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| 1.世界経済見通し |
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| 世界経済は、明るい材料が増えてきており、そうした動きを踏まえ世界的に株価も回復傾向にあることは歓迎されます。いくつかの地域において、引き続き物価や資産価格下落等のリスクに注意する必要はありますが、各国政府による政策努力にも支えられ、世界経済は本年後半も引き続き徐々に回復するものと期待しております。 |
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| アジア経済は、SARSによる悪影響の低減や、世界経済の不確実性の後退もあり、引き続き力強い成長を続けるものと期待されます。アジア諸国が、中長期的に安定的な成長を持続させるためには、アジアにおいて債券市場を育成することにより、アジアにおける高い貯蓄率を経済発展に必要な長期の投資に結びつけることも重要であり、こうした観点から、本年8月のASEAN+3(日中韓)財務大臣会議において、関係国が協力して債券市場育成に努力して行くことが合意されました。 |
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| 新興市場国については、ブラジルを始めとする多くの国の適切な政策運営もあり、全体として、市場の信認が回復していることは歓迎すべきことでありますが、新興市場国において、財政面等の構造改革に取り組むことが、持続的な成長実現のために重要であります。 |
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| 昨日、アルゼンチンに対する新規のプログラムが承認されたことを歓迎します。しかしながら、アルゼンチンは数多くの構造問題を抱えており、IMFプログラムの下で大胆な改革を推進することが求められます。また、数多く存在する海外債権者に対して、全ての債権者の衡平を確保しつつ、誠実な交渉を迅速に進めていくことが求められます。 |
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| 日本経済は、株価の上昇、企業収益の改善など、明るい兆しが見え始めています。先般発表されました本年第2四半期の実質GDPは、堅調な民間消費や企業投資等に支えられ、年率3.9%増加し、6四半期連続のプラス成長となったところであります。今後、持続的な経済成長を実現するためにも、政府として引き続き規制、金融、税制及び歳出の構造改革を一体的かつ整合的に実行してまいります。 |
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| 歳出面では、厳しい財政状況の下、2004年度予算編成に当たっては、引き続き歳出抑制と予算配分の重点化・効率化を実施することとしております。また、中期的な財政運営については、民間需要主導の持続的成長の実現と財政収支改善努力を通じ、2010年代初頭のプライマリーバランスの黒字化を目指すこととしております。税制につきましても、持続的な経済社会の活性化を目指し、将来にわたり国民の安心を確保するという中期的な観点から、包括的かつ抜本的な改革に取り組んでまいります。 |
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| 金融セクターについては、昨年10月に公表した「金融再生プログラム」の下で、主要行の不良債権比率を2005年3月末までに半減させる等の目標を掲げ、2003年3月期の決算では、これに沿った縮減が図られております。また、金融機関の自己資本の質の向上のために厳格な措置を徹底し、同時に金融危機を未然に防止するため、健全性の基準を下回ることとなった金融機関に対しては大胆かつ迅速に公的資金を注入したところであります。産業の再生を実現するため、本年4月に設立された産業再生機構が、再生可能な企業に対する金融機関の債権の買取り等を行うこととなっており、先般、再生支援の対象企業が決定されたところです。 |
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| 日本銀行は、金融市場の安定及び早期のデフレ脱却のため、量的緩和政策の枠組みの下で、潤沢な資金供給を継続しているところであります。更に、本年7月からは、金融緩和の波及メカニズム(transmission mechanism)を強化するための取組みとして、資産担保証券(ABS)の買入れスキームをスタートさせております。日本銀行は、現在の緩和政策を消費者物価が安定的にゼロまたはそれ以上になるまで継続することを強くコミットしています。引き続き、政府、日本銀行が一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、強力かつ総合的な取組みを行う方針であります。 |
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| 2.国際金融システムの強化 |
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| 国際金融システムにつきましては、危機予防の努力にも拘わらず、近年もいくつかの国において金融危機が発生しており、危機の予防及び解決に関する対応の一層の充実が必要です。 |
