|
1. | アジア経済の現状と課題 | |||
○ | アジア経済は、外貨流動性危機の初期段階、実体経済の更なる落ち込みを防止し回復に向けての道筋をつける第二段階を経て、再び力強い経済発展を取り戻すとともに、それを維持していくためのより安定的かつ強靭(robust)な経済システムの構築に向けて協同して取り組んでいくべき新たな段階に入りつつある。 | |||
○ | 新宮澤構想を始めとする公的資金支援によりアジア各国の緊急の資金ニーズは満たされてきており経済は底を打ちつつあるが、実体経済の本格的かつ力強い回復を確実なものとするためには、域内外の民間資金を活用 (mobilize) することが不可欠である。 | |||
○ | 短期ドル資金への過度の依存が今回の通貨危機をもたらしたことを踏まえ、民間資金の動員を図るに当たっては、将来にわたって通貨危機に陥りにくい安定的かつ強靭な金融システム(資金調達メカニズム)をアジア域内において構築していくことが重要である。 | |||
○ | その際、日本の豊富な民間資金の本格的還流を図ることが不可欠であり、このような動きがひいては円の国際化、東京市場の活性化につながることが期待される。
| |||
2. | 新宮澤構想の新たな展開 | |||
I. | 基本的考え方 アジア経済が新たな段階に入りつつあることを踏まえ、新宮澤構想に基づく支援の実施に当たっては、これまでの借款による支援は引き続き着実に実施することとしつつも、今後は、アジア諸国の本格的かつ安定的な経済発展を目指し、民間資金活用のための支援など、 より市場との関係を重視した支援に注力していく。 | |||
II. | 民間資金活用のための支援策 アジアにおいて域内外の民間資金を活用するため、新宮澤構想に基づく支援の新たな展開として、以下に掲げる方法により、当面総額2兆円程度の範囲内で民間資金の動員を支援する用意がある。 | |||
(1) | アジア諸国の国際金融・資本市場からの資金調達支援 | |||
日本輸出入銀行による支援 | ||||
| ||||
「アジア通貨危機支援資金」による支援 | ||||
| ||||
(2) | アジアの民間企業向けエクイティー・ファンド等に対する支援 | |||
○ | アジアの民間企業を対象とするエクイティー・ファンドやデット・ ファンド等に対して、日本輸出入銀行が融資、出資、保証により支 援 | |||
| ||||
III. | 通貨危機に陥りにくい安定的な金融システムの構築 通貨危機をもたらす過激な国際的短期資本移動の影響を受けにくくするためには、域内の民間資金の活用を最大化して域外資金への依存割合を減らすとともに、域外からは良質(長期、域内通貨建て)の資金流入を促進し、安定的な金融システムを構築していく必要がある。 | |||
(1) | アジア域内の債券市場の整備、育成 安定的金融システム構築の一環として、アジア域内において厚みのある債券市場の整備、育成を図ることが喫緊の課題である。 これを促進するため、我が国として、サムライ債発行の促進、国債市場及び決済システムの一層の整備など東京市場の活性化を進めていく。 それとともに、以下に例示するような検討課題について、関係各国間で協同して検討を行うことを呼びかけていく。 | |||
アジア各国における検討課題 | ||||
| ||||
域内国全体における検討課題 | ||||
| ||||
(2) | 我が国金融部門のノウハウを活かしつつ、上記システム構築を実施していく上で必要な技術・人材支援を行う。 |