第77回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成20年4月13日)
| 第77回世銀・IMF合同開発委員会における日本国ステートメント |
まず、IDA15次増資の成功裏の妥結を祝福致します。わが国は、IDA14次比31%増となる約3627億円の出資を行なうこととしています。そのための法律が国会で4日前に可決、成立したことをここに報告できることをうれしく思います。ミレニアム開発目標の達成に向けた国際社会の取組みは、これからまさしく正念場を迎え、IDAはその中で中心的役割を担うことが期待されます。各国が速やかに国内手続きを終え、IDA15次増資が早期に発効することを期待します。 |
| また、ゼーリック総裁のリーダーシップの下で、世銀の長期戦略の議論が進められていることを歓迎致します。とりわけ、格差是正に配慮した成長戦略により貧困削減を進めるとの方針を歓迎します。今年秋の総会において、今後の世銀の業務にどのように反映されるのかについて報告されることを期待します。 |
| アフリカにおける貧困層に配慮した成長 |
| アフリカの過去10年間の経済成長は先進国のそれを上回っています。資源豊かな7カ国が原油高騰を背景に年率9%の成長を遂げているだけでなく、天然資源に恵まれていない国のうち脆弱国を除く18カ国も平均5.5%の経済成長を続けているのは心強いことです。我々に課せられた使命は、この成長を継続させ、加速させていくことです。先進国経済が一連の金融問題を契機に変調を来たし、貿易・投資を通じてのアフリカ経済の下支えが揺らぐ可能性がある今、これは非常に複雑で困難な課題であります。民間セクター中心の持続的成長を続けていくためには、アフリカ諸国が引き続き適切なマクロ経済運営を行い、更なる投資環境整備に努めるほか、国際開発金融機関は、その強みを活かし、途上国のこのような政策運営に対して適切なアドバイスを与えることに加え、インフラ整備支援に注力すべきと考えます。 |
| その中でも、各国経済の結びつきを強める地域統合案件は、アジア各国に大きな成長の機会を提供しました。例えば、わが国やアジア開発銀行が支援の中心となったメコン回廊の整備により、カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー、タイ及びベトナムのメコン6カ国は、1992年から2006年の間に、製品輸出は4倍に、域内貿易は18倍に、観光客は2倍になりました。この間、内陸国のラオスの貧困人口割合は、52.7%から28.8%と目覚しい低下を遂げました。 |
| 15カ国もの内陸国を抱えるアフリカにおいても、市場統合により内陸国に成長の機会を提供する国境をまたぐ広域インフラの整備を積極的に進めていくべきです。わが国は、2005年にアフリカ開発銀行とEPSAイニシアティブを立ち上げ、5年間で10億ドルを上限とした譲許的融資を提供し、民間企業活動の活性化につながるインフラ整備を積極的に推進することとしました。アフリカには30近い経済回廊の計画がありますが、わが国はその半数近くに関わっています。例えば、セネガル、マリ、ニジェールを結ぶニジェール回廊建設を支援しており、モザンビーク、マラウィ、ザンビアを結ぶナカラ回廊の事前調査を行っています。我々は、アフリカ開発銀行のみならず、世銀や他のドナーとも積極的に協調し、このような広域経済圏の形成につながるインフラ整備を引き続き積極的に推進します。世銀のこの分野での積極的な活動を期待します。 |
| 他方、経済が成長するだけでは必ずしも貧困削減に結びつかないことは我々の経験の教えるところであります。成長の果実が貧困層にも均てんするよう、裾野の広い成長を実現する必要があります。世界の貧困人口の約8割が農村に居住する現状を踏まえれば、農業を抜きに貧困層に配慮した成長戦略は考えられません。アジアでは、「緑の革命」による農業所得の拡大が、長期間にわたるプロセスを経て、貧困人口の劇的な削減へ結びついていくことが実証研究により明らかにされてきました。ベトナムでは、過去15年間で、肥沃なメコンデルタ地域だけでなく、北部山岳地域も含めて貧困人口の割合を58%から16%まで顕著に減少していますが、この背景として、政府が農村インフラ整備に精力的に取り組んだことが指摘されています。 |
| サブサハラアフリカ地域では、「世界開発報告2008」で強調されたように、農業が就労人口の65%を占める一方で、農業に対する公共支出は歳出全体の4%にすぎません。過去10年間のサブサハラアフリカ地域における世銀の灌漑支援も十分なものではありませんでした。農業分野の支援に対する国際社会の関心は低いものでした。 |
| アフリカ連合は、農業に対する公共支出の割合を少なくとも10%まで高めるとの目標を立てています。サブサハラ地域においては、灌漑された地域は耕地の5%に過ぎず、その整備は待ったなしです。適切な水資源や土地の管理、品種改良も生産性向上に大きな役割を果たします。農業研究にも一層の努力が必要です。 |
