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第27回IMFC 日本国ステートメント(平成25年4月20日)

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第27回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2013年4月20日(土))

  1. 日本経済再生に向けた取組

     足元の世界経済については、ユーロ圏の危機が一段落するとともに、米国の「財政の崖」への対応に進展がみられたことにより、世界経済が底割れするリスクが低下し、総じて状況が改善していることは歓迎できる変化です。また、アジア経済は、内需の力強さや健全なマクロ経済運営に支えられ、総じて堅調であり、世界経済のけん引役を果たしています。引き続き、ユーロ圏における改革の継続や、米国において財政に関して包括的な解決の道筋が合意され実行されることを期待します。こうした中で、日本も世界経済の回復と成長に重要な役割を担うべく、新政権は、日本経済の再生に向けて力強く大胆な政策を打ち出しています。
     1990年代以降、グローバル競争が激化し少子高齢化が進行するなど、内外の経済環境が構造的に大きく変化する中、日本経済は長きにわたりデフレが継続しています。賃金の下落が続き、消費や設備投資が伸び悩む中で、成長期待の低下やデフレ予想の固定化が見られます。デフレは、未来への投資を阻害するという意味で問題であり、日本経済を衰弱させてきた根深い問題です。
     昨年末に成立した新政権は、こうした状況を打破し、デフレ不況から脱却するため、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージとして、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」から成る「三本の矢」を一体的かつ強力に実行して経済再生を推し進めることとしています。
     新政権のこうした大胆な政策パッケージは、市場や消費者に好感されており、昨年11月に前内閣が解散を表明した時(11月14日8,664円)から、足下株価は50%以上も上昇しました。また、消費者マインドも改善し、民間部門では、業績改善を見越して従業員への給与、一時金の引上げの動きが広がるなどの明るい兆しも見られるところです。こうした明るい動きをデフレ不況からの脱却と確かな経済の再生につなげていくことが重要です。
     まず、金融政策については、本年1月、政府と日本銀行は、デフレからの脱却と物価安定の下での持続的成長の実現に向け、2%の物価安定目標を含む「共同声明」を発表しました。日本銀行は、3月20日に着任した黒田新総裁の下、4月4日にはマネタリーベースの倍増、長期国債保有残高の倍増など、量と質の両面において極めて大胆な金融緩和措置を打ち出し、2年程度を念頭にできるだけ早期に2%の物価安定目標の実現を目指すこととしました。こうした金融緩和策の強化は、これまでのIMFの日本に対する政策提言にも沿ったものと考えています。
     次に、財政政策については、景気の底割れを回避する観点から、本年1月に緊急経済対策を決定し、これに基づく大型の補正予算が2月26日に成立し、すでにそのほとんどについて執行に着手しました。同対策を通じて実質GDPを概ね2%程度押し上げることができると見込んでいます。他方、IMFも指摘しているように、財政運営に対する信認を確保するためには、信頼に足る中期的な財政健全化計画が不可欠です。とりわけ日銀が、次元の違う大胆な金融緩和として、今後2年を念頭に極めて大量の国債を購入する中、財政健全化への取組みを足元から着実に推進し、その実を上げていかなければ、日本財政に対する市場の信認を失い、金利急騰のリスクを招きかねません。このため、政府としては、2015年度までに国・地方のプライマリーバランス赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減し、2020年度までに黒字化するとの財政健全化目標にコミットしており、平成25年度予算については、4年ぶりに税収が公債金を上回る状態を回復させるなど、財政健全化目標の達成に向けた第一歩となるひきしまった予算としました。今後は、年央を目途に、財政健全化目標を達成するための中期財政計画を策定する所存です。また、昨年8月、税制抜本改革法が成立し、消費税率を2014年4月に現在の5%から8%へ、2015年10月に8%から10%へと引き上げることとしています。今後、この法律に基づき、経済環境を整備し、予定通り消費税率を引き上げる決意です。
     成長戦略については、日本経済の競争力と成長力の強化に向け、本年半ばを目途に、大胆な規制・制度改革を含む野心的な成長戦略をとりまとめることとしています。現在、健康・医療分野やエネルギー・環境分野における規制改革等による新産業の創出や、農業の競争力強化、および、若者・女性の活躍促進などについて、検討を進めているところです。また海外との経済連携の強化も日本経済の成長にとって重要であり、3月にはTPP交渉への参加を決断し、既に米国との協議が妥結するなど、参加に向けて大きく進展しています。この他、日EU・EPAの交渉開始に合意し、日中韓FTAの交渉も開始しました。

