第63回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成13年4月30日)
| 第63回世銀・IMF合同開発委員会における日本国ステートメント 黒田東彦財務官 (2001年4月30日、於ワシントンDC) |
中所得国は世界の貧困人口の多くを抱えており、貧困という世界的な課題への対応を考えていく上で、これら中所得国に対する開発援助の効果の向上を図ることは極めて重要である。高い専門性によって世界の貧困削減の取組みをリードしてきた世銀が、中所得国における貧困削減により大きな役割を果たすことが期待される。 途上国において持続可能な成長を実現するためには構造問題・制度問題への取組みが不可欠であり、中長期にわたる包括的な戦略に基づく途上国の主体的な努力を促していくことが重要である。プログラマティック・アプローチはこのような考え方をオペレーションに応用するものであり、世銀が途上国自身の改革に向けた努力を積極的に支援していく姿勢を示していることを歓迎する。ただし、経済・社会インフラの整備は貧困からの脱却に極めて重要であり、プロジェクト融資を支えてきた知的・人的・制度的資源を有効活用する視点を忘れてはならない。 途上国における構造問題・制度問題に焦点を当てていくことによりプログラム融資の比率が上昇する可能性があるが、これに伴って、公的セクター管理における高度な知識とともに、プログラム融資の拡大に伴う財務上のリスク・マネージメントの確立が重要となる。こうした戦略的方向は必然的にスタッフに要求される能力(skill mix)に影響を与えると考えられるが、世銀の培ってきた知的・人的資源を有効活用するとともに、適切なスクラップ・アンド・ビルドを行い、単に職員数が増加するだけの結果とならないようにすることが必要であろう。 中所得国への支援に関する世銀の個々の提案については、我が国としては以下の点を強調したい。
| ||
| ● | 第一に、中所得国による開発戦略書簡(Letter of Development Strategy)については、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)と同様に途上国自身が主体的に作成し国際社会に示す包括的な開発戦略として、建設的な開発パートナーシップの基礎となることが期待される。世銀との関係では、国別援助戦略との連携を通じて世銀による援助の効果の向上に繋がることが期待される。ただし、開発戦略書簡が開発援助の基軸となるためには、その枠組みに関する明確なガイドラインが必要であろう。 | |
| ● | 第二に、経済・セクター分析(ESW:Economic and Sector Work)は、世銀が途上国における構造問題・制度問題への取組みを支援する上で羅針盤としての役割を果たすことが期待される。プログラム融資の効果を向上させる観点からは、ガバナンス、適正管理評価(fiduciary assessment)、公的支出レビュー(public expenditure review)といった分野に重点を置くことが求められる。また、経済・セクター分析の充実を図る上で途上国及び世銀の負担に十分な配慮を行うことが重要であり、分析の質的向上を図るため作成過程においてIMFや地域開銀と協力し関係者との間で幅広いコンサルテーションを行うことが重要である。 | |
| ● | 第三に、借入国に対する世銀の各種分析活動をより体系的かつ包括的なものとする観点から提案されている開発政策レビュー(Development Policy Review)については、マクロ経済に焦点を当てるIMFの4条協議との間で補完関係を明確にするとともに、途上国・世銀双方の負担に関する検討を実務に則して行う必要がある。 | |
| ● | 第四に、途上国の予算サイクルと連動したプログラマティック調整融資については、プログラマティック調整融資(PSAL)の利用実績が僅かにとどまっていること、コンディショナリティが不明確なまま毎年の財政支援が行われるとの懸念が示されていること、から具体的な枠組みについて更なる検討を行った上で、パイロット的に導入し、その実施の過程をレビューしていくことによって質の向上を図っていくべきである。 | |
