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第95回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成29年4月22日)

  1. はじめに(IDA第18次増資)
     まず、国際開発協会(IDA)第18次増資交渉が成功裏に妥結したことを祝福します。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、IDAに求められる開発資金の量が増加する一方で、多くのドナー国が厳しい財政状況に直面しており、開発資金の負担能力には限界があります。こうした中、前回増資で導入した融資貢献に加え、IDAが市場から資金を調達するという新たな革新的ファイナンス手法の導入により、途上国支援に必要な資金量を確保できる素晴らしいパッケージに合意できたことは大変喜ばしいことです。
     IDA第18次増資において、日本が重視するパンデミックや自然災害への予防・備え・対応の強化を、具体的な重点政策に位置付けたことを高く評価します。日本は約3,088億円の出資と約2,924億円の融資貢献を行うことにより、貢献シェアを前回の10.0%から10.3%に増加させることとしました。IDA加盟措置法の改正が4月14日に国会で成立したことを、ここに報告できることを嬉しく思います。

  2. Better and Stronger WBGに向けて
    (1)Forward Look、a Stronger WBG for All
     Forward Lookの進捗が報告書で示されたことを歓迎するとともに、Stronger Bankへ向けた検討を進める礎として、Better Bankへ向けたさらなる取組を求めます。
     第一に、Forward Lookの実行に当たっては、世銀グループの途上国支援において、自然災害やパンデミックなどの広汎な危機に対する予防・備え・対応を含む、レジリエンスの強化に取り組むことが重要です。世銀グループが、この分野でさらなる進展をもたらすことを奨励します。
     第二に、国際的な開発目標は世銀グループだけでは達成できないことから、他の国際開発金融機関(MDBs)を含む開発パートナーとのマルチラテラルな連携・協調を進めることや、民間・国内の資金動員をさらに高めることが欠かせません。この点で世銀グループが強力なリーダーシップを発揮することを期待します。民間資金動員に当たっては、カスケード・アプローチが鍵となりますが、途上国政府自身が民間資金の活用や上流改革の実施についてオーナーシップを発揮することを尊重することが重要です。
     第三に、支援国の所得水準に応じて適切な支援を実施することも重要です。特に、高中所得国(UMIC)向け支援については、IBRDの限られた資源を有効に活用する観点から、その支援の範囲を環境等の国際公共財といった分野に集中させるべきです。IFCについては、より所得水準の高い国において民間資金動員をより効果的に実現できることから、積極的なUMICへの関与が正当化されます。
     このようなBetter Bankへ向けた取組が達成できれば、日本は、世銀が期待される役割を積極的に果たし多様な開発課題に対応するためのStronger Bankの実現を支持することが可能となります。
     しかし、Stronger Bankの実現に向けては、融資規模や資本増強の適切な規模について、説得的な根拠に基づく追加的な選択肢の提示が必要です。増資以外の資本増強へ向けた方策についても、IBRD については所得水準に応じた金利引上げ、経費削減、バランスシート最適化を含む、 IFC については増資以外の自助努力による資本増強の方策を含む、具体的な提案を求めます。

    (2)Shareholding Review
     投票権見直しについては、これまでの議論で提示されたあらゆる選択肢を織り込んだ今回の報告書を歓迎します。動的計算式はあくまでも議論の出発点であり、議論のための参考に過ぎないことを忘れてはなりません。投票権には権利と責任が伴い、世銀の株主の発言力は、各株主の世銀の活動への貢献を適切に反映すべきです。この点は、世銀にとってふさわしいガバナンス構造を作り上げるにあたり極めて重要です。また、すべての国にとって概ね受け入れ可能な結論を得るには、急激な投票権シェアの変動を避けることも重要です。
     株主の役割と責任を適切に反映し、投票権見直しを円滑に実現するには、具体的な調整方法についての堅固な合意形成に向けて、しっかりと議論を積み重ねていくことが必要です。その際に、日本としては、動的計算式に基づく配分を太宗とすべきこと、IBRD 協定改正を必要とせずに基礎票配分と同等の効果をもつ「全加盟国への均等配分」の利点を考慮すべきこと、principles-based forbearance が急激なシェア上昇を回避するために最も直接的で有効なツールであること、の3 点が特に重要であることを改めて強調しておきます。
     投票権見直しは、Stronger Bank と一体的に議論していく必要があります。現在、増資を取り巻く環境が変化してきていますが、そうした中にあっても、IBRD とIFC の一般増資及び選択増資が同じタイムフレームで議論され、結論が得られることが重要です。