  2. IMFの役割と課題

    【クォータ・ガバナンス改革】
     IMFが、危機への対処と予防を含め世界経済の安定的な成長を支援する重要な役割を効果的に果たしていくためには、IMFの正当性、有効性、信頼性に対する加盟国からの信頼の維持向上が必要であり、そのためには、クォータ見直しをはじめとするガバナンス改革に不断に取り組むことが必要です。
     第15次クォータ見直しにおいては、14次増資の結果倍増するクォータとそれを補完する形で存在するNAB、バイ融資取極を通じて、IMFの資金基盤が強化されてきていること、ユーロ圏危機の後退等により世界経済や国際金融市場の状況に改善がみられること、および、欧州やアジアにおいてリージョナルなセーフティネットの構築が進展していることを踏まえた検討を行うべきです。検討の第一段階として、IMFスタッフからIMFに対する資金需要に関する信頼性の高い見通しが示されることを期待します。
     また、クォータ見直しの中で、加盟国の資金貢献実績を適切に考慮することの重要性を改めて強調したいと思います。近年の世界金融危機への対応、低所得国支援、技術支援などのIMFの主要な業務が、加盟国による自発的な資金貢献なしには成り立ってこなかった事実を軽視すべきではありません。こうした現状を直視し、自発的貢献に対する加盟国のインセンティブを高め、今後もIMFの資金基盤を安定的に確保していくためにも、加盟国の資金貢献実績を適切に考慮すべきです。
     資金貢献実績を考慮することは、新興国・途上国のクォータ・シェアを不当に引き下げるという意見もありますが、日本は、資金貢献実績への考慮と新興国・途上国のクォータ・シェアへの配慮は、十分に両立する課題であると考えています。最貧国の発言力を適切に保護することが重要なのは言うまでもありません。
     このほか、スタッフの多様性を改善させることもIMFの正当性、有効性、信頼性を高めるために重要です。日本は、IMFに対し、資金面での貢献のみならず、人材面でも同等の貢献を行う準備があります。

    【金融政策と資本フローについてのサーベイランスの在り方】
     G20においても確認されたように、金融政策は国内の物価安定と成長の回復を支援する目的で活用されるべきです。また、競争力のために為替レートを目的とはせず、あらゆる形態の保護主義に対抗し、開かれた市場を維持するとのG20のコミットメントは、すべてのIMF加盟国が尊重すべき経済政策運営の基本原則であります。
     近年の先進国の中央銀行による非伝統的な金融緩和策は、金融市場の安定化、および、ゼロ金利制約あるいは超低金利の環境において物価の安定を図ることを通じて経済成長を下支えすることを目指したものです。こうした金融緩和により、金融危機を回避し、先進国経済が回復することは、金融市場の安定と内需拡大に伴う貿易の増加を通じて新興国・途上国を含む世界経済全体にとって良い影響をもたらすものと考えます。先進国の金融緩和策の波及効果を考える場合には、まずはこうした点を十分に認識することが重要であると考えます。
     一方で、先進国の金融緩和策が新興国への急激な資本フローの変動をもたらし、金融市場に様々な歪みをもたらし得るリスクも指摘されているところです。新興国・途上国がこうしたリスクに対応していくためには、適切なマクロ経済政策、および、ミクロ・プルーデンスとマクロ・プルーデンスの両面からの金融監督が重要であることは言うまでもありませんが、その上でなお必要な場合には、資本フロー管理政策にも有用性が認められるべきです。IMFが先般、アジア通貨危機以降の金融危機の教訓も踏まえ、資本フロー管理政策の有用性も認める形で資本フローに関するinstitutional view を策定したことは重要な前進です。自由な資本市場がより大きな便益を加盟国にもたらす環境を整えていくためにも、IMFが今後さらに資本フロー管理政策の効果やコストについて理解を深めていくことを期待します。

    【低所得国支援について】
     我々はアフリカをはじめとする低所得国支援の重要性を忘れてはならず、IMFが国際社会によるアフリカ支援の協調の中で、引き続き重要な役割を担うことを期待します。日本は、1993年にTICADプロセスを立ち上げるなど、長きにわたりアフリカの開発を支援してきました。本年6月にはTICADXを開催し、近年のアフリカの成長をより持続可能で強固なものとするため、民間セクターの強化や、インフラ整備や法制度整備等を通じたビジネス環境整備に焦点をあてながら、国際機関とも連携しつつ、アフリカ諸国への支援と協力を深化させていきます。
     PRGTについて、日本は、これまでの資金基盤強化に関する合意を着実に実行しています。一回目の金の売却益のPRGT利子補給金勘定への貢献については、本年3月にすでにIMFへの拠出を実行しました。二回目の金の売却益の貢献についても、昨年秋に日本は貢献の意思を表明しています。貢献の意思を表明していない国が速やかにコミットメントを行い、できるだけ早期に売却益のIMFへの移転を実施できるようになることを強く期待します。

  3. 結語

     昨年10月、日本はIMF世銀東京総会を成功裏に開催することができました。IMF・世銀スタッフの尽力や加盟国の協力に対し、あらためて深甚なる謝意を述べたいと思います。48年ぶりに総会をホストし、IMFに対する日本国民の理解は一層深まったところであり、日本は今後さらに一層、IMFの良きパートナーとして世界経済の成長や国際金融の安定に有意な貢献を行っていきます。

(以  上)