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第18回IMFC 日本国ステートメント(平成20年10月11日)

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第18回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2008年10月11日(土))

 

1.世界経済及び国際金融市場

昨年8月に勃発した金融危機は、現在、その深刻さの度合いを一段と増しています。住宅価格の一層の下落や貸し出し条件の厳格化は各国に広まり、信用の質に対する懸念が特に米国や欧州において拡大しています。資産圧縮の取り組みが資産価格の押し下げ圧力となる中で、金融機関は、損失処理に必要な資本を調達するに際し、より大きな困難に直面しています。

最近の米国金融業界の情勢は、市場参加者の心理を大いに悪化させる結果となりました。米国当局によって採られた断固たる措置が、国際金融システムの崩壊を防いできたものの、依然として行く手には大きな不確実性があります。我々は、国際金融問題に対処する責任を負う政策立案者として、“危機”という言葉を使うことには最大限の注意が必要ですが、現下の世界経済情勢を“金融危機”と表現することに異を唱えることは困難です。

この一年の一次産品価格の非常に大きな変動は、この金融の混乱と無縁ではないと言えます。原油価格は、直近の数週間において下落傾向に転じるまで、2006年12月から2008年 7月中旬の間に2倍以上に高騰し、同期間中、食糧価格は50%以上上昇しました。

一次産品価格は最近落ち着きをみせているものの、基調的なインフレは昂進しており、この傾向は特に新興国経済や途上国経済において顕著です。一部の新興国における政策金利の引き締めは後手に回った感があります。世界全体で低成長が見込まれる中、外生ショックによるインフレ圧力に対する政策対応は非常に難しいものとなるでしょう。

こうした背景の下、世界経済は著しく減速すると見込まれます。本年中は、先進国経済が非常に低い成長率となるのみならず、新興国経済や途上国経済も低調が続くと予想されます。それゆえ、我々は“世界的景気後退”に備えるべきでしょう。我々はまた、現下の金融の混乱に起因する世界的な信用収縮が、新興国経済への民間資金の流入が大きく減少するリスクを増大させるおそれがあることを心に留める必要があります。

私が今示した状況を勘案すると、個々の国々の政策対応とともに、国際金融システム全体の回復力を詳細に検証することが、今まさに求められていると考えます。

我が国は、我が国自身の経済成長の確保に努めることにより世界経済の安定に貢献できると考えます。8月29日、政府は一次産品価格の世界的な急騰に対処するための一連の施策を発表し、これらの施策を執行するための補正予算が、先日衆議院で可決されました。金融政策は緩和スタンスが続きます。国際金融市場における緊張の高まりを受け、日本銀行は、他国の中央銀行と協調して米国ドルの流動性を供給する措置を採り、他の主要国中央銀行による金利引き下げを支持しました。日本銀行は、上ぶれリスクや下ぶれリスクとともに予測の正確性を子細に検証しつつ、経済活動や物価の見通しを注意深く判断し、柔軟に政策を実行していきます。

国際金融市場の情勢は日本経済に極めて大きな影響があるため、我々は国際金融動向を注視し、国際金融システムの安定を維持すべく最大限の努力を払っていきます。

2.IMFへの期待

次に、IMFとその役割についての期待に関する問題です。金融危機と世界的景気後退に対する懸念の中、IMFが期待に適切に応えているか、最近よく問われています。こういった批判に対して、我々は、IMFの政策手段のみならず分析・助言能力が、国際社会からの強い要請にも拘わらず、後退しているのではないかと懸念しています。

私は、IMFがその期待される役割を果たすための方策を、いくつか提案したいと思います。

第一に、IMFは金融危機の影響を受けた先進国経済に対する知的貢献が可能です。IMFは、金融危機にどう対処するか、加盟国の専門知識を集積することができる立場にあります。したがって、IMFが加盟国の実際の経験を集めて整理し、現在金融危機に直面している国々に対して有効なアドバイスを提供することが重要です。また、IMFは、金融市場を分析する能力と資質を向上させるとともに、金融市場の分析とマクロ経済の分析とを一体化するべく継続している努力を加速させなければなりません。この意味において、IMFがFSFと密接に連携をとることが重要です。さらに、各国の潜在的なリスクについて適切な警告を発することができるように、IMFが早期警戒(early warning)に関する能力を向上させることが必要であると考えます。