  3. 日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援
    (1)防災
     2012 年のIMF・世銀東京総会で、開発における防災主流化の重要性を確認して以降、防災分野での貸付が増大し、防災の主流化が着実に進展していることを歓迎します。IDA18 においても、そのポリシーコミットメントで、全てのIDA 国の国別戦略に気候変動や防災の観点を盛り込むため の検討を行うことを明記するなど、防災の主流化へ向けた取組が継続していることを高く評価します。以上のような流れが途切れることのないよう、世銀グループが、防災の重要性に関する世銀スタッフや途上国の認識を引き続き高めることを期待します。
     また、日本=世銀防災共同プログラムを通じた、日本と世銀東京防災ハブとの連携も進展しています。具体的には、これまで46 百万ドルに及ぶ防災に関する技術支援を通じ、15.5 億ドルもの世銀による防災分野への投資を生み出しました。こうした取組を今後も継続し、さらなる防災主流化へ向けた連携を進めていきます。

    (2)国際保健
     国際保健については、公衆衛生危機への対応の強化と、危機への予防・備えに資するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を着実に推進していくことが重要です。
     危機対応については、世銀が設立した危機発生時における迅速な資金供給メカニズムである パンデミック緊急ファシリティ(PEF)に対して、日本は、昨年5 月に5,000 万ドルの支援を表明し、 昨年10 月には、初年度の拠出を行ったところです。引き続き、世銀によるPEF の立ち上げへの更なる取り組みや、各国からのPEFへの資金的サポートを期待します。
     また、危機への備えについては、世銀が途上国のオーナーシップを尊重しつつ、WHOや他ドナーと連携して各国でUHCを推進していく事が重要です。日本は本年1月、世銀との「UHC共同イニシアティブ」に合意し、アフリカやアジア等のパイロット国向けのUHC推進支援やUHCに係る知見のグローバルな普及促進を通じ、途上国におけるUHC推進や危機への備えの強化を世銀と共に支援していくこととしています。これらの取組みをフォローするため、本年12月、日本は世銀・WHOとともに、UHCの進捗に係るハイレベルのモニタリング会合を東京で開催します。

    (3)質の高いインフラ投資
     質の高いインフラ投資は、途上国の安定した経済成長を実現する基盤として極めて重要です。G7やG20 では、ライフサイクルコストでみた経済性、安全性、自然災害に対する強靭性、社会環境基準、人材育成とノウハウの移転等に配慮した質の高いインフラ投資を推進する重要性を確認するとともに、世銀を含むMDBsに対し、質の高いインフラ投資を支援するよう奨励しました。また、インフラの運営にあたっては、開放的で、透明で、非排他的なものとして連結性を向上させることが大事です。
     質の高いインフラ投資の推進における具体的な進捗として、日本は、世銀に「質の高いインフラパートナーシップ基金」を設立し、世銀による質の高いインフラ案件の組成を案件の準備から実施に至る各段階で支援しています。また、東京開発ラーニング・センター(TDLC)は、日本の都市インフラの知見を途上国へ広めるためのシティ・パートナーシップ・プログラムを実施しており、震災の教訓を踏まえたまちづくりや環境に配慮したまちづくりなど、日本の都市が有するグッドプラクティスが、途上国の都市問題の解決に活かされることを期待します。

  4. 結語
     世界がますます多様で複雑な開発課題に直面する中、それら課題に対処するため、世銀グループが、その根幹であるマルチラテラリズムを軸に、様々なドナーや他の国際機関、民間セクターの力を動員することを期待します。
     日本としては、世銀グループに対して、資金面、政策面、そして人的な貢献を積極的に行い、世界の経済成長と貧国削減に貢献してまいります。


(以 上)