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第4回IMFC 日本国ステートメント(平成13年11月17日)

第4回IMF国際通貨金融委員会における日本国ステートメント
(2001年11月17日(土))


 
序.今回のIMF国際通貨金融委員会開催について

 9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件の影響で、世界経済の状況に大きな変化が起こり、先行きへの不透明感が増しています。また、9月末にワシントンD.C.で予定されていた世界銀行・IMF総会は開催されないことになりました。しかし、本日、このようにIMF国際通貨金融委員会が開催され、世界経済の情勢やテロ資金対策等について議論されることとなったのは、テロリズムに国際社会が屈服していないことを行動によって雄弁に語るものであり、その意義の大きさは計り知れません。IMF・世界銀行の関係者や、急遽、開催地を提供してくれたカナダ政府の大きな努力に謝意を表したいと思います。


 
I.世界経済見通し

1.世界経済

 
 9月11日のテロ事件発生以前からIT部門を中心とした調整の深まり等の影響が現れていた世界経済は、テロ事件の発生により同時的な減速の様相を呈しています。テロ事件による直接の影響のほか、旅行、航空、観光産業等が世界的に低調に陥ったほか、景気の先行きへの信頼感が低下したことを受けて消費が冷え込んでいます。これらにより、世界経済の成長の回復は遅れる可能性があります。

 他方、世界経済の成長を支えるファンダメンタルズは健全性を失っていません。また、米欧日の主要国において、事件発生直後に潤沢な流動性の供給を行ったほか、景気下支えのための金融政策や財政政策の実施、潜在的な成長力を生かすための構造改革の推進など、断固たる措置が既にとられています。未だ短期的な不確実性は残っているものの、これらの措置が来年以降本格的に効果を発揮し、今後の世界経済見通しの改善に寄与することが期待されます。また、今後とも、各国が健全なマクロ経済政策や構造改革等、持続的な経済成長や金融市場の健全性を保持するための政策を続けることが肝要です。

 特に、米国経済が今後どのように進展するかは、米国のみならず世界全体にとって非常に重要であり、米国当局による財政・金融両面における積極的な政策の効果が現れて、経済回復が早期にもたらされることが強く期待されます。ユーロ圏経済についても、安定成長協定の枠組みの中で緩和的な経済政策の実施が求められます。また、中期的な成長力を維持する上で、生産性の向上をもたらす構造改革が必須であり、労働市場の硬直性の改善に向けた努力等が求められます。

 新興市場国では、9月11日の事件以前にも、低迷が深刻化しているアルゼンチン・トルコ等に対して国際社会による支援が実行されてきました。9月11日の事件以後、国際金融市場へのアクセスが困難になるなど、外的環境は更に厳しさを増しており、約束した財政規律の維持策の実施等、市場の信認を回復するための当局による努力の強化が求められます。IMFとしても、今後、国際社会と協調しながら必要な改革努力を行っている加盟国に対しては、適切な支援を行っていくべきです。

 アジアの新興市場国は、IT関連製品の輸出割合が高く、世界経済の低迷によって深刻な影響を受けています。また、他地域の新興市場国の経済危機の影響がありうることも指摘されています。しかし、アジアの新興市場国は、金融セクター改革の進捗に加え、変動相場制への移行や外貨準備の増大、短期債務比率の減少等により、危機に対処可能な経済構造になっており、他地域の危機から大きな影響を受ける可能性は限られていると考えられます。

 低所得国に対してもテロ事件の余波が及んでおり、これらの国を取り巻く市場等の外的な経済環境は厳しいものとなっています。それぞれの国において困難を克服するための努力が必要とされることはもちろんですが、IMFは政策助言や技術支援の供与による協力を行うほか、適切な政策を遂行している国に対しては貧困削減成長ファシリティー(PRGF)等による金融支援を行うことにより、これらの国における貧困の克服に救いの手を差し伸べるべきです。

