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第87回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成25年4月20日)

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  1. はじめに

     昨年秋に東京において開催されたIMF・世銀総会は、日本が東日本大震災からの復興に取り組む中、世界各国から多くの参加者を得て、国際社会が直面する経済や開発を巡る重要課題についての様々な会合が開催され、有益な議論が行われるなど、成功を収めることができました。世銀・IMF始め、各国関係者の皆様のご協力に改めて感謝申し上げます。

  2. 世銀グループの共通ビジョン

    (1)2つの戦略目標

     今般、世銀グループは、キム総裁のビジョンを反映し、グループ各機関が一体となりシナジーを発揮しながら達成すべき2つの戦略目標として、「極度の貧困の撲滅」及び「繁栄の共有」を新たに設定しました。貧困を世界から消滅させるという力強い決意、そして、持続的な貧困削減のためには国民各層に裨益する経済発展が重要であるという観点から大きなビジョンを示すことに賛同します。
     その上で、まず「極度の貧困の撲滅」について申し上げます。2030年までに絶対的貧困層を3%以下にするという野心的な目標を実現するためには、特に多くの絶対的貧困層を抱える南アジアやサブサハラ・アフリカにおいて、経済成長のペースを加速させる必要があります。開発のエンジンとなる民間セクターの振興が鍵です。世銀グループが一体となり、国際金融公社(IFC)や多数国間投資保証機関(MIGA)による支援手段も活用して、民間資金をより効果的に開発に動員する触媒としての機能を果たし、これまで以上に、民間主導の経済成長を根付かせるような支援を行うことが求められます。
     次に「繁栄の共有」について申し上げます。低所得者層の所得水準をモニターし、経済成長が国民各層に裨益するようにすることは、社会の安定にも資する重要な視点であると評価します。包摂的な経済成長を実現するためには、保健医療制度を整備し健康な労働力を市場に供給したり、今後も増え続ける人口を吸収するだけの雇用の創出を行う必要があります。また、2014年の『世界開発報告(WDR)』のテーマにも取り上げられていますが、開発に係るリスクを管理し、自然災害や環境変化等のリスクに脆弱な貧困層への支援を適切に実施する必要があります。
     世銀グループには、これらの観点を秋の年次総会で提示される新たなグループ戦略に盛り込み、2つの戦略目標の実現のため、今後、オペレーション・レベルでその取組を具体化していくことを期待します。

    (2)国際開発協会の第17次増資(IDA-17)

     国際開発協会(IDA)は、低所得国を対象とした支援機関であり、持続的な貧困削減を実現していく上で最も重要な機関です。現在、IDAの次期増資のための交渉が行われていますが、そこでの議論も、上記の世銀グループ全体の戦略目標と親和的であるべきです。この観点から、IDAの卒業政策、新たな拠出方法、資金配分メカニズムについて申し上げます。
     まず卒業政策について。IDAから支援を受けている国が、一人当たり所得が中所得国の水準に達し、IDAから卒業することは経済発展の成果であり歓迎すべきことです。他方、貧困層を多く抱えるIDA卒業国に対しては、貧困削減のための取組を継続しつつ国際復興開発銀行(IBRD)からの支援に円滑に移行できるよう、IDAの融資条件を厳格化し融資規模を抑制した上で、支援を継続させる経過措置を導入することが望ましいと考えます。
     新たな戦略目標を達成するためには、IDAにおいて、一定の資金規模を確保することが必要です。しかし、多くのドナー国は厳しい財政状況に直面しており、援助資金の負担能力には限界があると言わざるを得ません。そのような観点から、今般、IDAへの新たな貢献方法が検討されていることは適切です。制度の導入にあたっては、これまで長年に亘って拠出してきたドナーの貢献を正当に評価するとともに、ドナー間の公平性が保たれるよう、丁寧に制度設計の議論が行われることを求めます。
     また、援助資金を最大限効果的に使用していくという観点から、援助資金の配分に際しては、引き続き、援助対象国のガバナンス強化を促す資金配分メカニズムを尊重することが望ましいと考えます。
     以上の観点を踏まえつつ、日本は、主要ドナー国として今回もIDA増資交渉に積極的に参加するとともに、資金面・人材面においても積極的に貢献する所存です。

