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第10回IMFC 日本国ステートメント(平成16年10月2日)

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第10回IMF国際通貨金融委員会における日本国ステートメント
(2004年10月2日(土))

 
1. 世界経済と金融市場−見通し、リスク及び政策対応
  
 世界経済 
 
 グローバル化の進展する中で各国経済が相互の連関を増しつつ、世界経済が予想を上回るペースと力強さで回復を続けていることを歓迎します。
 
 また、この世界経済の回復は、これまでの米国や中国をはじめとするアジア経済の牽引によるものから、ラテン・アメリカ、中東、アフリカ等ほぼ世界全域にその裾野を広げており、更に欧州の経済成長率の上昇も見込まれるなど、こうした傾向が今後も続くことが期待されています。
 
 一方で、先行きに関しては、底流する地政学的リスクに加え、原油価格の上昇やインフレ圧力、金利上昇のペースを巡る不確実性がリスク要因として指摘でき、これらの動向やその影響を引き続き注視していくことが重要です。こうした中で、各国にとって大切なことは、現在の好環境を活かし、構造改革の推進をはじめ、残存する脆弱性の克服に向けた努力を強い決意の下継続し、持続的な成長の達成を目指していくことであると考えます。
 
 先進国においては、人口がますます高齢化していく中で中期的な財政健全化や社会保障改革、経済の柔軟性を高めるための構造改革の推進が大きな課題です。また、新興市場国においては、財政面をはじめとする構造改革や金融資本市場の整備を引き続き推進することを通じて、ショックに対する経済の耐性を向上させ、市場の信認を高めていくことが重要です。なお、現在債務再編手続を進めているアルゼンチンについては、同国当局が債権者との誠意ある交渉を行った上で合意に達し、国際市場の信認を回復していくことを期待します。
 
 アジア経済 
 
 アジアにおいては、貿易や投資の動きが極めて活発なものとなっており、2004年の経済成長率も世界平均を上回る7.6%と見込まれています。1990年代後半の危機からアジア諸国が立ち直り、世界経済のなかでますます重要な位置を占めるようになっていることを祝福したいと思います。ただし、活発な資金流入の下でアジアの景気の過熱を懸念する声もあり、その動向については、世界経済に与える影響力が増加しているだけに一層注意深く見守っていく必要があると考えます。適切に段階付けられた資本移動の自由化や一層柔軟な外国為替制度への移行は、長期的に安定的な経済成長に資するものと考えます。
 
 また、アジアにおいては、従来から貿易面を中心とした連携が進められてきており、他の地域と同様に、自由貿易協定(FTA)の締結に向けた動きが活発化しております。同時に、近年では、域内での政策対話の実施、必要な際に相互に短期流動性を供給することを目的としたネットワークの構築、効率的で流動性の高い債券市場の育成といったように通貨・金融面での協力も推進しているところです。こうした一連の動きは、国際的な貿易・通貨・金融制度を補完するための開かれた地域協力であり、我が国としても積極的に貢献しているところであります。
 
 日本経済 
 
 日本政府は、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、規制、歳出、税制の改革に全力で取り組んできており、こうした改革の成果が現れつつあります。企業収益の改善を通して設備投資の増加がもたらされるとともに、その効果が雇用や個人消費など家計部門にも拡大し、景気回復が堅調なものとなっております。私は、このような国内民間需要主導の回復が今後とも続くものと見込んでいます。
 
 日本政府としては、こうした回復の動きを改革の好機と捉え、持続的な経済成長につなげていかねばならないと考えています。そのためには、主要行の不良債権問題の早期終結、社会保障制度の一体的見直し、中央・地方を含めた行財政改革、郵政事業の民営化などに引き続き精力的に取り組み、構造改革を加速・推進していく所存です。
 
 財政政策については、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指し財政構造改革を推進しています。その際、高齢化の進展に伴う歳出増等が見込まれる中、歳出・歳入両面からバランスのとれた財政構造改革を実現していく必要があると考えております。
 
 金融政策につきましては、日本銀行が、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」というコミットメントの下で潤沢な資金供給を続けております。こうした思い切った金融緩和政策は、景気が回復を続ける下で、民間の投資や支出を刺激する力をより強めています。日本銀行は、引き続き現在の金融緩和政策を堅持し、民間経済活動を金融面から支援していく方針です。
 
 従来からの懸案事項であるデフレ圧力は緩和してきておりますが、それへの取組は依然として重要な政策課題であると考えております。「重点強化期間」とされる2005、2006年度におけるデフレからの脱却を確実なものとするため、政府は日本銀行と一体となって、政策努力を更に強化していく所存です。
 
2. IMFサーベイランスと危機の予防・解決
 
  国際金融システムの安定と危機の予防のためには、対外的な脆弱性を減少させるための各国における政策や制度の強化に向けた努力がまず重要ですが、グローバル化に伴う各国経済間の連関の強まりや国際資本フローの増大にかんがみますと、IMFのサーベイランスが一層重要な役割を果たすことが期待されます。この観点から私は、IMFにおいて、債務持続可能性分析の精緻化、金融部門の分析の強化をはじめとする様々な取組が進展していることを歓迎しております。また、先般実施されたサーベイランスに関する隔年レビューにおいて、IMFが加盟国当局や市場関係者の意見に耳を傾けながら現在のサーベイランスの枠組みの実効性を率直に評価するとともに、サーベイランスの更なる強化のための方策について幅広い議論を行ったことを評価します。私は、総合的に見て、組織上の構造を含む現在のサーベイランスの枠組みは概ね有効なものであり、現段階においては、まず、現行の枠組みの下で、その強化に向けた取組を着実に実施していくことが重要であると考えております。
 
