序 |
- 第4回ASEM財務大臣会議は2002年7月5、6日にコペンハーゲンで開催された。会議には、欧州連合(EU)議長国デンマークの議長のもと、アジア10カ国及びEU15カ国の財務大臣と欧州委員会(EC)の経済・通貨問題担当委員が出席した。アジア開発銀行(ADB)総裁、欧州中央銀行(ECB)副総裁及び国際通貨基金(IMF)がゲストとして出席した。
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世界経済の動向 |
- 財務大臣達は、最近の世界及び地域経済の見通しについて意見交換を行った。
- 経済は、2002年上半期において緩やかな回復を経験したが、本年下半期においても徐々に加速することが期待される。米国における減速は、広範囲かつ予想以上に急速に欧州及びアジアの双方に影響を与えている。いくつかのショックは、本質的に世界的な広がりをみせてきた(IT関連資産の調整、石油価格の変動)が、伝統的な貿易の結びつきもまた、今日の世界経済における経済の相互依存を過小評価している。投資活動、市場の信任及び金融市場の結びつきは、その重要性を増している。特にITのようないくつかの部門においては、製造工程が世界規模になっている。
- いくつかの国では構造的・財政的課題が残っているが、全体としてアジアの新興市場経済国は、2002年及び2003年の世界平均を超える成長が期待される。財務大臣達は、多くのアジア諸国においてなされた進展を歓迎した。財務大臣達はまた、この地域の経済成長に必要となる抜本的な構造改革を持続するとのアジア諸国のコミットメントを歓迎した。しかしながら、これらの国における成長が持続するか否かは、継続的で根本的な構造改革に依然として大きく依存している。
財務大臣達は、日本政府が開始した広範な改革プログラムを歓迎し、日本政府に対し、このプログラムの前向きな実行、特に金融部門、財政構造分野における改革を慫慂した。 - EUにおいては、経済成長は2002年下半期に加速することが期待される。また2003年においては、健全な経済ファンダメンタルズ、すなわちインフレの低下、健全な公共財政、主な対外不均衡の解消によって支えられ、経済成長が確固としたものとなるであろう。生産、労働、資本市場における構造改革は、欧州の成長可能性を更に高めるために続けられている。
- 財務大臣達は、2001年10月にシンガポールで表明されたアジア欧州ビジネスフォーラム(AEBF)の提言に留意した。これに関しAEBFは、経済の安定及び成長を回復し維持するために、政府と通貨当局による協調した努力、とりわけ金融及び銀行部門における主要な改革を支持した。
- 財務大臣達は、欧州及びアジア両地域が直面する課題に取り組むため、両地域がマクロ経済の課題を含む経済、金融の領域において、ますます協力・協調すべきことを強調した。特に、労働市場と同様にコーポレート・ガバナンスを含む金融・企業部門における健全な政策改革が追求されるべきである。
- 財務大臣達は、世界経済の回復を強固なものとするために、より開かれた多国間貿易システムを促進することの重要性を強調し、保護貿易主義に反対する誓約と多国間の規制を遵守するというコミットメントを再確認し、他の諸国に保護貿易主義の手法へ回帰しないことを要請した。
- 最近の進展に照らして、財務大臣達は、コーポレート・ガバナンス及び財務の透明性の改善に対する特別の関心を強調した。
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テロ資金供与、マネー・ロンダリング、国際金融システムの濫用への闘い - 財務大臣達は、国際金融システムの濫用に対処するため、グローバル化の進展につれて、更なる協調が必要であることに留意した。9月11日の悲劇的な事件の後、テロ組織への資金供与を防止するために、欧州とアジアにおいて強化された措置が講じられた。財務大臣達は、11月の国際通貨金融委員会(IMFC)における合意を歓迎し、金融活動作業部会(FATF)の提言を含む反マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策のための世界基準策定の努力を認識した。彼らは、全ての国がテロ資金供与に対処するため、テロリストの資産凍結、金融情報部門又はそれと同等の組織の設置、情報の共有を確保するため、FATFの提言及び国連の決議等を採用し、完全に実施することを奨励した。財務大臣達は、マネー・ロンダリング及びテロ資金供与との闘いのための政府当局の責任を改めて表明する一方で、その成功は世界レベルでの継続的な警戒、時宜を得た行動に依存することも強調した。
