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第35回ADB年次総会 日本国総務演説(平成14年5月11日 於中国・上海)

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第35回アジア開発銀行年次総会 日本国総務演説
 
(平成14年5月11日(土):於上海)

 

 議長、総裁、各国総務各位、並びにご列席の皆様

 アジア開発銀行(ADB)第35回年次総会の開催にあたり、日本国政府を代表して、主催国である中国政府及び上海市民の皆様の暖かい歓迎に心より感謝申し上げます。

 先月、第60番目のADBの加盟国となったポルトガルに対し、歓迎の意を表したいと思います。
  

日本経済

 現在の日本経済の状況は、経済再生に向けての新しい基盤が着実に整いつつあるところであり、本年後半には回復基調に転ずることが期待されます。我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには、産業の活性化を図っていく必要がありますが、その場合、成長分野を明確にした上で、財政規律を維持しつつ、そうした分野に財政や減税政策、規制緩和といった国の政策を集中していくことが重要です。このような考えの下、我が国は、6月中にも経済と財政の構造改革を念頭に置いた基本的な政策の取りまとめを行なう予定です。

 また、金融機関の不良債権問題についても、企業のリストラや不良債権の処理が進んでいるところですが、今後ともこのような動きを一層進めていく所存です。
 

アジア地域経済

 議長

 アジア経済は、米国経済の減速や日本経済の悪化が続く状況の下で昨年9月11日のテロ事件の影響もあり、2001年まで景気は減速していました。今年に入り、東南アジアにも景気回復の兆しが見られ、米国経済の回復もあって、アジア各国・地域の経済も回復していくことが期待されます。また、中国経済やインド経済は順調に発展を続けております。

 しかしながら、経済成長を回復・持続していくためには、今後もアジア各国において構造改革を進めなければならない状況は依然として変わっておりません。また、機動的な金融政策、中長期的な維持可能性も十分配慮した財政政策、不良債権の処理など経済を内需中心型に中長期的に転換させるためには一層の努力が必要です。
 

域内金融協力

 アジア地域における貿易・投資の相互依存度が非常に高い状況の下、通貨危機の発生を予防し、アジア地域における通貨・金融の安定を図るためには、域内の金融協力を強化することが極めて重要であります。そのため、我が国は次のような施策を推進していきたいと考えています。

 まず第一に、我が国は2000年5月にチェンマイで開催されたASEAN+3蔵相会議において合意されたチェンマイ・イニシアティブの具体化を進めており、これまでに韓国、タイ、フィリピン、マレーシア及び中国との間で二国間通貨スワップ取極を結びました。また、シンガポールやインドネシアとの間でも二国間スワップ取極のための交渉を開始しております。今後とも、チェンマイ・イニシアティブに基づく二国間スワップ取極のネットワーク構築に向けて、関係各国との交渉を進めていく考えであります。

 第二にチェンマイ・イニシアティブに基づく二国間スワップ取極を有効に実施するためには、域内における政策対話を通じて、経済状況に関する情報交換や、共通課題に係る経験を共有することが有益であると考えます。昨年5月にホノルルで開催されたASEAN+3財務大臣会議の結果、域内経済のレビュー及び政策対話の実効性を高めるための方策を議論するための検討が進んでいるほか、ASEAN+3の中でも具体的な政策対話の強化の試みも現実に始まっております。

 第三に、アジア地域内の相互依存関係の高まりに鑑み、地域における為替相場制度に関する議論を行なうことも有益です。現在、アジア域内国や国際機関などが共同で調査・研究を行っていますが、ADBが積極的な貢献を行っていることを高く評価します。
 

西アジアへの支援

 西アジアについては、アフガニスタンの開発復興支援のため、我が国は、本年1月に東京でアフガニスタン復興支援国際会議を開催し、共同議長国の一つとして、会議において重要な役割を果たしました。また、今後ニ年半の間に5億ドルまでの支援を行い、そのうちの1億ドルを国際開発金融機関に既に設置されている我が国の信託基金に対する拠出金を活用することを表明したところです。このうちの5千万ドルは、ADBにある「貧困削減日本基金」を通じた無償資金の供与という形でアフガニスタンの支援に活用していきます。

 ADBは、アフガン復興信託基金の運営に携わるとともに、千野総裁が国際金融機関の総裁として初めてカブールを訪問するなど、アフガニスタン支援に積極的に取り組んでいるところです。今後ともADBが、世界銀行や国連開発計画、及びドナー国と協力して着実にアフガニスタンに対する支援を実行に移していくことを期待します。また、ADBが、パキスタンや中央アジア諸国への追加支援の実施などテロ事件の影響を受けたアフガニスタンの周辺国に対しても積極的な支援を実施していることを高く評価しております。
 

