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対日相互審査報告書概要(仮訳)(平成20年10月30日)

 

金融活動作業部会(FATF)

2008年10月30日

対日相互審査 報告書概要(仮訳)

背景  

1.本報告書は、現地調査が行われた2008年3月5日から21日及びその直後における日本の資金洗浄・テロ資金対策についてまとめたものである。この報告書は、こうした対策の説明・分析を行い、制度を強化するための勧告を提供するものである。また、日本のFATF40+9の勧告の遵守状況の水準を示す。(FATF勧告の遵守状況の評価についての別表参照)  

2.概して、日本の国内犯罪率は非常に低く、警察は国内における資金洗浄の仕組みを十分に認識している。日本の当局がまとめた統計によると、過去3年間における、犯罪収益の主要な源泉は、薬物犯罪、詐欺、ヤミ金融事犯である。警察庁によると、国内で乱用されている薬物のほとんどは海外から密輸入され、組織犯罪グループ、または英語圏では「やくざ」としてよく知られている暴力団などの犯罪組織により密売されている。2006年、組織犯罪グループは、資金洗浄に関する事件の約40%に関与していた。洗浄された資金の原資は、主に売春、賭博、ヤミ金融事犯の犯罪収益である。近年、振り込め詐欺が認知されており、組織犯罪グループが関与している場合もある。  

3.振り込め詐欺の手口は以下の4つである。i)電話を利用して、親族、警察官、弁護士等を装い、交通事故示談金等を名目に、現金を預貯金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る「オレオレ詐欺」、ii)郵便、インターネット等を利用して、不特定多数の者に対し、架空の事実を口実とした料金を請求する文書等を送付するなどして、現金を預貯金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る「架空請求詐欺」、iii)実際には融資しないにもかかわらず、融資する旨の文書等を送付するなどして、現金を預貯金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る「融資保証金詐欺」、iv)税金の還付等に必要な手続きを装って被害者にATMを操作させ、口座間送金により財産上の不法な利益を得る「還付金詐欺」。  他の、重大な傾向であるヤミ金融事犯の手口として、法定を超える金利で、5万円(300ユーロ/475ドル)程度の少額融資を反復して行うものがある。この種の被害額は、2003年以降で、200億から350億円の範囲にある。  

4.本報告の時点では、日本は国内において、国連で指定されているテロリスト及びテロ組織によるテロ行為の被害を受けたことはない。しかしながら、かつてテロ行為を行った幾つかのテロ組織は、日本を本拠として活動している。共産主義者同盟赤軍派(後に、同組織からマルクス・レーニン主義革命組織である日本赤軍が分派した)は日本で重大犯罪を実行し、日本赤軍は1970年代の主要なテロ攻撃の首謀者である。1995年に東京の地下鉄サリン事件を実行した団体であるオウム真理教はいまだに活動しており、最近では、資金獲得活動として薬物販売に係る犯罪及び詐欺行為を行った。  

法体制及び関連する制度的な措置  

5.日本は1992年の麻薬特例法第6条の規定により、薬物犯罪収益の隠匿を犯罪化した。2000年、「犯罪収益」の定義は、薬物に関する犯罪以外の犯罪の実行及びその収益の隠匿に拡大し、指定された犯罪類型に対応する組織犯罪処罰法の別添リストに掲載される犯罪が対象となった。日本の刑法は、犯罪収益を生み出す前提犯罪の事前の有罪判決を要求しない。未遂及び自らの利益に供する資金洗浄はこれらの法律により罰せられ得る。幇助、援助、相談は刑法62条で犯罪とされ、犯罪行為の教唆は、同法61条で犯罪とされている。資金洗浄罪の範囲は、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(テロ資金処罰法)を除き「犯罪収益」との表現により言及される全ての類型の資産に対象が及んでいるが、テロ資金処罰法が使用している文言「資金」(“funds”)の定義は、特別勧告II(テロ資金供与の犯罪化)の要求に合致しない。  

