第34回ADB年次総会 日本国総務演説(平成13年5月10日 於米国・ホノルル)
| 第34回アジア開発銀行年次総会 日本国総務演説 |
| 1.はじめに 議長、総裁、並びに各国総務各位 アジア開発銀行(ADB)第34回年次総会の開催にあたり、日本国政府を代表して、主催国である米国政府及びホノルル市民の皆様の暖かい歓迎に心より感謝申し上げます。
2.アジアにおける地域協力(チェンマイ・イニシアティブ) アジア経済は、通貨・金融危機からの深刻な状況から急回復を遂げ、2000年にはアジア途上国全体では7.1%の成長を記録しましたが、2001年には世界経済の不透明感等により、5%程度の成長に減速する見通しとなっております。こうした中で、今後とも引き続き適切なマクロ経済政策の実施及び構造改革への取り組みを行っていく必要があることはもちろんですが、通貨危機の発生を予防し、国際通貨・金融システムの安定を図るためには、地域における金融協力を強化することが重要であります。昨年のチェンマイ 総会の際に開催されたASEAN+3財務大臣会議においては、東アジアにおける地域協力の必要性に鑑み、通貨当局間の協力強化の枠組みとして、「チェンマイ・イニシアティブ」が合意されたところであります。その後1年間、関係者の協議を続けた結果、昨日の会合において、いくつかの参加国間で二国間スワップ協定のための交渉が進んでおり、そのうちのいくつかは 実質的合意に至ったことが発表され、域内金融の安定化のための支援ネットワークの構築に向けての進捗が確認されたことを歓迎いたします。
3.ADBの貧困削減への取り組み及び我が国の支援 議長 アジアにおける貧困削減が、ADBの取り組むべき最も重要な使命であることは言を俟たないところであります。このような観点から、ADBは一昨年、貧困削減を最重要目標と定め、「貧困層に配慮した持続可能な経済成長」、「社会開発」、及び「グッド・ガバナンス」を三本の柱とした貧困削減戦略を策定いたしました。また、貧困削減を推進するための重要なツールであるアジア開発基金については、第7次財源補充交渉が、昨年9月の沖縄会合において成功裡に合意されております。更に、本年3月には、今後15年間のADB業務の指針となる長期戦略フレームワークが策定され、ADBは貧困削減という国際開発目標の達成について、組織を挙げて取り組むこととなりました。今後ADBは、それらの実施戦略を具体的な業務に適切に反映させていくことが必要であり、貧困削減戦略に即した効果的・効率的な支援を実施していくことが期待されています。
4.ADBの課題 次に、ADBの直面する課題について申し上げます。 ADBは創設以来30年余、アジアに根ざした地域開発金融機関として、アジア地域の発展に尽くし、同地域の経済・社会の発展と生活水準の向上に大きく貢献してきました。今後ADBが、こうした地域への貢献をより一層効果的かつ効率的に行うためには、アジア地域の地域協力・地域統合への積極的な貢献、途上国政府・市民社会・他の援助機関等との間の積極的な対話、権限の分権化など現地事務所の機能強化、途上国の中期的な構造改革の解決を目指したプログラム融資・セクター融資・民間部門業務といった業務の多様化、デジタル・ディバイドを解消するための情報通信技術分野への支援、を着実に実施していくことが重要であります。この中で、以下の点を特に強調しておきます。 第一に、市民社会等関係者との対話強化であります。 途上国自身のオーナーシップを高め、開発援助の不必要な重複を避け、貧困削減の効果と援助の効率性を向上させるためには、ドナー国、途上国政府、市民社会、地域コミュニティ、民間セクター、他の援助機関など幅広い関係者との対話を通じたパートナーシップの強化を図り、支援対象国における構造改革やガバナンスの向上のための連携を図ることが重要であると考えます。また、進行中のADBのプロジェクトに対する独立した監視機関である査察委員会を強化することも必要であります。このような取り組みはADB 自身の説明責任と透明性の向上につながっていくものと確信しております。 第二に、ADBの内部資源の充実であります。 長期戦略フレームワークの中でも触れられているように、ADBの戦略アジェンダを実施していくためには、物的・人的両面での十分な内部資源の充実が必要であると考えます。また、受益国のニーズに的確かつ迅速に対応し、プロジェクト及びプログラムを円滑に実施し、適切に管理できるようにするためには、権限の分権化をはじめとする現地事務所の機能強化が重要であります。この観点から、ADBは業務の効率化を推進しつつ、ADB全体の組織の強化及び職員の能力向上に積極的に取り組むべきであると考えます。なお、国際開発金融機関の業務の質の向上を求める国際社会からの要請に適切に応えていくためには、コンプライアンス・メカニズムや内部評価体制の強化といったADB自身のガバナンスの一層の充実が必要であることは言うまでもありません。 第三に、情報通信技術への取り組みであります。 情報通信技術の進展は、世界経済の新たな繁栄のために必要不可欠なものであり、ADBにおいても情報通信技術分野への積極的な取り組みが重要であります。我が国としても、昨年7月、公的資金による包括的協力策を実施することを発表しております。この一環として、我が国は途上国における情報通信技術促進支援を目的として、本年度約12億7千万円をADBに拠出することをここに表明いたします。この資金は開発途上加盟国における情報通信技術活用のための環境整備、人材育成等の支援を目的としており、本資金が有効に活用されることを期待します。 更に、このようなADBの貢献が地域社会に真に受け入れられるためには、環境面への適切な配慮を行うことが不可欠であります。ADBにおいて現在策定中の環境政策については、専門家や市民社会といった幅広い関係者の意見を十分に反映することが重要であり、質の高い政策が早期に取りまとめられることを期待しております。また、実際の融資活動においても、ADBの様々な経験を十分活用しつつ、環境影響評価を強化していくことが望まれます。こうした努力により、ADBの活動に対する幅広い関係者の理解を得られ、ADBの評価も更に高まっていくものと信じております。
5.結び 議長、総裁、並びに各国総務各位 最後に、21世紀初頭に際し、それぞれの国民・政府をはじめ、多くの国際機関は、依然として深刻な状況にある貧困問題を克服し、今世紀がアジア・太平洋地域及び世界にとって真に繁栄と安定の時代とするため、最大限の努力を続けていく必要があるということを申し添えたいと思います。その中で、ADBがこれまで以上に重要な役割を果たしていくことを期待しております。 以上 |
