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第88回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成25年10月12日)

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  1. はじめに

     日本はこれまで、自由で豊かで安定した国際社会の実現に向け、国際機関経由での支援と二国間協力との連携により開発課題の解決に取り組んできています。さらには、開発に関する世界中のステークホルダーが一堂に会する国際会議の開催を通じ、知見の集積・共有を推進しているところでもあります。
     こうした取組により途上国の開発と成長を促す上で、日本は、従来から力点を置いてきたインフラ整備に加え、最近では、保健医療や防災等、長年の経験から得た知見を活かせる分野での支援も重視しています。これらの貢献は、途上国の成長を通じ日本が共に成長することにもつながるものと考えています。
     以下、開発支援に係る日本の最近の取組みについて述べるとともに、世銀グループが取り組んでいる業務・組織改革についての日本の考えを申し上げます。


  2. 日本が取り組む途上国支援

     日本は、開発支援を通じ、自由や民主主義といった普遍的価値を共有する国との連携の強化を図るとともに、日本の技術や知見を活用した途上国の経済社会開発支援を積極的に推進しています。

    (1) 対ミャンマー支援

     まず、民主化や国民和解に向けた改革を進めるミャンマーを支援するため、日本は、世銀・IMF等と緊密に連携しつつ、ミャンマーの延滞債務問題の包括的解決を主導してきました。日本は、本年5月、円借款に係る延滞債務を完全に解消するとともに、円借款510億円のほか、無償資金・技術協力400億円の合計910億円の支援を実施する旨表明したところです。また、世銀が電力セクター向けの国際開発協会(IDA)支援第一弾を迅速に実施したことを高く評価します。引き続き、日本を含めたバイドナーや地域開発金融機関との緊密な連携の下で、支援を積極的に推進していくことを期待します。

    (2) 対アフリカ支援

     アフリカ開発会議(TICAD)は、1993年に日本の主導により創設され、以降、世銀や国連等との共催によりアフリカ開発に関する幅広い議論を行っています。本年6月に開催された第五回アフリカ開発会議(TICAD V)では、39名の国家元首・首脳級を含むアフリカ51カ国、31カ国の開発パートナー諸国及びアジア諸国、72の国際機関及び地域機関の代表並びに民間セクターやNGO等、約4,500名以上の参加が得られました。日本はこの場において、母子保健や栄養不良対策の他、紛争後国や脆弱国における雇用の促進・起業支援、そして主要産業である農業に関する支援のため、世銀信託基金を通じた5年で1億ドルの支援策を表明しました。また、アフリカにおけるインフラ、地域統合、民間セクター開発に関する取組を重視する観点から、アフリカ開銀との協調融資の枠組み(EPSA)の拡充を表明したところです。
     これらの施策を通じ、多様なビジネスチャンスのある成長センターとしてのアフリカに期待する日本企業と、日本企業のアフリカ進出に期待を寄せるアフリカとの連携が強化され、互いに利益をもたらす関係が構築されていくことを期待します。
     また、今般、アフリカ開発基金(AfDF)の増資が妥結したことを歓迎します。アフリカが「質の高い成長を伴う繁栄する大陸」に向けて歩みを進める中、AfDFには一層の取り組みを期待しています。


  3. グローバルな課題への取組み

    (1) 国際開発協会の第17次増資(IDA-17)

     現在、国際開発協会(IDA)の次期増資のための交渉が行われており、ドナーからのローン貢献の導入など、先進的な貢献方法についても議論がなされています。ローン貢献が実現すれば、IDAが活用可能な資金量は拡大すると見込まれ、平均所得水準が上昇しつつも依然多くの貧困層が存在するインドへの移行支援など、開発効果の高い形での活用が可能となると考えられ、ローン貢献の導入は歓迎すべきであると考えます。また、ローン貢献が正しく評価されることを望みます。
     増資交渉の場では脆弱国支援のあり方についても議論されていますが、単に資金配分の拡大を目指すだけではなく、個別の国別支援フレームワークにおいて具体的な支援内容が計画され、リザルツがきちんとモニターされることが重要と考えます。また、援助資金を最大限効果的に使用していくという観点から、援助資金の配分に際しては、これまでの援助対象国のガバナンス強化を促すPBA(Performance-Based Allocation)の利点を出来る限り尊重していくことが必要です。