6.刑法38条は、故意及び意図的に罪を犯す犯罪者の罰則を規定している。この一般的な規定は、資金洗浄犯罪にも適用される。日本の法制度のもとでは、刑事手続は、民事及び行政手続と分離しているため、刑事責任の追及は、民事及び行政措置が同様に実施されることを妨げるものではない。日本の法律は、刑罰の根拠となった事実による民事及び行政罰を妨げない。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)17条、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)15条は、法人の代表者、代理人、従業員又は法人の業務に関わる者が、法人の業務に関連して資金洗浄行為を行った場合の罰則を規定している。犯罪を実行した者は罰せられ、法人にも罰金が科せられる。法に基づき、罰金の額は、100万円から300万円の間であり(約6,000ユーロ/9,450ドル、18,000ユーロ/28,300ドル)、従って法人に対する罰則は抑圧的であると見なすことは出来ない。2003年から2007年では、5法人のみが資金洗浄罪で実刑となり、適用された罰金は100万円から250万円の間である。  

7.資金洗浄に関する事件に関する起訴件数は、急激に増加している(2003年は105件、2004年は111件、2005年は164件、2006年は225件)が、特に薬物消費や日本の組織的な犯罪集団に関する問題に鑑みれば、少ないままである。これらの数値は、部分的には起訴の決定から理解できる。すなわち、検察官は有罪がほぼ確実な場合のみ起訴をしている。法人の起訴を含む資金洗浄事件の有罪判決の少なさから、資金洗浄の犯罪化の実効性が疑問視される。  
8.日本は、2002年のテロ資金処罰法を通じて、テロ資金供与防止条約に列挙されている活動を犯罪化している。同法は、情を知って、公衆等脅迫の犯罪の実行を容易にする目的で、資金を提供し、収集する者を処罰する。しかしながら、日本の法律は、資金の収集がテロリストによって行われた場合のみを犯罪としており、また、間接的な資金の提供、収集が対象となっているのか不明である。テロ行為の実行以外の目的でテロ組織及びテロリストのために資金を提供し、収集することが対象となっているのかも不明である。「資金」は当該法律では定義されていない。他の法律における資金という用語の使用方法に基づけば、日本語の「シキン」は、「資金、資本」を意味しており、現金や簡単に現金に替えられる物に関連している。それゆえ、テロ資金処罰法の「資金」という単語は、簡単に現金に替えられるものだけでなく、「あらゆる種類の資産」を含むとする特別勧告II(テロ資金供与の犯罪化)の全ての局面を対象とするのに不適切である。  
9.未遂罪は処罰の対象とされている。また、テロリスト資金供与に関する犯罪(資金の提供及び収集)の未遂である場合や、資金が合法的に収集、提供された場合の例外を除き、テロ資金供与は、資金洗浄の前提犯罪となっている。刑法の一般規定は、故意、刑事、民事及び行政罰、法人の法的責任に適用される。資金の提供及び収集の罪又はその未遂罪は、10年の懲役、1000万円(約60,000ユーロ/94,500ドル)の罰金に処される。この罰金刑は、法人に適用される際は、テロの脅威と釣り合いがとれておらず、抑制的と考えるには低すぎる。加えて、捜査の件数が非常に少ない。しかしながら、日本においては、現実に法律が遵守されているということによって、起訴件数がないという事実自体は、否定的な評価とはならない。  
10.日本は、犯罪収益の没収、凍結、差押のための包括的かつ効果的な制度を確立している。追徴手続も設けられている。この制度によって、没収されない資産に相当する資産を追徴できる。没収手続と追徴手続の数に、かなりの開きがあり、裁判所は追徴手続を好んで採用している事が分かる。追徴命令件数に比べて、没収命令の件数が少ないことは、制度が十分にかつ効果的には実施されていないことを示すものである。  
