第2回IMFC 日本国ステートメント(平成12年9月24日)
| 第2回IMF国際通貨金融委員会における日本国ステートメント |
| I.序 昨年秋の総会において、暫定委員会を改組し、恒久的な委員会としての国際通貨金融委員会を創設することが決議されたことを受け、第1回目の国際通貨金融委員会が今年4月に開催されました。その後、世界経済が力強い成長を続ける中で、第2回目の委員会が開催されることを喜ばしく思います。 この間、本年5月に就任したケーラー専務理事が、IMF改革をはじめとする国際金融システムの強化に向けた取組みを積極的に推進していることを歓迎します。今後とも同専務理事が加盟国と密接に協力しながら重要課題の解決にリーダーシップを発揮することを期待しており、我が国としてもこれを全面的に支持していく考えです。
| ||||||||||||||||||
| II.世界経済見通し
| ||||||||||||||||||
| 1. 世界経済
| ||||||||||||||||||
| 世界経済は力強い成長を続けています。米国の力強い成長が世界経済の成長を牽引し、欧州の経済回復、日本経済の景気後退からの脱却がこれを支援しており、世界経済は20世紀最後の10年間の中で最高の成長率を達成する見通しです。 米国経済は、ITによる生産性の向上や、好調な内需に支えられた史上最長の拡大を続けており、これまで誰もが予想できなかった程の失業率の低下とインフレ抑制の両立が実現しています。一方で、労働市場の逼迫が続いており、物価上昇につながるリスクは依然として存在しています。連邦準備制度はこれまで数度の金融引締めを行っていますが、米国経済の軟着陸に向けて、米国当局には引き続き慎重な経済運営を行うことが求められます。 ユーロ圏経済は、外需を中心に拡大しています。他方、最近の石油価格の高騰及びユーロ安がもたらすインフレ圧力の増加は懸念材料であり、今後ともインフレなき力強い成長を確保していくためには、財政・金融両面で適切な経済運営を行うとともに、労働市場等の構造改革を推進することが必要だと考えます。 アジア経済は、98年には通貨・金融危機により多くの国が深刻な打撃を受けましたが、99年にはほぼ全ての国でプラス成長を達成し、こうした成長を2000年も持続しているなど、顕著な回復を示しています。今後の課題として、より持続可能なマクロ政策と整合的な為替制度や資本移動の仕組みへ移行することが求められます。 体制移行国については、市場経済移行から10年が経過したところです。これまでの経験からは、市場経済の原理の定着と一層の経済発展に向けて、ガバナンスや法の支配といった制度的なインフラストラクチャーの整備が重要であるということと、漸進的な改革が有効であるという教訓が得られています。 また、好調な世界経済の中で、情報技術関連など、生産性の向上を通じて新たな成長を牽引して、経済発展の起爆剤となることを期待される分野が現れてきていることは好ましい動きとして特筆すべきです。 一方、最近の原油市場における価格の急激な変動は、世界経済の成長に対して悪影響を及ぼす懸念があり、世界経済の持続的成長のためには、原油市場の安定が必要と考えます。世界的な需要増に鑑み、消費者と生産者の相互の利益の下で長期的な価格の安定を推進するよう、供給面での適切な増加など必要な措置を求めます。 2.日本経済
| ||||||||||||||||||
| III.国際金融システムの強化 国際社会はこれまで国際金融システムの強化に向けて様々な取組みを継続してきています。我が国もサミット議長国として、7月の九州・沖縄サミットにおいて「国際金融アーキテクチャーの強化」に関する蔵相報告書を取りまとめ、国際社会をあげた改革努力に貢献してきています。IMFにおいても、当委員会の発足に加え、多くの分野で理事会での議論に進展が見られることを歓迎します。 1.IMF改革の主要な原則 国際金融環境は変化の度合いを強めており、特に途上国や新興市場国が資金調達する上で民間の国際資本市場の重要性が高まっています。このような国際金融の環境の変化に対応し、21世紀においてもIMFが国際金融システムにおいて中心的な役割を果たすためには、IMFの役割と機能を引き続き見直していくことが重要です。特に、IMFは、一時的な流動性不足に起因する危機の場合における国際的な「最後の貸し手」的な機能を維持・強化する必要があります。一方、通貨危機に至らないまでも国際収支困難に陥った加盟国に対して、その構造改革への努力を支援するというIMFの伝統的な相互扶助的な機能も引き続き重要であることにも留意すべきです。
