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第60回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成11年9月27日)

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第60回世銀・IMF合同開発委員会ステートメント

 

平成11年9月27日(月)

HIPCイニシアティブ

 前回4月の開発委員会において、重債務貧困国(HIPCs)に対し、「より広く、より深く、より早く」債務救済を行う方針が示され、また6月のケルンサミットでより具体的な枠組みの提案がなされた。今般、世銀/IMF理事会において、拡充されたHIPCイニシアティブの枠組みについて合意が得られたことを歓迎したい。
 ただし、この拡充イニシアティブの実施にあたっては、

1)

世界銀行その他の国際開発金融機関(MDBs)における必要資金のファイナンス

2)

HIPCイニシアティブと貧困削減のリンク
の二点が重要な課題として我々の前に残されており、世銀及びIMFの場で早急にコンセンサスを得ることが求められている。

<MDBsのファイナンシング>
 拡充されたイニシアティブの実施に当たっては、MDBsが追加的に必要とする資金のファイナンシングは、まずMDBsがその自己資金を最大限活用する努力を払うべきである。MDBsのうちでも世界銀行は、その純益の規模及び今後の見通しに照らせば、そのファイナンシングを基本的に純益移転により賄うよう努力を払うべきである。
 世界銀行以外のMDBs、とくにアフリカ開発銀行及び米州開発銀行においては、自己資金の不足が指摘されており、あらゆる努力を尽くしたうえで不足する部分についてドナーの貢献が求められる。この場合には、二国間債権の削減を含めたHIPCイニシアティブ全体としての負担の公平の確保が重要であり、各国の納税者が均しく負担を分かち合うというフェア・バードン・シェアリングの考えが、こうした国際的な努力の基礎に置かれるべきである。
 拡充されたイニシアティブが順調に進展すれば、我が国は、当面40億ドルに上る債権国中最大規模の二国間ODA債権の削減を行うことになる。また、マルチ機関に対しても、国際開発協会(IDA)のHIPCトラスト・ファンドへの拠出に加え、IMFのESAF-HIPCトラスト・ファンドに対して多額の拠出を約束し、かつ実行している数少ない国の一つである。他の国々が、二国間/多国間を通じたフェア・バードン・シェアリングの考え方に沿って、必要な財源確保に向け積極的な貢献を行うことを期待するものである。

<債務救済と貧困削減のリンク>
 我が国としては、HIPCイニシアティブの実施により利用可能となる資金が、教育・保健・医療その他の社会的投資や雇用創出等の開発目標に活用されることにより、債務救済が貧困削減を目指す広範な戦略の一環として位置づけられ、両者の間に強いリンクが確保されることを期待している。こうした努力のために、重債務貧困国がそれぞれの貧困と債務の状況に応じ世銀/IMFと協調して貧困削減戦略ペーパー(PRSP)をHIPCイニシアティブの決定時点において作成し、国別援助戦略(CAS)及びIDA融資方針に反映させていくとの提案を支持するものである。

IBRDの資本充実

 世界銀行といくつかの地域開発銀行は、新興市場国の危機の展開に応じてさまざまな支援を行ってきた。それは、必らずしもMDBsの伝統的な機能にとどまるものではなかったが、我が国はこうしたMDBsの積極的な危機への対応を一貫して支持してきた。なぜなら、第一に、こうした支援は、これまでのMDBsの貧困削減努力の成果を守る意味を持つものであったからであり、第二に、MDBsが持つ市場からの資金調達機能が、民間資金の流出により生じた危機への対応において ―特にIMFの資金に制約があったこともあり― 必要だったからである。

 世界銀行は特別構造調整融資(SSAL)やポリシー・ベースド・ギャランティ(PBG)の導入を含め、さまざまな手段を動員して危機に直面した国々を支援してきた。その結果、現在のところ世界銀行の財務は健全であるものの、世銀のポートフォリオは悪化してきており、世界銀行が将来発生しうるさまざまな外部状況の変化に対応する能力(risk-bearing capacity)に一定の制約が生じてきていることは否めない。

