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第62回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成12年9月25日)

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第62回世銀・IMF合同開発委員会における日本国ステートメント

村田吉隆総括政務次官

(2000年9月25日、於プラハ)

世界銀行の改革

 世界銀行は、これまで半世紀にわたって開発に関する高い専門性に基づき開発問題に先駆的に取り組んできた。経済的にも、社会的にも、また環境の面でも、持続可能な成長を目指し、構造問題・制度問題、社会政策、途上国の主体性などに焦点を当てたアプローチを採用し、世界の貧困削減の取組みをリードしてきた。
 こうした世銀の取組みは、1999年に始まった包括的開発フレームワークにつながっている。包括的開発フレームワークは、パイロット国において試行錯誤が行われているが、その柱とする思想――長期のビジョンと戦略、開発途上国自身の強化された主体性、開発当事者の間のより戦略的なパートナーシップ、開発の結果へのアカウンタビリティ――は世界の開発関係者の間に広く浸透し開発の現場で生かされ始めている。IDA適格国の間で策定の努力が続けられている貧困削減戦略にも、包括的開発フレームワークの思想は生かされている。

 貧困削減という大きな課題に直面する我々にとって、世銀は今世紀に人類が生みだした貴重な財産であり、我が国としては、来るべき世紀に向けて世銀がより一層効果的かつ効率的に、低所得国だけでなく中所得国を含む世界の貧困削減に大きな役割を果たすことを期待している。
 こうした期待に応えて、世銀は、

 

借入国自身の政策フレームワークを尊重し、
世銀の国別支援の基礎として、借入国の政策を十分考慮に入れて、制度、民間セクターに関する評価を実施し、
借入国の政策ビジョンと世銀の評価に基づき、世銀の支援プログラムを策定して、これを実施し、
その後、貧困削減等の開発目的への世銀の貢献の監視と評価を行うとともに、借入国自身がパフォーマンスの監視と評価を行う

 

ことを内容とする「プログラム・アプローチ」を採用する提案をしている。これは、包括的な貧困削減戦略の中で借入国の主体性を尊重しながら、結果を重視するアプローチであり、世銀の業務の効果を向上させるための努力として評価できる。
 このプログラム・アプローチに基づく新たな支援手段として、IMFの貧困削減成長ファシリティー(PRGF: Poverty Reduction and Growth Facility)や借入国の予算サイクルとリンクさせたプログラマティック構造調整融資である「貧困削減支援融資(PRSC: Poverty Reduction Support Credit)」が提案されている。我が国としては、IDA適格国向けの世銀融資の開発効果を高める方策として、この導入を支持したい。世銀とIMFは、PRSCは社会・構造政策、PRGFはマクロ経済安定という形で、各々の役割と焦点を明確にすることが重要である。また、最近、世銀グループとして中所得国向けの全ての業務のあり方について包括的な検討を開始したことを歓迎する。
 また、アジア危機等の経験を踏まえ、世銀は、IMFと協力して、a)国際的に合意されたコードと基準の促進、b)金融セクターの強化について金融セクター連絡委員会(Financial Sector Liaison Committee)や金融セクター評価プログラム(Financial Sector Assessment Program)を通じた取組み、等を行っており、国際金融アーキテクチャーの強化に貢献している。今後とも、世銀の有する専門性を活用して、国毎の実情を十分考慮しながら貢献を続けることが期待される。


 このような世銀の努力は評価に値するものであるが、世界経済の様々な構造変化に伴い開発援助を巡る国際環境も変化をとげつつある中で、世銀のあり方については絶えず検討を行い、業務及び組織を改善していくことが重要である。この改善のために、次の諸事項を強調したい。

 

 

 