| それぞれの国の貧困削減戦略の中で農業をしっかりと位置づけ、農業生産性向上に包括的に取り組むことが重要であり、世銀もこれを力強く支えていくべきであります。世銀グループによる灌漑設備の支援は、消費地である都市部に近接する地域に集中させるべきと考えます。これがひいてはアグリビジネスの発展にもつながっていくものと考えます。 |
| アフリカにおける保健問題 |
| 貧困層が成長の果実を享受するためには、死の恐怖から解放され、健康で安心して暮らすことの出来るという人間の安全保障の確保が基本条件です。しかし、現実はエイズ、結核、マラリアの3大感染症で年間約500万人が命を落とし、サブサハラアフリカでは乳幼児の6人に1人が5歳の誕生日を迎えることなく死亡、妊産婦の死亡率は先進国の200倍です。アフリカの保健問題はミレニアム開発目標の中でも最も達成が危ぶまれています。 |
| 世界が手をこまねいてこれを見ていたわけではなく、世界エイズ・結核・マラリア対策基金を通じた支援をはじめ、特定疾病対策を中心として、保健分野の援助資金は2000年の73億ドルから2007年には138億ドルまで急増しました。しかし、サブサハラアフリカに世界の疾病人口の25%が集中し、世界の医療保健従事者のわずか3%で対応しているのですから、社会的弱者が真に必要としている治療や予防措置が十分に提供されているとはいえません。 |
| ポリオや結核のような感染力の高い疾病の例を挙げれば、特定地域で集中的に予防措置を講じ、蔓延率の軽減を図ることが最大の効果を生みます。そのためには、政府が効果的な保健システムを保持し、かつ地域社会におけるヘルスワーカーの数と質とが確保されていることが必要不可欠です。今年2月にわが国で開催したグローバルヘルスサミットでは、保健システムの整備と特定疾病対策のアプローチのバランスをとりながら進めていくべきこと、また政府の強いコミットメントと地域社会の能力強化が重要であることが強調されました。 |
| 保健セクターで成果を上げることが容易ではありません。医療サービス提供者は特殊な技能・経験が必要です。そのサービス提供のためのロジスティックスが複雑であり、清潔な施設や水、電気、道路、交通手段といった広範な社会インフラが必要です。このためマルチセクターの取組みが必要であり、成果により着目する必要があります。さらに、バイダウンスキームその他の成果重視の取組み、貧困からの脱出を困難にする乳幼児期の栄養失調に着目する新たなアプローチも提示されています。 |
| 我々は、保健サービスが的確に提供されるよう保健システムの強化に力を入れていくとの2007年の世銀の新保健戦略を歓迎しています。保健システムの強化、成果重視、マルチセクターな取組みいずれのアプローチも、地域社会強化が基礎になります。わが国は、世銀に設置した日本社会開発基金を通じて、世銀が行う地域社会レベルでの保健システムの強化策を積極的に支援します。 |
| わが国は、来月日本で開催する第4回アフリカ開発会議(TICADIV)はもちろんのこと、7月のG8北海道洞爺湖サミットに向けたプロセスにおいても、アフリカにおける成長の問題や保健の問題を取り上げ、解決策を提示します。 |
| 脆弱国支援 |
| 経済成長への途を歩み始めたアフリカではありますが、20カ国程度の国は、様々な理由により、過去10年間、平均2%の成長にとどまっています。これら脆弱国をどのように成長の軌道に乗せていくか、ミレニアム開発目標の達成に向けて、国際社会が英知を結集すべきです。 |
| 内戦を経た紛争後国は、脆弱な統治体制及び国民和解の難しさを抱えています。紛争状態に後戻りしないよう、一定期間集中的な支援を継続し、復旧段階から復興段階、開発へと円滑に進めることが重要です。世銀グループは、政府のガバナンスや人材構築といった中期的な観点からの支援に注力すべきです。 |
| アフガニスタンにおいては、戦争により破壊された統治体制の構築とともに、戦前から資源がないため開発の問題そのものが課題となっています。ケシ栽培とタリバンの武装蜂起が治安回復の障害となる困難な状況にあります。しかし、こうした中でも、6百万人の子供が基礎教育を受けるようになり、乳幼児死亡率は20%減少する成果を示しています。わが国は、2002年に東京会議を主催した後、約14億ドルの支援を供与していますが、うち1億ドルは、世銀を通じて、政府や地域の住民組織の能力構築を支援しています。各村落における住民組織の構築なくして開発はなく、世銀にはこの分野でのより大きな貢献を期待します。 |
| 深刻な紛争を経験していないその他の脆弱国においても、ガバナンスの強化がなければ持続可能な成長は実現できません。資源国は、その資源ゆえに内戦が生じやすく、その結果ガバナンスが脆弱化するという悪循環に陥る国が多くなっています。資源採取透明性イニシアティブなどのガバナンスと透明性の強化に向けた国際的な取組みを全ての国が尊重すべきです。 |