    (2) 保健医療

     保健医療は、人々の健康と命を守るだけではなく、経済と社会発展の基盤も築くものです。そのためには、全ての人々が、保健医療サービスを必要な時に支払い可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の仕組みを創ることが重要です。
     日本は、1961年に国民皆保険制度を導入して以降50年以上の実績を有します。同制度は、公平で身近な保健医療サービスを国民にあまねく提供することにより、安定的な経済成長の基盤形成に貢献してきました。また、現在の高齢化社会においては、制度の持続可能性を高めるべく効率化を進めています。これに関連して、日本の国民皆保険制度をはじめとするUHCに関する経験・知見を途上国に活かしてもらうために、日本は、世銀とともに共同研究を実施しており、本年12月には、政策提言をとりまとめ、研究成果の発表会議を開催する予定です。
     保健医療に関して更に最近の動きを申し上げると、本年6月のTICAD Vにおいて、安倍総理は「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)をジャパンブランドにしたい」旨を表明しました。また、本年9月の国連総会における一般討論演説においても、総理から、UHCの促進を通じた医療アクセス改善、母子保健の推進の重要性を指摘したところです。世銀との連携を通じ、母子保健や栄養不良対策等の分野における日本及び世銀の先進的な知見を活かし、取り組んでまいる所存です。

    (3) 防災・地球環境問題

     大規模な自然災害は、人命だけでなくそれまでの開発の成果を一瞬にして奪うものであり、最も深刻な影響を受けるのは脆弱な貧困層です。事後対応では遅く、災害への事前の備えに必要な支援を適切に実施することが重要です。この観点から、IDA-17の特別テーマに「自然災害リスク管理」が含まれていることを歓迎します。
     持続可能な開発のためには、自然災害リスク管理を踏まえた開発、即ち防災の主流化が非常に重要です。我が国には官民を挙げて長年の経験により培った優れた防災の知見があり、これを生かすべく構想された東京防災ハブを拠点に、防災の技術・経験の移転が行われることを期待します。
     地球環境問題も、放置すれば自然災害リスクを高めるなど、持続的な成長を阻む大きなリスク要因です。日本は、気候変動対策をはじめとする、地球環境の保全に向けた国際的な取組を支持してきており、とりわけ、同分野において20年以上にわたり先駆的で幅広い取組を行ってきた地球環境ファシリティ(GEF)の役割は極めて重要です。現在、GEFは石井CEOの下で第6次増資の議論を行っていますが、国際社会が一体となり地球環境問題の解決に向けて積極的に取り組む必要があります。日本は、GEFがその強みを活かして、気候変動対策や生物多様性保全のほか、水銀条約等の新たな分野も含む複数分野に跨ったインパクトのある地球環境益を実現するとともに、世銀等のパートナーと協力しながらリーダーシップを発揮していくことを期待します。