貧困削減に向けた効果を向上させるためには、世銀は、構造問題・制度問題や社会セクターへの取組みを更に強化することが必要である。開発途上国において採られている諸政策とそれを支える構造的・社会的基盤そのものの問題を放置していては、公正で安定した社会を達成することは困難となり、持続可能な開発が実現できないことになる。もちろん、世銀や我が国による成長が開発にとって重要であることに異論はないであろう。したがって、貧困削減に向けて、引き続き成長の果たす役割を重視しつつ、制度問題・構造問題等に焦点を当てた包括的なアプローチをとることが重要である。
 

 

自国の貧困削減に第一義的責任を負う開発途上国自身が主体的に貧困削減のための計画を立案しそれを実施することをコミットしなければ、大きな効果は期待できない。世銀は、開発途上国自身の貧困削減のための努力に対し、最善の支援を行うことが期待される。また、世界銀行に対し、開発途上国自身が貧困削減への取組みの障害となっている要因を特定し効果的に解決していけるよう、幅広い分野における能力構築を支援することを要請する。特に、借入国が策定する貧困削減戦略と世銀の国別援助戦略との連携を早期に構築することが重要である。
 

 

開発途上国における良好なガバナンスを更に重視していくことが重要である。良好なガバナンスは、開発援助の効果を支えるだけでなく、持続的な成長を可能とするための重要な基盤である。このガバナンスの問題を含め幅広い分野におけるパフォーマンスの良好な国に対する支援を強化することは、世銀の活動全体の効果を向上させるものと考えられる。
 

 

開発途上国向けの民間資本フローは益々拡大しており、世銀はこれを締め出すことのないように業務の選択性をより強化すべきである。このための一つの方法としては、融資金利政策に関する包括的な検討を行うことも考えられる。また、民間部門に対する投融資業務については更に開発効果に焦点を当てた運営を行う必要があり、そのために業務戦略、組織、評価メカニズムの包括的見直しを行う必要がある。
 

 

世銀は、融資や政策評価・調査などの業務において、地域開発銀行やその他の援助機関との協力を促進していくことが重要である。その際、世銀は他の機関の有する専門性や優位性に留意すべきである。例えば、アジア開発銀行は、アジア太平洋地域の実情に精通した効果的・効率的な業務運営を行っており、同地域の発展に大きく貢献している。また、世銀が97年以来急速に進めている意思決定権限や職員配置の現地化に関して、地域開発銀行との協調が適切に行われているのかという点や、そのコストとベネフィットについての検討が世銀理事会で早期に実現することを期待している。
 

 

世銀自身のアカウンタビリティや透明性の向上についても引き続き努力すべきである。世銀の包括的なアプローチにより、関係者の範囲は拡大しており、こうした広範な関係者との協力こそが世銀の業務の効果を高めるために必要である。これら関係者との間の対話と協調は世銀の活動の質的向上にも確実に貢献すると期待される。この観点から、情報公開政策の改訂に関する議論が外部コンサルテーションを含めて進展していることを歓迎する。

 

貧困削減と国際公共財

 最近の情報・通信・交通手段の目覚ましい発達により国境を越えた情報・人・もの・資金の移動が急激に拡大していることを背景として、エイズや環境など、開発と密接な関係を有する地球的規模の問題への対応が強く叫ばれている。これまで、具体的な開発援助の議論は支援対象の国を単位として行われてきたが、地球規模の問題に対しては、新たなアプローチが求められている。
 こうした中で、世銀が、国際公共財の定義を明確にしたことは、今後の国際公共財を巡る議論に向けた一歩として評価できる。世銀は、現在、

 

  経済的なガバナンスの改善
  貿易における統合
  感染症対策
  地球環境の保護
  情報・知識へのアクセス改善

 

