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第25回IMFC 日本国ステートメント(平成23年4月21日)

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第25回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2012年4月21日(土))

 

1. 日本経済、世界経済

【日本経済】

昨年3月11日に東日本大震災が発生してから約一年が経過しました。この機会に改めて、世界の皆様から頂いた温かい御支援に感謝の意を表したいと思います。
昨年は震災に加え、急激な円高や外需の減少、タイにおける洪水等の影響により、マイナス成長となりましたが、足下の景気は緩やかに持ち直しています。例えば、震災直後に混乱したサプライ・チェーンの影響で大きく落ち込んだ鉱工業生産指数は、タイの洪水による影響が一部に生じたものの、急速に回復しており、震災前水準を取り戻しつつあります。
また、我が国は、復興費用としてこれまでに18兆円(GDP比約4%)の予算手当てを行うなど、財政面で迅速な対応を行ってきました。今後、復興施策の集中的な推進によって着実な需要の発現と雇用の創出が見込まれ、国内需要が成長を主導することから、我が国の景気は緩やかに回復し、今年度は実質2.2%の経済成長を達成すると見込んでいます。ただし、急激な円高の再来や、欧州政府債務危機の再燃による海外景気の下振れ、高止まりする原油価格の動向といったリスクには十分警戒しています。

【日本の財政健全化】

震災からの着実な復興とともに、我が国にとって足元の最重要課題は財政の健全化です。IMFのWEOの分析において、我が国財政への信認の低下が世界の金融市場に負の波及効果をもたらすことが世界経済のリスクの一つとして指摘されており、市場の信頼を得るに足る財政健全化の着実な実施が、我が国のみならず、世界経済にとって先送りできない重要課題と認識しています。
復興のための大規模な予算措置を講じる中でも、その財源については、将来世代に負担を先送りしないという考えに基づき、赤字国債の発行に頼らず、所得税・法人税などの時限的引上げ、歳出削減及び税外収入により賄うこととしました。
次の課題は、中期的な財政健全化の柱となる社会保障と税の一体改革を着実に実施していくことです。世代間・世代内の受益・負担の公平を図り、全世代対応型の社会保障制度を構築することや、社会保障の充実・安定化のための安定財源確保と財政健全化をともに達成するため、本年2月に「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定し、3月30日には、税制抜本改革法案を国会に提出しました。法案の中では、消費税率を2015年10月までに段階的に現在の5%から10%へと引き上げ、その税収を全額社会保障財源化することを規定しています。
こうした改革を着実に進めていく中で、G20トロント・サミットでコミットした、基礎的財政収支の赤字対GDP比を2010年度比で2015年度に半減し、2020年度には黒字化するという目標を達成できる財政構造を作り上げていきます。この取組みは、将来不安の払拭を通じ、経済成長を下支えするものであると考えています。

【世界経済】

世界経済には明るい兆しも見られます。南欧諸国による抜本的な財政健全化策の実施、EUの財政規律強化、ECBによる積極的な金融政策、第二次ギリシャ支援パッケージの策定等、欧州における果断な政策対応により、足元では金融市場は落ち着きを取り戻しています。米国経済の改善の動きや、主要先進国の中央銀行が金融緩和に強くコミットしていることもこれに寄与しています。アジアを含む新興国経済も、減速の懸念はありますが、内需の力強さや健全なマクロ経済運営に支えられ、総じて堅調と認識しています。
しかしながら、ユーロ圏の一部の国で国債金利が再び上昇傾向にあるなど、欧州政府債務問題を中心に、世界経済には大きな下方リスクが引き続き存在していると考えています。各国の政策担当者は、現状に甘んじることなく、これまでの取組みにより確保された時間を無駄にせずに、将来の危機を未然に回避できる強靭な経済、財政、金融システムの構築に取り組むべきです。ただし、金融制度の改革においては、一国における規制の強化が他国に意図せざる効果を及ぼすリスクに十分注意する必要があります。また、欧州の金融機関の資本増強は重要ですが、無秩序なデレバレッジを招き実体経済に悪影響を及ぼすことがないよう、手法や順序の選択を慎重に行うことが必要です。

 

