第66回世銀・IMF年次総会 安住財務大臣総務演説(平成23年9月23日 於:ワシントンD.C.)
1.日本・世界経済
未曾有の地震・津波が発生してから半年が経ちました。世界の皆様から御支援を受け、我が国は復旧・復興を進めています。私の故郷は、宮城県の石巻市という、震災の被害が最も大きかったところです。私の生家も全壊し、父母も1ヶ月半ほど避難所で暮らしました。このように、私は、この大災害を肌で経験した者であり、皆様から頂いた支援に改めて心から感謝いたします。
震災直後の日本経済の不確実性として、電力不足、サプライ・チェーンの混乱、原子力発電所の事故対応の3点が懸念されました。電力問題については、需給両面での取組みの結果、需給が最も逼迫すると見込まれていた8月を乗り越えることができました。サプライ・チェーンの混乱は世界経済にも一時的に影響をもたらしましたが、想定より早く回復しており、生産活動は震災前の水準に戻りつつあります。原子力発電所については、事故の収束に向けたロードマップに従い、原子炉の冷温停止に向けた作業等が着実に進展しています。このように懸念が順調に払拭されつつあることから、消費者や企業のマインドも改善してきており、復興需要も背景に、2011年後半から景気の持ち直しを見込んでいます。
かねてからの課題である財政運営については、震災前に策定した財政運営戦略の目標を堅持し、歳出の無駄の排除に加え、復興財源の確保、社会保障・税一体改革の推進などにより、財政健全化に取り組みます。まず、復旧・復興については、3次にわたる補正予算を組み、必要な歳出が行われるよう、万全を期しています。復旧・復興の財源については、負担を将来へ先送りしないよう、他の歳出の節約に努めるとともに、それでも不足する部分については、所得税・法人税を中心に財源手当てを検討します。一方、より長期的な課題である高齢化等に伴い累増する社会保障支出の財源については、現在先進国で最低レベルの消費税率5%を2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げることにより、安定的に確保していくこととしています。その具体的方策について年度内の法案提出に向けて検討を進めていきます。健全な財政を取り戻さなければ、民間の信認は損なわれ、健全な経済成長は果たせません。
世界経済の下振れと欧米の債務問題に端を発した最近の為替・株式等の金融市場の混乱は、復興に取り組む我が国を含め、世界全体に新たな課題をもたらしています。欧州における政府債務問題の拡大やそれに伴う金融システムの脆弱化への懸念は、世界的な金融不安の最大の原因であり、欧州諸国は結束し責任を持って対応していくべきです。IMFは欧州諸国の努力を促しつつ、適切な協力を行って行くことが重要です。また米国には、財政再建策及び雇用対策の着実な実施を期待します。
2.IMF・世界銀行グループへの期待
世界経済の不確実性が高まっている今、IMF・世界銀行グループが適切な経済分析、金融面のセーフティ・ネット、開発資金を提供し、国際協調に貢献することは重要です。両機関がその機能をより効果的に果たすためには、加盟国からの信頼が必要です。各国の発言力・出資シェアを経済力に見合ったものとするための改革は進んでいますが、スタッフの構成については大きな改善の余地があります。我が国は2010年に合意したIMF・世銀グループの増資手続きをいち早く完了しましたが、こうした資金面の貢献のみならず、人材面でも貢献したいと考えます。
IMFに対しては、国際通貨システムを改善する取組みの継続を求めます。まず、サーベイランスの質・実効性の向上が重要です。新興国については、為替や物価の上昇が懸念される資本流入にどう対応するか、先進国についても、世界経済への影響に配意しつつ持続可能な成長につながる政策をどう構築するか、適切な助言が必要です。
また、IMFは危機予防・危機対処能力を高めてきましたが、融資制度は更なる強化が必要です。世界の貿易・金融の結びつきは強まっており、危機の伝播を効果的に予防する仕組みを早急に構築すべきです。
次に世銀に対する期待を申し上げます。我が国の震災が示すように、持続可能な開発には、自然災害への対応は不可欠な要素と言えます。我が国は、今後、震災及び復興の過程で得られた防災に関する知見と教訓を国際公共財として共有し、開発政策において防災の重要性の認識が向上し、より取組が強化されるよう、世銀と共同して積極的に貢献していきたいと考えています。
地球規模の環境・気候変動への対応にも、世銀や国際社会と協力して積極的に貢献していく考えです。現在、議論が行われている緑の気候基金については、民間資金を効率的に動員しうる制度設計とすることが重要です。また、気候変動に脆弱な諸国への支援が必要であり、地球環境基金(GEF)なども活用しながら、制度強化・能力強化支援も積極的に行う所存です。
3.東京総会への決意
最後に、来年総会をホストする機会を頂いたことに感謝します。その際、先に述べた防災に関して、被災した仙台で会議を世銀とともに開催します。皆様に、日本が復興していく姿をぜひ見ていただきたいと思います。
来年は我が国がIMF・世銀に加盟して60年、前回の東京総会から48年になります。この間、世界経済は、貿易・資本フローの飛躍的増大、途上国の成長や市場経済の拡大、また変動相場制への移行、ユーロの誕生といった大きな発展を遂げてきました。一方、貧困削減や気候変動は引き続き重要な課題であり、また繰り返される国際的な金融危機の予防と対応にも適切に取り組んでいく必要があります。東京総会では、世界経済やそれを支える国際通貨システムの今後に関しても議論する場を提供したいと考えています。総会の成功に向け、皆様の協力を仰ぎながら、全力を尽くします。
(以上)
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