を優先分野として、重点的な取組みを行っている。
 これらの分野は、いずれも我が国が開発援助における重点事項としているものである。例えば、エイズ問題はODAの中期政策の重点事項の一つに挙げられている。我が国は、1994年には「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII: Global Issues Initiative on Population and AIDS)」を発表し、UNAIDSに対する1996年以来2,300万ドルを超える拠出も含め、これまでに総額8,800万ドル規模のODAをエイズ対策として実施してきた。また、デジタル・ディバイドの問題への対応として、我が国は公的資金による包括的協力策を実施することを九州沖縄サミットに先駆けて発表し、また、世界銀行・アジア開発銀行をはじめとする国際開発金融機関の専門性と世界的・地域的な取組みにおける優位性に着目して、これらの国際開発金融機関における情報技術関連の取組みを要請するとともに、我が国はこうした取組みを支援することとしている。


 しかし、世銀が国際公共財に対する支援を行う際には、WHOなど他の機関に対する比較優位があることを確認する必要がある。金融機関である世銀が国際公共財の提供に果たすべき役割には自ずから限界があり、他の機関の任務や専門性との関係で世銀の比較優位を特定し、それらの機関と協調することが必要である。また、地域の実情に精通した地域開発銀行の役割を尊重した上で、適切な協調関係を構築する必要がある。


 国際公共財に対する支援の規模については、資源配分全体のバランス、国別援助戦略との整合性、途上国側の実施能力といった事柄を考慮する必要がある。また、マルチ・ドナー・ファシリティに対するDGF(Development Grant Facility)からのグラントの規模については、金融機関としての世銀の基本的性格を踏まえれば、現在の水準を超えることには慎重な検討が必要であろう。


 国際公共財に対する世銀の取組みに焦点が当てられるのは比較的新しいことであり、来年春に予定されている事務局による進捗報告をまって、改めて、個々の国際公共財の分野における世銀の役割を包括的に検証する必要があろう。その際には、これまでの世銀の取組みに関する評価についても適切に報告するよう要請する。

 

拡充HIPC(重債務貧困国)イニシアティブと貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の進展

 来るべき世紀に向けて、もう一つの重要な課題は拡充されたHIPCイニシアティブの迅速かつ効果的な適用の促進である。昨年の総会を含む一連の会議において同イニシアティブが支持されて以来、これまでに10カ国が拡充されたフレームワークの下で決定時点に到達しているが、できる限り多くの重債務貧困国において速やかに債務救済を貧困削減につなげていくため、迅速かつ効果的に同イニシアティブの適用を進めていく必要がある。世界銀行及びIMFは、本年5月に設立した共同実施委員会を活用し、そのための一層の努力を行うべきである。我が国は、

 

  国際開発金融機関の債権削減の努力を支援することを通じて同イニシアティブの迅速な実施を確保するため、HIPCトラストファンドに対し最大2億ドルまでの拠出を行うことを表明し、既に実行に移している
  IMFのPRGF-HIPCトラストファンドに対しても拠出を既に実行している
  二国間ODA債権の100%削減及びパリクラブの枠組みに基づく非ODA債権の100%削減を通じて債権国中最大規模の二国間債権の削減を行う
  重債務貧困国に対して、無償資金協力の拡充を含む様々な方策により引き続き支援を行っていく

 

といった努力を行っている。同イニシアティブの円滑な実施を可能とするためには、HIPCトラストファンドへの拠出を表明している各国が必要なタイミングで貢献を実行することが極めて重要である。また、重債務貧困国自身も経済改革の推進と貧困削減戦略の策定に一層積極的に取り組む必要がある。


 開発途上国自身の主体性に基づく貧困削減戦略は、貧困削減を実現するための強力な方策である。この策定過程において最大限配慮すべきことは、市民社会や地域コミュニティー、二国間ドナーを含む全ての開発当事者の参加の確保である。これなくしては、真の意味でのオーナーシップの確保が果たされているとはいえないと同時に、国際社会からの支援も十分な形で発揮され得ない。我が国としては、こうした必要性を踏まえ、貧困削減戦略の策定における市民社会等の参加プロセスに焦点を当てた支援を行うことに強くコミットすることとしたい。