11.テロリストの資産凍結に関し、日本は一定の取引を事前許可制とするメカニズムを確立している。この許可制は、(i)外貨建取引、日本にいる非居住者や海外との取引がなされる場合が対象であるため、それ以外の場合に国内資産が利用可能となる可能性があること、(ii)居住者による指定されたテロリストに対する支援を対象にしていないことから、テロリストの資産が遅滞なく凍結されない。これに加え、新たにテロリスト(個人及び法人を含む)の指定がなされた際に、既に日本にある資産の真の帰属を確認するため、顧客のデータベースをスクリーニングする明示的な義務が金融機関に対し課されていない。ただし、日本の当局者は、許可義務を適切に履行するため金融機関は顧客のデータベースをスクリーニングしなければならないと述べたが、審査団はこの説明に満足していない。テロリストの資産を保全するための命令期間や、30日以内の訴追着手義務によって、テロリスト資産を遅滞なく保全できない。最後に、「資金」の定義が広義でないため、当局が保全できる資産が限定されている。  
12.2007年4月、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯罪収益移転防止法」という。)により、日本のFIU(Financial Intelligence Unit:資金情報機関)が金融庁(JAFIO)から警察庁へ移管し、名称がJAFICに変更され、職員数が増員された。JAFICが受理するSTR(Suspicious Transaction Report:疑わしい取引の届出)件数は継続的に増加している(2005年の約9万9千から、2006年11万4千、2007年には15万8千以上)。JAFICは、受理したSTRのデータとJAFICが保有するSTRデータとの照合を自動的に行い、受理したSTRの約60%を都道府県警察、検察官、税関、海上保安庁、金融庁内の証券取引等監視委員会を含む法執行機関に情報提供している。また、STRに含まれる総合的な情報の精査や、警察情報、行政情報及び公刊情報との照合を含む詳細な分析が行われており、その件数は増加している。JAFICはSTRの分析を行うために法執行及び他の情報にアクセスでき、警察情報データベースを通じて情報を照合するための高い情報技術を持ち合わせている。しかしながら、資金洗浄及びテロ資金供与のタイポロジー(手口)に関しての分析をより行うべきである。STRは金融機関から所管官庁に届け出られ、その後JAFICに通知される。2008年3月1日から、新しい電子報告制度が実施されており、この制度によって、疑わしい取引の届出義務が課されている金融機関や指定非金融業者及び職業専門家(DNFBP)は、STRを直接JAFICに提出できるようになった。現地調査の段階では、両方のシステムが実施可能であり、STRの25%が電子的に届け出られ、75%が紙媒体及びフロッピーディスクで届け出られた。  
13.現地調査の時点では、JAFICの分析官の数は非常に少なかった。受理するSTR件数の多さやその数が増加していること、完全施行された犯罪収益移転防止法のもとで疑わしい取引の届出義務を課されるDNFBPから今後届け出られることを考えると、現在行われている分析の範囲と質に懸念が残る。  
14.JAFICは設立から12ヵ月以内に、エグモントグループのメンバーとなり、12ヵ国のFIUと情報交換の枠組みを設定した。  
15.資金洗浄及びテロ資金対策に関与している主要な法執行機関は、都道府県警察及び検察庁である。両機関とも資金洗浄及びテロ資金供与を捜査する責を有し、適切な権限が与えられている。しかしながら、資金洗浄及びテロ資金対策を行う法執行機関には、さらなる訓練と捜査のためのリソースが必要となる。  
16.  特別勧告IX(キャッシュクーリエ対策)について(注1)、日本の税関は資金洗浄対策及びテロ資金対策の執行に関する責任を負う。しかし、現地調査期間中、税関当局は密輸と不正取引にのみ説明を費やし、資金洗浄対策及びテロ資金対策の執行能力を有していないようにみえた。結果として、税関当局からJAFICへの越境通貨についての報告はなされなかった。  