 なお、世界経済が同時的に減速している状況の下、先般、カタールの首都ドーハでのWTO閣僚会議において新たな多角的貿易交渉の立上げが合意されたことは、多角的自由貿易体制を強化し、世界経済に対する信頼を回復させる意味で極めて有意義なことであったと考えます。


2. 日本経済
   日本経済の現状については、本年第2四半期の成長率がマイナスとなり、景気は一段と悪化しています。米国経済を始め世界経済全体としての減速が明確になる中、輸出、生産が大幅に減少し、企業収益や設備投資も減少しています。個人消費は弱含んでおり、失業率も過去最高の5.3%に達するなど、雇用情勢は厳しさを増しています。

 さらに、いわゆるデフレ(持続的な物価下落)の状況にあり、これは企業経営の先行きを不透明にするほか、企業や個人の債務の実質的な増大ももたらしています。

 景気の先行きを見ても、企業収益が減少する中で設備投資が引き続き減少することが見込まれることに加え、米国における同時多発テロ事件の影響もあり世界経済が同時的に減速する懸念が強まっています。

 しかしながら、我が国経済の潜在的な成長力は十分にあり、これを生かすためにも、「構造改革なくして我が国経済の再生と発展はない」との決意の下、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に基づいた構造改革を加速させていく必要があります。「改革工程表」で示された道筋に従い、中長期的な視野に立って構造改革に取り組む一方、先行して決定・実施すべき施策である「改革先行プログラム」を先月決定いたしました。これは、公共投資に重点を置くのではなく、経済の活性化や新産業の創出につながる制度改革、雇用対策、中小企業対策、さらに、構造改革に直結する緊急性が高い施策に絞り込んだものであり、これらを含む補正予算も、国会において可決されました。このような取組みにより、民需主導の自律的な経済成長の達成が可能になるものと考えています。

 構造改革の中でも、不良債権の処理については、遅くとも集中調整期間が終了する3年後には不良債権問題の正常化を図るため、自己査定の正確性を向上させるための特別検査の実施、整理回収機構の機能の抜本的な拡充等、不良債権の最終処理を実施する方策を整備、強化するといった措置を講じてまいります。

 財政政策については、従来の需要追加型から構造改革重視型への政策の転換を図っています。2002年度予算については、財政面における抜本的な構造改革の第一歩として国債発行額を30兆円以下に抑えることを目標とし、歳出全般にわたる徹底的な見直しを行い、重点的な配分を実現します。

 金融政策については、3月に決定した量的指標を目標とする新しい政策枠組みの中で、8月に当座預金残高を1兆円増額しました。また、テロ事件後には、当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行っております。今後とも、物価が継続的に下落することを防止し、経済が安定的かつ持続的な成長軌道に復帰することを支援するために、最大限の努力を続けて行く方針です。


 
II.IMFの役割
 
 アジア危機の教訓に基づいてIMFがこれまでに行ってきた改革努力の結果、サーベイランスの強化等による危機の予防や、補完的準備融資制度(SRF)や予防的クレジットライン(CCL)等の新しい融資制度の整備等、多くの分野で進展が見られています。

 世界経済の不透明性が増している現在の状況において、国際社会と協調しながら必要な改革努力を行っている加盟国に対し、既に手にしているツールを活用して適切な支援を行うことはIMFの重要な責務です。そして、そのためにはIMFの流動性が十分に確保されている必要があります。

 まず、低所得国に対して譲許的な貸付を行うためのPRGFについて、来年以降の原資の確保が長い間の課題となっていました。9月11日のテロ事件後、国際社会には、最も深刻な経済的な悪影響を受けたアフガニスタン周辺国への支援が求められており、IMFに対してもPRGFを通じた支援による貢献が更に期待されるに至っています。このような状況において、来年以降のPRGFの原資の確保が未だ十分ではないことは、パキスタン等の一部の国に対する十分なPRGF資金の供与にとって障害になりうるという懸念が高まっていました。

