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1.経済見通し |
| | 世界経済に関しては、今後とも全体としては回復傾向が続くと期待されるものの、最近の世界的な株式相場の大幅下落、更には高止まりを続ける原油価格等不確実性が高まってきており、今後の世界経済の動向を引き続き注視していく必要があると思います。 さて、最近の世界的な株式相場の大幅下落は、企業会計を巡る一連の不祥事を契機として、投資家の市場に対する信頼が揺らいだことに起因しており、こうした市場環境は世界経済にとってのリスク要因となっております。市場の信頼を回復するためには、厳格な会計・監査制度やコーポレート・ガバナンスに向けた取組みが求められます。 こうした世界経済の不透明感の高まりの中で、とりわけ懸念材料になっているのが南米経済であります。その意味で先般、IMF及び世銀がウルグアイ、ブラジル等に対する支援を迅速に決定したことを歓迎、支持しておりますが、こうした支援が効果を発揮するためには、これらの南米諸国政府による今後の健全な政策運営が不可欠であり、そうした努力により市場の信頼が回復し、これらの国の経済が持続的成長軌道へ回復することを期待しております。 |
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| | 日本経済は、依然として厳しい状況にありますが、輸出の増加や生産の持ち直しから、景気には回復のきざしも見られて来ました。むろん、世界経済の先行き不透明感が我が国の最終需要を下押しする懸念は否定できませんが、構造改革を強力かつ迅速に遂行し、民間需要主導の持続的な経済成長につなげていきたいと考えています。 具体的には、産業競争力再生に向けた「経済活性化戦略」、経済社会の活力を引き出す「税制改革」および歳出効率を高め「負担に値する小さな政府」を目指す「歳出改革の加速」を三位一体で推進します。経済活性化戦略では、活力ある経済社会を目指し、規制緩和を積極的に推進すると同時に、公営企業の業務の民間への委託や民営化等により、民間の活動の範囲を拡大していく方針です。また、税制改革においては、経済社会の活性化に資する観点から、減税を先行させることとします。その際、財政規律の観点から多年度で税収中立とし、今後、この税制改革の具体化を進めてまいります。例えば、研究開発減税及び重点的な投資減税を行うとともに、次世代への資産移転の円滑化に資する観点から、相続税・贈与税の見直しを行うこととしております。更に、歳出改革の加速においては、公共投資の重点化・効率化、年金制度改革等持続可能な社会保障制度の構築など、あらゆる歳出について徹底した見直しを行うとともに、活力ある経済・社会に向け、「新重点4分野」への予算配分の重点化を行っていきます。 こうした構造改革の努力に加え、活力があり安定した金融システムを確立するためには、不良債権問題の正常化が不可欠です。金融庁によって行われた主要銀行の特別検査の結果等を踏まえた厳格な資産査定のもと、我が国としては、不良債権の最終処理を一層加速することとしております。他方で、流動性預金を含めたペイオフ解禁後も、決済機能の安定確保のため、破綻時にも全額保護される預金(「決済性預金」)を用意する等、金融システムの安定化に万全を期するために必要な措置を講ずることとしております。 また、経済が民需主導の自律的な成長をしていくためにはデフレの克服が不可欠です。日本銀行はこれまで量的緩和政策を行ってきましたが、依然としてデフレは継続しております。政府・日銀が一体となってデフレ克服の為、さらなる努力を行っていきたいと考えております。 最近の為替市場における円高を伴う不安定な動きは、我が国経済ひいては、世界経済の回復に対して悪影響を与える恐れがあります。為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要であるとの観点から、為替市場を注視しており、必要があれば適切に対処してまいる所存です。 なお、日本銀行は、先般、銀行保有株式の価格変動リスクを軽減するための具体案の検討に入ったところであり、こうした措置が金融システムの安定化に資することを期待しています。 |
| 2.国際金融システムの強化 |
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| | アジア通貨危機等の教訓を踏まえ、IMF等の場において国際金融システムの強化が議論され、IMFにおいては、1998年の第11次増資、新規借入取極(NAB(ナブ))の発効、補完的準備融資制度の創設をはじめとする融資制度改革等いくつかの進展が見られます。しかしながら、昨年以降のブラジル、アルゼンチン等南米地域における経済危機の発生等大規模な国際金融支援が必要とされるケースが相次いで発生しており、危機の予防、解決に関する対策のより一層の充実が求められております。 危機の予防においては、IMFによるサーベイランスの強化が中心的な課題です。マクロ経済政策、資本移動、金融セクター等のマクロ経済安定に関連する構造問題、為替相場制度といったIMFのコア分野にその対象を絞りつつIMFのサーベイランスの強化が引き続き行われていくことを希望いたします。また、昨今、金融セクター評価プログラム(FSAP)による各国国内金融セクターの評価作業も進められています。我が国としても、昨年秋に参加の意向を表明し、本年6月より評価作業が開始されております。また、国際基準の遵守に関する作業も進んでおり、我が国は、昨年、財政の透明性に関する基準の遵守状況を公表しております。危機の予防の観点からのこのような国際的な取組みに、他の諸国も積極的に参加していくことを期待いたします。 |