これらの諸原則の実現に向けて、透明性・説明責任・ガバナンスの強化、クォータ・投票権・理事数の見直し、サーベイランスの強化、行動規範及び基準の実施の推進、融資制度の合理化・簡素化や、危機の予防と解決における民間関与(PSI: Private Sector Involvement)の枠組み作りの進展などの具体的な改革が進められることを強く期待します。 当委員会に宛てたケーラー専務理事による「国際金融アーキテクチャーの進展に関するステートメント」の中でも、IMFの業務の優先順位付けと焦点の強化、世界銀行との協調等、我が国が重視する原則にハイライトが当たっています。我が国としても新しい世紀に向けてIMFの機能が一層改善されることを望んでおり、こうした同専務理事のリーダーシップを歓迎し、これを支援していきたいと考えております。 2.透明性・説明責任・ガバナンスの強化 IMFの透明性の強化に向けて事務局ペーパーの公表が進んでいますが、4条協議ペーパーの公表パイロット・プロジェクトが好意的に受け止められ、ペーパーの公表の原則が再確認されるとともに、自発的公表の対象となるペーパーを拡大する方向で合意が見られていることを歓迎します。IMFの説明責任を強化するこのような取組みを今後も推進していくべきであり、今後、公表方針の全体的な見直しを進めていくという事務局の方針に賛成します。 また、個別国のプログラム策定プロセスにおける理事会の関与を一層促進させることが重要です。重要かつ微妙な取り扱いを要するケースについては、早期の段階で理事会に概要が伝えられるべきです。 次に、恒久的な独立した評価部局を設立することが既に合意されていますが、これを早期に設立し、活動を開始させることもIMFの業務の正統性を高める上で重要だと考えます。その際、独立評価部局は理事会に対して説明責任を負っていることを明確にするとともに、当委員会に対してもその活動の状況を定期的に報告すべきだと考えます。 更に、IMFが真に世界全体を代表する国際機関であることをこれまで以上に明確にする観点から、IMF専務理事の指名、選出、任命プロセスの見直しに関して作業グループが検討を進めている旨の報告が当委員会にあったことを歓迎します。同グループが引き続き検討を進め、IMFの透明性の更なる向上に資する提言がなされることを期待します。 IMFと加盟国の関係については、IMF融資におけるコンディショナリティと加盟国のオーナーシップのあり方も早急に検討され、見直しがなされるべきです。コンディショナリティは、マクロ経済政策、資本移動、金融セクター等のマクロ経済安定に関連する構造問題、及び為替相場制度といったIMFが比較優位を持つ分野に限定すべきです。加盟国の政策努力を促すとともに融資の安全性を高めるという点でコンディショナリティが果たす役割は非常に重要であるものの、あまりに細かすぎるものや加盟国政府がコントロールできない基準は不適切であり、また、コンディショナリティの設定に際しては、国毎の実情を十分考慮する必要があると考えています。 ブレトン・ウッズ体制の成立は現在から約55年遡ります。この間のアジア経済の急速な発展・経済的成功は、世界経済に占める地域間の比重の劇的な変化をもたらしました。世界全体のGDPに占めるアジア経済の比率を見ると、1950年代前半には1割程度であったものが、1990年代後半には四分の一程度を占めるに至っています。 IMFの透明性の強化やその他のガバナンス・説明責任の向上について考えるにあたっては、このような国際経済の変化を反映したクォータ配分や投票権、理事会における代表のあり方の見直しが、どうしても避けて通ることのできない重大課題として注目されます。世界経済の中でその重要性を増してきている新興市場諸国のクォータシェア、投票権、理事数は非常に限られたままとなっており、これを早急に是正する必要があります。 この点に関連して、IMFにおいて、クォータ計算式を世界経済の変化をより良く反映させるように見直す動きが進展していることを歓迎します。しかし、これだけでは十分ではありません。これまで、一般増資の機会において、クォータ計算式に則り配分される比率が小さく、過去の既得権である現存シェアに基づいて配分される比率が大きいという慣行がありましたが、この慣行がクォータに世界経済の実態を反映させるための調整のスピードを著しく緩慢にしてきたことを反省しなければなりません。 また、IMFにおける投票権についても、1国250票という基礎票数は1945年発効の原協定以降改定されておらず、累次の増資の結果、IMF発足当時、投票権数全体の約10%を占めていた基礎票部分の比率は現在2%となっており、発足当時の5分の1の比率に低下しています。この現状に鑑み、基礎票を引上げて、クォータの小さい国の投票権を増強することも検討に値するものと考えています。 さらに、IMF理事会において、一部の地域が過度に代表されている現状も見直す必要があるのではないでしょうか。地域的なバランスに配慮し、より経済の実態を反映させた代表のあり方に近づけるように、選任理事の配分を再考すべき時期にきているものと考えます。 このように、クォータ配分や投票権、理事会における代表のあり方を世界経済における重要性の変化を反映して見直すことが、IMFの活動や意思決定過程の透明性を増し、加盟国間の協力関係を強化するなど、IMFの有効性やガバナンスを一層高めていくための急務となっていることを強調しておきたいと思います。この問題の重要性と緊急性に鑑み、第12次増資を検討するための全体委員会を早急に設立することを強く主張します。 世界経済及び国際金融システムを強化するためには、IMFによる強力なサーベイランスが肝要です。グローバル化の進行、民間資本の大規模な移動、国際的に合意された行動規範及び基準の枠組みの形成といった点を踏まえ、IMFのサーベイランスの性格・範囲を見直す必要があります。サーベイランスの焦点は、加盟国のマクロ経済政策、資本移動、金融セクター等のマクロ経済安定に関連する構造問題及び為替相場制度といった4つのコア分野に絞っていくべきです。 国際的に合意された行動規範及び基準の実施を促進するために、幅広い分野の基準アセスメントの調整において、他の国際機関等と連携を図り、IMFが主導的な役割を果たしていくべきです。