第52回IMF暫定委員会コミュニケのポイント(1999年4月27日 於:ワシントンDC)
| 第52回IMF暫定委員会コミュニケのポイント (1999年4月27日 於:ワシントンDC) |
1.IMF暫定委員会は、1999年4月27日、ワシントンにおいて、チャンピ・イタリア国庫大臣を議長に、第52回会合を開催した。
2. 世界経済の動向;最近の危機への政策対応
a.
世界経済の動向
○
委員会は昨年10月の会合以降に採られた多くの政策措置等が市場のコンフィデンスを改善し、世界的な景気後退のリスクを低減させたことに勇気付けられた。しかしながら、1999年の世界経済の成長見通しは依然として弱いままであり、2000年になってから穏やかに回復するものと見込まれる。解決には時間のかかる深刻な課題が残っている。
○
最近の明るい動向として、委員会は以下の点に留意した。
・
アジア危機当事国の多くで景気が回復に転じている。 ・ 3月以降、ブラジルの状況は安定し、域内の他の金融市場への伝播も概ね穏やかなものとなっている。 ・ 米国及びカナダ経済は引き続き際だって堅調であり、インフレも抑制されている。 ・ 年初以降、新興市場諸国に対する投資家のセンチメントが総じて改善した。先進諸国の金融市場では、流動性収縮のリスクについての懸念が後退したため、昨年10月以降センチメントが顕著に改善した。
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他方で懸念される要素もある。
・
ブラジル危機はラテン・アメリカ経済や世界経済に下方圧力をもたらした。 ・ 日本はいくらか改善が見られるものの、短期的な見通しは引き続き不確実であり、欧州の多くの地域で成長は更に減少し潜在成長率を下回っている。 ・ ロシアの景気は9月の底以降回復し、月間インフレ率も低下したが、財政赤字及び債務環境は依然として持続不可能なままである。 ・ 一時産品輸出国は輸出代金減少から、大きな調整問題に直面している。
○
委員会は経済成長のダウンサイド・リスク及び、顕著な世界貿易不均衡に寄与する日米欧の間の成長パターンの不均衡の継続等その他の課題に対応するための政策につき検討した。
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以下にプライオリティーが置かれるべきである。
・
危機に晒された新興市場諸国における迅速かつ持続可能で強固な回復を目標とするマクロ経済政策及び構造政策の適切な組合せ ・ 日本における金融リストラ及び内需主導の経済成長 ・ 欧州における内需サポート
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この関連で委員会は、内需刺激や金融セクターの問題緩和を目的とした日本の重要な政策イニシアティブを認識したが、日本はあらゆる可能な手段を用いつつ、成長が回復するまで景気刺激措置を執行していくことが重要であることを強調した。また、委員会は、欧州中央銀行による最近の金利引下げを歓迎した。
○
委員会は、開放的で競争的な市場が世界経済の成長と安定を維持するために重要であることを強調し、全てのWTO加盟国の関心に応えるバランスのとれた議題で、新たな貿易交渉のラウンドが11月に開始されることへの期待を表明した。
○
委員会は、欧州経済通貨連合(EMU)のスタートを歓迎した。労働・資本・商品市場の構造改革に合わせて、内需強化をサポートする政策の適切な組合せが、ユーロ圏が世界経済の主要な成長源となるために、成長と雇用の見通しを中期的に向上させる上で必要である。
b.
