| 1 はじめに 議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、 アジア開発銀行(ADB)第37回年次総会の開催にあたり、日本国政府を代表して、主催国である韓国政府及び済州島の皆様の暖かい歓迎に心より感謝申し上げます。 また、昨年9月にADBの新規加盟国となったルクセンブルク大公国、昨年12月に新規加盟国となったパラオ共和国に対し、歓迎の意を表します。 2 日本経済 議長 日本は、不良債権等これまで我が国経済の重荷となっていた構造的な問題が、官民一体となった改革への取組みによってようやく解消され始め、民間需要が主導する本格的な景気回復の手がかりがつかめてきたところにあります。 このような中で、政府が行うべきは、歳出改革、税制改革、金融システム改革及び規制改革など広範な改革の取組みを引き続き強力に推進し、民間活力の発揮や地域の再生を図ることで、国全体として持続的な経済成長を実現していくことだと考えています。また、依然として緩やかなデフレ状況が継続する中、政府・日本銀行一体となって、デフレ克服を目指して強力かつ総合的な取組みを行っていくことが重要と考えています。 3 域内経済 議長 アジア経済は、輸出の回復と堅調な国内消費需要に支えられ、中国・インドを先頭に高い経済成長を続けています。特に、域内における貿易や直接投資の拡大による相互依存関係の深化は、域内経済の自律的な成長につながってきているものと思われます。 こうした好況期にこそ、アジア経済を持続可能で力強い成長軌道に乗せるために、規律ある財政・金融政策、金融システムや民間投資環境整備の構造改革を引き続き進めていく必要があります。 4 東アジアの域内金融協力 我が国は近年、東アジア諸国との間で貿易・投資面での相互依存度が高まっており、既に我が国の輸出入相手国に占める東アジア諸国の割合は約半分を占めております。こうしたなか、我が国は、金融面での東アジア諸国域内協力を、貿易・投資面での域内協力と合わせて“車の両輪”と捉え、特にASEAN+3(日中韓)の枠組みを中心に、次の3つの施策を積極的に推進しております。 第一に、我が国は、東アジア各国が協調して、通貨危機に陥った国に対して、現地通貨とスワップすることにより外貨を融通する、「チェンマイ・イニシアティブ(CMI)」に基づく「二国間通貨スワップ取極め(BSA)」のネットワーク作りに積極的に取り組んでおります。我が国はこれまでに、韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、中国、インドネシア、シンガポールとの間でBSAを締結しており、他の国々の努力もあり、既に東アジア域内に合計16件、365億ドルからなるBSAのネットワークが完成しております。本年は、こうしたCMIの枠組みを更に改良するための「見直し」にかかる議論が行われますが、我が国もこれに積極的に貢献する所存です。 第二に、東アジア諸国が経済危機を回避し、持続可能な経済成長を遂げるためには、域内各国の経済情勢や政策課題に関して、各国が相互に理解を深めることが有益であり、2002年4月以来、ASEAN+3の枠組みの中で、定期的に、各国の経済情勢や政策課題、域内共通の課題に関する政策対話を行っております。こうした政策対話に際しては、ADBから域内経済の概観について報告をいただいており、ADBの貢献を高く評価します。 第三に、我が国は現在、効率的で流動性の高い債券市場を育成することにより、域内における豊富な貯蓄を域内での投資に活用するとともに、域内のファイナンシングにおける「通貨と期間のミスマッチ」を解消することを目指した「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)」の具体化に向けて、主導的な役割を果たしております。同イニシアティブの下では、発行主体の拡大による市場の厚み拡大や市場インフラの整備に向けて設立された6つのワーキング・グループの下で議論・検討が進められており、我が国は各ワーキング・グループに積極的に貢献しています。これまでに、ADB等の国際機関や国際協力銀行(JBIC)のタイや中国における現地通貨建て債の起債が具体化しつつあること、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)がタイにおいて日系現地合弁企業に対して信用補完を供与し起債が可能となったこと等、発行体の多様化に向けた努力が成果を上げつつあり、その更なる進展を期待しております。また、昨日開催されたASEAN+3財務大臣会議では、我が国がシンガポールと共に議長国を務める「域内格付及び情報発信に関するワーキング・グループ」にてADBによる支援も得て構築された「アジア・ボンド・ウェッブサイト(ABW)」が、無事立ち上げられました。これにより、域内の債券発行体や債券市場のインフラに関する情報が発信され、域内及び世界的な投資家の関心を高めることにより、アジア債券市場の発展に貢献することを期待しています。なお、本イニシアティブの検討にあたっては、ADBによる重要な貢献を高く評価すると共に、今後もADBが積極的な役割を果たすことを期待します。 以上に加え、将来に向けた「更なる地域金融協力」を探るための調査・研究についても、ASEAN+3域内の政策当局者を中心に域内の研究者も交えて取り進めています。今後もこうした調査・研究を続けていく所存ですが、その際にはADBともうまく連携を図っていきたいと考えております。 5 ADBの課題 議長、まず、アジア開発基金の第8次財源補充(ADF IX)交渉が成功裡に終結し、70億ドルもの譲許的資金が来年以降4年間確保されたことを歓迎します。