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| | IMFの融資プログラムにおいて、被融資国の政策調整に関して必要かつ適切なコンディショナリティーが設定されることが重要です。先般IMF理事会で合意された新ガイドラインは、被支援国自体のオーナーシップを重視し、かつ、コンディショナリティーを必要最小限に簡素化するものであり、この決定は歓迎されます。今後も、今回のコンディショナリティーに関する政策の見直しによってプログラムの成果がいかに改善したかについて事後的に分析を実施し、必要があれば更なる見直しも視野に入れて検討を続けることが適切と考えます。 危機の解決にあたっては、民間セクターの債務リストラを含む関与が必要とされる場合があります。そうした場合に秩序だった手続きの進行を確保するため、債務リストラの際の手続きを明確に規定するための取組みが進められています。例えば、昨年11月にはIMFのクルーガー副専務理事が、条約等の法的手続きに則り、債権者の多数決等による意思決定プロセスを規定するシステムを提言し、現在、IMFを中心に検討が進められています。このような「法的アプローチ」は、非常に意欲的な取組みでありますが、継続的検討が必要です。他方、債券の契約条項により対処するアプローチも検討されています。すなわち、債務に関する意思決定における多数決の採用、訴訟を行わないことの合意等の挿入といった条項に関する検討が進んでおります。債券発行国及び市場関係者に当該条項の採用に関する認識が浸透し、普及が進むことを期待いたします。特に、国際的な債券の発行高の多い市場、例えば、ニューヨーク市場においてこうした慣行が普及することが重要と考えます。これら二つのアプローチは、秩序だった債務リストラに向け並行して検討されるべきであると考えております。 IMFにおいては、現在、債務に関する支払の延滞がある場合の、IMF融資の要件を明確化する作業が進行しております。債権者との早期の対話、情報の共有、債権者に対して債務リストラの方向につきインプットの機会を早期に与えること等を原則として、債務国に民間債権者に対する延滞がある場合でも、当該債務国が誠意を持って努力していることを要件にIMF融資を行う余地を残すといった形で、債務問題の解決に向けた関係者の努力を促していく必要があります。 また、近年、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルをはじめとした金融危機への対処として、通常のアクセスリミットを超える例外的なIMFへのアクセスが頻発しておりますが、IMFの資金量に限度があること等を踏まえ、アクセスリミットを超える融資は真に例外的なケースに限定し、適切な融資制度を採用することが必要です。さらに、例外的なアクセスを認める場合には、債務の維持可能性に関する緻密な分析を行った上で、中期的に持続可能な経済成長軌道に回復するような方策を検討しなければならないことも指摘しておきます。 |
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| | 現在、2003年1月末という期限に向けて第12次増資についての精力的な検討が行われています。国際的な資本移動の急激な増加という世界経済の変容を踏まえれば、ありうべき危機に備え、IMFの資金が十分に保たれることは是非とも必要であり、万一不足する事態を引き起こした場合の危険度は非常に大きいと考えられます。経済危機時の資金需要の増大にIMFが的確に対応するためには、十分な資金規模を備えることが重要です。特にブラジル等最近の中南米諸国に対する多額の資金支援を経たのちでは、IMF資金の利用可能性は非常に低下しており、IMFにおいて早期に増資の決断がなされることを期待します。さらに、増資に当たっては、現在のクォータの配分が、世界経済の変化を十分に反映していない実態を踏まえ、適切に見直されることが必要と考えています。IMFクォータは、貸し付けの際の基準、理事の選出における投票権等、IMFの運営に係る決定の基礎を形成するものであることを踏まえ、世界経済の現状を反映することが必要であると考えられます。例えば、ここ数十年発展の著しいアジア地域(ASEAN+日本、韓国及び中国)のクォータについて検討してみれば、GDP等を勘案して計算される計算クォータのシェアが22%であるのに対し、実際のクォータシェアは13%にすぎず、現実のクォータと計算されたクォータとの差は余りにも大きいと言わざるをえません。 |
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| | アジア地域においては、1997年の通貨危機以降、地域的な金融協力が進展してきておりますが、現在、我が国は、2000年5月のASEANプラス3蔵相会議で打ち出された「チェンマイ・イニシアティブ」の具体化を進めております。さらに、スワップ取極を有効に実施するために、域内の経済情勢について、意見交換、政策対話を強化することが重要であります。一方で、東アジア地域の通貨の安定の方策について、中長期的課題として検討、議論を行っていくことも重要であると考えております。 |
| 3.テロ資金対策 |
| | 昨年9月11日に米国で痛ましい同時多発テロ事件が発生して1年が経過しました。このテロ事件以降、国際社会において、国際テロと闘うために様々な取組みが行われてきました。FATF40+8勧告をカバーした、マネロン・テロ資金対策の評価のための包括的な手法を用いた、IMF及び世銀による評価開始に向けた作業の進展を歓迎します。この評価開始に際しては、FATF等への非加盟国は、積極的にこの評価を受けることが重要であると考えます。 テロリスト等に対する資産凍結に関しましては、我が国は、テロ資金対策の重要性を鑑み、G7による同時凍結も含めて累次の措置を実施してきており、また、本年6月までに、テロ資金供与防止条約等の実施に必要な国内法を可決成立させ、この条約を受諾する等、積極的に取り組んできているところです。国際テロと闘うため、引き続き各国・関連機関等が協力して、テロ資金対策に取り組むことが重要であります。 |
| 4.国際会議のあり方 |
| | 最後に、総会をはじめとする国際会議のあり方について一言申し上げます。今回の一連の会合は短縮した開催となりましたが、これを好機としてより実質的な討議が可能な場となるよう取り組むべきであると考えます。世銀・IMF総会は、加盟国の経済政策責任者が一堂に会する極めて貴重な機会であり、短時間でより大きな成果を収めうる運営方法につき、更に検討を行っていくことが重要と考えます。また、その他の国際会議についても同様に、それぞれの国際会議の本旨に立ち戻りその意義を再確認し、その効果的かつ効率的に運営のために必要な方策について検討すべきでありましょう。 |