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第64回世銀・IMF年次総会 峰崎財務副大臣総務演説(平成21年10月6日 於:トルコ・イスタンブール)

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第64回世銀・IMF総会総務演説
(2009年10月6日(火))

 

1.序

本日、日本国を代表して世銀・IMF総会において演説する機会を得ましたことは、私にとって大きな栄誉であります。

まず初めに、ロバート・ゼーリック世銀総裁及びドミニク・ストロス=カーンIMF専務理事お二人の各機関における卓越したリーダーシップに敬意を表します。

 

2.世界経済の状況と我が国の取組み

世界経済には一部回復の兆しが見られますが、その萌芽は様々なリスクを含むものであり、今後の見通しについては、引き続き慎重であるべきです。

日本経済についても、持ち直しの動きが見られますが、依然として慎重に動向を見守る必要があります。例えば、本年第2四半期の実質GDP成長率は2008年第1四半期以来のプラス成長となる年率2.3%、鉱工業生産指数も6か月連続で堅調な伸びが続いています。一方、失業率は8月に5.5%となり、若干の改善が見られたとは言え、厳しい状況が続いています。また、8月の輸出額の対前年同月比の下落率も、縮小しているとは言え、依然マイナス36%と大きな数字となっています。

こうした状況を踏まえた経済政策運営の基本的考え方は以下の通りです。まず、日本経済をしっかりとした回復軌道に乗せることが重要であり、今後とも必要な財政・金融政策の実施を継続してまいります。出口戦略の議論は必要ですが、今はまだ実施の時期ではありません。あわせて、財政支出を従来の公共投資を中心としたものから、「国民の生活が第一」との考え方に基づいて、子育て・教育等の人的資本や家計への支援を中心としたものに切り替えてまいります。また、我が国は、各国が意欲的な目標に合意することを前提に、温室効果ガスについて2020年までに1990年比で言えば、25%削減を目指しています。こうした低炭素社会構築に資する新産業の育成等も重視することで、内需主導の安定した成長を実現していきたいと考えております。

また、経済情勢への十分な配慮とあわせ、市場からの信頼に足る形で、財政の持続可能性確保に向けた中長期的な取組み姿勢を明確に示さなければなりません。今後、政府債務残高の対GDP比率を含め、具体的な財政再建の目標を立てていく必要があります。

 

3.危機の再発防止と持続的な経済成長の確保に向けたIMF・世界銀行の機能強化

我々の当面の優先課題は、危機から脱却し、バランスの取れた持続的成長を実現することと、二度とこのような世界的金融危機を起こさないために、強固で安定的な世界金融システムを構築することです。こうした課題に対処する上で、IMFと世界銀行が果たす役割は大きく、その機能強化が不可欠です。以下、IMFと世銀の機能を強化していく上で特に重要な、サーベイランスの強化、低所得国への支援、及びガバナンスの改革の3点について、私の意見を申し上げます。

(サーベイランス機能の強化)

まずサーベイランスに関しては、今般の危機の未然防止に所期の効果を果たし得なかったとの反省の上に立ち、今後、サーベイランスの効果をより高めていく上で重要な事項として、以下の3点を挙げたいと思います。

第一に、システミックに重要な国における問題が世界経済全体に及ぼす影響の大きさに鑑み、財政赤字や金融機関の不良資産等、特定の重要事項をテーマとしたマルチ・サーベイランスの試みを繰り返すことにより、リスクが他の国々に伝播する経路や影響をより精緻に分析する能力を高めることが必要です。

また、金融部門に由来する脆弱性が当該国のマクロ経済に及ぼす影響の重大性に鑑み、「金融セクター評価プログラム」で認識された各国金融システムの脆弱性を、「4条協議報告書」に効果的に組み込み、マクロと金融の関連性に係る分析を強化することが重要です。


 さらに、IMFが金融安定理事会(FSB)と協働して実施する「早期警戒」については、この試みを繰り返していくなかで、その目的及び分析手法について各国政策担当者間の共通の理解を確立し、危機を未然に防ぐ仕組みとすることを目指していくべきです。

(低所得国向け支援)

第二の課題は低所得国向け支援です。我々は、今般の危機が、低所得国にも大きな被害を及ぼしていることを忘れてはなりません。世銀の直近のレポートでは、今般の危機の影響で来年末までに9千万人近い低所得国の人々が、新たに貧困層に陥るとの見方が示されています。

