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第69回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成16年4月25日)

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第69回世銀・IMF合同開発委員会における日本国ステートメント
(2004年4月25日   於:ワシントン)

 
  
MDG(ミレニアム開発目標)への挑戦
 
 2005年に開催されるミレニアム宣言のレビュー会合を控えて、国際社会は一体となってMDG達成に取り組んでおりますが、サブサハラ・アフリカ地域、保健衛生分野においては特に、その達成が危ぶまれています。MDGの達成に向けて、ベスト・プラクティスを見出し、それを途上国政府とドナー・コミュニティが共有し各国で広めていくことが重要です。MDG達成のためには、資金量を増やすことよりも、こうした現場のベスト・プラクティスを積み上げ、援助の質を高めていくことがより効果的であると考えます。それでは、成功への鍵はどこにあるでしょうか?途上国におけるベスト・プラクティスを見ると、そこに共通して見られる鍵は、以下のようなものではないでしょうか。

 第一に、MDGの現地化とそれを反映した貧困削減戦略文書(PRSP)です。開発途上国は、貧困の状況・制度政策環境・行政能力など異なった環境に置かれています。途上国は、それぞれが直面する環境に合わせてMDGを現地化し、その実現を目指したPRSPを策定することが必要です。PRSP策定にあたっては、それぞれの財政や債務の制約を踏まえて、政策に優先順位を付け、実現可能なものとすることが望まれます。
 
 第二に、制度政策環境の改善です。援助が効果を発揮するには、良好な制度政策環境が必要であることがコンセンサスになっています。途上国は、それぞれの制度政策環境のどこに問題があるかを把握し、PRSPにおいてその問題解決を目指さなくてはなりません。世界銀行はじめドナーは、制度政策環境の良い国や改善に努力している国に資金を優先的に配分するべきであり、またそうした行動を促進するためにも、世界銀行が行っている制度政策環境の評価(CPIA)は早期に開示されるべきであると考えます。

 第三に、援助の協調と調和化です。財政制約の下、現地化されたMDGの達成を目指すPRSPが策定されたならば、IMF・世界銀行はじめドナー・コミュニティは、一致協力してそうしたPRSPを支援して行くことが大切です。ドナー・コミュニティはまた、援助の執行コスト削減に努める必要があります。わが国も、世界銀行やADBとともに、ベトナムやフィリピンで、融資手続きの調和化を進めてまいりました。

 このように見てくると、ドナー・コミュニティが途上国政府と一体となって、その国の制度政策環境を反映したPRSPやそれに沿ったプログラムを、一致して支援できるかどうかが重要であると言えます。援助の過程において、途上国の声がきちんと反映されることは重要です。ドナーも可能な範囲で現地への権限委譲を進め、途上国の声を現場で直に聞くことが望まれます。今次委員会にプログレス・リポートが提出されたEFA-FTI(万人のための教育‐早期達成イニシアティブ)も、それぞれの対象国のPRSPとの調整を図り、PRSPに基づいた基礎教育支援がドナー間の協調の下、その国の教育開発の現状に対応した適切なモダリティを通じて行われる必要があります。資金ギャップのみに焦点をあてるのではなく、知見を共有し援助協調の実績を確実に積み重ねていくことが重要です。それではどうしたら、こうした国ごとのベスト・プラクティスを共有できるでしょうか。
 
「成果」重視の運営
 
 援助のベスト・プラクティスを広め開発の有効性を高める鍵は、「成果」重視の運営にあると考えます。先のマラケシュ会合でも確認されたとおり、途上国とドナーが協力して、援助プログラムの計画・執行・監視・評価の段階において、期待された「成果」がきちんと挙がっているかを確認し、フィードバックを行うことによって、それぞれの役割を果たしていくことが重要です。

 それでは「成果」とはどのようにして測り、監視するのでしょうか。近年、MDGを達成する経路は、多次元(multi-dimensional)で幾多のセクターに亘る(multi-sectoral) ものであることが分かってきました。識字率の向上のためには、教員の数だけでなく、農村電化率の向上が大切かもしれません。乳幼児死亡率の減少のためには、診療所の数だけでなく、診療所へのアクセス道路の改善が大切かもしれません。プログラム執行の各段階で期待された「成果」を特定し計測する時には、このような多次元的な経路を勘案することが大切であり、教育や保健セクター以外のセクターへの資源配分がおろそかにならないように配慮する必要があります。この観点から、インフラ・アクション・プランが、multi-dimensional かつmulti-sectoralな経路を重視しつつ、着実に実行されることを期待します。

 こうした「成果」重視の取り組みが、現場で動き出しMDGに目に見える効果をもたらすには、時間がかかります。MDGを達成する経路の特定や、その「成果」を表す指標の作成が、まずは重要な課題となりますが、ドナー・コミュニティと途上国政府が協力して、現実的で信頼に足る枠組みを、時間をかけて構築する必要があります。ドナーの側は、自らの援助の運営において、できる限り「成果」を重視することを目指すべきです。この点で、世界銀行の「成果」重視国別援助戦略が、なるべく多くの国で実行に移されていくことを期待します。

