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1. 序 |
| 議長及び総務各位 |
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| 本日、日本国総務としてIMF・世銀総会において所信を述べる機会を得ましたことは大きな喜びです。 |
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| まず、所信に先立ちまして、IMF専務理事の重責を担い初めての総会を迎えられましたラト専務理事に対しまして、心から歓迎の意を表したいと思います。我が国は、ラト専務理事が、引き続き加盟国と緊密に協力しつつ、リーダーシップを発揮され、IMFが、世界経済の安定と成長に、ますます大きな役割を果たしていくことを心から期待しています。 |
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| 2. 世界経済と金融市場−見通し、リスク、政策対応 |
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| グローバル化の進展する中で各国経済が相互の連関を増しつつ、世界経済が予想を上回るペースと力強さで回復を続けていることを歓迎します。 |
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| また、この世界経済の回復は、これまでの米国や中国をはじめとするアジア経済の牽引によるものから、ラテン・アメリカ、中東、アフリカ等ほぼ世界全域にその裾野を広げており、更に欧州の経済成長率の上昇も見込まれるなど、こうした傾向が今後も続くことが期待されています。 |
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| 一方で、先行きに関しては、底流する地政学的リスクに加え、原油価格の上昇やインフレ圧力、金利上昇のペースを巡る不確実性がリスク要因として指摘でき、これらの動向やその影響を引き続き注視していくことが重要です。こうした中で、各国にとって大切なことは、現在の好環境を活かし、構造改革の推進をはじめ、残存する脆弱性の克服に向けた努力を強い決意の下継続し、持続的な成長の達成を目指していくことであると考えます。 |
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| 先進国においては、人口がますます高齢化していく中で中期的な財政健全化や社会保障改革、経済の柔軟性を高めるための構造改革の推進が大きな課題です。また、新興市場国においては、財政面をはじめとする構造改革や金融資本市場の整備を引き続き推進することを通じて、ショックに対する経済の耐性を向上させ、市場の信認を高めていくことが重要です。なお、現在債務再編手続を進めているアルゼンチンについては、同国当局が債権者との誠意ある交渉を行った上で合意に達し、国際市場の信認を回復していくことを期待します。 |
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| アジアにおいては、貿易や投資の動きが極めて活発なものとなっており、2004年の経済成長率も世界平均を上回る7.6%と見込まれています。1990年代後半の危機からアジア諸国が立ち直り、世界経済のなかでますます重要な位置を占めるようになっていることを祝福したいと思います。ただし、活発な資金流入の下でアジアの景気の過熱を懸念する声もあり、その動向については、世界経済に与える影響力が増加しているだけに一層注意深く見守っていく必要があると考えます。適切に段階付けられた資本移動の自由化や一層柔軟な外国為替制度への移行は、長期的に安定的な経済成長に資するものと考えます。 |
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| また、アジアにおいては、従来から貿易面を中心とした連携が進められてきており、他の地域と同様に、自由貿易協定(FTA)の締結に向けた動きが活発化しております。同時に、近年では、域内での政策対話の実施、必要な際に相互に短期流動性を供給することを目的としたネットワークの構築、効率的で流動性の高い債券市場の育成といったように通貨・金融面での協力も推進しているところです。こうした一連の動きは、国際的な貿易・通貨・金融制度を補完するための開かれた地域協力であり、我が国としても積極的に貢献しているところであります。 |
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| 日本政府は、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、規制、歳出、税制の改革に全力で取り組んできており、こうした改革の成果が現れつつあります。企業収益の改善を通して設備投資の増加がもたらされるとともに、その効果が雇用や個人消費など家計部門にも拡大し、景気回復が堅調なものとなっております。私は、このような国内民間需要主導の回復が今後とも続くものと見込んでいます。 |
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| 日本政府としては、こうした回復の動きを改革の好機と捉え、持続的な経済成長につなげていかねばならないと考えています。そのためには、主要行の不良債権問題の早期終結、社会保障制度の一体的見直し、中央・地方を含めた行財政改革、郵政事業の民営化などに引き続き精力的に取り組み、構造改革を加速・推進していく所存です。 |
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| 財政政策については、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指し財政構造改革を推進しています。その際、高齢化の進展に伴う歳出増等が見込まれる中、歳出・歳入両面からバランスのとれた財政構造改革を実現していく必要があると考えております。 |