 日本は、これまでもPRGFの原資や利子補給金に対して、加盟国中で最大の貢献を行ってきましたが、今般、テロ事件後の差し迫った事態に鑑み、PRGFの貸付原資に対して更に10億ドルの拠出を行うことといたしました。この日本の拠出が、迅速かつ十分なIMFからのPRGF供与につながることを期待します。

 次に、一般資金についてですが、現在のIMFの流動性状況や、一般借入取極(GAB)や新規借入取極(NAB)の発動によって補完が可能なことを踏まえれば、幸い、IMFの一般資金はここ1〜2年の間に予想される資金需要への対応には不足していないとされています。

 しかし、8月末には150%あったIMFの流動性比率は、一月後の9月末には105%と大きく低下しました。テロ事件の発生によって世界経済の状況は不透明感を増しており、今後の進展によっては、テロ事件が発生する前から既に見られたような流動性比率の急速な低下が再び起こることも考えられます。このような観点からは、来年1月には開始する必要がある5年に一度の一般増資の検討に際して、困難に直面する加盟国に対して今後5年にわたり適切な支援を行うための原資を十分に確保することが重要です。加盟各国に安心を与えて適切な経済運営を可能にするために、クォータの第12次見直しに際して、適切な規模の増資を行うべきだと考えます。

 増資を行う際には、クォータや投票権、理事会における代表のあり方を世界経済の発展に合わせて現実的なものに見直す必要があります。また、一般増資において現存シェアに基づいて配分される比率が大きいという慣行が、これまでクォータ配分の是正を遅らせてきた大きな要因であるため、この慣行の見直しも重要です。更に、IMF設立以来見直しが行われていない基礎票についても見直しが検討されるべきです。


 
III.テロ資金対策
 
 9月11日のテロ事件は、テロ資金対策が、世界的なマクロ経済の安定、及び、健全な金融システムのために不可欠であることを示しました。テロリズムとの闘いは、最も重要な国際的な取組みの一つとなっていますが、国際的なテロリズムと闘うためには、テロ資金の供与防止に向けて国際社会が協力してあらゆる手段を講じることが重要です。

 まず、IMFが、テロ資金対策への関与を決定したことを歓迎します。日本は、IMFが、他機関との作業の重複を回避しつつ、その比較優位を生かして、この取組みに積極的に貢献していくことを期待します。

 また、国連安全保障理事会の決議の実施が重要です。日本は、国連安保理決議1267号、1333号に基づいて、タリバーン関係者等の資金を凍結するための措置を数次に渡って講じました。

 さらに、各国が国連テロ資金供与防止条約を早期に批准することが重要です。日本は先月、この条約に署名しており、可能な限り早期の締結を目指して作業を進めています。

 このほか、金融活動作業部会(FATF)は、先月開催された臨時会合において、その責務をテロ資金供与防止にも拡大し、テロ資金供与防止に関する特別勧告を公表しました。これはテロ資金対策における大きな前進であり、心から歓迎します。今後、各国がこの特別勧告に沿った措置を取り、テロ資金対策の効果が上がることを期待しており、日本もそのための努力を進めます。

 日本では、テロ資金に関する所要の情報交換及びテロ資金対策についての連絡調整を関係省庁間で行うため、緊急テロ対策関係省庁会議の下に「テロ資金情報・対策作業部会」を立ち上げました。各国における、このようなテロ資金対策のための組織・機関と密接な連携を図っていく考えです。

 日本はこれまでも、G7やG20といった枠組みでテロ資金対策に関する先導的な取組みに携わってきました。また、日本は、先月、東京における金融安定化フォーラム(FSF)地域会合の機会を利用して、参加するアジア・太平洋諸国とテロ資金対策について意見交換を行う会合を主催しました。国際的な協調の推進に向けて、今後とも、世界のすべての国々に対し、テロリストの財源を絶つための努力に協力するよう呼びかけを行っていくべきだと考えています。


 (以上)