2. 国際金融アーキテクチャーの強化

世界経済が安定的に成長するためには、世界経済・金融のインフラである国際金融アーキテクチャーを強化することが重要です。IMFはその中核をなす機関であり、我が国は、IMFの機能強化に積極的に関与・提言を行ってきました。2010年12月に合意されたIMFクォータ・ガバナンス改革については、増資・協定改正ともに昨年8月までに国会承認手続きを完了しています。現時点で協定改正を受諾済みの国は約70ヶ国、投票権シェアで約45%に留まっており、今後次回のクォータ見直しの議論を着実に進めていくためにも、合意した通り、本年10月の東京総会までに2010年IMF改革を発効させることが重要です。増資・協定改正の国内手続きが終わっていない国には、その加速を求めます。
以下、国際金融アーキテクチャーの強化に向けた重要課題である、国際金融セーフティ・ネット(GFSN: Global Financial Safety Net)の強化、IMFのサーベイランス機能の強化、IMFガバナンス改革について申し述べます。

【GFSNの強化@IMFの資金基盤強化】

世界経済及び金融市場の不確実性が引き続き残る中、次の危機が発生してしまう場合に備え、GFSNの強化は喫緊の課題です。GFSNは、世界、地域、二国間、各国レベルの金融セーフティ・ネットから成る複層的なものであり、それぞれの機能強化とともに、各階層間の連携強化も重要です。
世界レベルでは、IMFの資金基盤を強化することが必要です。単一の通貨と中央銀行を持ち豊かな経済力を有するユーロ圏は、自らの力でEFSF、ESM等の危機対応ファシリティを築き、強化してきましたが、IMFもユーロ圏自身のファイアーウォールを補完する形で資金供与を行い、これに併せて必要な改革を政策コンディショナリティとして立案・提示することで、危機に陥ったユーロ圏諸国を支援し、危機の伝播を防いできました。3月末にユーロ圏が合意したファイアーウォールの強化策は、ユーロ圏の財政規律強化やECBによるLTRO等の政策措置と併せ評価すれば、完全ではないものの一定の進展であると我が国は考えます。
欧州の政府債務危機が未だ完全な終息を見ない現状にあっては、この機を逃さず、IMFの資金基盤強化を実行し、もって金融・為替市場の安定を確かなものとすることが、アジア諸国を含め世界経済の下方リスクを緩和する上で重要と考えます。こうした認識の下、我が国は、今回の春の会合において、IMFの資金基盤強化を大きく進展させることが極めて重要と考えており、合意に向けたプロセスを加速させるため、4月17日に、IMFに対して新たに600億ドルの融資枠を設定する我が国の貢献を表明しました。市場を安定させるための国際社会の結束が試されている今、他の国々からもIMFに対する資金貢献ができるだけ速やかに表明されることを切に期待します。ただし、IMFの資金を利用する際のコンディショナリティや、仮に今後ユーロ圏諸国を支援する場合のユーロ圏とIMFの役割分担について、適切なものとなるよう引き続き求めていくことは言うまでもありません。また、ユーロ圏諸国に対しては、ファイアーウォールの強化、財政規律の強化、構造改革などについて、継続的な努力を行っていくことを慫慂します。

【GFSNの強化Aアジア地域金融協力】

我が国は、IMF等のグローバルな仕組みを補完するものとして、アジア地域における金融セーフティ・ネットの強化にも注力しています。ASEAN+3の枠組みのもとで現在進められているチェンマイ・イニシアティブ(CMIM: Chiang Mai Initiative Multilateralization)の強化について、我が国はASEAN+3の各国との協調の下、来月初の財務大臣・中央銀行総裁会議において、資金融通枠の拡大、危機予防機能の導入等、セーフティネットの更なる強化を目指しています。こうした地域金融協力の強化は、危機予防・対応において地域のオーナーシップを高め、IMF等のグローバルな仕組みを補完してGFSNの強化に貢献するものです。
また、ASEAN+3は、融資能力の強化だけではなく、地域のサーベイランス機能の強化にも取り組んでいます。地域のマクロ経済調査機関として昨年4月に発足したAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)とIMFとの間で、経済サーベイランスをはじめとした緊密な連携が深まることを期待しています。
さらに我が国は、二国間でも金融協力の強化を進めています。昨年10月には、韓国との通貨スワップについて、日本銀行・韓国銀行間の円・ウォン通貨スワップを含め、時限措置として、限度額を総計130億ドルから700億ドルへと拡大させました。続いて昨年12月には、インドとの通貨スワップの限度額を30億ドルから150億ドルへと増加させることに合意しました。また、昨年12月及び今年2月には、中国との間で、金融市場における相互協力を通じた金融取引の促進や、金融セーフティ・ネット強化の取組みにおける連携に合意しました。
こうしたアジア地域での取組みは、金融セーフティ・ネットの強化や地域通貨の利用促進を通じて、他地域から波及する影響を遮断し、地域の耐性を高めることにつながることが期待されます。