| 食料価格高騰の影響 |
| 近年の原油をはじめとする一次産品価格の高騰は、途上国の経済社会に様々な影響を与えています。特に、貧困層の生活に深刻な悪影響を与える食料価格の高騰に絞って見解を述べたいと思います。 |
| 過去3年間で、食料価格指標は80%高騰しています。これが各国の食料消費価格にどのような影響を与えていくか注視していく必要があります。また、途上国の消費に占める食料消費の割合は5割を超えており、貧困層に与える影響に注意を払う必要があります。この観点から、先日ゼーリック総裁が世界の食糧問題克服のため「ニューディール政策」を提唱したことは時宜を得ており、また、問題の核心をついていると考えます。 |
| 幾つかの途上国では、緊急対応として、食料補助金や小規模農業助成金などの財政措置、食料輸出禁止措置などの行政措置をとっています。人道的観点から貧困層に焦点を当てたセーフティネットは必要です。しかしこうした措置が農業生産の増加に向けた農家の意欲の妨げとならないよう、留意する必要があります。世銀が、途上国の緊急的なニーズに迅速に対応しようとしていることを高く評価します。 |
| こうした緊急措置と同時に、中期的な対応策を国際社会として支援していくことが重要です。先ほどのべたとおり、各国とも、自国の農業政策を見直す好機です。農業部門の足腰強化に本腰を入れる必要があります。都市部と農村部のリンクを強化し、都市部の食料価格の高騰が周辺の農村部での食料の増産につながるよう支援する必要があります。小規模農家の生産性向上のための支援も時宜にかなったものと言えます。 |
| また、農業支援を強化する際に、環境の視点を忘れてはなりません。灌漑施設が適切に管理されないと土壌劣化が起こります。過伐採は森林破壊や土壌浸食につながります。持続可能な農業開発を実現するため、自然資源が適切に管理されることを確保する必要があります。 |
| 一次産品の純輸出国にとっては、今回の価格高騰は、貧困削減に向けて力強い施策を打ち出すまたとない好機であります。価格高騰による歳入拡大で一時的に財政の対応力が高まっている国にあっては、それをどのように貧困層にも配意しつつ公平に配分するか、あるいは、将来世代との公平にも配慮して活用するためにどのような制度を構築するかが今後の発展を大きく左右します。公共財政管理の重要性は言うまでもありませんが、中長期的に維持可能な公平な社会システム作りに向けての世銀のアドバイスの質が問われるところであります。 |
| 食料価格高騰への対応は新しい問題ではありません。しかし、貧困層への影響は今まで以上に大きい可能性があります。短期的な対処方針から中期的な対処方針まで、ミクロレベルの対応からマクロレベルの対応まで、包括的な取組みが必要です。国際社会が一致した行動をとらなければなりません。 |
| 気候変動問題への対応 |
| 気候変動問題は国際社会の喫緊の課題であり、開発分野においても重要な課題です。我々は、世銀をはじめとした国際開発金融機関が、マーケットメカニズム活用した資金動員策を検討し、知識サービスを提供して途上国の低炭素経済への移行や気候変動への適応能力の向上を支援することを強く支持します。 |
| 資金動員策については、保険や保証、債券発行を利用し、マーケットメカニズムを活用することを中心とすべきです。また、日本の金融機関がIDAに対して寄付する枠組みを提示したように、民間企業や個人が気候変動問題への対応に資金貢献できる枠組みも大いに奨励されるべきです。世銀グループが提案・実施している様々な革新的アイディアを歓迎し、今後の新たな試みを期待します。 |
| また、気候変動分野における民間資金の呼び水としての援助資金も必要です。気候変動のための新基金の設置が必要であり、温室効果ガス排出削減のための国際的な努力を促進することが期待されます。わが国は、この新基金の創設に向けて最善の努力を行っています。新基金は、二国間援助や国際開発金融機関融資、地球環境ファシリティの取組みを補完し、国際援助構造と整合的な形で追加資金を提供する新たなプラットフォームとしての役割を果たすべきです。今後、幅広い関係者の間で議論が深まっていくことを期待します。 |
| ボイスと参加 |
| 開発機関である世銀においては、低所得国の意見が政策やプロジェクトに反映されることがとりわけ重要です。わが国は、低所得国のボイスを高めるための改革の議論に建設的に参加する用意があります。IMFにおいてクォータ改革の合意が得られました。しかし、開発金融機関である世界銀行とIMFとでは業務の性格が異なり、必ずしもIMFのクォータの見直しと同様のことを行う必要はありません。低所得国のボイスをどうすればより反映できるかに焦点を絞り、早期に結論を得た上で早期に実施できるよう検討を加速化すべきと考えます。 |
| (以上) |
