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第59回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成11年4月28日)

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59回世銀・IMF合同開発委員会

黒田 東彦 大蔵省国際局長 ステートメント

 

1999428日(水)]

 

 

 

I. 序論

 まずはじめに、MIGA一般増資が発効し、IDA12次増資に関する総務会決議が成立したことを歓迎したい。我が国でも、先般IDA12次増資及びMIGA一般増資に対する国会の承認が得られている。今後とも世銀グループの活動への積極的な支援を継続していきたい。

 

II. 包括的開発フレームワーク

 開発をめぐる課題は、アジアに端を発した新興市場国の経済危機への緊急的な対応、危機発生後の急激な経済・社会の構造変化の影響を受ける社会的弱者への配慮、ガバナンス向上に向けた取り組みなど、以前にも増して多様化している。このような状況下、世銀が、過去の業務の蓄積、成果を再検討し、他の多くの開発パートナーとともに行う、新たな世紀に向けた開発のあり方として包括的開発フレームワーク

(CDF) を提唱していることを評価したい。

 

 開発課題への包括的な対応において特に強調するべきことは、開発戦略の策定及び実施において、如何に当該国の良い政策へのオーナーシップ、インセンティブを高めるかである。これは、重債務貧困国の問題、良い社会政策の実践、ポスト・コンフリクト国への支援等、我々が今直面している具体的な開発課題への対応において決して忘れてはならないことである。

CDFにおいては、NGOや市民社会を含め、開発課題に取り組んでいるプレーヤー間のパートナーシップの強化が重要なメッセージとして提示されているが、様々なプレーヤーの連携の中で、こうした当該国のコミットメントに常に焦点があてられていることが重要になる。限られた資金的・知的資源を有効かつ効率的に活用するために、二国間ドナーや多国間ドナーの協調の重要性は、強調し過ぎることはない。特に、世銀と地域開発金融機関との緊密な連携は、CDFによる開発戦略の策定において最も重要な柱の一つであり、十分な対話の確保が望まれる。

 

 

III. HIPC イニシアティブ

 

1996年に策定されたHIPC Initiativeは、ウガンダ、ボリビアの2カ国がcompletion pointを迎えるなど、重債務貧困国問題の解決に向けて着実に成果をあげており、その枠組みの有効性については我が国としても評価している。

 

 これまで我が国は、債務返済負担の特に大きい開発途上諸国に対し、国際的な枠組み

(パリクラブ)の下でこれら諸国の債務軽減に前向きに取り組み、これまでに約9,400億円にのぼる債務繰延を行ってきた。特に我が国の二国間ODA債権については、過去20年あまりの間に27ヶ国に対し、合計約3,400億円に達する債務の無償化の措置をとってきた。また、IMFや世銀等の国際金融機関による重債務貧困国に対する債務救済基金に対しても、HIPC信託基金に13億円、ESAFHIPCトラストに約71億円の拠出を行っている。

 

 重債務貧困国の債務問題が引き続き深刻な状況にあることにかんがみ、国際社会として従来の取り組みを一層強化する必要性が生じている。重債務貧困国の債務返済負担が持続可能な水準にまで縮減され、経済社会開発に取り組む力を取り戻すことを可能とするための更なる債務救済策を国際社会がとるに当たっては、次の諸点を十分に踏まえることが必要と考えている。

(1)

重債務貧困国の主体的責任と自助努力(オーナーシップ)が基本となるべきこと。特に当該国の健全な経済運営や経済改革に向けての努力が進められること。

(2)

債務救済措置により利用可能となる財政資源が、教育・保健・医療その他社会的投資や雇用創出等の開発目標に活用されるべきこと。

(3)

債権国間の負担の公平が図られること、また、二国間の債権と国際金融機関の債権との間の債務救済の負担についての公平性が確保されること。

(4)

倫理の欠如とその波及、いわゆるモラル・ハザードの問題にも十分留意する必要があること。

(5)