- 財務大臣達は、例えばASEMマネー・ロンダリング対策イニシアティブを通じて、マネー・ロンダリング及び国際金融システムの濫用に対処するために、互いに協調するというASEM加盟国のコミットメントを再確認した。財務大臣達は、英国及びタイが発表したASEM反マネー・ロンダリング・イニシアティブの進展報告を歓迎し、全参加国に協力の継続を奨励した。財務大臣達は、2003年の次回会合時に進展状況をレビューすることに合意した。財務大臣達は、欧州及びアジア諸国の地下銀行及び他の送金手段の監督に関する2003年のシンポジウムをマレーシアと共催するとのドイツのイニシアティブを歓迎した。財務大臣達はまた、昨年10月のワシントンにおけるFATFで合意された、テロ資金対策に関する8つの特別勧告の実行をASEM加盟国に奨励した。
国際金融システムの強化 - 財務大臣達は、国際金融システムの更なる強化の必要性を強調し、危機の予防と解決に関しては継続的な努力が必要であることに合意した。過去の経験では、多くの場合、金融危機は早期に発見、改善されなかった一貫性のないマクロ経済及び構造政策による脆弱性から発生することが示されている。これに関して、IMFのサーベイランスは極めて重要であり、財務大臣達は、組織改革を通じてその質を高めようとするIMFの最近のイニシアティブを歓迎する。IMFは、4条協議及び国際基準の遵守状況に関する報告書(ROSCs)、金融セクター評価プログラム(FSAP)評価のような他のIMF報告書のボランタリー・ベースでの公表を引き続き奨励すべきである。
財務大臣達は、国際的に認識された基準の実施を進展・促進し、特に金融システムのモニタリングなどのサーベイランス強化の作業がなされたことを歓迎した。財務大臣達は、全ての国に国際基準の採用・実施を慫慂するが、その採用・実施のペースは個別の事情を反映することを認識する。規制されていない主体の透明性、金融システムの一体性も、金融の安定にとって極めて重要である。財務大臣達は、その進展がヘッジファンドの国際金融システムに与えるリスクを軽減したことに留意した。しかし、彼らは自己満足におちいることなく、市場規律を強化し、システミック・リスクを軽減するために、ヘッジファンドによる情報開示の継続的な改善を求めた。財務大臣達は、金融安定化フォーラム(FSF)とIMFとの間の継続的な協力を歓迎し、FSFとIMFのそれぞれの役割に応じて、規制が不十分なオフショア金融センターによる国際的に合意された基準の遵守を強化することを支援し、その協力のあり方を改善することを双方に強く奨励した。彼らはまた、最近の企業破産の後、FSFによって立ち上げられた作業計画を歓迎し、2002年9月までにレポートが提出されることを期待している。 財務大臣達は、IMF第12次クォータ配分の見直しが開始したことに留意した。クォータは、国際経済における進展を反映すべきである。 - 更に、民間部門関与(PSI)は、危機の解決の標準的な要素となるべきである。これには、とりわけ、PSI確保のための手法の強化及び持続不可能な対外ポジションが債務リストラを必要とする場合に対処するより秩序立ちかつ透明な枠組みの可能性の検討が含まれる。財務大臣達は、新しい国家債務再編メカニズム(SDRM)に対するIMF 事務局による提案に留意し、SDRMの実施に関する法律、制度及び手続き上の問題の検討をIMFに奨励するための本年4月のIMFCにおける合意を歓迎した。SDRMは金融危機に対処するための一貫した広範囲の戦略の一部として考えられるべきであり、従って、2000年のプラハでのIMF・世銀年次総会において確立されたPSIアプローチの運用上の改善、更なる実施にとって、代替的ではなく、補完的に発展させられるべきである。財務大臣達はまた、関連する債務契約の集団行動条項(CACs)の活用を含む、債務リストラの契約アプローチに対する現在進行中のイニシアティブに留意した。
- 財務大臣達は、経済通貨統合(EMU)の完成としてのユーロ貨幣・紙幣の成功裡の導入を歓迎した。彼らは、世界最大の貿易地域の単一通貨が、安定と成長の増大を通じて世界経済及びアジア諸国にとってプラスの影響を持つことに留意した。同様に、クロスボーダーの貿易及び金融取引を簡便なものにすることにより、それはアジアと欧州の間のより密接なつながりを支えることになる。彼らは、特に民間部門の借り手に対する融資通貨、公的・民間部門の双方に対する投資通貨として、これまでのアジアにおけるユーロの利用の極めて大きな進展に留意した。ユーロの流通は、ユーロ圏経済の統合を速め、新しい投資機会の創出に貢献し、成長を拡大し、雇用の創出を強化するであろう。統合・相互依存に向けた動きはまた、EUの経済政策戦略の強化及び継続的な実施を必要とする。EUの拡大の見通しは、明らかにこれらの傾向を更に強めるであろう。
- 財務大臣達は、2002年5月10日に上海で開催されたASEAN+3(中国、日本及び韓国)財務大臣会議で報告された、チェンマイ・イニシアティブにおける重要な進展、域内の政策対話を促進する努力、資本フローのモニタリング、早期警戒システムを含むASEAN+3財務大臣プロセスのもとでの地域金融協力における進展を歓迎した。財務大臣達は、ASEAN+3財務大臣代理・中央銀行総裁代理が経済状況を報告し、政策課題についての意見交換を行うために今後定期的に会合を開くとともに、その最初の会合が2002年にミャンマーで成功裡に開催されたことに留意した。彼らはまた、上海の会議においてASEAN+3財務大臣の間で活発な政策対話が行なわれたことを歓迎した。
