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第11回IMFC 日本国ステートメント(平成17年4月16日)

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第11回IMF国際通貨金融委員会における日本国ステートメント
(2005年4月16日(土))

 
1. 世界経済と金融市場−見通し、リスク及び政策対応
  
世界経済
 
 世界経済が、2004年後半にかけてやや減速はしたものの、良好な金融環境にも支えられ、引き続き拡大基調を辿っていることを歓迎します。各国によるそれぞれの政策努力を通じて、今後も持続可能なペースで世界経済が成長していくことを期待します。
 
 先行きについては、原油価格の高止まりや更なる上昇、金融市場の急激な逼迫、依然滞留する地政学的リスクが主たるリスク要因ですが、とりわけ油種格差の縮小を伴った原油価格の最近の上昇は生産に大きな負荷を与えるとともに、国際収支上の困難をもたらす懸念が強く、今後とも注視していくことが必要です。当面、世界的不均衡、特に米国の経常収支赤字の持続可能性が世界経済にとって大きなリスクとなることはないと考えますが、この赤字の更なる拡大が世界経済にとって長期的な不確実性要因たりうることは否定できません。こうした中で、米国における財政健全化、欧州及び日本における構造改革の継続等、各国がそれぞれの役割を果たし、持続可能な成長の達成を目指していく必要があると考えます。
 
 貿易・金融といったチャンネルを通じてグローバル化が進展し、各国経済の連関が深化する中、各国の経済動向が周辺地域経済や世界経済全体に与える影響が増大しつつあります。このような中、現在の改革の好機を逃すことなく、脆弱性の解消に向けた政策努力を強化し健全な経済運営に邁進することは、自国のみならず地域や世界において持続可能な経済成長を達成するに当たり各国に課された責務であると考えます。
 
 新興市場国及び途上国経済が、その世界経済に占める割合がますます増大する中、2004年に力強い経済成長を達成したことを歓迎します。このような中、先般の地震及び津波による被害を受けた諸国を含むアジア地域において、引き続き、他の地域よりも高い成長率が期待されることを、同じアジアの一員として心強く思います。また、サハラ以南のアフリカにおいても、健全な経済運営により、2004年にここ数年来で最も高い成長を遂げたことを祝福します。
 
 ただし、特に新興市場国においては、潤沢な流動性や歴史的な低金利といった良好な金融環境が今後引き締められることとなった場合、資金フローの急激な反転やスプレッドの拡大が生じることも考えられることから、中期的観点から適切な政策運営を行い、構造改革を更に進めることを通じ、市場の信認を高めていくことを期待します。
 
 先般、アルゼンチンが2001年末以降元利払いを停止していた債務に関し債券交換の募集を実施しましたが、それに至る過程で同国がとった方法は、今後の国家債務再編における悪しき前例ともなりかねないものであり、多くの問題を投げかけるものであると考えております。アルゼンチンは国際金融の場でより節度ある対応をすべきであり、IMFとの真摯な議論を要請します。また、IMFにおいても、国際金融システムの規律を維持し、国家債務の秩序ある再編を促す観点から、どのように対応していくべきかを引き続きしっかりと議論することが必要です。
 
日本経済
 
 日本経済は、財政出動に頼ることなく、引き続き、国内民間需要を中心とした回復局面にあります。実質GDP成長率は、2003年度後半の高い成長の反動や世界的なIT関連財の調整等の影響もあり2004年央に足踏みしたものの、最近に入って再びプラスに転じています。企業収益や設備投資の増加といった企業部門における改善が雇用所得の増加を通じて家計部門に波及する動きが見られていることを心強く思っております。
 
 この回復の持続には、政府、民間双方における構造改革の取組が大きく貢献していると考えております。とりわけ、バブル崩壊後の負の遺産の整理に目途がつきつつあります。金融部門において主要行の不良債権比率が順調に低下する中、政府は、従来の不良債権問題への緊急対応から脱却し、多様な金融商品やサービスを国民が身近に利用できる「金融サービス立国」の構築という前向きな施策に重点を移し始めています。また、企業部門においても、成長の制約要因と言われてきた雇用、債務、設備の過剰が解消されつつあります。バランスシート調整等を通じて我が国経済の下押し圧力として働いてきた地価下落もその下落幅が縮小してきており、株価も堅調に推移しています。
 
 日本政府は、こうした回復の動きを持続的な経済成長につなげていかねばならないと考えており、従来精力的に取り組んできた構造改革を加速・拡大していく所存です。なお、デフレは緩やかながらも依然として継続しており、その脱却を確実なものとするため、政府は日本銀行と一体となって、政策努力を強化していく所存です。
 
 金融政策につきましては、日本銀行が、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」というコミットメントの下で潤沢な資金供給を続けております。日本銀行は、引き続き現在の金融緩和政策を堅持し、民間経済活動を金融面から支援していく方針です。
 