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| 金融政策につきましては、日本銀行が、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」というコミットメントの下で潤沢な資金供給を続けております。こうした思い切った金融緩和政策は、景気が回復を続ける下で、民間の投資や支出を刺激する力をより強めています。日本銀行は、引き続き現在の金融緩和政策を堅持し、民間経済活動を金融面から支援していく方針です。 |
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| 従来からの懸案事項であるデフレ圧力は緩和してきておりますが、それへの取組は依然として重要な政策課題であると考えております。「重点強化期間」とされる2005、2006年度におけるデフレからの脱却を確実なものとするため、政府は日本銀行と一体となって、政策努力を更に強化していく所存です。 |
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| 3. IMFサーベイランスと危機の予防・解決 |
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| 国際金融システムの安定と危機の予防のためには、対外的な脆弱性を減少させるための各国における政策や制度の強化に向けた努力がまず重要ですが、グローバル化に伴う各国経済間の連関の強まりや国際資本フローの増大にかんがみますと、IMFのサーベイランスが一層重要な役割を果たすことが期待されます。この観点から私は、IMFにおいて、債務持続可能性分析の精緻化、金融部門の分析の強化をはじめとする様々な取組が進展していることを歓迎しております。私は、総合的に見て、組織上の構造を含む現在のサーベイランスの枠組みは概ね有効なものであり、現段階においては、まず、現行の枠組みの下で、その強化に向けた取組を着実に実施していくことが重要であると考えております。 |
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| IMFが最近討議を行った「政策モニタリング・アレンジメント」、あるいは「資金支援を伴わないプログラム」は、資金支援は不要である一方で、健全な政策の促進や政策の強度に関する外部へのシグナリングのためにIMFの密接な関与を必要とする加盟国がある場合、これら諸国のニーズに応える観点から検討に値する手法であると考えます。今後、IMFが、このような仕組みに対する需要が加盟国の間でどの程度存在するのか、このような仕組みに基づくIMFのシグナリングが他の債権者やドナーのニーズにかなうものとなるのかについて、十分な調査と検討を進めることを期待します。その際、既存の様々な制度との重複を避ける観点から、新たな仕組みの位置付けを明確にすることが重要であり、また、新たな仕組みの導入によって既存のアレンジメントに基づくIMF資金へのアクセスが阻害されることがあってはならないと考えます。 |
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| その関連で私は、現在既に存在している予防的アレンジメントは、危機予防の観点から、健全な政策運営を行う加盟国が国際的な資本フローの急激な変化によって資本収支危機に晒される可能性に対応するための効果的かつ現実的な仕組みであると考えております。したがって、「政策モニタリング・アレンジメント」の導入の如何にかかわらず、IMFが同アレンジメントの改善を引き続き検討することを期待します。 |
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| 危機の解決に関しては、昨年来、それまで集団行動条項(CACs)に係る市場慣行のなかったニューヨーク市場においても、多くの債券発行国がCACsを導入するなど、CACsの普及が進んでいることを歓迎いたします。今後も他の債券発行国が、外債発行に際してCACsを導入することを期待します。「行動規範」(Code of Conduct)についても、今後、債務国、民間セクター等を含む幅広い関係者の参加による議論が更に進展し、合意がなされることを期待します。 |
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| IMFが危機の予防及び解決に当たって期待されている役割を十分に果たしていくためには、IMFに十分な資金が備わっており、そのことによりIMFに対する信認に揺るぎがないことが不可欠です。世界経済や金融市場の変化は急激かつ予測困難であることから、いつ一般増資が必要な事態となっても迅速に対応できるよう、クォータに関する検討を継続していく必要があります。また、クォータ配分は世界経済の実勢や各加盟国経済の相対的地位を反映することが必要であり、増資の検討に当たっては、この点に十分配慮すべきです。更に、IMF・世銀で途上国の声と参加を強化すべきという動きがありますが、これについては、IMFと世銀が歩調を合わせて議論を行っていくべきと考えます。 |
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| 4. 開発の課題 |
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| 本年で我が国が政府開発援助(ODA)を供与し始めて50周年を迎えます。途上国の貧困削減の達成、とりわけ2015年のミレニアム開発目標(MDGs)の進捗状況に関し来年は国連において中間レビューが行われます。貧困削減状況が比較的順調なアジア地域においても、進展のほとんどは中国・インドの高成長によるものであり、他の国には依然大きな課題が残されています。また、サブサハラ・アフリカではより難しい課題があります。 |
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| 持続的な貧困削減の鍵となるのは持続的な経済成長です。中国、インド及びベトナムの例に見られるように高い経済成長と貧困削減は相関しており、貧困層にとって「職を得ること」は貧困から脱出するために最も優先度の高い方法です。そして、持続的な経済成長のためには、投資環境の改善とインフラ整備の強化が極めて重要です。 |
