際社会が一丸となって、ミャンマーに対する支援を強化していくことが重要です。我が国は、民主化の進展のためには改革の果実をミャンマー国民が実感することが極めて重要であると考え、先月行われた日本・ミャンマー首脳会談において、国民の生活向上、人材の能力向上や制度整備、インフラや制度の整備等の分野を中心に本格的な支援を再開することを表明しました。我が国としても、ADB等の国際開発金融機関、パリクラブや関係国と緊密に協力しながら、債務問題の解決も含め、ミャンマーの民主化の進展及び経済発展のため主導的な役割を担っていく考えです。

 

(アフガニスタン支援)

 アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)/NATO軍からのアフガニスタンへの治安維持権限の委譲(transition)は2014年末までに完了予定であり、現在重要な時期にさしかかっています。ADBがアフガニスタンと周辺諸国との地域協力を主導的に行ってきたことを評価いたします。我が国としてもアフガニスタンの持続可能な国造り・開発をサポートするため、ADBの協力も得つつ、本年7月に東京でアフガニスタンに関する東京会合を開催する予定です。

 

5.結び

 議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

 アジアは、急速な変容を遂げており、多くの課題に挑戦していかなければなりません。我が国はアジアの繁栄のため、ADBや加盟諸国と引き続き協力を強化していきたいと考えています。

 ご清聴ありがとうございました。

(以上)