 我が国の財政事情は、政府債務残高の対GDP比が主要先進国中最も高い水準にあるなど大変厳しい状況にあり、政府は、財政構造改革を最優先の政策課題として認識しております。2010年代初頭における国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化の達成に向けて、持続可能な社会保障制度の構築、税制改革、国・地方の歳出全般の徹底的な見直しなど、歳出・歳入両面においてバランスのとれた財政構造改革を今後とも着実に進めていきます。
 
2. IMFの戦略的方向性
 
 昨年9月以降、IMF理事会においてIMFの戦略的方向性に関する議論が深まっていることを歓迎します。今回のIMFC会合への専務理事報告においてこれまでの論点が整理されていますが、年次総会の際には、我々が誇りに思えるような、IMFの確固とした中長期ビジョンが提示されるよう、スタッフ、マネジメント、理事会による更なる精力的な議論を期待します。その際、加盟国がIMFに何を求めているかということを十分に踏まえた上で、IMFの中期戦略を練り上げる努力が行われることを希望します。中期戦略は決して供給主導の、あるいは自己奉仕的なものであってはならないと考えます。
 
 IMFは、国内及び国際的通貨・金融の安定の促進を目的とする協力的な金融機関です。したがって、その根本的役割が、サーベイランス、政策助言等により通貨・金融危機を未然に防止するとともに、万が一加盟国が危機に陥った場合には必要な資金を供与し、また、そういった事態に備え資金を供与できるようにしておくことにより国際通貨・金融システムに対する信認を確保することにある、ということを忘れるべきではないと考えます。
 
 IMFがそうした信認を提供することができないと判断されれば、加盟国は他に「保険」を求め、IMFは加盟国にとって存在の意味のない機関となってしまうおそれがあります。例えば、現在、東アジア諸国においては、通貨危機に二度と巻き込まれないように、危機に対するいわば「自己保険」として外貨準備を積み上げるとともに、「マルチの保険」であるIMFの役割を補完する取組として、「地域的な保険」である「チェンマイ・イニシアティブ」を推進していますが、こうした動きが、アジア通貨危機時におけるIMFの対応、すなわち「マルチの保険」を通じた資金及び信認が十分にかつ適切迅速な形で供与されなかったという認識を契機としていることに留意すべきです。
 
 こうした経緯にかんがみ、IMFが東アジアにおける存在の意味を失うことを懸念します。IMFが効果的にその機能を果たすためには、加盟国にとって意味のある機関であり続けるべく努力を払うとともに、そのような機関であると加盟国に認識してもらう努力をすることが不可欠です。アジア諸国は世界経済においてますます重要性を増しており、国際通貨・金融の安定のための国際協力メカニズムをより良いものにするには、アジア諸国の支持が不可欠です。したがって、IMFは、現在のIMFに対するアジア諸国の不満や懸念に耳を傾け、それを理解し、その解消に向け真剣に取り組むべきであると考えます。IMFがアジアの意見を踏まえた方向性を打ち出さない限り、IMFはアジアで、ひいては全世界的にその存在の意味を失うことになりかねません。
 
 アジアの懸念は、主に2つです。
 
 第1の懸念は、世界経済においてますます相対的重要性を増しているアジア諸国が、IMFの中でそれにふさわしいシェアを占めているのかという問題です。
 
 投票権の基礎となるクォータの配分は、各加盟国経済の実勢や相対的地位を適切に反映することが必要です。また、理事会メンバーの地域的配分や、スタッフ職員の構成における多様性の確保も重要です。しかしながら、これらの面でアジア諸国は著しく過小代表となっており、このような事態をこれ以上放置することは、IMFのガバナンスの観点から大きな問題であると考えます。これらはIMFという組織の根幹に関わる問題であり、出資国に対する説明責任という観点からも重要です。合意形成に時間と労力がかかることは認識いたしますが、真剣かつ精力的に議論を行い、結論を出すべきです。
 
 現在のクォータ配分は、このガバナンスの観点に加え、加盟国の経済規模や国際収支上の資金需要等の現状を反映するという観点からも不適切です。クォータは、各国がIMF資金にアクセスする場合においてその通常の上限を定めるものでもありますが、現在のクォータ配分を前提とする限り、クォータ比のみを基準にアクセスの相対的多寡を判断するのは不公正であると考えます。この観点からも、クォータ配分の見直しは喫緊の課題であり、早急な対応が必要です。
 
 第2に、アジア各国は引き続き目覚しい発展を続けるものと見込まれていますが、いざという場合への備えも確保しておく必要があります。その面でのIMFに対する期待は大きなものである一方、IMFにおいて資本収支危機の予防・管理・解決に関する取組が十分なされているかという点で懸念があります。
 
