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金融セクターの統合に関するG10作業部会報告書の概要(200101.25)

2001年1月25日

 

金融セクターの統合に関するG10作業部会報告書の概要

 

 この報告書(注1)は、1999年9月のG10(10か国財務大臣・中央銀行総裁会議)会合における大臣達の要請を受けて、多くの先進国及び国境を越えて現在進行中の金融機関の統合(financial consolidation)及びその潜在的な影響について調査・研究を行うために設置された作業部会(Working Party)がその成果をまとめたものである。

 具体的な作業は、作業部会の下に設置された6つの専門部会(Task Force)において進められ、13の先進国(注2)を対象として、金融機関の統合及びその潜在的影響の分析において鍵となる以下の各側面について調査・研究を行った。

  (1) 金融統合のパターン(patterns)
(2) 金融統合の基本的要因(fundamental causes)
(3) 金融統合の金融リスク(financial risk)の観点から見た影響
(4) 金融統合が金融政策(monetary policy)に与える影響
(5) 金融統合が経営の効率性・競争・与信(efficiency、competition、credit flows)に与える影響
(6) 金融統合が決済システム(payment and settlement systems)に与える影響
 なお、保険等を含む幅広い意味における金融サービスを報告の対象としているが、1990年代の金融セクターにおけるM&Aが主に銀行セクターで行われていたことから、報告は銀行セクターの金融統合に焦点を当てたものとなっている。

 報告書の概要は以下のとおり。

 

 金融統合のパターン

 1990年代に拡大・加速化した金融セクターにおけるM&Aは、その大半が銀行業において同一国内において行われており、国境を越えたM&A、とりわけ業態の垣根を超えたM&Aはほとんどみられない。
金融統合後の銀行業界の構図は国によって様々であるが、アメリカ及びドイツを除き、ほとんどの国で集中度が高いものとなっている(特に、オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、オランダ、スウェーデン)。

 

 金融統合の基本的要因

 金融統合を推進する要因として、(1)コストの削減、(2)事業規模や金融商品の拡大を通じた収益の向上、の2点が挙げられる。情報技術の発達、金融の規制緩和、市場のグローバル化、及び株主からの圧力の増加は金融統合を推進させる方向に作用する。
 他方、統合を妨げる要因として、様々な金融規制や文化的な相違が挙げられる。
 今後、よりグローバルな活動を行う総合金融機関の誕生や、専門分野により特化した金融機関の台頭等が考えられる。

 

 リスクの観点から見た金融統合の影響

 金融統合が個別金融機関のリスクに与える影響は、多岐に渡り、ケース・バイ・ケースの評価が必要とされるため、一般化することはできない。金融統合の結果、統合前の個別の金融機関毎のリスクは分散し、減少するかもしれないが、一方で事業規模が巨大化し、統合後の金融機関の組織が複雑化することによってリスクが増大する要素もあり、統合後の金融機関全体のリスクが減少するかどうかは不明である。
システミック・リスクに与える影響も同様に不確定であるが、巨大金融機関の同士の相互依存は強まっており、大規模な取引を通じて実体経済に波及する可能性は高い。
このリスクに対する現行の政策及び枠組みは、現在及び中期的にも適切であると考えられるが、中央銀行、財務省、金融監督当局等の間の国内・国際的な情報交換や協力の更なる充実などの改善の余地があり、潜在的な危機を迅速に回避・解決するための政策の実施やコンティンジェンシー・プランの作成が重要である。
リスク評価に基づいた監督体制の整備や健全性指標の設定、市場規律の向上、及びシステミック・リスクを評価するための情報収集・分析なども重要である。

 

 金融統合が金融政策に与える影響

 金融統合によって金融市場における競争の低下等が考えられるが、これまでのところ、金融統合が市場に与える影響は非常に小さく、将来においても深刻な問題とはならないと考えられる。
 これまでに、金融統合の進展によって金融政策を遂行する上での障害が発生したり、金融政策が経済に伝播するメカニズムが大きく変化したという事実はないが、金融市場、銀行貸出及びバランスシートを通じた政策の伝播メカニズムが変化する可能性はある。

 

 金融統合が経営の効率性・競争・与信に与える影響

 金融機関における「規模や範囲の経済」や経営の効率性への影響に関して、比較的小規模の銀行においては統合の結果、規模の経済が働くという調査結果が得られたが、一般に統合の効果は限定的であると考えられる。
競争への影響は、参入障壁の高さなどの市場環境に依存している。情報技術の進展は金融市場の地理的な参入障壁を低下させており、グローバルな金融統合による競争への潜在的な影響を変化させ得る。
 中小企業向けの与信への影響に関しては、競合相手による融資の増減にも依存しており、金融統合の影響を一律に論じることはできない。
政策担当者は、金融統合によって効率性が実質的に向上しているかどうかを注意深く審査し、統合が競争に与える影響を検討する必要がある。また、異業態間の競争によって、消費者の便益が増える可能性があることにも留意が必要である。

 

 金融統合が決済システムに与える影響

 金融統合は、決済システムの集中化をもたらしている。電子決済技術は「規模の経済」を持つため、統合による巨大金融機関は新規で高価な技術へ投資し、コスト削減に結び付けている。効率性やリスクの面で、金融統合が決済システムに与える影響は、プラス・マイナスの両面において様々であり一概には論じ得ない。
 銀行監督者と決済システム監督者間の国内及び国際的な協力と情報交換の強化が必要である。またリスク管理の観点から、中央銀行及び銀行監督者は、金融統合が決済システムに与える影響を注意深く監視し、リスク軽減のための適切な基準の設定などを、必要に応じて検討すべきである。

 

(注1) 報告書本体(英文)は、BISホームページ(http://www.bis.org)等でも公表。
(注2) 11のG10諸国(米、日、英、独、仏、伊、加、蘭、白、スウェーデン、スイス)、及びオーストラリアとスペインの13か国。

 

(以 上)