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第23回IMFC 日本国ステートメント(平成23年4月16日)

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1.震災に対する国際支援への謝意及び復興への決意表明

死者・行方不明者は計2万8千人程度にも上り、14万人程度が未だ避難生活を余儀なくされています。また、住宅、社会インフラ、民間企業設備等のストックの毀損については、様々な仮定が必要ですが、内閣府はGDP比3〜5%程度と推計しています。このように直接の被害は甚大であり、我が国は、海外からの救援チーム・救援物資の助けも借りて、復旧を急いでいるところです。日本社会は秩序と結束を保っています。インフラ面でも、幹線道路である東北自動車道は全線が通行可能となっており、空港・港湾も多くが使用を再開しています。東北新幹線も復旧を終えた区間から順次運転を再開しているところです。
震災の直接的な被害状況は明らかになりつつありますが、不確実性も残っています。第一に、福島の原子力発電所が津波で被害を受け、その原子炉を冷却し安定させる必要があります。我が国は危機の防止・早期解決に総力をあげており、海外からも人材面・技術面で協力を頂いています。原発の問題は、我が国のみならず、世界のエネルギー政策、環境政策にも影響を与え得るものであり、我が国にはこの経験を正確に国際社会と共有する責務があります。引き続き透明性をもって迅速・正確な情報提供に努める所存ですので、各国には、科学的事実に基づいた冷静な対応をお願いします。第二に、電力供給力の減少が企業の生産・投資活動に与える影響が懸念されます。その影響を最小化するよう、政府・家計・企業が協力して電力の需給を改善する取組みを行っているところです。
我が国は一致団結し、この困難を克服して必ず復興を遂げ、地震前よりも強い国になる決意です。国際社会の支援を引き続きお願いします。

 

2.震災の日本・世界経済への影響、震災への対応

(1)震災の日本経済への影響、震災への対応

我が国の金融システムは全体として健全性を維持しており、金融市場も落ち着きを取り戻しています。震災後、日経平均株価は最大約20%下落したものの、4月15日時点で約13%取り戻しています。長期金利も安定しており、金融機関にも混乱は見られません。為替相場では一時円高が急速に進みましたが、G7による協調介入は為替相場の過度の変動や無秩序な動きを抑制する効果をあげており、国際社会が連帯して市場の安定に向けて協調することの意義は極めて大きいと考えます。
実体経済は生産設備の被害等により一時的に弱含むでしょうが、復興ニーズに基づく投資の増加も見込まれることから、復興に向けた動きが本格化するにつれて、経済も回復に転じるものと予想されます。こうした動きは1995年に起きた阪神・淡路大震災の時にも見られ、IMFも同様の見方をしています。ただし、原子力発電所の問題や電力供給の制約による影響に留意が必要です。
我が国は、震災直後から予備費も活用して被災者・地域の支援に全力で取り組んでいます。日本銀行も金融緩和や流動性供給を迅速に実施してきました。こうした努力を継続しつつ、現在は復興に向けた準備に取り掛かっています。復興については、従来に戻すという復旧を超えて、素晴らしい東北を、素晴らしい日本をつくるための計画を進めていきます。こうした取組みは恒常的な歳出増要因ではないものの、必要額は小さくないと見込まれますが、中期的な財政健全化が我が国にとっての最重要課題であることに変わりありません。

(2)世界経済との関わり

今般の震災は、貿易を通じた需要面の影響に加え、我が国がサプライ・チェーンに深く統合され高付加価値部分を担っていることからくる供給面の影響を含め、長期化すれば世界経済・雇用にも一定の影響を与え得ると考えられます。被災地域における生産設備の早期復旧や国内での代替生産など、企業による懸命な努力が続けられており、政府としても最大限の努力を行う覚悟です。
このような我が国の状況が世界経済に不確実性をもたらしている中で、IMFが適時・適切に分析を行い、その結果を加盟国と共有することは重要です。また、世界経済が「強固で持続可能かつ均衡ある成長」の実現に向けて協調していくことが一層重要であり、我が国としても国際社会に対する貢献を引き続き行っていく事は言うまでもありません。

 

