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第85回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成24年4月21日)

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 はじめに、これまで世銀グループを率いてこられ、6月末を以って退任されるゼーリック総裁に心から感謝を申し上げるとともに、新総裁に選出されたキム氏を歓迎します。

 ゼーリック総裁は、卓越したリーダーシップを発揮し、世界金融危機に機動的に対応するとともに、世銀グループの増資を実現させました。日本とのパートナーシップの強化についても、我が国が重視する、気候変動や防災などの領域において協力を発展させました。

 新興国の台頭や先進国の財政状況の悪化など世界経済の状況は大きく変化しています。7 月に新総裁に就任されるキム氏には、引き続き、開発をめぐるこうした環境の変化を踏まえつつ、途上国の持続可能な成長と貧困の削減に向けて、世銀がより一層大きな役割を果たせるよう、リーダーシップを発揮されることを期待します。

 また、今回の会議を機に開発委員会議長を退任されるアル・ハーリファ・バーレーン財務大臣に感謝申し上げるとともに、新しく議長に就任されるベルカ・ポーランド中央銀行総裁を心から歓迎いたします。

 

 以下においては、リスクと強靭性(レジリエンス)、開発をめぐる環境の変化への対応、アジア地域に対する世銀の支援について、述べさせていただきます。

 

1.リスクと強靭性(レジリエンス)

 累次の金融・債務危機や、気候変動問題、所得格差や雇用の不足を要因とした社会の混乱などは、人間の安全保障を確保し開発の持続可能性を維持する上で、様々なリスクに対処することの重要性を我々に教えてくれます。これらのリスクは、累積すれば必ずどこかで顕在化し、持続的な成長を阻害します。また、貧困層、女性、障害者や高齢者などがリスクに対して脆弱であることも忘れてはなりません。

 これらのリスクは相互に関係し、かつ急激に顕在化する場合があります。これに対応するには、そもそもリスクが蓄積しないような開発を進めることが重要です。他方、不可避のリスクに対しては、経済・社会が変化やショックに柔軟に対応できる危機管理体制や能力、すなわち強靭性を構築していく必要があります。我が国は、世銀が開発におけるリスクの重要性を認識し、2014 事務年度の世界開発報告書に、「リスクと不確実性」をテーマに選んだことを歓迎します。

 これらのリスクのうち、ここでは気候変動や自然災害をめぐるリスクに対処する重要性を取り上げたいと思います。過去40 年の間に、自然災害は330 万人の命を奪い、2 兆ドルを上回る経済損失をもたらしました。一方気候変動がもたらす海面上昇、降雨パターンの変化などは、よりゆっくりではあるものの、確実に深刻な影響を及ぼし、開発の持続可能性を脅かしています。自然環境と人間の社会活動の関係をよく踏まえないまま開発を進めれば、我々に大きな影響を与える場合があります。

 

(気候変動−地球環境の変化に対する強靭性)

 そもそもリスクの蓄積を最小限に抑える開発のあり方として、我々は経済成長と環境保全を両立させるグリーン成長を目指す必要があります。グリーン成長の実現には、細分化された形で存在する有望な技術や知見を、公的資金を触媒にして、民間の投資に結びつけていくことが必要です。すでに多くの開発パートナーが気候変動対策を進めていますが、世銀が多様な開発パートナーの協調を推進することを期待します。

 また、アフリカ諸国や小島嶼国などの気候変動の影響を受けやすい脆弱国においては、制度面や能力面の強化を重点的に行なうことが必要不可欠です。我が国は、制度・能力強化の支援(いわゆるレディネス・サポート)を、世銀と協力して積極的に行っていきます。

 GEFは、20 年に亘り地球環境問題に取り組む途上国を支援してきました。我が国はこれまでのGEFの活動を高く評価しています。GEFは、気候変動や生物多様性など地球環境分野で、革新的な技術やアイデアをテストし、その成功例を他の機関とともにスケールアップする重要な役割が期待されます。現在GEFのCEO選挙には、我が国から石井菜穂子副財務官が立候補しています。石井氏は、世界銀行での経験が長く、国際機関のマネジメントに豊富な経験を持っており、GEFの今後の課題に対処していく上で、次期CEOに最適な人物と考えます。

 

(防災−自然災害に対する強靭性)

 近年、気候変動の進行や急速な都市化の拡大に伴い、自然災害のリスクが増大傾向にあることを忘れてはなりません。自然災害のリスクを完全に回避することは不可能であり、自然災害に対して効果的な備えをする必要があります。ひとたび自然災害が起こった際の被害の大きさを考えれば、備えのために投資を行うことは、十分に合理的です。世銀は、2006 年にGFDRR(世銀防災グローバルファシリティ)を設置して以来、途上国の防災の取組みの支援を強化してきました。国別支援戦略に防災を取り入れる国は増加しており、世銀において防災に携わる職員も拡充されています。

 今後は、世銀には、以下の点についても留意した上で、防災の主流化の取組みを一層進めていただきたいと考えます。

 第一に、途上国が自国に合った適切な防災施策を実施する上で、参考となるようなガイドラインを提示して欲しいと思います。途上国の多くは厳しい財政制約に直面しています。限られた資源の中で、有効な防災の取り組みを進める上では、街づくりやインフラ整備、警戒および避難体制、教育、保険など各分野における防災施策の特質をよく踏まえた上で、効果的な組み合わせを実現していく必要があります。

