第65回IMF・世銀年次総会 野田財務大臣総務演説(平成22年10月8日 於:ワシントンD.C.)
第65回世銀・IMF総会総務演説
(2010年10月8日(金))
1.世界経済、日本経済;デフレとの闘い
世界経済の成長は継続していますが、先行きは不透明です。欧米先進国を中心とした金融面の脆弱性と特定国のソブリン・リスクに対する懸念が、世界経済の下方リスクを高めています。
我が国の経済は足元で持ち直してきているものの、デフレという難題に直面しています。デフレは実質金利を高止まらせ、企業による技術革新のための中長期的視野に立った投資を遅らせる一因となります。実質では伸びていても、収入の名目額が減少した家計は、生活が豊かになったと実感できず、消費を増やせません。デフレは円高の一因ともなっており、足元で15年ぶりの水準を記録する急速な円高は景気回復期待に水を差し、企業・家計のマインドに影を落としています。
こうした状況下、中央銀行の果たす役割はきわめて重要です。日本銀行は今後も極めて緩和的な金融環境を維持していくとともに、必要と判断される場合には適時・適切に政策対応を行っていく方針を示しています。
政府としても、あらゆる政策を総動員しています。当面は、円高を含む景気下振れリスクに対応し、早期のデフレ脱却を実現するため、補正予算の編成も含め、需要・雇用創出効果が高い施策を機動的・弾力的に実施します。
デフレ脱却のためには、需給ギャップの解消に資する、成長力の強化と将来不安の解消が重要です。「新成長戦略」及び「財政運営戦略」に基づき、強い経済・財政・社会保障を一体的に実現し、着実な経済成長の実現と持続可能な財政・社会保障制度の構築を図ります。
2.IMF・世界銀行グループへの期待
次にIMFに対する期待を申し上げます。
IMFは今般の危機に柔軟に対応しましたが、国際経済に一層の貢献を行っていくためには、更なる取組が必要です。
IMFの使命は今般の危機を踏まえ見直していく必要があります。国内金融システムの問題が国際金融システム全体や世界経済を不安定にした今般の危機はIMF設立時には想定されていなかったものです。今般の危機を受けて、IMFは予防的な融資制度を創設し、また、金融セクター向けのサーベイランスを強化してきました。これはまさにIMFの使命が変容してきている証であり、「金融システムの安定」を協定上の使命に追加すべく見直していく必要があります。
今般の危機を契機に、IMFの世界経済において果たす役割も一層増すこととなりました。こうした中、今後IMFがその機能を一層充実させ、加盟国のニーズに応え融資を行っていくためには、IMF自体への信頼を確保していく必要があります。そのためには、加盟各国の発言力をその経済力に即したものにすることや、重要事項の決定に当たって加盟国の大臣の関与を高めることが必要です。
IMFの融資機能の強化に当たっては、これまでの取組に加え、システミック危機時に危機の拡大を防止するために十分な資金を迅速に投入できる仕組みが必要です。また、IMFの資金基盤の充実も必要であり、大規模増資を支持します。さらにIMFと地域金融協力との連携強化も重要な課題です。
次に、途上国の貧困削減と開発について申し上げます。
国際社会の努力にもかかわらず、サブサハラ・アフリカや南アジアを中心に、多くの人々が未だに深刻な貧困の下にあります。貧困の解消を加速していくために、資金と知見の両面でスケールアップを図らなければなりません。先進国の経済・財政状況が厳しさを増しているなかで、十分な公的資金の動員を行うためには、世界経済において重みを増している新興国の貢献が重要です。また、貧困削減と開発における民間セクターの貢献をさらに促進する上で、公的セクターの果たす環境整備等の役割も一層重要になっていると考えます。
援助資金が最大の開発効果を生み、また最も脆弱な人々に支援が直接に届くようにするためには、より効果的・効率的な援助手法を考案していく努力の継続が必要です。また、ドナー国の納税者に説明責任を果たすために、援助資金がどれだけ貧困削減に結びついているのか、成果の検証がますます重要になっています。この取組は、個別の援助プロジェクトが生み出した結果を数字で確認する作業にとどまらず、それらが政策や制度の改善にどの程度つながり、被援助国の持続的な経済成長や人々の生活の改善にどのような影響をもたらしたか、といったインパクトを評価するレベルに深められるべきと考えます。この知的に難しい取組を前進させるためには、最先端の知識とグローバルな経験の蓄積が欠かせません。
世銀グループには、IDA第16次増資を成功に導く努力を含め、資金と知見の動員を効果的に進めるため中心的な役割を果たしていただきたいと思います。
最後に、生物多様性の保全について申し上げます。2週間後に名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開催されます。生物多様性が失われている原因の一つとして、その重要性に係る認識不足が指摘されています。今般の会議が、経済面も含む多様な側面から、生物多様性に対する理解の促進に貢献することを期待します。
(以上)
【映像】