  3. 日本が取組む開発課題

     次に、日本の開発課題への取組、特に世銀との協力に関し、上記の「2つの戦略目標」に関連するものとして防災、保健医療、及び地球環境問題、地域に関連するものとしてミャンマー及びアフリカ、そして最後に円借款の見直しについて申し上げます。

    (1)防災

     自然災害は持続的で包摂的な経済成長を阻む大きなリスクです。大規模な自然災害が発生すると、人命だけでなくそれまでの開発の成果が一瞬にして奪われます。中でも最も被害を受けるのは貧困層や脆弱層であり、世銀グループの新たな戦略目標を達成するためにも、防災は十分に配慮しなければならない重要な開発課題です。国際社会は自然災害関連に多額の支援を行っていますが、その大半は事後対応に集中しています。自然災害への事前の備えを十分に行うことにより、事後対応のコストを下げることが可能です。
     このような観点から、日本と世銀は、昨年秋の東京総会において「防災と開発に関する仙台会合」を共催し、防災の主流化の重要性を確認し、日本に蓄積されたノウハウや専門性を活用して、技術支援や財政的な支援を強化する旨を表明しました。
     世銀に対しては、世銀の業務において防災の主流化を進めるため、明確な指標と目標値を設定し、モニタリングをしていくことを求めます。
     日本としては、途上国の需要に応じて、日本国内の行政機関、企業、研究者等が有する防災の知見や技術を活用した防災支援を、世銀防災グローバルファシリティ(GFDRR)と共に実施して参ります。その中で、途上国のニーズと日本の技術のマッチングや情報発信を行うための「世銀防災ハブ」を東京に設置し、世銀研究所(WBI)とも連携して参ります。これらの防災支援に対し、5年間で最大100百万ドルの支援を表明します。
     また、日本は、世銀等と協力の上、太平洋島嶼国5カ国(サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツ、マーシャル諸島)を対象とした太平洋自然災害リスク保険のパイロット・プログラムを本年1月に開始しました。日本の二国間支援では、災害復旧スタンドバイ円借款を創設し、途上国における災害後の復旧段階で発生する資金需要に対し、迅速な支援を行って参ります。

    (2)保健医療

     保健医療は、人々の健康と命を守るだけではなく、経済と社会発展の基盤も築きます。そのためには、全ての人々が、保健医療サービスを必要な時に支払い可能な費用で受けられる仕組みを創ることが重要です。日本では、約50年前に国民皆保険を導入したことにより、世界で最も優れた健康長寿社会を達成するとともに、所得再配分を促進し、社会の連帯感を強化し、結果として安定的な中産階級の育成につながりました。こうした日本の経験を途上国に活かしてもらうために、日本は、世銀とともに共同研究を実施しています。本年12月には、政策提言をとりまとめ、研究成果の発表会議を開催する予定です。

    (3)地球環境問題

     地球環境問題は途上国の持続的な経済成長を阻む大きなリスク要因であり、地球環境ファシリティ(GEF)はこれらの問題に取り組む途上国を過去20年間に亘り支援してきました。現在、GEFの第6次増資の議論が行われていますが、国際社会が一体となり地球環境問題の解決に向けて積極的に取り組むことが重要です。
     日本は、GEFがその強みを活かして、気候変動対策や生物多様性保全などの複数分野に跨ったインパクトのある地球環境益を実現するとともに、世銀等のパートナーと協力しながらリーダーシップを発揮していくことを期待しています。