 危機予防の観点からは、まずは各国における政策や制度の強化に向けた努力が重要であるものの、IMFは、これを促すに当たってサーベイランスの面で重要な役割を果たしています。しかし、それに加えて、万が一資本収支危機が発生した場合に備え、IMFが十分な資金支援を適切かつ迅速に実施できるよう、現行制度に対する不断の見直しが必要です。
 
 こうした観点から、予防的アレンジメントに関し改善の余地があるかについて引き続き議論することが不可欠であると考えます。予防的アレンジメントは、これまで多くの加盟国によって利用されてきていますが、健全な政策運営を行う加盟国が国際的な資本フローの急激な変化や伝播によって資本収支危機に晒される可能性にも的確に対応できるような効果的な予防的枠組みとすることが現実的であると考えております。また、現行の例外的アクセスの枠組みの下では現実に危機が生じてしまった後の対応においてしか認められていない例外的アクセスを、予防的アレンジメントにおいても認められるよう明確にすべきであると考えます。例えば、資本収支危機が生じた場合のファイナンシングは大規模なものとなるため、仮に危機が起きた際には相当規模の資金を供与する用意があることを示すことによって市場の信認を維持することは、資本収支危機を予防する観点からも必要です。
 
 なお、この関連では、IMFが期待されている役割を十分に果たしていくためには、IMFに十分な資金が備わっており、そのことによりIMFに対する信認に揺るぎがないことが不可欠です。世界経済や金融市場の変化は急激かつ予測困難であることから、いつIMFへの資金需要が増加する事態となっても迅速に対応できるよう、クォータ総額の妥当性に関する検討も継続していく必要があります。
 
3. 低所得国に対するIMFの支援
 
  IMFの戦略的方向性の文脈でも議論されているように、低所得国支援におけるIMFの役割を考えるに当たっては、加盟国がIMFに何を期待しているのかということを踏まえた上で、IMFがどのような分野に強みを持つのかという観点から検討することが重要です。
 
 IMFは、サーベイランス、技術支援、資金支援の各ツールを効果的に活用して、低所得国によるミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた貧困削減及び成長促進の努力を側面から支援すべきです。同時に、IMFによる支援は、その専門分野であるマクロ経済フレームワークや財政金融部門の制度構築に重点化していく必要があります。
 
 低所得国への資金支援をグローバルに進めていく上では、ローンとグラントとを適切に組み合わせていく必要がありますが、IMFにあっては、貧困削減・成長ファシリティ(PRGF)を効果的に使って低所得国の改革努力を最大限に支援していくことがその与えられた責務です。この観点から、我が国は、PRGFの貸付能力を強化するとともに、その譲許性を高めることにより、PRGFをより魅力ある融資制度としていく旨の提案を行っています。
 
 一方、IMFは開発金融機関ではなく、したがって、IMFの低所得国に対する支援においては、資金支援にとどまらず、サーベイランス及び技術支援を通じた政策助言が引き続き重要な役割を果たします。この点、低所得国向け政策モニタリング・アレンジメント(PMA)は、国際収支上の資金需要を持たずIMFによる資金支援を求めない低所得国や、これら諸国を支援するドナーのニーズにIMFが対応する手段の一つとして検討に値するものと考えます。今後、IMFにおいて低所得国向けPMAの仕組みの詳細について具体的な検討が進められることを期待します。
 
 国際金融機関が更なる債務救済措置を講ずる場合には、一律の債務削減ではなく、債務持続性分析の枠組みを基本としつつ、特に、民間セクター育成支援及びクレジット・カルチャーの醸成による持続的発展の観点から、債務国の制度政策環境に応じてケース・バイ・ケースで行うことが必要です。この観点から、我が国は、基本はこれまでのルール通り、債務が持続的な水準となるまで削減しつつ、制度政策環境が良好な国に対しては少し多めに削減して、借入余力を作り、今後ローンを活用できるようにすることを提案しています。一律100%の債務削減は、債務持続性確保に必要な量を大きく超えて債務を削減することになり、債務国のモラル・ハザードを招くという問題があり、反対です。
 
 最後に、昨年末のスマトラ島沖地震及び津波による被害に見舞われた犠牲者の方々に改めて心から御冥福を祈り、御見舞いを申し上げます。我が国は、自然災害向け緊急支援に係る融資を受ける低所得国の金利負担を緩和するために本年1月に設立された利子補給金勘定に対して、先般、250万ドルの貢献を行うことを決定したところです。このような支援を含め、IMFが金融機関としての特性を発揮し、かつ、その専門分野を十分踏まえた上で、低所得国自らの努力を支援する活動を行っていくことを、我が国は今後とも積極的に支援していく所存です。