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第86回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成24年10月13日)

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1.歓迎の辞

 まず初めに、世界銀行総裁として初めての総会及び開発委員会を迎えられたキム新総裁に対し、心から歓迎の意を表します。キム総裁のリーダーシップの下、途上国の持続可能な成長と貧困削減に向けて、世銀がより一層大きな役割を果たすことを期待します。

 本年は我が国が世銀に加盟して60年目の節目にあたります。このような節目の年に、東京において48年ぶりに、世界各国から多くの参加者を迎え、総会及び開発委員会が開催されたことを大変喜ばしく思います。

 

2.過去を振り返る 〜日本の開発の軌跡〜

(1) 我が国の経済発展・貧困削減に貢献した要因

 最初に、我が国の開発の軌跡を振り返りたいと思います。

 現在、我が国は世銀に対する第2位の出資国であるとともに、世銀の資金調達源の一つである「世銀債」の最大の投資国でもありますが、かつて、我が国は最大の世銀借入国の一つでした。

 我が国の経済発展は、良好な制度・政策環境、安定的なマクロ経済運営の枠組、質の高い労働力、良質なインフラといった国内要因に加え、ブレトンウッズ体制における安定的な国際金融環境、そして世銀などの国際的な支援によるものでありました。

 世銀から提供された資金は、1953年の火力発電プロジェクトを皮切りに、1950年代を通して、鉄鋼、自動車、造船、電力といった様々な分野で活用されました。その後1960年代に借入れた資金の多くは運輸セクターに向けられ、東名高速道路や東海道新幹線といった我が国の基幹となるインフラ整備の助けとなりました。これらの経済インフラの整備は民間投資を誘発し、民間主導による更なる経済成長へと繋がって参りました。我が国は、世銀から、31のプロジェクト、計8.6億ドルの借入を行い、返済が完了したのは1990年7月のことです。

(2) 世銀の借入国から、世界第2の援助国へ

 この間、我が国は更なる経済発展により国力を増し、やがて、困難に直面する国々や貧しい国々を支援する立場になりました。今では国際復興開発銀行(IBRD)に対する第2位の出資国(9.7%)であり、低所得国支援を実施する国際開発協会(IDA)に対しても世界第2位(18.9%)の貢献を行ってきました。

 また、世界の各地域における開発に関しても、我が国は1966年にアジア開発銀行(ADB)の設立を主導するとともに、1976年に米州開発銀行(IDB)、1983年にアフリカ開発銀行(AfDB)に加盟するなど、大きな貢献を行ってきました。さらに、二国間の貢献としても長期・低利の譲許性資金である円借款を始めとするODAの供与を通じて、アジアを中心に、大きな成果をあげてきました。

 このようにかつて世銀最大の借入国の一つであった我が国は、1966年に世銀の11番目の卒業国となり、現在では途上国への主要援助国となりました。飛躍的な経済成長を実現した新興国には、その努力に敬意を表するとともに、開発援助の世界においてより大きな役割を果たすことを期待します。

 

3.開発を取り巻く現下の課題

(1) グローバルな課題

 現下のグローバルな課題として、包摂的な成長と、それに関連する民間投資、中所得国、保健、農業の課題、そして包摂的な成長を阻むリスク要因である地球環境問題、大規模自然災害について述べたいと思います。

 途上国の貧困削減を持続可能な形で実現するためには、国民各層に裨益する包摂的な成長(inclusive growth)が重要です。具体的には、我が国や東アジアの経験に照らし、積極的な民間投資が行われるよう、適切なガバナンスを確保するとともに、経済活動を支えるインフラの整備が重要です。

 民間投資の中でも、海外からの直接投資は、国内では得ることが困難な、新たなノウハウの導入にもつながり、経済成長を加速させる効果があります。加えて、民間投資の拡大を支える金融セクターの役割も重要です。こうした観点を踏まえ、経済の発展段階に応じて、適切な順番で、金融セクターを含む海外からの直接投資や金融セクターの自由化が進められることを期待します。

 経済発展が進み、十分な資源を持つようになった中所得国も多くの貧困人口を抱えています。余裕のある中所得国の国内の格差の問題は、自らのリソースを活用していくことが望ましいものと考えます。こうした中所得国自身による努力を支えるため、世銀には、世界各地で得られた知見を動員することを期待します。

 包摂的な成長のためには、保健医療の整備が重要です。人々の健康は、社会及び経済発展の基礎を築きます。そのためには、財政的に持続可能で、全ての人々が、保健医療サービスを平等に受けられる仕組みを作る必要があります。我が国には国民皆保険制度の整備を通じて、全国的な健康水準の向上を図った実績があります。こうした我が国の経験を世界と共有するとともに、保健分野における途上国の課題分析を行うため世銀との共同研究を開始しており、来年秋までに、政策提言をまとめたいと考えています。