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| 危機の予防のためには、各国が対外的な脆弱性を減少させるための健全な政策運営を着実に実施することが重要であるとともに、IMFのサーベイランスの強化も重要な課題です。IMFにおいて、債務維持可能性分析の精緻化、脆弱性評価の深化をはじめとする様々な取組みに進展が見られることを歓迎いたします。来年の隔年サーベイランスレビューに向けて、今後ともサーベイランス強化に向けての取組みがなされることを希望します。また、各国の金融セクターを総合的に評価する「金融セクター評価プログラム(FSAP)」も進められており、危機の予防の観点から、このような取組みにより多くの国が積極的に参加していくことを期待いたします。 |
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| 危機の予防のための融資制度であるIMFの「予防的クレジット・ライン(CCL)」は本年11月末に期限を迎えますが、各国による健全な政策運営を促進し、危機の伝播を防止するための枠組みは引き続き必要であり、11月末に向け理事会の場で代替策等今後の有効な対応策の検討が進むことを期待します。 |
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| 危機の解決に当たっては、当該国の政策調整、IMF等による公的支援、必要に応じた債務再編等の民間セクター関与(PSI)の適切な組合せにより、危機に陥った国の債務維持可能性を速やかに回復することが重要です。 |
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| PSIについては、メキシコに続き、ブラジル、南アフリカ、韓国等が集団行動条項(CACs)を導入したことを歓迎します。なお、ウルグアイが日本においてCACsを活用して円滑に債務交換を進めたことを歓迎します。今後も、他の国々による外債発行に際して、実効性のあるCACsの導入が進むことを期待します。 |
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| また、「行動規範」(Code of Conduct)については、法的拘束力がない一般原則であるため、債務国や民間債権者などの関係者の広い合意の取り付けと自主的遵守の確保が重要であると考えます。「行動規範」の実効性を確保するため、幅広い関係者が参加して、IMFの果たす役割についての検討を含め、今後更に議論が進むことを期待します。 |
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| さらに、危機の解決のための法制的アプローチについての議論において提起された、異なる債券間の意思決定手続の統合(aggregation)をはじめとする秩序ある危機の解決に関連する論点について、検討が継続されることを希望します。 |
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| IMFの出資額(クォータ)については、危機の解決のためにはIMFに必要十分な資金規模が備わっていることが重要であります。世界経済や金融市場の変化は急激かつ予測困難であることから、引き続き、いつ一般増資が必要な事態となっても迅速に対応できるよう、検討を継続していく必要があります。また、クォータ配分は世界経済の実勢や各加盟国の相対的経済地位を反映することが必要であり、クォータの検討に当たっては、この点にも十分配慮すべきであります。 |
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| 3.低所得国におけるIMFの中期的役割 |
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| IMFは、低所得国の経済発展と貧困削減という国際社会の目標を達成するために、十分な貢献を果たす必要があると考えます。そこで、IMFは堅実なマクロ政策の構築や脆弱性の原因分析等のIMF自身が専門性を有する分野で主導的役割を果たすことが重要と考えます。さらに、民間部門育成等の低所得国の成長実現に向けた分野でも、専門性を有する世界銀行等国際機関との間で効率的かつ効果的な協働を行い、貢献していくことが重要と考えます。 |
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| 4.テロ資金対策 |
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| テロの脅威は依然として深刻であり、国際社会としても引き続きテロ資金対策を推進していくことが重要です。このような観点から本年6月にFATFにおいて、資金洗浄・テロ資金対策に関する40の勧告の改訂が採択されたことを歓迎します。また、IMF・世銀が12ヶ月のパイロット・プログラムとして実施している、資金洗浄・テロ資金対策の加盟国における実施状況の評価作業の順調な進展を歓迎します。 |
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| なお、各国のテロ資金対策強化のために、これらの評価作業等に基づいて、必要な技術支援などを提供していくことも重要であり、我が国としても、今後とも被支援国のニーズを踏まえた貢献をしていきたいと考えております。 |
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| (以上) |