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テロ資金対策に向けたG7間での情報交換及び協調強化(2016年12月22日)


  2016年5月、G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議において「テロ資金対策に関するG7行動計画」が採択された。この行動計画は、FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)のテロ資金対策の強化に向けた戦略において示された優先的な取組みと足並みを揃えた次の3つのテーマに基づき、G7各国が取り組むことにコミットした行動から構成される:(ⅰ)情報交換や協調の促進、(ⅱ)予防的措置の将来的な基準強化の検証、(ⅲ)対象を特定した金融制裁措置における協調の向上。本報告は行動計画の(ⅰ)についての分析と結果を要約したものである。


FIU間の情報交換及び協力の実態

G7のFIUの組織的な特徴

  G7各国の資金情報機関(FIU)の機能や組織的な特徴は大きく異なるものの、いずれも効果的な国際協力に不可欠な一定レベルの自主性と機能的独立性をもって設立されている。報告機関から寄せられる疑わしい取引の届出(STR)及び、ある場合には、一定額を超える取引報告についてFIUが分析を行い、主にその分析に基づく金融情報の提供を通じてFIUと法執行機関(LEA)の関係が確立されている。

国内の活動、情報及び権限

  FIUは、金融情報の戦略的な分析を支援するために、国内で利用可能かつ取得可能な幅広い情報にアクセスしている。FIUがアクセスでき利用できる一連の情報は大きく異なり、そのことが分析や国際的な協力を行う能力に影響する。国内法及び憲法の枠組みに則り、金融、行政および法執行に関する可能な限り広範な情報へのアクセスを確保することは、求めるべき重要な目標である。
  全てのG7各国のFIUは各機関同士の情報共有および協力のメカニズムを有しているが、国内における協力を強化し続けることが引き続き重要である。

国際的な情報交換

  G7各国のFIUは他国のFIUに情報を提供することができる。提供側のFIUが、入手可能な情報はカウンターパートにとって有益であると判断した場合には、情報を求めている他国のFIUからの要求により、または自発的に、情報交換が行われる。
  G7各国のFIUの中には効果的な国際協力について、引き続き制約に直面しているものもある。ある事例では、国内の法的枠組み、または捜査や訴訟手続が行われていることによってこのような制約が引き起こされている。
  FIU間で交換された情報は、情報を受け取ったFIUのみ使用可能で、その他の主体への提供はできないことがある。交換された情報の使用制限は、情報提供するFIU及び/または他の権限ある当局による個別の「同意」により解除される。


情報交換及び協力の新しい革新的な方法


エグモントISILプロジェクトへの参加を通じたカウンターパートとの情報交換

  G7各国の多くはエグモントグループのISILプロジェクトに参加している。このプロジェクトは、参加国がプロジェクトメンバーと多国間で戦術的な分析を共有することができる、FIU間の国際協力の好例である。戦術的な分析を共有することが、新しいターゲットの特定、関係ネットワークの発見、国際調査の開始に繋がっている。

戦術的及び/または戦略的な金融関連情報、他の関連報告と戦略的分析に係る自発的な多国間の情報交換の推進

  エグモントISILプロジェクトに参加しているG7各国のFIUは、適切かつ関連がある場合に、エグモント・ネットワークを通じて、多国間で自発的に金融情報の交換を実施している。要請された情報の使用状況を共有することは、FIU間で更なる情報交換を推進するために、またテロ資金供与をより十分に検知し防止する金融分析のための「情報主導」アプローチを促進するために、極めて重要である。情報提供の要請に応じるFIUの関連情報を明らかにすることは、共通の関心や更なる情報のニーズを特定し、最終的には適切な共同分析のための基盤を築くことにも資する。

FIUが国内の法執行機関と適時に情報交換できることの確保

  FIUとLEAの間に良好な関係を確立するには、多くの場合、信頼関係が必要となる一方、FIUと金融機関の間で良好な関係を確立するには、多くの場合、義務や手法や傾向に関する意識向上を促すことが必要である。いくつかのG7各国で見られた革新的かつ効果的な実務には、金融機関への積極的なフィードバックの提供や情報交換のほか、テロ資金対策を所管する権限ある当局に対し資金情報への一元的なアクセスを提供することが含まれる。


民間セクターの関連主体との協調

情報への適時のアクセス

  FIUの効率性は、金融機関及びその他報告機関からの金融取引に関する報告の質及び適時性に直接依存している。
  FIUが効果的かつ適時に情報へアクセスすることを確保するために、様々な方法が用いられている。いくつかのFIUは、金融機関が取引を報告する専用ホットラインを設けるなど報告機関と直接的な協力関係を有するか、管轄内の金融機関が保有する口座情報その他の情報に直接アクセスしている。

金融機関への適切な支援とフィードバック

  G7のFIUは、継続的な改善を促進するために、報告する金融取引に関し報告機関への支援とフィードバックを提供する上で重要な役割を果たしている。
  G7のFIUにおいて観察された効果的な実務には、報告機関が疑わしい取引や活動を特定するのに役立つ指標や手口の発出、報告機関との定期的な会合や情報フォーラムの開催、金融取引報告の活用に関する法執行表彰の授与、アウトリーチ、ガイダンス及びフィードバックに関するFIUのウェブサイトの活用などがある。

背景情報や有益なガイダンスを共有するための効果的な対話メカニズム

  支援やフィードバックを超えて、マネロン・テロ資金対策におけるパートナーが継続的にその機能を発揮するべく十分な情報を持ち態勢を整えることを確保するために、パートナーとの協働を促進することが重要である。
  G7のFIUは、報告機関が一連のマネロン・テロ資金情報における前衛としての役割を確り認識するよう、また、疑わしい取引や活動を検知するし、また、テロリストへの資金支援ネットワークを早期に検知するための情報を発展させるために有益な情報を提供することに役立つ効果的な指標や情報が提供されるよう、様々な方法を通じて報告機関に接触している。将来的には、G7のFIUが報告機関や民間の専門家と共同で戦略的な情報プロダクトを開発することを検討してもよいかもしれない。


結論

  情報共有及び協力メカニズムに関するG7の分析の目標は、G7のFIU(または関連する所管官庁)と民間セクター(主に金融機関)の間の情報交換及び協力を促進する有益なメカニズムを明らかにすることにある。各国固有の法的及び組織的な枠組みを認識しつつ、この分析は、FIUが他国のカウンターパートや民間セクターの関連主体との情報交換及び協力を促進するための実績のある効果的な実務や潜在する新しい革新的な実務の蓄積を提供することに資するものである。また、この分析は、テロ資金供与をよりよく検知し対抗するために国内及び国際的な情報交換及び協力を促進し続ける上で、G7各国が革新的かつ先進的であることを促すものである。