 「成果」重視の制度が機能するためには、統計の整備が不可欠です。多くの途上国は、「成果」重視運営を行うために必要な統計作成能力を備えていないと思われます。わが国は、国連ミレニアム・プロジェクトに資金援助を行い、また世界銀行やADBの信託基金を通じて、途上国の統計作成能力の強化を支援しています。さらに、この5月に東京でスタートする東京開発学習センター(Tokyo Development Learning Center)を活用して、地域の途上国の人材育成や行政能力強化に努めていきます。その中で、統計能力向上を優先度の高いプログラムの一つとしたいと考えています。

 
低所得国の債務持続可能性
 
 MDG達成のためには、良好な制度政策環境と並んで、低所得国への資金フローが確保されることが重要です。しかしそれが、新たな債務問題を惹き起こしてはなりません。この観点から、我々は、IMFと世界銀行が共同で策定した「債務持続性の評価の枠組み」を歓迎します。我々は、この枠組みが制度政策環境に着目していることに注目しており、この枠組みが、IMF・世界銀行の融資政策に、適切に反映されることを期待します。また、この枠組みをオペレーショナライズするにあたっては、機械的にならずに、制度政策環境はじめ個別国が置かれている条件を勘案する余地を残すことが必要であると考えます。

 MDG達成の観点から資金が必要でも、債務持続性の観点から、借入を大きく増やすべきでない国もあります。こうした国に対しては、より多くのグラントを供与すべきであるとの意見が見られます。我々はこれに反対するものではありませんが、利用可能なグラントの量が限られていることを踏まえると、債務持続性に苦しんでいる国にとっては、援助量を増やすより、制度政策環境の改善に向けて、キャパシティ・ビルディングや政策対話を行うことがまず大切であると考えます。また一般論として、ローンの場合は、貸す方・借りる方の両方において、より厳しい審査・執行・監視を通じて、援助の有効性を高める制度が構築されていくと考えます。

 低所得で債務の過重な国はまた、外因性ショックを被りやすい国でもあります。外因性ショックに対処する方法として、これまで経済構造の多様化や、保険・先物市場など金融市場を通じてリスクを緩和する方法が検討されてきましたが、短期的な万能薬はないと考えます。回り道なようでも、PRSPを通じて、ショックや変化に柔軟に対応できる経済構造を作り上げることに取り組むべきであると考えます。すなわち、外因性ショックの問題を乗り越えるためには、投資環境の改善を通じた直接投資の促進、貿易の促進、更にはPRSPを通じた途上国側における制度政策環境の改善といった努力を組み合わせて行くことが重要です。また国際社会は一丸となって、そのような途上国の努力を息長く支える必要があるでしょう。
 
ポスト・コンフリクト国に対する支援
 
 持続可能な形で貧困削減を実現するためには、開発を行うための前提として、安定的な国づくりを行い得る環境を醸成することが重要です。紛争と安定の境界線上にあるポスト・コンフリクト国やLICUS(大きなストレスの下に置かれた低所得国)に対して適切な支援を行うことが、MDGを達成するための鍵の一つです。こうした観点から、我々は、世界銀行がLICUS信託基金を設立したことを歓迎します。また先般、ベルリンにおいて開催されたアフガニスタンに関する国際会議において、国際社会の同国に対する支援が再確認されたことを嬉しく思います。ポスト・コンフリクト国に対する支援を行うに当たっては、紛争再発の防止、人道、復興の3つの観点を総合的に組み合わせることが望ましく、周辺国を含めた安定化を目指すなど、一般の低所得国における開発のアプローチに更なる工夫を加える必要があります。
 
中所得国に対する支援
 
 世界銀行が中所得国支援戦略を再考しようとしていることを歓迎したいと思います。中所得国支援は、民間資金を中核として進めるべきであると考えます。しかし現実には、国際金融市場へのアクセスという意味でも、直接投資の流入という意味でも、開発を促進するに十分な長期の民間資金が安定的に流れてこない中所得国が多数存在します。こうした国に対して世界銀行は、民間資金に替わって融資を増額することを目的とするのではなく、中所得国がいかにして民間資金を継続的に呼び込むことが出来るか、そのための制度政策環境の整備をはかることを助けるべきです。

 具体的には、金融セクター改革、公的企業の民営化推進、会計制度の改善、民間取引の係争解決制度整備、規制緩和など、民間資金流入の制約となっている要因を特定し、その改革を促すことを支援の中核に据えることが必要です。またインフラ・プロジェクトにおける官民協力が必ずしも期待された効果を挙げてこなかった事実を分析し、その教訓を活かした新戦略を構築することが重要です。IFC、MIGAを含めた世界銀行グループが、民間プロジェクトへの参加、投融資の保証など、多様な手段を積極的に活用することが期待されます。
 
終わりに
 
 MDGに代表される開発の目的は、容易に達成されるものではありません。開発の現場にいる我々は、その難しさを実感しています。しかし、開発の現場において、途上国政府、ドナー、市民社会が一体となった日々の努力の中から、成功への鍵が生み出されていることも事実です。低所得国の債務問題においても、ドナーが一致して、解決に向けて努力が重ねられています。我々の使命は、困難の度合いに挫けることなく、ベスト・プラクティスを見出し、それを共有し各国で広めていく努力を、弛みなく続けることにあると考えます。