 IMFが最近討議を行った「政策モニタリング・アレンジメント」、あるいは「資金支援を伴わないプログラム」は、資金支援は不要である一方で、健全な政策の促進や政策の強度に関する外部へのシグナリングのためにIMFの密接な関与を必要とする加盟国がある場合、これら諸国のニーズに応える観点から検討に値する手法であると考えます。今後、IMFが、このような仕組みに対する需要が加盟国の間でどの程度存在するのか、このような仕組みに基づくIMFのシグナリングが他の債権者やドナーのニーズにかなうものとなるのかについて、十分な調査と検討を進めることを期待します。その際、既存の様々な制度との重複を避ける観点から、新たな仕組みの位置付けを明確にすることが重要であり、また、新たな仕組みの導入によって既存のアレンジメントに基づくIMF資金へのアクセスが阻害されることがあってはならないと考えます。
 
 その関連で私は、現在既に存在している予防的アレンジメントは、危機予防の観点から、健全な政策運営を行う加盟国が国際的な資本フローの急激な変化によって資本収支危機に晒される可能性に対応するための効果的かつ現実的な仕組みであると考えております。したがって、「政策モニタリング・アレンジメント」の導入の如何にかかわらず、IMFが同アレンジメントの改善を引き続き検討することを期待します。
 
 危機の解決に関しては、昨年来、それまで集団行動条項(CACs)に係る市場慣行のなかったニューヨーク市場においても、多くの債券発行国がCACsを導入するなど、CACsの普及が進んでいることを歓迎いたします。今後も他の債券発行国が、外債発行に際してCACsを導入することを期待します。「行動規範」(Code of Conduct)についても、今後、債務国、民間セクター等を含む幅広い関係者の参加による議論が更に進展し、合意がなされることを期待します。
 
 また、IMFのコンディショナリティ(融資条件)の合理化・焦点化を図るため、2002年にガイドラインが改訂されてから2年が経過いたしました。本年実施予定の隔年レビューにおいて、同ガイドラインが着実に実施されているか、IMF支援プログラムの効果の増進及び加盟国のオーナーシップの向上という目的に寄与しているかといった点について、検討することが重要です。
 
 IMFが危機の予防及び解決に当たって期待されている役割を十分に果たしていくためには、IMFに十分な資金が備わっており、そのことによりIMFに対する信認に揺るぎがないことが不可欠です。世界経済や金融市場の変化は急激かつ予測困難であることから、いつ一般増資が必要な事態となっても迅速に対応できるよう、クォータに関する検討を継続していく必要があります。また、クォータ配分は世界経済の実勢や各加盟国経済の相対的地位を反映することが必要であり、増資の検討に当たっては、この点に十分配慮すべきです。
 
3. 低所得国に対する支援の強化
 
  低所得国に対するIMFの支援は、基本的にはサーベイランスを通じた政策助言や技術支援により、マクロ経済フレームワークや財政金融部門の制度構築の分野に重点を置くべきであります。IMFが行う資金支援は、低所得国に対してであれ、国際収支上の困難に対処する加盟国への支援を目的とするものであり、長期の譲許性の高い開発資金の供与は、基本的には引き続き、国際開発金融機関(MDBs)などが中心となって担うべきものです。したがって、IMFが特に低所得国に対する資金支援を効率的、効果的に行うためには、これまで以上に世銀その他の国際機関と緊密な調整及び作業分担を行うことが重要となります。もっとも、低所得国がマクロ経済の安定化や強固な制度構築という面で自らの努力を継続することがまず重要であり、IMFの役割はこうした各国の努力を側面から支援するものである、ということを今一度確認したいと思います。
 
 この文脈で、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)プロセスは、ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて低所得国が自ら包括的な戦略を構築し、それに対してIMFが支援するための枠組みとして一定の機能を果たしていると評価できます。しかし、同プロセス導入後4年以上を経て、同プロセスが有している課題も明らかになってきています。特に、MDGsは、PRSPプロセスにおいて、各国の事情に合わせて更に現地化されることが必要と考えます。その上で、特にIMFは中期支出枠組み(MTEF)につき、より適切な助言を行うことが重要です。なお、IMFの低所得国に対する資金支援において中心的役割を果たす貧困削減成長ファシリティ(PRGF)については、同資金への利用を真に必要とする加盟国に対する貸付原資を十分確保した上で、同資金のより効率的な活用のために更に検討することが重要であると考えます。
 
  また、低所得国が債務問題に陥らないよう、その債務持続可能性を十分に分析し、その分析をIMF・世銀をはじめ各債権者による資金支援の在り方や債務国の借入戦略の適切な策定に活用していくことが重要であると考えます。このような観点から、IMFと世銀が共同で検討している債務持続可能性分析の評価の枠組みが実行可能なものとなるよう、具体的な制度政策環境の指標や基準値の水準についての早急な検討を要請し、我が国も積極的にこの検討に参加いたします。その際、MDBsの融資機関としての性格及び低所得国においてモラル・ハザードを招かないという観点から、グラントの拡大には慎重であるべきと考えます。
 
4. 資金洗浄・テロ資金対策
 
 2001年9月11日に米国で痛ましい事件が発生して3年が経過しましたが、いくつかの国で最近起きた事件にかんがみても、テロの脅威は依然として深刻であり、国際社会として引き続きテロ資金対策を推進していくことが重要です。
 
 テロ資金対策の推進のためには、各国における国際基準の着実な実施を図っていくことが重要です。このような観点から、我が国としても、今後とも被支援国のニーズを踏まえた技術支援を行っていきたいと考えております。