現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際通貨制度等〜国際通貨基金(IMF)等〜 > IMF国際通貨金融委員会(IMFC) > 第5回IMFC 日本国ステートメント(平成14年4月20日)

第5回IMFC 日本国ステートメント(平成14年4月20日)

English

第5回IMF国際通貨金融委員会における日本国ステートメント
(2002年4月20日(土))

 
1.世界経済と政策対応
 
世界経済
   2000年半ば以来、世界経済の減速が続いていましたが、ここ数か月の間に、景気の減速が底を打ったことを示す兆候が増えてきており、今後在庫調整の終了や各国の緩和的なマクロ経済政策に支えられ、本年半ばまでには世界経済は回復に転じることが期待されます。特に金融市場は、既に世界経済の早期回復を折り込んだ動きを示しています。 このような回復の兆候が最も顕著なのが米国であり、9月11日の事件の影響は一部の予想に反して短期的なものに止まっています。ユーロ圏経済についても、在庫調整の終了や対外環境の改善により、米国と同様の景気回復過程を辿ることが見込まれます。また、本年初のユーロ紙貨幣の成功裏の導入は、ユーロ圏の市場統合の一層の促進に貢献するものです。アジア地域を見ましても、依然としてその成長は相対的に高い水準にあり、中国やインド等においては引き続き力強い成長が見込まれています。また、韓国においても回復の兆候が鮮明となってきています。
 
 一方、依然として世界的に下方リスクも存在しています。まず、世界経済の回復のペースが予想を下回った場合、そのため資産価格が下落し、これが家計や企業のバランスシートに影響を与える可能性があります。
 また、特に欧州に関しては、労働市場等の硬直性から、景気が十分回復する前に賃金上昇や物価上昇が起こり、力強い回復を妨げる可能性があります。
 さらに、アルゼンチン経済の動向も気がかりです。これまでのところ他の新興市場経済への波及効果は極めて限定的なものに止まっていますが、今後生じうる世界経済への影響を未然に防ぐためには、アルゼンチン当局が、IMFと早急に新規プログラムの合意に向け努力することが必要です。
 今後とも、各国が適切なマクロ経済政策や構造改革等、持続的な経済成長や健全な金融システムを保持するための政策を続けることが肝要です。
 
日本経済
   日本経済は、依然として厳しい状況が続いておりますが、政府は2月下旬にデフレ克服のための対策を発表しました。また、日本銀行も、長期国債の買い入れを増額する等の更なる金融緩和措置を取ったほか、今後とも、潤沢な資金供給を通じて、市場の安定と緩和効果の浸透に全力を挙げていくことを明確にしています。
 このような政府・日銀一体となった取り組みに加え、金融庁の特別検査の実施や、これも契機とした企業のリストラの具体化などによる不良債権処理の進展が市場に歓迎され、株価は上昇しています。「3月危機」と言われた金融危機も実際には起こらず、金融システムは安定しています。さらに、生産や輸出は下げ止まってきているほか、対外経済環境の改善や在庫調整の進展など、これからの展開のための新しい基盤が着実に整いつつあり、本年後半には我が国経済は回復に転ずることが期待されます。
 
 現在の我が国経済の最も重要な課題の1つは不良債権問題の解決です。不良債権処理を加速させるため、政府は今般、主に以下の措置を行うことを決定いたしました。
  1
 
 昨年より、主要行の破綻懸念先以下の新規発生不良債権について、3年以内にオフバランス化することとしております。これを更に加速し、原則1年以内に半分、2年以内でおよそ80%を処理するとの具体的な処理目標を設定します。
  2
 次に、主要銀行グループに対する実質常駐検査体制の導入により、検査体制を強化します。
  3  さらに、主として地域金融機関を念頭においた金融機関の合併促進を検討していきます。
   なお、昨年以後、不良債権処理について具体的な進展がみられています。特に、昨年10月末以降、株価や格付けなどに著しい変化が生じている等の大口債務者に着目して、主要行に対して特別検査を実施し、広範な債権について、その債務者区分、償却・引当の検証を行いました。先週、その結果を公表いたしました。この公表に併せて主要行が発表した不良債権処分損は、昨年の約8割増の約7.8兆円となっており、不良債権処理が加速されております。
 一方、企業再生につきましては、RCCを活用した事例等、既に実績も上がってきております。また、民間金融機関等による企業再建ファンドが組成されたほか、民間投資家等による複数のファンド組成の動きが出てきており、今後、企業再生が促進されることが期待されます。
 また、RCCが金融機関から時価で、また、入札を通じて不良債権を買い取ることができるよう法改正が行われ本年1月から施行されました。政府としては、確実に不良債権処理を加速させるため、信託を含むRCCの機能を積極的に活用するよう主要行に対し要請することとしました。
 