債務救済が行われた後は、適用国に対し、新たな借款の供与は困難となり、資金協力を行う場合には無償資金が原則となること。

 我が国は、以上の基本的考えを踏まえ、債権者間の負担の公平性に留意しつつ、現在の

HIPCイニシアティブの枠組みの改善・拡充を図るため、以下の提案を行った。

 

(1)

二国間のODA債権については、現行の削減率67%から100%に拡大する。(我が国は、債務の帳消しと実質的に同等な措置である債務救済無償資金協力の拡充により対処する。)

(2)

二国間の非ODA債権についても、必要に応じ、現行の削減率80%を拡大する。

(3)

重債務貧困国の債務負担を軽減するために、国際金融機関は、二国間債権との公平な負担を念頭におきつつ、国際金融機関に対する債務についての救済措置の拡充を図る。そのため、IMF・世銀が設ける債務救済を目的とした信託基金については、各国から債務救済全体に対する貢献を勘案した公平な拠出を求めるとともに、その資金の早期活用を図る。IMFにおいては、その保有する金の売却により財源の確保に充てる。

(4)

HIPCイニシアティブの下で、改革の達成が著しい債務国や、支援の緊急性の高い債務国等については、柔軟な取り扱いを行う。

 我が国はこのような提案を行うとともに、重債務貧困国支援に関する議論に、今後とも積極的に参画していく所存である。

 

IV. Principles of Good Social Policy

 今回のアジア通貨危機への対応において、急激なマクロ経済の調整を行った結果、社会的に脆弱なグループへの予想を越えた深刻な影響が見られた。その結果、それまでの貧困削減の成果が失われかねない事態が生じている。

 このような事態を教訓として、様々な経済的な混乱の中で、社会的弱者への影響を最小限のものとするため、途上国における開発戦略において、「良い社会政策」の原則を十分反映させる努力が求められよう。従って、世銀が開発への取り組みでの経験から、「良い社会政策」の原則を抽出し、それを業務の指針の一つとして重視していく試みは時宜を得たものである。

 他方、世銀による「良い社会政策」の原則の具体的な適用においては、それが画一的なものとならないよう十分な注意が必要であり、それぞれの途上国社会の持つ独自の価値観や複雑かつ多様な構造を認識することが重要である。具体的には、「良い社会政策」の原則の確保を目的とした各種の施策がそれぞれの途上国社会に円滑に受け入れられるためには、どういった順序、ペースで実施されるべきなのかを十分検討し、人々の意識、社会構造、資金的制約を含む実施能力に応じた計画を策定するべきである。

 また、このような取り組みを行う前提として、途上国自身が社会的な変革の必要性を認識し、オーナーシップをもって各種の措置を実施していくことが不可欠であるが、それぞれの社会においてこうした改革へのコンセンサスを得ていくためには、十分な時間と準備が求められる。世銀は、開発戦略の策定段階での各国との協議において、「良い社会政策」の原則の重要性に対する途上国の理解を深めつつ、現実的なアプローチを取っていくことを期待したい。

 

V. 開発委員会と暫定委員会のあり方について

 

 国際金融システム強化の一環として、開発委員会と暫定委員会を、政治的意思をより適切に反映するよう強化し、ブレトン・ウッズ機関の運営の効率性の向上を図ることは重要な課題である。

 二つの委員会の組織のあり方については、いくつかの選択肢が考えられるが、どのような選択肢を採るとしても、二つの委員会のmandateを明確に再定式することが求められる。但し、二つの委員会、あるいは世銀とIMFが、一つのテーマについて別個の観点からアプローチすることを妨げるべきではない。

 この二つの委員会を強化し、迅速かつ有効な連携を深めていく第一歩として、開発委員会にIMFが参加しているのと同様に、暫定委員会にも世銀総裁が参加し、発言の権利が与えられるべきである。また、暫定委員会の準備過程において、世銀当局の十分な関与が確保されるべきだ、との主張も支持するものである。