(注1)日本は、2008年6月1日に新しい申告制度を施行した。しかし、現地調査時点では、この新しい申告制度について記述された資料は審査団に提供されず、そのため日本の関係当局と同申告制度について議論することができなかったため、同申告制度については、本報告書には記述されていない。

予防的措置―金融機関  
17.顧客管理措置の法的枠組みは犯罪収益移転防止法によって規定され、同法施行令及び施行規則によって実施されている。同法は2007年4月1日に一部が施行され、DNFBPに関する規定は2008年3月1日に施行された。同法はあらゆる領域の金融機関を対象としている。様々な種類の金融機関に対して、金融庁によって「総合的な監督指針」と題する文書が発出されている。同指針は、資金洗浄及びテロ資金対策を取り扱っている。同指針はFATFの定義によるとその他執行力ある手段としてみなすことは出来ないが、審査団が面談を行なった金融機関は、この拘束力を伴わないガイダンスを遵守している旨の説明を行った。FATF勧告の規定する全金融機関は、日本の資金洗浄及びテロ資金対策の対象となっている。  
18.  金融機関は、法令上明示的に、匿名口座の開設を禁じられていない。しかしながら、犯罪収益移転防止法は、金融機関に顧客の本人確認を実施するよう求めている。日本は、当該条項の反対解釈及び本人特定事項の虚偽申告の禁止に関する条項を根拠規定としているが、これらの要請は、実効上、匿名口座の開設を禁止している。  
19.犯罪収益移転防止法は、金融機関に顧客の本人確認、顧客データの照合(自然人については氏名、生年月日、住所、法人については名称及び本店又は主な事務所の所在地)が要求されている。これらの本人確認義務は、業務関係の確立の際に、200万円以上の取引、10万円を超える送金、以前に入手した顧客データの信憑性、妥当性について金融機関が疑義を持った場合に適用される。顧客管理は、本人確認に限定されており、全ての受け入れ可能な本人確認書類に写真や固有の識別番号が付されている訳ではない。顧客管理は、関連のあると思われる複数回にわたる上記敷居値以下の取引の場合、または、資金洗浄及びテロ資金供与の疑いがある場合をカバーしていない。加えて、顧客や取引が、資金洗浄及びテロ資金供与の手段として使用されるリスクがない、又はほとんどないとされた場合には、本人確認義務から除外される。これらの例外は、FATFメソドロジーにおいては受け入れられないが、例えば一定の証券取引や国・公共団体との取引などが該当する。  
20.  顧客管理措置には、代理権限の確認や、受益者又は真の受益者の確認が含まれていない。金融機関に対する、取引関係の目的・性質についての情報収集、継続的な顧客管理の義務付けがなされていない。  
21. 日本は、資金洗浄及びテロ資金対策におけるリスクベースド・アプローチを実施していない。つまり、リスクの高い顧客、取引関係に係る強化された顧客管理措置や、簡素化された顧客管理措置の義務付けがない。  
22.日本はPEPs(外国において重要な公的地位を有する者)に関する勧告6及び国境を越えたコルレス銀行業務に関する勧告7を実施していないほか、技術開発に関する勧告8についての措置、特に非対面取引における身元確認や特定に関して十分なものではない。  
23. 日本は、金融機関が、第三者機関による本人確認等の顧客管理に依存することを認めていない。  
24.記録保存を義務付ける勧告についてはいくつかの欠落がある。少額契約については当該義務から除外されており、金融機関は、被仕向取引や、顧客との業務上の通信文のファイル及び口座ファイルの保存を要求されていない。金融機関が監督官庁に対して、記録情報を適時に使用可能にすることを求める法令上の規定はない。国内送金に関して、仕向金融機関は、送金人の口座番号や参照番号を保存し又は送付することを義務付けられていない。被仕向金融機関は、被仕向電信送金が完全な送金人情報を含んでいることを確認する義務がない。金融機関が送金人情報を含めることに繰り返して失敗した場合においては、疑わしい取引の届出や業務関係を終了することを検討することが求められていない。  
25.  異常な取引の監視メカニズムは、疑わしい取引の届出制度に全面的に依拠する。勧告11に係る取引に特別の注意を払う必要はなく、そのような取引を検証する必要もないが、例示集として発出された「疑わしい取引の参考事例」は複雑な取引に関する着眼点を多く提供している。勧告21にも同様の指摘が可能である。加えて、金融機関はFATF勧告を履行しない又は十分に履行しない国・地域が内包するリスクを軽減させる措置をとる義務がなく、日本にはこれらの国・地域を決定し対策をとるメカニズムがない。  