 改革は痛みを伴うものです。しかし、こうした痛みの裏側で、不良債権処理や企業リストラ・再生が進展し、産業界においても若い世代の人々が新しい発想・方針のもとで活力ある企業経営を行うようになっているなど、これからの展開のための新しい基盤が着々と整いつつあります。
 こうした動きを支援するためには、民間経済の活性化に向け、成長分野等を明確にした上で、財政規律を維持しつつ、そうした分野に財政・税制上の措置、規制緩和等の国の政策を集中していくことが重要です。
 政府としても、経済と財政の構造改革を念頭においた基本的な政策の取りまとめに向け、集中的に議論を行い、6月中に新しい考え方をとりまとめる所存です。
 
第12次増資
   世界経済全般の回復が見られる一方で、様々なリスクは依然として存在しています。IMFには、危機の予防に努めるという責務とともに、国際収支の安定回復に向けて十分な政策努力を行っている加盟国に対しては、適切な規模の必要な支援を迅速に行えるように原資を確保する責務があります。この観点から原資の潤沢さを示す尺度の一つである流動性比率を見ると、昨年8月末の150%から9月末に105%に低下したまま、その水準で推移しており、中期的に十分な量の資金が確保されているとは言えません。現在、5年に一度の増資検討期間に入っており、既に第12次増資を検討するための全体委員会が設立されていますが、我が国は早期の増資実現に向けた議論が活発に行われるように求めます。
 現在のIMFクォータは、世界経済の成長、資本取引の増加、IMF設立以来の加盟国間の相対的地位の変化に適切に対応していないため、クォータの規模は経済実態を反映しておらず、また、配分比率の歪みは十分に是正されないままとなっています。各国のクォータはIMFへの資金的な貢献を表すほか、IMF資金の利用限度の基準や投票権設定の基礎をなしていることから、増資の検討に際しては資金規模の増加に加えて各国間の配分比率の見直しを図ることが必要です。
 

2.効果的な危機の予防と秩序ある危機の解決

   
 危機の発生を可能な限り予防するために、IMFのサーベイランスの一層の改善が求められます。世界経済の変化に対応して、金融セクター等マクロ経済に重要な影響のある問題もサーベイランスの対象とするとともに、IMFが専門性を持つ分野に焦点を絞ることによってサーベイランスの強化を図ることが適切であり、このような観点から今後のサーベイランスの見直しの議論を進めるべきです。
 他方、専務理事の報告にもあるように、将来の危機を全て予防することは不可能であり、発生してしまった危機をいかにうまく解決していくかという問題は重要な課題であり続けるでしょう。国際社会は、近年、このようなより秩序ある危機の解決の枠組み作りに向けた取組みを進めてきましたが、特にクルーガー副専務理事が昨年末に国家債務再編メカニズムに関する提案を行って以降、今後の危機解決のあり方がどのようにものになるのかという点について、市場参加者を含め注目と関心が一層高まっています。今後は、これまでの取組みに基づき実際の危機における秩序だった解決という成果を結実させるために行動することが重要です。IMF事務局による提案は、これから述べるよりインフォーマルなメカニズムと相互に補完的なものだと考えられ、短期的には実現するものではありませんが、今後も検討を続けていく事が適当です。