最近の危機における政策対応
○
委員会は、アジア金融危機の対処にあたっての国際社会の戦略を概ね支持し、その教訓に留意した。委員会は状況に柔軟に対応したIMFプログラムの下で、韓国、タイ、フィリピン及びインドネシアが示した進展に着目した。委員会は、危機が最悪期を脱したことに留意する一方、危機当事国が必要な改革をやり抜き、持続可能で質の高い成長の基盤を作るよう求めた。
○
委員会は危機の教訓として特に以下のような経済的脆弱性の原因に速やかに取り組む必要があることを強調した。
・
為替相場の著しい不均衡 ・ 政策の不適切な組合せ ・ 過剰な債務の累積 ・ 無分別な債務管理政策 ・ 不十分な監督・規制体制の下での金融セクターの脆弱性 ・ 市場への限定的な情報提供 ・ 企業構造の脆弱性 ・ 不適切な順序立てでの資本勘定の自由化 ・ 貸し手の側の不十分なリスク管理
委員会はまた、各国がプログラムに対するオーナーシップを強化することが極めて重要であることを強調した。
○
公的セクターの不均衡が危機の根本原因であるブラジルについては、委員会は、ブラジル当局の改訂経済プログラムの完全実施の重要性と、ブラジルに対する民間金融コミュニティの継続的な支援の重要性を強調した。
○
ロシアの見通しについては、最近改善が見られるものの、財政赤字の継続、構造的硬直性、金融セクターの脆弱性という危機の根本問題に、精力的に取り組むことが必要であることを委員会は強調した。
○
為替相場制度については、委員会は望ましい為替制度は国によって異なり得ること、どのような為替制度も規律のある政策及び堅固な金融システムによって支えられなければならないことに留意した。最近の危機において、特に資本移動の自由度が高まる中で、ペッグ制を維持するために求められる政策は簡単ではないことが明らかとなった。他方で固定相場制度を採用している多くの経済が為替相場の平価維持に成功している。委員会は理事会に対し、大規模な公的資金支援による防衛との関連を含めて、何が適切な為替相場制度であるかという問題について更に検討するよう求めた。
○
アジア金融危機時のIMFの支援プログラムに関して理事会が行った有益なレビューに基づき、委員会は理事会に対して、世界経済の変化、特に国境を越えた急激で大規模な資本移動が起こり得る状況をより的確に反映するように、IMFのサーベイランス及びプログラムを一層改善する方法を議論することも求めた。
3. 国際金融システムのアーキテクチャー強化
○
委員会は、国際金融のアーキテクチャー強化の重要な要素について、概ね合意が見られたことに留意した。にもかかわらず依然として進展させるべき問題、実施すべき提案は残っている。国際金融システムは、不適切な政策や資本移動の大きな変動がもたらすリスクを低減するために強化されなければならない。その観点から、委員会は、民間セクター、各国当局、IMFや他の機関等が今後数カ月間でこの作業を前進させるよう求めた。
a.
金融危機の予防と解決
○
委員会は、危機の予防が鍵であるとの認識を強調した。委員会は、IMFの予防的クレジットラインの創設という理事会の決定を支持した。
○
特に民間セクターを関与させつつ、危機を予防するため、短期資本の移動のモニタリング強化、ヘッジファンドを含む高レバレッジ機関やオフショアセンターに対する改善された規制監督等につき更なる作業が必要である。
○
委員会は、危機の予防及び秩序だった解決を促進するような、以下のメカニズムを導入していくことに向けて、加盟国政府と協力していくとのIMFの意図を支持した。 ・ 短期債務の過度の累積の回避 ・ 民間セクターの対外債務に関するモニタリングシステムの構築 ・ 民間資本金融市場との効果的な対話の維持 ・ 民間債権者との間で予防的クレジットラインやそれに類する取極を締結することによる十分な外貨流動性の維持 ・ 短期のインターバンク借入れを選考するバイアスの解消等 ・ 非常時においても民間からの資金調達をより良く維持できる取極の締結
○
委員会は借入コストに大きな影響を与えることなくソブリン債において集団行動に関する条項を盛り込む適切な手法について、理事会で検討するよう求めた。
○
委員会は、借主は債務を誠実に返済すべきであるとの一般原則を再確認した上で、極端な状況の場合には、IMFが、適切な条件のもとで、民間債権者に対する債務履行遅滞の状況においても貸出を行う用意があることに留意した。これは民間債権者との交渉が長引く場合においても、IMFが効果的な国際収支調整を促進することにもつながるであろう。委員会は、より秩序ある債務問題解決の方法等について理事会が引き続き検討し、暫定委員会に報告するよう要請した。
b.
機構改革及び暫定委員会の強化・改革
○
委員会は、IMFが機構の運営方法を現実的に改善し、他の機関等との協力を強化しつつ、国際金融システムの中核にあり続けることに合意した。
○
委員会は、代理及び理事会に対し、暫定委員会を含む機構改革の方策を更に検討し、次の暫定委員会において報告することを要請した。
c.
資本移動
○
委員会はIMFが、資本自由化の適切な速度及び順序について引き続き検討していくこと、及び、更に資本規制を行った国の経験に関する分析をより精緻なものとしていくことを奨励した。
○
委員会は、SDDS(特別データ公表基準)の強化という文脈で、公的短期債務に関するデータの改善が合意されたことを歓迎した。
d.