こうした状況を踏まえ、我々は、低所得国への支援を強化していく必要があります。まず、世界銀行グループにおいては、例えば、足許における国際開発協会第15次増資(IDA15)の利用可能な資金を十分に確保しつつ、IDA16の交渉の早期開始・妥結により切れ目ない支援を供与していくべきと考えます。来月のIDA15の中間レビューを実質的なIDA16の交渉開始と位置づけ、ポスト・クライシスのIDA戦略を集中的に議論し、早期の交渉妥結を図ることが重要です。可能な国については、2011年7月のIDA16期間開始に先立って、IDA15の期間中においても、IDA16の資金を供与することができないでしょうか。

また、我が国は、低所得国を支援する分野におけるIMFの取組みを、以下の2つの方法を通じて支援してまいります。まず、IMFは先般、低所得国向けの低利融資制度の条件を緩和し、より積極的支援を行うことを決定しましたが、その履行の過程では、主要加盟国が広くドナーとして、IMFによる低所得国支援への積極的な取組みを支えていくことが重要と考えます。

IMFの低所得国向け融資に、これまで加盟国中最大の貢献をしてきた我が国としても、融資の増加に伴い必要となる融資原資、利子補給金の両面において、引き続き積極的に貢献してまいります。

また、IMFによるマクロ経済分野における低所得国への技術支援に対する資金貢献を引き続き実施していきます。その際、ドナー国の納税者に対する十分な説明責任が果たされることが重要と考えます。

(ガバナンス改革)

IMFと世銀が持続的な経済成長の確保と危機の再発防止に効果的に貢献していく上で取り組むべき3点目の課題はガバナンス改革です。

これについては、まずIMFのクォータ増資、基本票の引上げを含む2008年4月の合意、及び2008年10月に合意された基本票倍増を含む世銀のボイス改革第一段階を早急に発効させるべきです。我が国は、増資のための国内法の改正、及び協定改正受諾を既に終えており、各国が出来る限り早く国内手続きを終えることを期待しております。

2011年1月を期限とする次期クォータ見直しについては、ピッツバーグ・サミットでの首脳間の合意によって政治的ガイダンスが明確になりました。これに沿って、クォータが世界経済の実態を的確に反映するよう、「過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の、ダイナミックな新興国・途上国へのクォータ・シェア移転」の実現に向け作業を加速させることが必要です。

世銀のボイス改革においては、世銀グループの運営に関し途上国の意見をより適切に反映させる努力が必要です。同時に、我が国を含め、世銀グループの活動を資金面で支える国々が、その運営に相応の関与を続けていくことが重要であることは言うまでもありません。

特に、我が国は、低所得国向けのIDAについて、1960年の発足以来50年近くにもわたり、340億ドル余りに及ぶ多大な拠出を行ってきました。当時の日本は、第二次世界大戦後の復興の最中であり、未だ貧しい状況にありました。我が国は海外からの資金に頼らざるを得ず、当時は国際復興開発銀行から借入を行っていました。しかし、当時の日本国民、日本の納税者は、貧しい国々への支援の重要性を理解し、IDAへの資金拠出を行うという困難な決断を行いました。以来、我が国のIDAへの資金拠出は途切れることなく、今やIDAの約19%にものぼる重要な資金基盤を形成するに至っています。

ボイス改革において、日本を含め主要なドナーのIDAへの累積拠出額を適切に考慮することは、こうした納税者の長年の意志に応え、世界銀行グループがこれらドナーからの資金を引き続き確保していくために不可欠です。

ボイス改革がこうした点を十分に踏まえた結論となることが、今後我が国が一般増資やIDA16への貢献を行うための基礎となることを述べておきたいと思います。

最後に、IDA・世銀が真にグローバルな機関として正当性を確保するためには、幹部・職員構成において特定地域に偏らない多様性を確保することも重要です。

 

4.結び

以上、現下の国際金融・経済情勢を踏まえ、危機の再発を防止し、バランスの取れた持続的な経済成長を確保していく上でIMF・世銀が取り組むべき主要課題について、私の考えを申し上げてまいりました。両機関がこうした課題に取り組んでいく過程では、加盟国の立場が異なる困難な問題に直面するでしょう。しかし、IMF・世銀の課題とは、他ならぬ、両機関の総務である我々の課題であることを認識すべきです。そして、我々が、両機関のあり方に対してオーナーシップを持ち、個別利益追求の視点ではなく、グローバルな共通益を実現する視点でこれらの問題と向き合うことが、変化の激しい国際金融・経済の中で、我々の共通の目的に向けて両機関を効果的に活用していく上で不可欠である旨を強調して、私の演説を終えたいと思います。

(以上)