 前回春の開発委員会以来、世界銀行がその財務基盤強化のためにとりうるオプションについて議論が続けられてきた。我々は世銀に対し、今後とも広範な分野で貧困削減への挑戦を続けていくことを求める一方で、世銀の株主として世銀がこうした活動を展開していくための能力を確保する責務を負っている。従って、世界銀行の融資における質の向上、選択肢(selectivity)の重視に努力しつつも、財務上の制約を理由に融資量を制限していくというオプションを支持することはできない。我々は、経済危機に伴っていくつかの借入国へのエクスポージャーが拡大していることや、経済危機が地域的に伝播しやすくなっているといったリスクに対処するため、世銀の実質的資本ベースである現金払込済資本(paid-in capital)の拡充に向けて、増資も含めたさまざまなオプションの検討を深めていくべきと考えている。

国際貿易問題に関する、開発途上国に対する世銀の支援

 経済関係のグローバル化の流れが急速に進展する中で、開発途上国が、こうした流れに大きく取り残されることなく国際貿易を通じて得られる利益を享受しつつ経済成長・貧困削減を図ることが期待される。これまで国際社会は、貿易の国際ルール作りに努力し着実な成果を挙げ、今後も世界貿易機関(WTO)次期交渉において新しい世紀に向けての新たなルール作りが行われようとしているところである。途上国が新たなルール作りに積極的に参画する必要があることは言うまでもないが、設定されたルールをいかに円滑に実施に移していくのか、そのための基盤づくりをどのように行うかも重要な課題である。すなわち、各国が、ルールを実施(implement)するため、その実情に応じた形で能力を強化していくことが不可欠であり、そのための国際協力が求められていると言える。
 これまで、世界銀行は、WTOを始めとする他の多くの国際機関と協力しつつ、貿易ルールを途上国が実施するにあたって何が障害なのか、どのようにしてその障害を取り除いていくのかについて検討をし、能力の形成(capacity building)をはじめとする支援を実施してきた。こうした経験を踏まえ、今後、世界銀行が、貿易問題を個別国の開発戦略たるCASの一部として位置づけ、優先(priority)付けをし、様々な支援を展開していくことが求められている。その際、この分野における世界銀行の比較優位を特定しながら他の国際機関と協調して支援を進めていくとともに、市民社会との協議などパートナーシップを強化していくことが重要である。

国際金融システムの強化への世銀の支援

<危機の社会的側面のコントロール>
 アジア等の新興市場国における経済危機は、失業や倒産の増加、物価の上昇などを招き、特に貧困層に深刻な打撃を与えた。最近になり、危機に見舞われた新興市場国では、経済的次元では回復が覗える一方で、社会的次元に目を向けると危機の影響は未だに深刻である。危機の経済的側面に加え、社会的側面のマネージメントが極めて重要な課題であることも、アジア危機の教訓の一つである。危機が貧困層、社会的に脆弱な層にどのような影響を与え、どのような支援が求められるかについて、社会政策(social policy)の観点からの考究が求められている。
 世銀は、危機に際し、流動性の支援や金融セクター健全化の支援ばかりでなく、社会セクター支援として新たに発生する貧困への取組みを支援してきた。世銀がこのような取組みから得た知識・経験 ―短期的な危機対応及び長期的な危機予防に関する教訓― を体系化し、他のドナー、国際機関、市民社会と分かちあうための努力をしていることを高く評価したい。
 我が国としても、MDBsによる、危機により生じた新たな貧困への対応を支援するため、世界銀行・アジア開発銀行に新たな拠出を行い、MDBsと連携した支援を展開したいと考えている。

<企業統治>
 開発途上国が健全な経済成長を果たすためには、公的部門のみならず、民間セクターの育成が重要である。開発途上国の民間セクターへの投資を導くために、公平で透明性の高い企業統治のシステムを構築することは、途上国における民間の自律的な経済活動を促進するうえで必要な措置であると考える。
 企業統治システムは、様々な制度が有機的な連関を持つ複雑な体系であることから、改革を適切に実施するためには時間のかかるプロセスを経なくてはならないが、途上国にとっては、金融制度、司法制度、会計制度といった経済の基盤となる諸制度の改革を積極的に進めることが現下の急務である。このため世界銀行が、OECDが策定した「企業統治に関する原則」を参考にしつつ、これまでの経験に基づき、この分野での途上国のCapacity Buildingの強化を行っていく努力が引き続き求められる。その際、途上国における社会経済システムの多様性に鑑み、画一的な対応でないフレキシブルな対応が必要となることは言うまでもない。