国際的基準とIMFサーベイランス
○
基準の遵守が国際金融システム強化に資することに鑑み、委員会は特にIMFによる以下の進展を歓迎した。; ・ 外貨準備及び関連する債務に関するデータ公表の促進を含む、SDDS(特別データ公表基準)の強化。委員会は、依然批准していない加盟国の批准を強く促した。 ・ 財政透明性に関する良い慣行について、各国による実施を助けるマニュアルの完成。 ・ 金融政策及び金融監督に関する良い慣行を策定する上での進展。委員会は、遅くとも次回年次総会までに良い慣行を完成させ、それをサポートする文書の準備を迅速に進展させるよう理事会に要請した。 ・ 他の規則策定団体における作業の進展及びIMF、世銀、国連等による破産法改革の分野での協力
○
委員会は、国際金融の安定に関係のある基準や規則をIMFサーベイランスに取り組んでいく方策を開発するよう促した、また透明性レポートや金融システム安定性の評価を今後行うための実験的作業を歓迎した。
e.
透明性−最近の進展と展望
○
委員会は、加盟国の経済政策及びIMF自身の業務の透明性向上についての、IMFによる以下の進展を歓迎した。 ・ PIN(プレス・インフォメーション・ノーティス)をIMFの政策に関する議論により活用すること ・ 借入国の政策趣意書(レター・オブ・インテント)等のプログラム関連のペーパーの開示への強い期待。 ・ IMFプログラムについて、理事会の議論を要約した議長ステートメントの発表 ・ IMFの文庫へのアクセスの自由化 ・ 4条協議のスタッフペーパーを自発的に公表するパイロットプロジェクト
○
委員会は、IMFの業務と政策に関する情報公開や事後評価を通じてIMF自身が透明性向上に寄与していくことの重要性を再確認した。
4. HIPCイニシアティヴとESAF
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委員会は、HIPCイニシアティヴの更なる見直しを歓迎し、救済を必要とする国に対して、強力な改革プログラムへのインセンティブを強化するようなやり方で債務救済を強化する具体的な提案を、世銀理事会と協力しつつ、策定するよう理事会に要請した。その際債権国間で適切なバードン・シェアリングが必要であることも認識された。委員会は、HIPCイニシアティブと貧困撲滅との関連を強化する方策についてのレポートが次回会合に提出されることを期待した。
○
委員会は、HIPCイニシアティブと将来のESAFのコストに鑑み、その資金手当てが確保されるよう一層の努力が必要であると強調し、理事会に対して、イニシアティブの完全なファイナンスを確保するために必要な決定を出来る限り速やかに採択するよう促した。また委員会は、2001年の暫定ESAF開始までの間、ESAFの運営をサポートするのに必要な資金を、加盟国が早急に手当てすることに関する実質的な進展を歓迎した。
5. ポストコンフリクト国に対するIMF支援
○
委員会は緊急支援の条件の改善等ポストコンフリクト国に対するIMFの支援を充実させる方策が理事会で合意されたことを歓迎した。委員会はIMFに対し履行遅滞に陥っているポストコンフリクト国に対して、ケースバイケースで、IMFに対する支払い要件の緩和を考慮する用意があるとの理事会の対応に留意した。委員会は、重債務貧困国であるポストコンフリクト国の債務負担は最終的にはHIPCイニシアティブの下で解決する必要があろうことに留意した。
6. コソボ危機における地域における経済的打撃
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委員会は、コソボ危機の経済的影響に対し、国際社会が早急かつ大規模な対応を行う必要性に同意した。委員会は全ての人道支援は、国外からの支援及び無償援助により賄わなければならないことを強調した。危機の直接的な結果として生じる人道支援以外の外部からの資金調達需要は、二国間及び多国間支援により満たされるべきである。影響を受けているESAF適格国における国際収支及び財政に対する対外支援は、高度に譲許的な条件で行われるべきである。一方、委員会は、パリクラブの枠組みの中で行われている、危機の影響を受けた国々の対外債務ポジションに関する現在進行中の議論への期待を表明した。
7. クォータ、新規借入取極(NAB)、及び第4次協定改正
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委員会は、新規借入取極(NAB)、第11次増資の発効を歓迎した。これらはIMFが、国際金融システムの中心機関としての任務を遂行していくための財源を供給するものである。委員会は、SDRの特別配分を定めた第4次協定改正に対する加盟国の受諾が比較的遅れていることに留意し、まだ受諾していない加盟国に対して必要な手続きを迅速に完了させるよう求めた。
8. 次回会合は、1999年9月26日に、ワシントンD.C.で行われる。