26. 犯罪収益移転防止法は、信用保証協会を除き、資金洗浄及びテロ資金供与についての疑わしい取引の届出を義務付けている。権限ある当局は、金融機関による疑わしい取引の届出を促進するために、いくつかの措置を取っている。疑わしい取引の届出の大部分は銀行が提出しており、かつその件数は増加傾向にあるが、保険及び証券を含む他の業種からは、過去数年間において非常に限られた件数の届出しか提出されていない。したがって、保険及び証券業界に関して更なるガイダンスやアウトリーチが行なわれる必要がある。金融機関及びその役職員が善意で疑わしい取引の届出をFIUに対して行う際の金融情報を開示することに伴う民事及び刑事上の責任からの保護については、個人情報保護法、民法及び刑法によって規定されている。疑わしい取引の届出に関する情報漏洩について、二つの規定が存在する。一つ目は顧客及びその関係者への漏洩について規定している。金融機関の役職員は疑わしい取引の届出に関して情報漏洩を犯しても直ちに法に基づいて処罰されることはない。前述した違反行為について金融機関に対して行なわれる行政処分に違反した後においてのみ、処罰されうる。二つ目は全ての第三者について規定しているが、金融機関の役職員を含む自然人が情報漏洩を行なった場合において直ちに処罰されることはない。金融機関が第三者に情報漏洩を行なった場合のみ処罰されることから、処罰が抑止的とは言えない。  
27.資金洗浄及びテロ資金対策のコンプライアンス責任者の指定、独立した内部監査機能の維持或いは職員採用時に高い規範を維持するための選考過程といった、資金洗浄及びテロ資金供与を防止するための手続、ポリシー、内部管理体制の構築及び維持を金融機関に対して義務付ける規定が、日本の法律には存在しない。強制力を伴わない総合的な監督指針のみがこれらの規定を置いている。海外の支店及び子会社に関しても状況は全く同じであり、法律或いは規制上の義務付けが欠けている。同指針は、金融機関が自らの海外支店を管理及び監督するための内部管理体制を開発させているか否か、及び海外支店における業務の状況及び現地の法制度に関する知識及び経験を有する者を金融機関が有しているか否か、について評価することを監督職員に対して求めているのみである。しかしながら、同指針は海外支店及び子会社による資金洗浄及びテロ資金供与防止措置について具体的に扱っていない。  
28. 金融機関はシェルバンク(実体を有しない銀行)との間でコルレス契約を締結或いは維持することを明確に禁止されておらず、コルレス先のシェルバンクによる口座の利用を許してはならないということも義務付けられていない。  
29. 概して、監督当局は資金洗浄及びテロ資金供与対策に関して適切な資源及び人材の配置及び訓練が行なわれている。監督当局は、立入検査及びあらゆる情報、書類及び記録へのアクセスを含め、金融機関の法及び規制の遵守を監視及び確保するための適切な権限を有している。しかしながら、金融機関のうち、主要セクターである銀行、証券、保険及び協同組織金融機関以外に関して限られた件数の検査しか行なわれておらず、限られた件数及び種類の制裁しか適用されていないという懸念が存在する。更に、資金洗浄及びテロ資金供与に対する刑事上の罰金が抑止的であるかどうか疑わしい。  
30.日本の金融機関は、適切な規制及び監督が行なわれている。しかしながら、犯罪者及びその関係者が金融機関を所有或いは支配することを防止するために、フィット・アンド・プロパーテストは全ての上級管理職に適用範囲が拡大されるべきであり、証券及び保険業界においては、職業上の専門性に関する要求事項を含むべきである。加えて、両替業者及びリース業者は免許又は登録が求められていない。  
31. 日本において、送金業を行なう者は銀行免許を得ることが求められており、それゆえ、報告書において、銀行に対して適用可能なFATF40+9勧告に関する懸念は、送金業に対しても適用される。地下銀行に対する罰金は、違法活動に関わる潜在的な犯罪収益と比較すると、低すぎるように思われる。  
予防的措置―指定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)  
32. 犯罪収益移転防止法は様々な種類の指定非金融業者及び職業専門家、つまり、不動産業者、貴金属及び宝石商、郵便物受取サービス業者、法律専門家(弁護士、司法書士、行政書士)、会計士及び税理士に対して適用される。しかしながら、これらの者への義務付け規定は現地調査が行なわれる1週間前の2008年3月1日に施行された。結果として、審査団は新たに実施された制度の実効性を評価する立場にない。金融機関に対して適用可能な資金洗浄及びテロ資金対策措置は、指定非金融業者及び職業専門家に対しても適用されるが、特に法律専門家及び会計士に対するいくつかの例外が存在する。これらの専門家は疑わしい取引の届出義務の対象となっていない。さらに、日弁連の規制では法律家に対する顧客管理義務の適用の例外が存在する。これらは不明確であり、多数の例外があると解釈されうる。これら以外に、金融機関に対して指摘されている事項は、指定非金融業者及び職業専門家に対しても同様に適用される。  
法人、法的取極め及び非営利組織  
33. 会社法の下では、4つの種類の会社が存在する。いずれの会社についても、法律上成立するためには、登記される必要がある。登記手続には、発起人又は社員の氏名及び住所等を記載した定款を含む様々な添付書類が必要である。登記事項に関する変更も、申請及び登記されなければならない。しかし、法人の実質的所有者及び支配者についての情報を収集する義務はない。何人も登記事項を記載したものを入手することができるが、株主名簿について所管官庁の閲覧を許容する規定はなく、そのためには、刑事訴訟法に依拠するより他ない。  