第二に、国際的な金融危機へのIMFの関与を拡大する余地があります。まさに、国際的な金融危機の解決に取り組むこと、及びそのような危機に対処する加盟国を支援することこそが、国際機関としてのIMFの存在意義の核心です。規模の大きな金融機関を有する新興国や小国が、金融機関への資本注入や預金の保証といった措置を実行する場合、これらの国々は、財源を確保するに当たって困難に直面することが多いと思われます。IMFは、このような場合に資金支援を行う責任を負うべきであり、また、いかにして、その責任を全うするか真剣に検討すべきです。そのような姿勢が、拡散する金融の緊張に立ち向かうIMFの断固たる決意を市場に示し、そして、信認の回復に顕著な効果をもたらすために必要です。仮に、IMFが追加的な資金を必要とするのであれば、我が国はその資金を補完する用意があります。

第三に、IMFは新興国経済や途上国経済による民間資金へのアクセスの減少に備える必要があります。世界的な信用収縮の結果として国際的な仲介機能が麻痺する中、新興国経済や途上国経済への民間資金流入の減少が一部の国々に国際収支上の困難をもたらす可能性があります。IMFは、その役割を如何にして効果的に果たしていくことができるかを精力的に検証し、これらの国々のための国際協調体制の在り方を検討していかなければなりません。

第四に、技術支援はIMFが他にない特性を有する分野です。中長期的な観点では、途上国のマクロ経済政策分野における能力の向上が経済の成長と安定に欠かせません。我が国としては、特定活動に係る日本管理勘定を通じたIMFの技術支援プログラムへの資金貢献を増やしてきており、今後も引き続きこの分野におけるIMFの業務の支援を拡大していく意向です。我々は、技術支援プログラムは目に見える成果があり、受益国とドナー国の双方に有益なものであることが不可欠であると考えます。そのため、ドナー国の納税者に対する説明責任を果たすことに特に注意を払った客観的な事後評価を行うことが極めて重要です。

第5に、対外的な広報は、全世界に対してIMFがメッセージを発する上で重要な役割を果たします。IMFが、世界的な経済及び金融の安定を促進する実効性を高めるために、タイムリーかつ適切なメッセージを発することが重要です。大胆なアドバイスは、経済的な困難に直面している国々に評価されます。我が国は、IMFの対外広報戦略における最近の改善を評価します。他方、市場への影響に配慮した、明確かつ客観的なメッセージを発信することは、引き続きIMFにとって優先度が高い分野であるべきです。

3.ソブリン・ウェルス・ファンド

我が国は、サンチアゴ原則(Santiago Principles)を策定したIWG(International Working Group)の各メンバーの努力を歓迎します。また、IMFが中立的なとりまとめ役として貢献したことを我が国は評価します。この原則は、投資受入国における投資の開放性に関する環境を保護するとともに、政府系ファンドが国際金融市場の一員となるための重要なマイルストーンとなります。主な投資受入国としての我が国は、今後も政府系ファンドとの継続的な対話に関与していくことを期待します。

次の段階は、この原則の着実な実施です。SWFの透明性向上を引き続き要請するとともに、原則の実施状況についてモニタリングを行う仕組みを構築することを提案します。

4.結び

世界経済は急激な変化に直面しています。一国における金融市場の動向は、たちまち他国の金融市場に伝播します。加えて、金融市場に影響を及ぼす要因が、いわゆる“負の連鎖”を通じて実体経済に影響を及ぼす、との傾向が強まっているところです。このような状況では、世界全体の経済システムの健全性について注意を払わずして、一国が繁栄を持続させることは不可能であります。今日、IMFは抜本的に改革される必要がある、との意見や、現下の新たな環境に対処すべく一層大きな役割を果たすべき、との意見を多く耳にします。一方、こうした意見は、未来に向けたIMFへの強い期待の表れとも解釈されます。我が国は、IMFがその人的資源を十分に活用した上で、この強い期待に応えていくことを望んでいます。

(以上)