我が国も厳しい財政状況ではありますが、35.0%のシェア、円建てで13.4%伸びの拠出を表明いたしました。 こうして補充された財源は、有効に活用される必要があります。アジア地域全体の貧困状況は、最近の十年間で改善してきたとはいえ、中国、インドを除く多くの低所得国においては、貧困人口の削減が進んでいません。また、乳幼児死亡率や識字率など保健衛生、教育分野のミレニアム開発目標(MDGs)については、その達成が危ぶまれています。 こうした状況下、援助が効果を挙げていくためには、それぞれの域内開発途上国が直面する貧困、財政の状況、行政能力などの事情に合わせて、MDGsを現地化(ローカライズ)し、各途上国が自らの貧困削減戦略(PRSP)を実施する中で、その実現を目指していく必要があります。ADBはじめドナー・コミュニティは、協力して途上国のPRSPを支援すべきです。さらに、ADBはじめドナーの側も途上国政府も、援助の実行にあたっては、成果重視の運営が必要です。すなわち、援助の計画・実行・監視・評価の各段階において、援助の目的の明確化、測定可能な評価指標の設定を行い、期待された成果がきちんと挙がっているかを確認してフィードバックを行う必要があります。この観点から、本年後半には、ADBが成果重視の国別戦略計画(result based CSP)の導入に向けた試験的な取組みを開始することを評価します。 議長、ADBには、特に次の5つの政策課題に取り組んで頂きたいと思います。 第一に、成長の原動力である民間セクターの声に耳を傾け、その発展に最も役立つ支援のあり方を目指すことです。ADBはこれまでも中小企業支援に注力していますが、今後その支援により力を入れることを求めます。また、最近ではインドにおいて現地通貨建て債券を発行し、国際開発金融機関で初めてその資金を活用して域内民間企業への現地通貨建て投融資を行っていますが、我が国は、このような現地の民間企業のニーズに即した支援を歓迎します。ADBはまた、途上国政府を助けて、民間企業の投資を呼び込むことができるような環境作りに努めるべきです。具体的には、金融セクター改革、会計制度の改善、民間取引の係争解決制度整備、規制緩和など、民間資金流入の制約となっている要因を特定し、その改革を促すことが必要です。またインフラ・プロジェクトにおける官民協力が必ずしも期待された効果を挙げてこなかった事実を分析し、その教訓を活かした新戦略を構築することも重要です。この点に関して、現在、我が国は、ADB及び世銀とともにアジア地域における持続的な経済成長を実現するために必要なインフラの整備と貧困削減との関係について解明を行っているところです。 第二に、良い統治(グッド・ガバナンス)の促進も重要です。効率的な予算執行・歳入制度、能力本位の公務員制度、公正な法執行・司法制度の確立にADBはさらに忍耐強く取り組むべきです。この関連で、適切な政策を実施するための能力の構築、人材の育成が極めて重要であると考えます。こうした観点から、本年3月、我が国は、域内開発途上国政府職員の行政能力向上を支援する目的でADBに設置された公共政策トレーニング基金に9億円を拠出したところです。 第三に、域内協力の推進です。現在ADBが、メコン河流域地域、南アジア、中央アジアにおいて、域内協力のイニシアティブを取っていることを評価します。しかし、こうした域内協力をさらに実効のあるものとするためには、物的インフラにとどまらず、域内の物・人・金の流れを円滑化させるような制度・政策の調和化が重要です。またADBは、国単位ではなく、地域全体でみた投資効率を最大化することを考え、そのコストを関係する各国間でどのように負担するかの調整に尽力すべきです。わが国は、ADBがこの分野で調査・研究を行うとともに、リーダーシップを発揮していくことを強く支持します。 第四に、アフガニスタン、東チモールなど紛争後(ポスト・コンフリクト)の国々への復興支援です。ADBは、復興需要見積り(ニーズ・アセスメント)の作成をはじめ、今後四年間に10億ドルの支援を行っていくなど積極的なアフガニスタン支援を行っているところです。我が国も、本年3月にベルリンで開催されたアフガニスタンに関する国際会議において、今後二年間に4億ドルの支援を行い、このうちの3千万ドルは、ADBにある「貧困削減日本基金」を通じたアフガニスタン支援に活用していくことを表明したところです。我が国としては、紛争後国への支援が周辺国の安定化にも寄与するものとなることを期待します。 第五に、ADBの内部改革の更なる推進です。ADBが千野総裁のリーダーシップの下、査閲制度の見直し、業務評価局の独立等、自らの業務の効率性や説明責任を高める努力を行ってきていることを評価します。また、人事管理制度の見直し、成果重視の運営の導入や2002年1月に行った組織改革の見直しのほか、情報公開政策の刷新など今後もADB業務における説明責任や透明性の向上への取組みが着実に実行に移されることを期待します。 6 結び 議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、 ADBは近々創設40年を迎えようとしています。 アジア・太平洋地域は、ADB創設時に比し、近年は目覚しい成長を遂げていますが、依然、世界最大の貧困人口を有しています。我が国は、ADBが地域開発銀行として、これまで以上に貧困削減のために有意義な役割を果たしていくために日々努力を重ねていくことを期待するとともに、引き続きその活動を強力に支援していきたいと考えています。こうした観点から、我が国として、2007年の第40回ADB年次総会を日本に誘致したいと思っております。各国総務をはじめ関係者の皆様方におかれては、我が国における年次総会の開催にご理解・ご支援を賜るようお願いします。 |