 途上国において就労人口の多数を占める農業部門の発展は、包摂的な成長に不可欠です。農業支援においては、公的セクターだけではなく、生産・加工・流通業者等の民間セクターの資金アクセスの改善等を図る必要があります。このため、我が国は、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が管理する世界農業食料安全保障基金(GAFSP)に対して、今後3年間で、3,000万ドルの貢献を行っていきたいと考えています。

 地球環境問題は包摂的な成長を阻む大きなリスク要因です。我々はこれらの環境問題のリスクの蓄積を最小限に抑える開発のあり方として、経済成長と環境保全を両立させるグリーン成長を目指す必要があります。グリーン成長の実現のためには、気候変動も含めた地球環境問題を、持続的な開発・環境政策に組み入れていくことがますます重要となっています。本年の8月には、石井菜穂子(いしい・なおこ)氏が地球環境ファシリティ(GEF)の新CEOとなりましたが、我が国としては、世銀との協力のもと、GEFが開発途上国の地球環境問題に対して、効果的で効率的な支援を着実に遂行していくことを期待しています。

 包摂的成長を脅かすリスクとして自然災害も挙げられます。大規模自然災害は一度発生すれば、多数の人命が奪われるだけでなく、人々の離散やコミュニティの崩壊を招くとともに、長年の開発の努力の成果が一瞬で損なわれます。昨年3月の東日本大震災の悲劇は、国際社会全体として、改めて、防災対策の重要性を認識するところとなりました。総会・開発委員会に先立ち、我が国は、9日及び10日に「防災と開発に関する仙台会合」を世銀と共催しました。そこでは、開発のあらゆる側面において、防災の観点を取り込んでいくことの重要性が確認されました。世銀には、仙台ステートメントを踏まえ、その業務の中に、防災の観点をこれまで以上に取り込んでいくことを期待します。我が国は、今後も、世銀と協力して、より災害に強い世界を構築するため、我が国の防災に関する知見、技術や人材を使って貢献していきたいと考えています。

(2)各地域の課題

 次に、各地域の課題について述べたいと思います。

 まず、アフリカです。アフリカでは、2000年代初頭まで長きに亘る経済停滞が続いていましたが、過去10年間は高成長を維持しています。これは、主として資源価格の上昇や政治的安定の拡大を背景としたものですが、経済成長を持続的なものとするためには、民間主導による経済成長が重要です。こうした観点から、我が国は円借款の供与により、インフラ整備を図るとともに、アフリカ開発銀行を通じ民間セクターに対する資金供給を行って参りました。我が国は、来年6月、横浜で、世銀と第五回アフリカ開発会議(TICADX)を共催します。世銀と緊密に協力しつつ、多くの方々の参加を得て、大きな成果を挙げたいと考えています。

 10月15日に、アフリカ開発銀行のアジア代表事務所が東京に開設されます。アジア代表事務所は、世界の成長センターであるアジアとアフリカを結ぶ上で大きな役割を担うものです。アフリカの開発やビジネスに熱意を持つ企業との橋渡しを期待します。

 次に、中東・北アフリカ地域(MENA)です。「アラブの春」は、中東・北アフリカ地域における包摂的成長の重要性を改めて浮き彫りにしました。職業訓練や民間投資促進のための法制整備を図る観点から、我が国は、ドービル・パートナーシップMENA移行基金に対して、今後3年間で、1,200万ドルの貢献を行っていきたいと考えています。

 そして、ミャンマーです。ミャンマーでは、2011年3月の民政移管以降、テイン・セイン大統領の下、民主化・国民和解・経済改革が急ピッチに進展しています。こうした改革努力を国際社会が一丸となって後押しして同国の国際社会への復帰を支援することが重要です。我が国はこれまで、同国の国際社会への復帰を助けるため様々なアプローチを実施してきました。10月11日に開催された東京会合でも、ミャンマー側より、これらの努力を積極的に進めている旨の説明があり、国際社会としてそうした改革努力を支えていくことの重要性が確認されました。我が国は、世銀・ADBが来年1月に延滞債務の解消を目指していることを表明し、本格的な支援の道を歩みだしたことを歓迎します。我が国も、来年1月、1987年までに供与した譲許的なローンの延滞解消を行った上で、ミャンマーに対する新たな支援を本格化し、同国の発展をサポートしていきたいと考えます。

 

4.結語

 最後になりましたが、昨年3月11日に発生した東日本大震災から1年半が経ち、我が国は現在復興に向けて力強く邁進しております。世界各国から寄せられた温かい支援と励ましに対して改めて心から感謝いたします。


(以上)