 IMF事務局による提案の検討と並行して行うべき作業は以下のとおりだと考えられます。
 まず、IMF等の公的資金には限りがあること、また通常のアクセス・リミットを超えるIMFの貸付は真に例外的でなければならないことを改めて示す必要があります。そのためには、理事会に例外的な貸付が提案される際により厳格な説明責任を課すなどの改善が必要です。これに加え、最近頻繁に発生するようになった資本勘定型の危機にも対応できるように、アクセス・リミットを現実的なものに設定し直すことも、例外性を明確にする上で重要です。また、問題の根底には、世界経済の変遷にクォータの増加が追いついていないことがあり、この面からも、増資とそれに伴うクォータ配分の見直しを早急に行うべきです。
 次に、集団行動条項を債券契約に導入することを一層促進すべきです。集団行動条項は、契約に基づいて秩序立った危機解決を可能にする優れたツールであるにも関わらず、これまでなかなか導入が進みませんでした。今後は、例えば、集団行動条項の導入をIMFの貸出の条件とする等により、債券発行国にインセンティブを与えて集団行動条項の導入を促進するべきです。
 更に、債務国が必要以上に債務のリストラを回避する結果として状況を悪化させてしまわないように、債務国による債務支払の停止や、その状況下でのIMFによる貸出に関して、IMFの関与のあり方や役割をこれまで以上に明確にすることが重要です。これと同時に、実際にIMFの貸出が行われた際には、理事会によるモニタリングの強化や独立評価機関による事後評価によって、債務国の政策が適切かどうか、また、IMFの資金が適正に使用されているのかを検証することも重要です。
 

3.最近の課題

 
低所得国に対するIMFの役割
   低所得国への譲許的な貸付をおこなう貧困削減成長ファシリティ(PRGF)に関して、我が国からの追加的な10億ドルの貢献も含めて、2005年までの十分な貸付原資が確保されたことを歓迎します。低所得国支援において技術支援は重要であり、日本はIMFによる技術支援に対して加盟国中で最大の全体の3分の1を超える資金を提供してきています。
 
コンディショナリティの合理化
   前回のIMFC以降、コンディショナリティの合理化及びオーナーシップの強化についての検討が着実に進展しています。これまでに、コンディショナリティの分野や数の変遷の分析のほか、実際のプログラムにおいてコンディショナリティ合理化が進展しているかどうかについて検証がなされましたが、これらの理事会において、コンディショナリティ合理化に向け、マネジメントやスタッフの確かな決意が見られたことは勇気付けられます。また、コンディショナリティの新しいガイドラインについて次回IMFCまでの合意を目指すという専務理事の意向を、我が国として強く支持します。ガイドラインの策定後は、コンディショナリティ合理化の結果としてプログラムの成果がどのように改善されたのかという事後分析を、独立評価機関が実施していくことが適切だと考えます。
 
テロ資金対策等
   これまで、我が国では、国連決議に基づき、タリバーン関係者等281の個人及び団体、並びに、それ以外のテロリスト等12の個人及び団体の資産凍結を行っており、さらに今般G7各国と協調して10の個人及び団体の資産凍結を実施しました。また、テロ資金対策のための新しい法案を3月に国会に提出して、近々承認を受ける見通しであるなど、この分野において著しい進展を遂げてきました。我が国は、全ての加盟国が、昨年秋のIMFCコミュニケで求められた資金洗浄及びテロ資金対策に関する行動を実施するとともに、FATF特別勧告に基づく自己審査も行うことを強く慫慂いたします。
 我が国は、IMFやFATFといった国際機関のこれまでの努力を高く評価するとともに、FATF40の勧告及び上記の特別勧告を包含する、単一の資金洗浄及びテロ資金対策の評価方法の策定に向けて関係諸機関が効果的に協力を行うことを期待します。また、IMFにおいて、FSAP、オフショア・センターのアセスメント、あるいは4条協議を通じて、資金洗浄及びテロ資金対策に関する評価が実施されていることを歓迎し、今後もこの取組みが継続されることを希望します。更に、各国が資金洗浄及びテロ資金対策に取組む能力を強化するべく、IMFやFATF等の関係国際機関が、協調しつつ、適切な技術支援を供与するための態勢を整えることが重要であり、日本としても積極的に対応していきたいと考えています。
 
国際会議のあり方
   昨年秋以降、年次総会やIMFC等の国際会議が短縮した日程で開催されています。今回の春の国際会議についても、厳しい制約の中で効率的に一連の会議が開催されていますが、これを実現させたIMF・世銀及びホスト国の努力に感謝します。今後も、国際会議を真に効果的かつ効率的に運用するためにはどうすべきかの検討を真剣に行う必要があります。真に実質的な議論が行われる場を維持することは当然のことながら、更なるリストラの余地がないか、一層積極的な検討を進めるべきです。

(以上)