3.IMFへの期待:危機対応能力の強化

こうした観点から、我が国は、IBRD、IFC及びIDAの増資とともに、IMFの2010年増資に応じるための法案を国会で審議し、3月31日にその成立を得た上でIMFに同意通告を行いました。加盟国中最初の同意通告と認識しています。また、増資が発効するまでの間、新NAB(New Arrangements to Borrow)の主要貢献国として、また、IMFとの間の最大1,000億ドル相当の融資契約の維持を通じ、IMFの資金基盤の拡充・確保を全面的に支援していく所存です。先般実施されたNABの早期全額発動も我が国は強く支持しました。我が国は、今後とも世界経済・金融の安定に貢献する強い意思を有しており、IMFが一層の役割を果たすことを期待しています。

(1)GFSN(Global Financial Safety Nets)の強化

今般の震災の教訓の一つは、危機への備えの重要性です。これは世界経済・金融システムについても当てはまることであり、昨年に引き続き、GFSNの強化に取り組む必要があります。
昨年強化されたFCL(Flexible Credit Line)及び創設されたPCL(Precautionary Credit Line)は、健全に政策を運営している国ですら個別には対応できない外生的ショックに備えるための融資制度であり、国際社会の危機対応能力を強化する大きな前進でした。しかしながら、2008年のようなシステミック危機への対応においては、危機の拡大を防止するため、迅速に十分な資金を供給する必要があります。この観点から、昨夏IMFから提案があったSLL(Short-term Liquidity Line)の様な短期の流動性を供給するメカニズムの創設は重要であり、次回IMFC会合を目途に結論を出すべきだと考えます。
また、IMFと地域金融協力の連携強化も重要な課題です。アジア地域では、1997・98年のアジア通貨危機の教訓を踏まえ、域内の短期流動性問題への対応及び既存の国際的枠組みの補完を目的としてチェンマイ・イニシアティブが進められてきましたが、必ずしも2008年の危機後の環境変化に対応したものとはなっていません。我が国は本年のASEAN+3の共同議長国として、アジアの地域金融枠組みとIMFとの連携強化やその危機予防能力の向上等について議論を進め、国際通貨システムの改善に貢献して行きたいと考えています。

(2)サーベイランスの強化

天災と異なり、金融危機は発生確率を引き下げることが可能です。そのためには、サーベイランス強化の取組みを継続することが重要だと考えます。本年はサーベイランスの見直しが予定されており、また、スピルオーバー・レポートという新たな取組みが始まりました。我が国も、スピルオーバー・レポートの対象である5つのシステミック国・地域の一つとして、こうした取組みに積極的に貢献する所存です。
強化されたサーベイランスにより、今後、国際的な貿易・金融面でのつながりやそれを通じた政策効果・ショックの波及に関し、分析が深められることを期待します。こうした取組みを通じ、国際協調を強化することが、世界全体の成長を高めるのみならず、その危機予防・対処能力を高めることにもなり、国際通貨システムの強化につながるものと考えます。

(3)IMFの正当性、信頼性、有効性の向上

今が協定改正を議論する好機であることも改めて強調しておきたいと思います。IMF協定の目的規定は、世界経済・金融がIMF創設以来大きく変貌したものの、一度も変更されていません。金融セクターに端を発して世界全体に影響した今般の危機が金融の安定の重要性を示し、国際的な資本フローの規模・変動が政策課題となっている今が、国際的な金融の安定を協定上の目的に追加し、サーベイランスに関係する規定の見直しや資本フローの分野でIMFに明確なマンデートを与えることを検討する絶好の機会と言えます。これにより、IMFの現在の活動や今後の機能強化に一層の正当性が与えられると考えます。こうした協定改正の取組みは時間を必要とするものであり、作業を進めている間にも可能な限りの改革を進めるべきことは言うまでもありませんが、今こそ、長期的視野に立った検討を進めるべきではないでしょうか。
最後に、IMFが世界経済・金融の安定により効果的に貢献するためには、スタッフの多様性の向上が必要であり、そのための具体的な取組みを求めたいと思います。また、加盟各国は、早期の増資発効に向け、手続きを加速すべきです。

(以上)