我が国は、世界及びアジア地域における金融の安定性向上のために、引き続きリーダーシップを発揮していきます。

【IMFのサーベイランス】

2008年の危機発生以降、IMFのサーベイランス機能は強化されてきましたが、この取組みを継続すべきです。特に加盟国間の貿易面・金融面でのつながりや、政策の波及効果について分析を深めることは重要であり、この観点から、IMFが為替政策だけではなく、マクロ経済政策全般の対外的な影響や、国境を越えた資本移動も対象とした包括的な分析を行うことを目的に、対外セクター・レポートの作成に着手したことを歓迎します。IMFには、分析手法の改善、分析の実施、分析結果の提示方法について、加盟国と十分な意見交換を行うことを求めます。
国別のサーベイランスに加え、地域レベル、世界全体を対象とするマルチのサーベイランスが重要であり、この両者をより良く統合しようとするIMFの取組みを支持します。また、WEO、GFSR、フィスカル・モニターといったマルチのサーベイランスの成果物のメッセージの一貫性の向上とそれらの分析から得られる政策への示唆の抽出を目的とし、統合マルチ・サーベイランス・レポート及び専務理事アクション・プランが作成されるようになったことを歓迎します。こうしたマルチのサーベイランスにおける各国横断的なメッセージと、国別のサーベイランスにおける個別国向けのメッセージが、より整合性のとれたものになることが、IMFのサーベイランスの実効性を高めると考えます。

【IMFのガバナンス改革】

最後に、IMFが上述の役割をより効果的に果たすため、IMFの正当性、有効性、信頼性の向上に不断に取り組む必要があります。まず、現在作業中のクォータ計算式及びクォータの見直しにおいて、加盟国の資金貢献能力により適切に配慮することを求めます。2008年の危機発生以降、前例がない程大規模な資金支援プログラムが複数策定されており、IMFの資金基盤は大幅に強化されたにも関わらず再度の増強が必要になっている状況です。これは、IMFのガバナンスの根幹であるクォータの配分において、資金貢献能力を重視する必要性が高まっていることを示していますが、現在のクォータ計算式は、資金ニーズを過度に重視する一方で資金貢献能力の勘案が不十分であり、その是正が必要です。資金貢献能力の測定に当たっては、今後の資金貢献を促す観点から、資金貢献実績を考慮すべきと考えます。その際、IMFの通常融資を支えるNAB(New Arrangements to Borrow)やIMFとの二者間の融資枠への貢献のみならず、IMFの重要な活動である低所得国支援や技術支援への資金貢献も考慮すべきです。
また、スタッフの多様性を改善させることもIMFの正当性、有効性、信頼性を高めるために重要です。加盟国の発言力・出資割合をそれぞれの経済力に見合ったものとするための改革は進んでいますが、スタッフの構成については大きな改善の余地があります。我が国は資金面のみならず、人材面でも同等の貢献を行う準備があります。

 

3. 東京総会の成功に向けて

本年秋のIMF・世銀総会は我が国が東京でホストします。震災から復興する日本、48年前の東京総会の時のように再出発する日本を各国の皆様に見ていただくことを楽しみにしています。
総会に際しては、IMFや世銀と共に、世界経済が直面する諸課題についてのセミナーを開催することで、主催国として積極的に知的貢献をしたいと考えています。我が国は、震災からの復興だけでなく、少子高齢化・人口減少への対応、デフレからの脱却、成長の促進、財政健全化、といった多くの課題に取り組んでおり、財政・金融から開発、防災まで多岐にわたる課題について、活発に議論する場を提供することを通じ、諸課題の解決に向け、世界が連帯して歩を進めるきっかけとなることを期待しています。
同時に、日本の持つ文化力・技術力を肌で感じていただきたいと思います。皆様に最大限のおもてなしができるよう、今後も、総会の成功に向け、準備作業に全力で取り組んでまいります。

(以上)