| ● | 第五に、世銀はマーケットから調達した資金を途上国の開発援助のために利用するための機関であり、市場からの資金調達の困難に直面した途上国に対する国際的な支援の枠組みの中で大きな役割を果たすことが期待される。このような観点から、繰延引出オプション(Deferred Drawdown Option)の提案は、途上国の改革を促しつつ債務管理の柔軟化を実現し、市場からの資金調達に困難が生じた場合への備えを提供するための方策(instrument)として検討に値するものと考える。ただし、本提案の具体的なスキーム、融資条件、発動要件等について具体的な検討が必要であり、特別構造調整融資(SSAL)との関係の整理も必要である。
| |
| 世銀の中所得国に対する支援のあり方を検討する際には、益々重要性を増している民間資本フローを締め出すことのないように業務の選択性をより強化することが必要である。このための一つの方法としては、世銀の中所得国に対する支援において社会セクター等の分野を優先させていくことが考えられる。また、選択性を強化する観点から、融資金利政策に関する包括的な検討を行うことを事務局に求めたい。 こうした諸施策に加え、地域開発金融機関の独自性に適切な配慮を行いながら国際開発金融機関の間の協調を促進すること、世銀自身の透明性とアカウンタビリティの向上を進めること、途上国の主体性とガバナンスを重視すること、が世銀の業務の開発効果を更に向上させる上で重要である。
| ||
一昨年に国際社会が承認した貧困削減戦略ペーパー(PRSP)に基づく開発援助の枠組みは着実に実施に移されており、すでに32ヶ国で暫定PRSP、4ヶ国で完全なPRSPが策定されている。我が国としては、このような進展を支えた途上国、世銀、IMF等の努力を評価する。貧困削減を達成していくためには質の高いPRSPを作成することが重要であり、PRSPの質の向上に向けて合同スタッフ評価(JSA:Joint Staff Assessment)のガイドライン作成などが進んでいることを歓迎する。 拡充HIPCイニシアティブについては、現在までに22ヶ国が決定時点に到達しており、これらの国々が貧困削減を実施していく能力を示し、早急に完了時点に到達して貧困削減を着実に進展させていくことが期待されている。今後、さらにイニシアティブの適用を進めていくためには、紛争中の、あるいは紛争から脱却しつつある重債務貧困国をいかにHIPCイニシアティブの中に取り込んでいくかが課題である。その際には、ポストコンフリクト国のおかれている特殊な状況に十分配慮し、債務救済と貧困削減とのリンクというイニシアティブの枠組みを維持しつつケース・バイ・ケースの対応を行うことが必要であろう。公的セクター管理を含めた政府の能力構築に対する支援を強化することは、こうした観点から効果的である。なお、ポストコンフリクト国への対応については、国連機関が行っている平和プロセスや人道支援等との協調を含め、他の機関との協調が極めて重要である。 重債務貧困国が長期的に債務問題から解放され貧困削減を実現していくためには、その国が十分に効率性・生産性を有する経済を構築し、持続的な成長を可能とすることが必要である。このような改革にとって途上国自身の主体的な努力が最も重要な要素であるが、他方、譲許的な資金の提供や先進国市場へのアクセスの改善もこのような努力を支援する上で重要である。また、重債務貧困国による債務の適切な管理、IMF・世銀を中心とする国際社会による債務維持可能性のモニタリング、民間資金の誘致に向けた環境整備も重要である。
| ||
各ドナーが援助政策・手続きの調和化を進めることは、途上国の負担を軽減し、援助資金のさらなる効率的な利用につながるものである。とりわけ、調達、財務管理、環境アセスメントの3分野において国際開発金融機関の間の調和が進展することが期待されており、途上国を含む関係者とのコンサルテーションを十分に行いながら議論を進めていくことを要請する。ただし、二国間支援の調和についてはDACのタスクフォースにおいて建設的な議論が行われており、このような動きに十分な配慮を行うことが必要である。
| ||
グローバリゼーションが大きく進展している中で、国際公共財に対する取組みを強化することが求められており、世銀が感染症、環境、貿易、情報通信技術などの分野で貢献を行っていることを歓迎する。また、これらに加え、グローバルな課題への世銀の取組みとしては、国際基準のフレームワーク作りへの参加、資金洗浄に対する取組みへの参加、破産手続きに関するガイドラインの策定、を挙げることができる。国際公共財やグローバルな課題への対応については、世銀の比較優位、資源配分のバランス、全体の援助戦略との整合性を考慮して選択的に対応することが必要であり、適切な協調関係を構築することを期待する。 | ||