第二に、中央政府レベルのみならず、地方政府やコミュニティのレベルでの防災の取組み、特に実施能力向上(キャパシティ・ビルディング)に力を注いでいただきたいと思います。国別支援戦略に防災の要素を取り入れることなどを通じて、中央政府における防災の取組み強化に関しては一定の進展がありました。今後は、防災施策を実際に実施する地方政府やコミュニティにも取組みを広げ、自然災害に対して柔軟に対応していくための草の根レベルの強靭性の強化につなげていただきたいと思います。

 我が国は、防災の取組みの強化に向けて、世銀との協力を進めていきます。現在、我が国は、世銀と協力して、災害リスク情報の管理枠組の構築と、この枠組みに基づく、民間保険・再保険を活用した災害リスク保険メカニズムの構築に向けて、大洋州島嶼国を支援しています。また、ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁プロセスにおいても、世銀の積極的な協力を得ながら、災害リスク保険の研究を進めています。

 

2.開発をめぐる環境の変化への対応

 世銀の相対的な融資規模は、新興国の南南協力の拡大や開発における民間資金の増大を背景に低下しています。しかし、これは世銀に期待される役割が低下しているということを決して意味しません。世銀は、グローバルな国際機関として、豊富な人材を有し、これまでの途上国支援を通じて膨大な知見を有しています。我が国は、世銀がこうした強みを生かし、世界の変化を捉え、これまでの発想に囚われず、開発の世界の牽引役としての役割を果たしていくことを期待します。

 新興国の台頭や先進国の財政状況の悪化など、世界経済の状況は変化しています。これに対して、第一に、新興国の世銀への資金貢献の拡大も含め、新興国の責任ある形での開発への関与を増大させることが重要です。

 第二に、より成果を重視した(result-oriented)効果的な支援(effective aid)とわかりやすい説明を行うことを通じて、各加盟国政府ひいては各国の納税者に対する説明責任(accountability)を果たすことを求めます。

 第三に、開発における民間セクターの果たす役割がますます大きくなっていることを踏まえ、民間セクターの活用にも引き続き取り組むことを求めます。そうした観点から、保証については、融資に比べ高いレバレッジが効くという意味で、より積極的な活用が求められます。我が国は、今後、世銀グループが、途上国や民間セクターにとってわかりやすい形で保証を提供できるよう、グループ全体として連携を深めていくことを期待します。

 近年、金融のグローバル化が進展する中で、投資家の政治リスクに対する関心も高まっています。このような中、MIGA は、協定改正を通じて、民間企業による出資に対するMIGA の保証を伴わない、融資への保証が可能になるなど、業務範囲を拡大させました。我が国は、これまでの小林長官のリーダーシップを高く評価しており、MIGAが、世銀グループの他の機関との連携を強化しつつ、積極的に業務を展開することを期待します。

 

3.アジア地域に対する世銀の支援

 アジアは世界経済の牽引役となっていますが、依然として世界の貧困人口の2/3(6億人)を擁しています。膨大なインフラ需要もあり、気候変動への対応や自然災害への備えも十分とは言えません。世銀が、引き続き、アジアの持続可能な成長と貧困の削減を支援していくことを期待します。

 ミャンマーについては、現在、民主化、国民和解、経済改革など様々な進展がみられており、勇気付けられるものがあります。こうした動きを確実なものとするため、国際社会が一丸となって、ミャンマーに対する支援を強化していくことが重要です。

 我が国としても、世銀等の国際機関、パリクラブや関係国と緊密に協力しながら、債務問題の解決も含め、ミャンマーの発展のため主導的な役割を担っていく考えです。

 

4.結語−東京総会に向けて

 キム氏の下で迎えるはじめてのIMF・世銀総会の成功に向けて、我が国は現在準備に全力で取り組んでおります。

 東京総会においては、開発政策における防災の主流化を進めるため、被災地の仙台では、防災に関する国際会議を開催します。昨年秋から、世銀と我が国で、東日本大震災の反省と教訓についての共同研究を進めており、同会議において、この研究の中間成果をみなさまと共有し、今後の開発政策における防災の主流化に貢献していきます。

 また、開発政策における国際保健分野の重要性に鑑み、世銀と我が国は、我が国の経験も活かし、途上国で保健サービスを行き渡らせるため、医療保険等の保健財政や医療人材育成をテーマとする共同研究を進めています。東京総会では、その狙いや進捗状況をお示しし、保健分野への投資の多面的な意義や保健サービスを拡大させるための方策などを議論することを通じて、国際保健分野における知見の深化に貢献していきます。

 震災から1 年が経ち、我が国は現在復興に向けて邁進しております。本年秋の東京総会では、東日本大震災に対する各国からの支援に感謝し、みなさまに復興を続ける日本をご覧いただくことができるよう、総会の成功に向け、皆様の協力を仰ぎながら準備を進めてまいります。

(以上)