34. 1990年の商法改正以降の匿名の無記名式株式の発行禁止にもかかわらず、このような株式が依然として存在しうる。日本当局は、これらの数は極めて限定的であると推測しているが、統計を有していない。匿名の無記名式株式の他に、券面に氏名が記載されない株券を有する者については、特定がされていないか、特定の検証がされていない。  
35.信託会社は金融庁によって規制されており、犯罪収益移転防止法の下で資金洗浄及びテロ資金供与対策義務に服している。同法の顧客管理義務における重大な欠陥は、信託の受益所有権及び支配に関する透明性における深刻な問題についても暗示している。  
36. 非営利団体(NPO)分野におけるテロ資金供与のリスクは日本では比較的低い。NPOは、その運用に対し、高度の透明性と公的説明責任に服しており、一般に、許可、登録または監督による包括的体制が存在する。NPOに対する、国家、地域、及び活動内容によって広範な規制者が存在する一方で、規制当局と捜査当局の連携は全体的に効果的である。しかしながら、日本は、テロ資金供与への悪用リスクや、資金洗浄及びテロ資金対策措置に関する認識向上のためのNPOセクターに対するアウトリーチ活動を行っていない。  
国内、国際協力  
37. 日本は、資金洗浄及びテロ資金対策のためFIU、法執行機関、政策立案者、監督当局を含む複数の省庁による取り組みを活用している。資金洗浄及びテロ資金供与は、国際組織犯罪及び国際テロリズムに対する広範なプログラムに組み込まれている。これは、2003年9月に設立された「犯罪対策閣僚会議」及び2001年7月に設立された「国際組織犯罪等対策推進本部」(2004年8月に「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」として改組)に主導される。この二つのイニシアティブは資金洗浄及びテロ資金対策に対する行動計画を採用する全ての関係省庁により成る。  
38. 日本はウィーン条約及びテロ資金供与防止条約を締結している。パレルモ条約は署名済みで、その締結プロセスが進められているところである。国連安保理決議1267、1373及びその後継決議の実施にはギャップがある。  
39.共助に関して、日本は2つの刑事共助条約(韓国及び米国)しか署名していない。そのため、共助における最も有用な手段は、国際捜査共助等に関する法律(国際捜査共助法)である。条約がない場合、同法は外交ルートを通じた共助の請求を求めているところ、共助の中央当局である外務省は、要請を検討して意見を作成し、併せて法務省に送付する必要があるため、手続が遅れる可能性がある。加えて、要請国は日本が強制的措置をとりうるようにするために、日本に対して要請している証拠が必要不可欠であることを示さなければならず、共謀罪及び法人の起訴に関する請求においては,双罰性につき柔軟な対応が困難である。様々な条約の締約国として、日本はまた、多国間に対する義務を負う。しかしながら、パレルモ条約は締結されていないので、同条約下で重大犯罪とされている犯罪に関する共助は、一般法により対処せざるを得ない。  
40.引渡は逃亡犯罪人引渡法に規定されている。同法は、引渡犯罪が、日本及び要請国の双方において、3年以上の拘禁刑により処罰可能である場合に、引渡を認めている。同法は日本人の引渡を禁じているが、引渡条約によれば、日本人の引渡は可能であり、日本が締結した二つの引渡条約には日本人の引渡が特に含まれている。日本は韓国及び米国とのみこのような引渡条約を締結している。引渡要請の前提条件となる最低刑期は、高過ぎると思われる。また、日本は、引渡に代えて日本国民を訴追することを効果的には行っていない。  
41. 双罰性が共助及び引渡の要件とされているところ、資金洗浄とテロ資金供与罪における制限が、日本の共助の範囲及び効果、引渡請求への日本の対応能力を減少させている。  
42. 日本は国内当局と海外のカウンターパート間での行政上の協力を効率化させ、改善するための措置を実施している。しかしながら、FIU間で交換される情報の件数は少ない。  
リソース及び統計  
43. 日本全体として、資金洗浄及びテロ資金対策の様々な分野に、適切な経済的、人的、技術的リソースを投じている。全ての権限ある当局は、高い職業的水準を維持することを義務づけられている。一方で、FIUはSTRの分析、特に最近STR義務の対象となったDNFBPに関するSTRの分析に携わる人的リソースを増加すべきである。さらなる訓練と捜査のためのリソースが資金洗浄及びテロ資金対策を行う法執行機関に割り当てられるべきである。  
44. 審査団は、必ずしも全ての省庁がそのように見受けられなかったため、国内の様々な省庁で保持されている統計が包括的または組織的に蓄積されているかどうかを判断することはできなかった。  
 
( 別 添 ) 表:FATF勧告の遵守に関する評価