  4. 世銀における取組について

    (1) 業務・組織改革について

     世銀グループにおいては、グローバルな開発課題の解決に向け設定された「最貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という2つの戦略目標の下、プロジェクト重視の企業文化から転換し、開発問題の解決を重視した支援を行う "Solution Bank" を目指すとの方向性を示すとともに、効率的な業務運営のための機構改革が進められています。
     日本としては、今後もキム総裁の下での改革の推進に協力します。もとより、様々な開発課題に対応していくには、既存の手法でのアプローチが最善か、不断の見直しが必要です。特に開発支援は、複雑化する国際経済情勢、国際金融市場の動向と無縁ではなく、世銀は、Solution Bankを目指す中で、今後の世界経済の大きな潮流及び世界的な経済危機が生じた場合に貧困層に与えうる影響等、より広い視座の下で中長期的な開発戦略を描ける組織であってほしいと考えます。今後は、二大目標実現のため、より迅速に戦略の具体化を進めることを期待します。
     組織改革では、各部局が持つ知識を組織全体でより効果的に活用するため、これまでのネットワークを改編し、Global Practiceという新たな機構の創設に向けた検討が進められていると承知しています。組織改革にあたっては、権限や責任の分配が重複しないか、不明確なものとならないか、更に、職員が能力を最大に発揮できる環境となっているか、常に留意する必要があります。新たな戦略を組織内に浸透させる過程においても、二大目標の達成のために遅滞なく業務が行われることを強く期待します。なお、Global Practiceについて申し上げれば、開発援助のあらゆる面で防災の観点を取り入れるべき、というのが日本の主張であり、防災の観点が重点化されることを期待します。
     また、国際金融公社(IFC)、多数国間投資保証機構(MIGA)を含めたグループ内の各機関全体で戦略目標の達成を目指すためのOne World Bank Groupの取組に期待します。IFCやMIGAが築き上げた強みを損なうことなく各機関間でのシナジー効果を発揮し、トータルなソリューションを提供することが重要と考えます。

    (2) インフラ需要に対応する新しい仕組みの構想について

     現在、世銀グループをはじめ、各開発金融機関において、グローバルに増大するインフラ需要に対応する新しい仕組みが検討されています。日本は、政策金融機関である国際協力銀行(JBIC)の融資や出資を活用することで、アジア等におけるインフラ事業に民間資金の動員を図っており、世銀に対しては、これまで開発分野で培った知見等を生かした投資環境整備面での貢献を主として期待します。
     また、こうした仕組みは、開発課題の解決に資する効率的なものでなければなりません。世銀グループにおいて、インフラ分野における支援は従来からIDAや国際復興開発銀行(IBRD)を通じて実施されていますが、新しい仕組みのため限られた人的資源を投入することにならないか、或いは、各開発金融機関との役割分担を重複なく整理できるのか等、十分な検討が必要と考えており、日本としては、こうした観点から引き続き議論を注視してまいる所存です。

    (3) 人材面からの日本の貢献について

     世銀において大きな機構改革がなされようとする今日、世銀の進むべき道を策定する重要な仕事に、日本としても人的貢献を含め積極的に貢献していきたいと思います。
     また、現場レベルではこれまでも、紛争地域での経済再建に携わったり、アフリカのビジネス環境改善のために現場で奮闘したりと、多くの日本人が世銀スタッフとして活躍しています。しかしながら、先に述べた保健医療や防災を含む幅広い分野において、日本人がその有する技術力、協調性、困難を乗り越える力を発揮することで、より良い世界を築くために貢献できる余地はまだ多く残されているものと確信します。


  5. 結語

     昨年秋に東京で開催された世銀・IMF総会は、日本が東日本大震災からの復興に取り組む中、世銀・IMFはじめ各国関係者の皆様の御協力の下、世界各国から多くの参加者を得て、国際社会が直面する経済や開発をめぐる重要課題についての様々な会合が開催され有益な議論が行われるなど、成功を収めることができました。その際扱われた防災等の重要なテーマが、その後も掘り下げて議論され、更には徐々に実践へと移されつつあることを喜ばしく思うとともに、今後大きな成果として実を結ぶことを期待します。

     最後に、昨年の総会は、1964年以来の東京開催でしたが、同じく1964年に東京で開催された夏季オリンピック・パラリンピックが2020年に再び東京で開催されることが先日決定されました。この場をお借りして、皆様の御支援に感謝申し上げるとともに、再び世界各国から多くの参加者をお迎えすることを楽しみにしています。

(以 上)