国際開発アジェンダ - 財務大臣達は、世界の5分の1が苦しんでいる極端な貧困との闘いに対する道徳上の義務を強調し、ミレニアム開発宣言に書かれた取り組みの完全な支持に再び言及した。財務大臣達は、これらの目標を達成するため、持続的開発のための国際的な民間資金を動員すること及び政府開発援助の効率性の改善と量的拡大が不可欠であることを強調した。これに関連して、財務大臣達は、モンテレー開発資金国際会議に関連してなされた、国際的な開発のための公的・民間資金を動員するための広範なフレームワークを提供するモンテレー・コンセンサス及び資金コミットメントが、ヨハネスブルグでの持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で議論される「グローバル・ディール」の重要な一部をなすことを再確認した。WSSDの成果はモンテレーで合意された資金コミットメントを踏まえるべきである。
- 債権国の財務大臣達は、債務削減が貧困撲滅に果たし得る役割を認識しつつ、重債務貧困国(HIPC)イニシアティブに完全に参加するとのコミットメントを再確認し、他の国・地域機関が同様の措置をとることを奨励することに合意した。
貿易、経済の統合 - 財務大臣達は、WTOドーハ開発アジェンダ(DDA)の立ち上げを歓迎し、この結果の達成にASEMが果たした重要な役割に留意した。DDAが成功裡に終了することは、この地域及び世界における開発の促進に重要なものとなるであろう。
- 財務大臣達は、国際貿易政策にとって大きな成功を意味する中国のWTOへの加盟を祝した。中国市場の開放は、国際競争、労働分業を高めることにより、最終的に全てのASEM加盟国にとり、より高い成長見通しを導くであろう。
- 財務大臣達は、ベトナムの特別な条件、必要性を考慮しつつ、相互に受け入れられる市場アクセス・コミットメント、WTOルールに対する遵守を基礎として、ベトナムの最近の加盟交渉が加速することの支持をあらためて表明した。財務大臣達は、ベトナムの加盟交渉を進展するため、ASEM加盟国による特定の支援、キャパシティー・ビルディングのための措置を要請した。
- パラ8に記述されているように、財務大臣達は、ASEAN+3(中国、日本及び韓国)財務大臣会議プロセスにおける地域金融協力の進展及び上海の会議における大臣間の活発な政策対話を歓迎した。
- 財務大臣達は、EU統合アジェンダにおける進展、バルセロナ評議会の準備段階において達成されたリスボン戦略を歓迎し、この過程における加盟候補国のEUへの漸進的な統合への展望に留意した。
税関協力 - 財務大臣達は、貿易円滑化の促進及び取締の強化のため、ASEM税関のもとでなされた努力を歓迎した。財務大臣達は、2001年7月にストックホルムで開催された第4回ASEM関税局長・長官会議の結果を歓迎し、税関当局に、税関協力協定のような手法により強化される彼らの協力を継続することを奨励した。財務大臣達は、商標偽造に対する努力を強化することに合意し、それを関税犯則としてみなすことについての更なる作業を奨励した。
ASEM信託基金、神戸リサーチ・プロジェクト、公的債務管理フォーラムのフォローアップ - 財務大臣達は、ASEM信託基金第2フェーズの立ち上げを歓迎した。彼らは、この新しい基金の機能を最大限効果的にするために、管理者に信託基金第1フェーズの結果についての評価を十分に行うことを要請した。
- 財務大臣達は、2001年1月の第3回ASEM財務大臣会議において開始された神戸リサーチ・プロジェクトの成果を歓迎した。本プロジェクトは、貿易、直接投資、金融協力を含む、地域の間での研究協力を促進し、ASEM参加国の共通の関心課題を研究することを企図したものである。多くのアジア、欧州の参加国、研究機関がプロジェクトに参加した。財務大臣達は、東アジアにおける金融協力、最適な為替相場制度に関する提案を含む、本プロジェクトの研究に基づいた報告書に留意した。
- 財務大臣達は、公的債務管理フォーラムにおける意見、情報の交換がASEM加盟国にとり非常に有用・有益であったことに留意し、この分野における共通の関心事項について定期的に年1回議論を行う必要性を表明した。財務大臣達は、公的債務管理フォーラムの次回会合が2002年9月10日〜13日にコペンハーゲンで開催されることを歓迎した。
- 財務大臣達は、神戸リサーチ・プロジェクトと公的債務管理フォーラムがASEM財務大臣プロセスのもとでのアジアと欧州との間の協調の好例であることを認め、地域協力を促進するために更なる協調が望ましいことを強調した。
次回会合、その他 - ASEM財務大臣共同声明は、第4回ASEM首脳会合への財務大臣からのインプットとなる。彼らはまた、第5回財務大臣会議が2003年にインドネシアで開催されることに合意した。
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