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| 投資環境の改善は、安定的な対内直接投資の確保や中小企業の育成にとって重要であり、特に、金融セクターの強化に向けた取組が必要です。我が国は、11月には東京でアフリカ開発会議(TICAD)−アジア・アフリカ貿易投資会議を世銀などの協力を得て開催し、アフリカにおける貿易・民間投資の促進を通じた開発、アジア・アフリカの民間ビジネス交流につき議論を深めたいと考えます。 |
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| インフラ・プロジェクトには収益性があることを踏まえて、インフラ・プロジェクトのための予算措置が途上国の財政に適切に位置付けられるように、IMFと世銀が更に検討していくことを歓迎します。また、官民パートナーシップについては、途上国において十分な法的枠組みが整備されていることが必要ですが、実際の運用には種々の困難があり、これをいかに乗り越えるか、インフラ・サービスの増進と資金調達の在り方、政策決定者・プロジェクトの実施主体・サービスの利用者等の間での議論の促進につき叡智を更に集めていくことが必要です。また、地方政府への支援や現地通貨建て融資といった新しい支援方法に世銀グループが一体となって取り組むことを、今後の課題として提示したことを歓迎します。 |
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| 開発のための資金確保の観点から、国際課税やInternational Finance Facility構想など様々なFinancing Modalityの案が検討されています。これらについては、各国の制度面あるいは政治面から見た実現可能性、新たな仕組みを導入することに伴う行政コスト、既存の国際機関との重複、援助資金を前倒しで調達した場合には将来の援助資金が急減すること等、様々な問題があり、この構想を更に掘り下げて議論することが有益だとは考えておりません。 |
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| むしろ既存の国際機関の増資を予定どおりに交渉妥結することが重要です。今年の5月にアジア開発基金(ADF)の第8次財源補充交渉が合意されたことを歓迎します。現在行われている国際開発協会(IDA)第14次増資及びアフリカ開発基金(AfDF)第10次増資交渉は極めて重要であり、その年内合意に向け、ドナー各国が真剣に取り組むべきと考えます。 |
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| 低所得国が債務問題に陥らないよう、その債務持続可能性を十分に分析し、その分析をIMF・世銀をはじめ各債権者による資金支援の在り方や債務国の借入戦略の適切な策定に活用していくことが重要であると考えます。このような観点から、IMFと世銀が共同で検討している債務持続可能性分析の評価の枠組みが実行可能なものとなるよう、具体的な制度政策環境の指標や基準値の水準についての早急な検討を要請し、我が国も積極的にこの検討に参加いたします。他方、IMF・世銀の融資機関としての性格を損なわない、又は低所得国のモラル・ハザードを招かない、との観点から、重債務貧困国(HIPC)イニシアティブを超えた債務削減やグラントの拡大には慎重であるべきと考えます。 |
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| イラクの治安の安定化と復興は、イラク国民にとって、また中東地域及び我が国を含む国際社会全体の平和と安定にとって極めて重要です。今月には東京でイラク復興信託基金の第3回ドナー会合を開催する予定であり、我が国は、ホスト国として、これまで表明された支援の実施促進に努力してまいります。また、先週IMFの理事会で、イラクに対してポスト・コンフリクト緊急支援(EPCA)が承認されたことを歓迎し、世銀が管理する信託基金を通じたプロジェクトが早期かつ確実に実施されることを期待するとともに、イラクの債務問題について、本年末までに結論に至るよう、関係国間で協議を進めてまいります。 |
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| 5. 資金洗浄・テロ資金対策 |
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| 2001年9月11日に米国で痛ましい事件が発生して3年が経過しましたが、いくつかの国で最近起きた事件にかんがみても、テロの脅威は依然として深刻であり、国際社会として引き続きテロ資金対策を推進していくことが重要です。 |
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| テロ資金対策の推進のためには、各国における国際基準の着実な実施を図っていくことが重要です。このような観点から、我が国としても、今後とも被支援国のニーズを踏まえた技術支援を行っていきたいと考えております。 |
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| 6. 結び |
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| IMF・世銀の設立が合意されてから今年で60周年を迎えました。この間、固定相場制度の終焉、新興市場国の台頭といったように世界経済は大きく変化しました。このような時代の変化に伴って、IMF・世銀においても、それぞれの役割を明確にした上で、危機の予防・解決、低所得国支援等、様々な分野における見直しを精力的に行っていくことが必要です。MDGsにIMF・世銀が貢献していくことは重要ですが、金融機関としての姿勢を忘れず経済合理性に従って持続的な形で貢献していく必要があります。このことを切に希望しつつ、結びの言葉とさせていただきます。 |