そのため、IMF内に各国際機関が設定した行動規範や基準を調整する調整ユニットを設置することも検討すべきです。 この関連で、国際基準の遵守状況に関する報告書(ROSCs:Reports on the Observance of Standards and Codes)や金融セクター評価プログラム(FSAP:Financial Sector Assessment Programs)を通じた作業を歓迎しており、また、金融システムの安定性評価(FSSA:Financial System Stability Assessment)に関する報告書の自発的公表についての検討を期待しています。 経済危機の発生を予防し、国際通貨・金融システムの安定を図るためには、IMFのサーベイランスと並び、開発途上国がマクロ政策や金融監督政策等の健全な経済政策を遂行する枠組みを強化する必要があります。このためには、開発途上国が、これらを自ら主体性を持って遂行することが重要であり、その前提として、開発途上国にそれを可能とするような政策立案・執行の体制が整備されていることが必要と考えます。我が国としては、このような見地から、IMFが開発途上国に対して行う技術援助を従来にも増して一層積極的に支援したいと考えております。 5.融資制度改革 民間資本市場がグローバル化して重要性を増している中、加盟国を適切に支援していくためには、IMFの融資制度を不断に見直していくことが不可欠です。今春に決定された、使用されていないファシリティの廃止に加え、最近、以下の点に関して融資制度改革に進展が見られたことを歓迎します。
融資制度改革に関連して、IMFから支援を受けた加盟国が強力な政策を維持し、IMFの資金支援に再び依存することを防ぐために返済が完了するまでの間、IMFがプログラムの実施状況をモニターする能力を高めることが重要です。この点に関しても、プログラム後のモニタリングの対象となる国についての推定の導入など、IMF内の議論に進展が見られたことを歓迎します。 通貨危機の予防と解決において、PSIが適切に確保されるべきとの認識が広く共有されており、PSIに関する原則は出揃っています。今後は、この原則を踏まえ、具体的にいかに運用するかを検討することが重要です。 我が国は、PSIのプロセスには一層の透明性と予測可能性の向上が必要であると考えていますが、PSIを効果的に運用する上で、建設的な曖昧さが重要であるという観点から、個別の危機に即した対応が可能となる柔軟性を維持することが必要だと考えています。したがって、将来の危機において現実に役立つ柔軟性を備えた運用の枠組みと具体的な運用指針が作られることを期待するとともに、個別の危機への対応の積み重ねを通じてその指針を充実させることが必要だと考えています。 IMF内での最近の議論において、危機が生じた場合、IMFによる支援が行われる場合には、自発的なものも含め、常にPSIが必要とされることが確認され、また、IMFプログラムに関するスタッフレポートの中で、どのようにPSIを確保するか明記することが合意されたことは、PSIの改善に向けた第一歩であり、これを歓迎します。また、どのような場合に、協調的なPSIが必要となるかについて概ね合意が得られたことも歓迎します。 民間セクターが指摘するように、危機の予防手段として、民間債権者を含めた関係者間の対話を促進することは重要です。この問題を進展させるためには、「資本市場諮問グループ」の活用も有効な手段の一つであると考えます。 公平性の確保など、PSIと公的二国間債務との関係は極めて難しい問題です。特に、個別の危機におけるIMFによるPSIの検討とパリクラブによる債務削減との関係が未だ不明確である点は今後の大きな課題であると考えます。今後、IMFとパリクラブの事務局間で、検討のための対話が進められることを強く期待します。また、効果的にPSIを実現するために、必要な場合には債務国による支払いの停止を利用する可能性についての検討が始まっており、今後の議論の進展を期待します。
| ||||||||||||||||||
| IV.拡充重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ 重債務貧困国に対する債務救済措置については、これまでに10ヶ国に対して拡充されたHIPCイニシアティブの適用が決定されていますが、さらに多くの重債務貧困国において貧困削減と経済成長との好循環を早期に構築するため、迅速かつ効果的に同イニシアティブの適用を進める必要があります。IMFは世界銀行とともに、本年5月に設立した共同実施委員会を活用し、そのための一層の努力を行うべきです。 我が国は、債権国中最大規模の2国間ODA債権を100%削減することとしていることに加え、非ODA債権の100%削減や、HIPCトラストファンドに対する最大2億ドルまでの拠出を表明し、既に実行に移しています。今後、HIPCイニシアティブ適用対象国が増加することを踏まえ、トラストファンドへの拠出を表明している各国も、必要なタイミングで貢献を実行することが強く求められます。 また、重債務貧困国自身も、経済改革の推進や、市民社会や二国間ドナー等の参加を確保しながら貧困削減戦略の策定に積極的に取り組む必要があります。
| ||||||||||||||||||
| (以上) |