開発問題についての我が国の考え方

 先のモントレーにおける国連開発資金会議で「モントレーコンセンサス」が合意され、ミレニアム開発目標の達成に向けて国際社会が協力して取り組む機運が高まっています。このような状況の下で、私は、この際、開発問題全般について、途上国における能力強化の重要性という点と、援助の有効性の確保という点に触れたいと思います。

 我が国は、これまでの経験から、途上国において開発への取り組みが主体的に行われ、かつ適切な政策運営や良い統治がなされている場合においてのみ、援助が有効に行われ、成長や貧困解消に役立つものと考えています。そのためには、適切な政策を実施するための能力の構築、人材の育成が極めて重要であると考えます。こうした観点から、我が国は財政や税制、健全な金融システムの確立、更には教育や保健といった分野で途上国の能力を強化するための支援を行っていくことが何よりも重要と考えています。我が国は、そのような途上国の能力強化に資するADBの活動を強く支援していく所存です。

 また、援助の効果を確実なものとするためには、援助の成果をしっかりと評価することが必要です。支援を受ける途上国において、支援の目的の明確化、測定可能な評価指標の設定などを行って、支援の効果の向上に寄与すべきであると考えています。
 

ADBの課題

 議長

 次に、ADBの直面する課題について申し上げます。

(貧困削減の一層の推進)

 千野総裁の就任後、ADBは、貧困削減戦略を策定し、貧困削減を最重要目標として、アジア地域の貧困削減に全力で取り組んできました。我が国としては、ADBのこのような努力を高く評価したいと思います。昨年策定されましたADBの中期業務戦略にそって、貧困削減を着実に実施していく必要があります。特に、国際開発目標の達成が大きな課題となっているような国に対してはインフラ関連セクターのみならず、保健、医療や教育等社会セクターにも一層の支援が望まれます。我が国は、ADBの貧困削減への取り組みを支援するため、ADBに「貧困削減日本基金」を設立し、これまで約1億5000万ドルを拠出して、貧困層や社会的弱者に対するHIV/AIDS啓蒙活動や栄養状態の改善などの支援を行なったところですが、本年もさらに約5000万ドルを拠出することをここに表明します。

(開発援助の一層の効率化と成果の追究)

 現在、途上国の開発における国際開発金融機関の活動において、その一層の効率化を図ること、及び着実な成果を達成することが求められています。このような動きに対応するため、今年1月、ADBは、国別の活動により焦点を当てるとともに、「拡大メコン圏経済協力プログラム」や「中央アジア経済協力プログラム」など、アジア地域における地域協力への貢献を強化することを目的に組織改革を実施しました。我が国は、千野総裁の強力なリーダーシップの下で、時宜を得た組織改革を遂行したことを大いに歓迎するとともに、今後は、組織改革を実りあるものとするため、新しい組織の下でADBの業務活動における効率化が図られるなどの具体的な成果が見られるようADBの一層の努力を期待します。

(環境政策及びインスペクション政策)

 今年9月に「持続可能な開発に関する世界サミット」がヨハネスブルクで開催されます。そこでは、環境の保護と開発を同時に達成することが重要な課題とされていますが、ADBの新環境政策がこのサミットのタイミングに合わせ早期に取りまとめられることを期待しています。また、現在検討されているインスペクション政策の見直しの中で、インスペクション手続きの迅速化など、ADBのインスペクション機能の強化を図っていくことが重要であります。

(経済のグローバル化への対応支援)

 アジアにおいては、経済のグローバル化に対応するための様々な制度の構築、人材育成も重要な課題です。これに関し、ADBが世界貿易機関(WTO)加盟に向けた体制整備やマネーロンダリング防止体制の構築などの途上国政府へのキャパシティ・ビルディングを強化することを支援していきたいと考えております。
 

結び

 議長、総裁、各国総務各位並びにご列席の皆様

 ADBは、アジアに所在する唯一の地域開発金融機関として、アジア地域の発展に尽くし、同地域の経済・社会の発展と生活水準の向上に大きく貢献してきました。今後もADBがアジアにおける開発の主導的役割を果たしつつ、各国での構造改革を支援し、アジア地域全体として貧困の削減に大きく寄与していくことを期待します。

以上