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第24回IMFC 日本国ステートメント(平成23年9月24日)

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1.日本・世界経済

未曾有の地震・津波が発生してから半年が経ちました。世界の皆様から御支援を受け、我が国は復旧・復興を進めています。

震災直後の日本経済の不確実性として、電力不足、サプライ・チェーンの混乱、原子力発電所の事故対応の3点が懸念されました。電力問題については、需給両面での取組みの結果、需給が最も逼迫すると見込まれていた8月を乗り越えることができました。サプライ・チェーンの混乱は世界経済にも一時的に影響をもたらしましたが、想定より早く回復しており、生産活動は震災前の水準に戻りつつあります。原子力発電所については、事故の収束に向けたロードマップに従い、原子炉の冷温停止に向けた作業等が着実に進展しています。このように懸念が順調に払拭されつつあることから、消費者や企業のマインドも改善してきており、復興需要も背景に、2011年後半から景気の持ち直しを見込んでいます。

かねてからの課題である財政運営については、震災前に策定した財政運営戦略の目標を堅持し、歳出の無駄の排除に加え、復興財源の確保、社会保障・税一体改革の推進などにより、財政健全化に取り組みます。まず、復旧・復興については、3次にわたる補正予算を組み、必要な歳出が行われるよう、万全を期しています。復旧・復興の財源については、負担を将来へ先送りしないよう、他の歳出の節約に努めるとともに、それでも不足する部分については、所得税・法人税を中心に財源手当てを検討します。一方、より長期的な課題である高齢化等に伴い累増する社会保障支出の財源については、現在先進国で最低レベルの消費税率5%を2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げることにより、安定的に確保していくこととしています。その具体的方策について年度内の法案提出に向けて検討を進めていきます。健全な財政を取り戻さなければ、民間の信認は損なわれ、健全な経済成長は果たせません。

金融政策について、日本銀行は、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、中央銀行としての貢献を続けていく方針です。

世界経済の下振れと欧米の債務問題に端を発した最近の為替・株式等の金融市場の混乱は、復興に取り組む我が国を含め、世界全体に新たな課題をもたらしています。欧州における政府債務問題の拡大やそれに伴う金融システムの脆弱化への懸念は、世界的な金融不安の最大の原因であり、欧州諸国は結束し責任を持って対応していくべきです。IMFは欧州諸国の努力を促しつつ、適切な協力を行って行くことが重要です。また米国には、財政再建策及び雇用対策の着実な実施を期待します。

他方、新興国については、物価上昇や景気過熱が引き続き懸念される一方、先進国の経済状態や資本フローの変動からネガティブな影響を受けています。為替の切上げ容認や金融引締めによりインフレ抑制に努めてきましたが、難しい舵取りを迫られています。また、高止まりする失業率、特に若年雇用の創出は世界共通の深刻な課題となっています。

 

2.IMFへの期待

世界経済の不確実性が高まっている今、IMFがサーベイランスや金融面のセーフティ・ネットを提供し、国際協調に貢献することは重要です。IMFがその機能をより効果的に果たすためには、以下の点を重視して、更なる機能・正当性強化に努めるべきです。

【サーベイランス】

サーベイランスは危機予防や世界経済の安定的成長のために重要であり、今般の危機を踏まえて強化されてきましたが、この取組みを継続すべきです。各国毎のサーベイランスの充実のみならず、世界経済・金融に関する理解を深化させるための取組みが重要です。例えば、我が国の震災は、国際的サプライ・チェーンを通じた波及効果に関する理解が不十分であることを示しました。また、国際的な流動性に関する分析も緒に就いたばかりです。

サーベイランスは、政策課題に適時、適切に対応する必要があります。現在、新興国については、為替や物価の上昇が懸念される資本流入にどう対応するか、先進国についても、世界経済への影響に配意しつつ持続可能な成長につながる政策をどう構築するか、適切な助言が必要とされています。

【GFSN(Global Financial Safety Nets)】

危機予防・対処能力の向上のため、融資制度を更に強化すべきです。貿易・金融のつながりを通じて危機が伝播することを防ぐ仕組みを構築する必要があります。具体的には、システミック危機において、政策運営が良好な国に対して十分な短期流動性を迅速に供給できる制度を創設することを提案します。また、こうした制度は一時的に多額の資金を必要とする可能性があるため、既存の資金源を補完するものとして、@2009年に危機対応の一環として配分された2,500億ドル相当のSDRのうち未使用分、A2010年増資発効時に予定されているNAB(New Arrangements to Borrow)縮減分を活用することが考えられます。現下の不安定な国際金融情勢に鑑みれば、このような融資制度の強化を早急に実現する必要があります。

IMF融資制度の改善と並び、地域金融協力の強化やそれとIMFとの連携は、GFSN強化の重要な要素です。日本はインドネシアと共に、本年のASEAN+3の共同議長国としてチェンマイ・イニシアティブ(CMIM: Chiang Mai Initiative Multilateralization)の強化に取り組んでおり、本年5月のASEAN+3財務大臣会議ではCMIMの有効性向上のための実務ガイドラインを承認しました。これは、IMFプログラムがある場合のCMIMの発動手続きを含み、CMIM契約の迅速かつ円滑な発動に資するものです。また、危機予防機能の研究開始にも合意し、7月に東京でセミナーを行うなど、検討を進めています。さらに、ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO: ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)を本年設立するなど、ASEAN+3ではサーベイランスの強化も進めています。AMROとの連携は、両者のサーベイランスの質・実効性の向上に資することが期待されます。

CMIMや欧州金融安定ファシリティーといった地域金融取極とIMFの連携については、地域それぞれの実情に即し、また各々の地域金融取極のオーナーシップの下で進めていくことが重要です。

【協定改正】

こうしたサーベイランスや融資制度の強化等、危機予防・対処能力を高めるための取組みと並行し、国際的な金融の安定をIMFの協定上の目的に追加することを検討すべきです。IMFは、各国間の資本フローが拡大し、金融の安定性が世界経済の安定的成長にとっての重要性を増している現実により一層適応する必要があります。協定改正は、金融の安定に関するIMFのこれまでの活動や今後の機能強化に一層の正当性を与えるものです。

【スタッフの多様性】

また、IMFは加盟国からの信頼を高める努力も継続的に行うべきです。各国の発言力・出資シェアを経済力に見合ったものとするための改革は進んでいますが、スタッフの構成については大きな改善の余地があります。出身地域、学業・職業の経歴等におけるスタッフの多様性は、IMFの正当性、有効性、信頼性を高めるものです。

 

3.IMFに対する貢献

我が国は第二の出資国として、資金面での必要な貢献に引き続き努める所存です。我が国は昨年合意した追加出資にも加盟国中最初に同意通告を行いました。この機会に、増資・協定改正に係る手続きを済ませていない国に対し、その加速を求めます。また、我が国は危機後に真っ先にIMFに対する資金貢献を表明して加盟国中最大の1,000億ドル相当の融資枠を設け、新しいNABへも18%程度の貢献を行っています。

さらに、低所得国向け融資について、日本はこれまで加盟国中最大の貢献を行ってきました。2010年9月に融資原資への追加貢献としてIMFとの間で総額18億SDRの債券購入取極を締結したことに加え、利子補給金についても、2014年までに2,880万SDRの追加貢献を行う所存です。

最後に、我が国は人材面においても、資金面と同等の貢献をしたいと考えています。上述の通り、スタッフの多様性を高めることはIMFにとって重要であり、そのための具体的な取組みを求めます。

(以上)