    (4)ミャンマーへの本格支援の再開

     アジアの多くの国々は、急速な経済成長を成し遂げ、貧困人口を大幅に削減させてきていますが、アジアの中でも、ミャンマーのように、経済開発が遅れ、貧困削減が大きな課題となっているところがあります。
     日本は、改革を進めるミャンマーの国際社会への早期復帰を支援するため、世銀・IMFその他と緊密に連携しつつ、ミャンマーの延滞債務問題の包括的解決を主導してきました。本年1月には、ミャンマーの世銀、アジア開発銀行(ADB)及び日本に対する延滞債務が解消されました。今後は、ミャンマーの民主化・国民和解・経済改革を後押しし、改革の果実をミャンマー国民が早期に実感できるようにするため、国際社会がバランスよく、かつ、強力に支援を行っていくことが重要です。
     日本は、国民の生活向上、ミャンマー当局の能力構築、インフラ整備の3本柱で支援を進めていく考えです。本格支援の第一弾として、3月末に510.5億円の円借款による支援にコミットしました。世銀も早期に支援を本格化させることを期待します。

    (5)アフリカ開発会議(TICAD)

     日本は、1993年にアフリカ開発会議(TICAD)を立ち上げ、長年に亘り、アフリカ開発に向けた国際社会の取組を主導してきました。本年6月に世銀等と共催する第5回アフリカ開発会議(TICAD V)では、現在めざましい経済成長を遂げているアフリカにおいて、その成長の質的向上を図るため、@強固で持続可能な経済、A包摂的で強靭な社会、B平和と安定をテーマに議論が行われる予定です。
     近年のアフリカの民間主導の経済成長を定着・持続させるためには民間セクターへの資金供給を円滑化し、民間セクター活動の基盤となるインフラ整備を促進する必要があります。同時に、保健分野など、包摂的な社会つくりのための配慮も必要です。そのような観点から、日本は、世銀グループやアフリカ開発銀行と共同で新たな支援策を検討しています。横浜で皆様をお迎えすることを楽しみにしています。

    (6)円借款の見直し

     最後に、日本が二国間で実施する円借款制度について大きな見直しを行うこととしましたので、ご紹介します。
     まずは重点分野の見直しと譲許性の引き上げです。従来の重点分野を見直し、日本に強みのある技術やノウハウを提供できる環境、人材育成、防災、保健・医療の4つを重点分野とし、これらの分野に該当する案件に対しては、円借款の積極的活用の促進のため、従来以上に有利な供与条件を設定しました。これらにより、日本が有する知見を共有しつつ、世界に貢献して参ります。
     また、中進国に対しては、これまでも環境、人材育成、格差是正、防災・災害対策の分野について円借款の供与を行ってきましたが、対象分野を拡大し、広域インフラ及び農業といった分野や、日本の知見や技術が最大限活用できる分野についても供与することといたしました。
     さらに、毎年の未貸付残高に課してきたコミットメント・チャージを廃止するなど、借入国にとってより使いやすい制度への変更を行いました。
     今後も、引き続き、環境・社会配慮に適切に取組み、受益国の債務の持続可能性にも配慮しながら、世銀や他の開発パートナーとも協力し、途上国の開発問題に取り組んで参ります。

  4. 結語

     現在、世銀グループでは、キム総裁のリーダーシップの下、グループの各機関の連携を強化させ、グループとしてシナジーを最大化させるための大胆な組織改革が行われています。それにより、民間セクター主導の経済成長を促すため、世銀グループが民間資金を効果的に開発に動員する触媒としての機能を果たし、また、開発に係る多様なリスクを適切に管理していくことが重要です。MIGAは小林長官の下、協定改定を通じて事業を拡大し、海外からの直接投資の促進に大きく貢献しました。これまでの小林長官のご尽力を評価するとともに、本田次期長官が一体化した世銀グループの中でMIGAの役割を更に発揮できようリーダーシップを取ることを期待します。
     日本は、世銀グループそして加盟国と、これまでも強固な協力関係を築いてきました。昨年の東京総会では、その協力関係を更に強めることに成功しました。日本は、キム総裁のビジョンの下、2つの戦略目標実現のため、世銀グループ及び加盟国とこの協力関係を保持・強化していく所存です。


(以 上)