第17回APEC財務大臣会合「成長戦略とファイナンスに関する京都レポート」(骨子)(2010年11月5、6日於:京都)
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| T.序 | |
| ・ | 世界経済は最近の金融危機から回復しつつあるが、不確実性が残る。 |
| ・ | アジア太平洋地域では、発展途上エコノミーの成長は力強いが、多くの先進エコノミーの経済活動のペースは緩やか。アジア太平洋地域は、世界で一番ダイナミックな地域として、世界経済の中における役割が向上。APECは、世界全体のGDPの54%、貿易の44%、人口の40%を占める。 |
| ・ | 本レポートは、首脳による成長戦略の議論に貢献するものと確信。 |
| ・ | IMF、世界銀行、ADBなどの国際金融機関及びABAC(APECビジネス諮問委員会)の本レポートに対する貢献に感謝。 |
| U.より強固で、より持続可能で、より均衡ある成長 | |
| ・ | 民間セクターの需要の持続的な回復が最優先。 |
| ・ | 対外的な持続可能性を促進するため、多角的協調を強化。過度の不均衡を削減し、経常収支を持続可能な水準で維持するため政策を総動員。 |
| ・ | 根底にある経済のファンダメンタルズを反映し、より市場で決定される為替レートシステムに移行し、通貨の競争的な切下げを回避。準備通貨を持つエコノミーを含む先進エコノミーは、為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視。これらの行動は、いくつかの新興エコノミーが直面している資本移動の過度な変動のリスクを軽減する助け。 |
| ・ | 経常収支赤字のエコノミーは、財政再建や年金改革などを通じて貯蓄拡大を推進。財政再建のタイミングとペースは、民間需要の回復や金融の強さに応じて、エコノミーによって異なるものと認識。経常収支赤字のエコノミーは、開かれた市場を維持しつつ、輸出競争力を強化することを含め、構造改革を推進。 |
| ・ | 経常収支黒字のエコノミーは、外需への依存を減らし、内需拡大を推進。家計の所得の向上、予防的な貯蓄を減らすためのソーシャル・セーフティネットの強化、家計に対する金融サービスの改善は、持続的な消費拡大・福利向上に貢献。官民パートナーシップ(PPP)の促進を通じた投資の拡大や金融資本市場の発展も重要。経常収支黒字の先進エコノミーは、構造改革を推進し、内需拡大に努めるべき。 |
| ・ | 金融危機の結果、失業率が許容出来ないレベルまで上昇。APECエコノミーは、それぞれの状況に応じて、職業訓練や教育システムの改善を実施。 |
| ・ | 持続可能な成長と効率的な資源配分には、健全で良く機能する金融システムの存在が不可欠。公平な競争条件を確保し、市場の分断、保護主義、規制裁定行為を回避するような方法で各エコノミー当局が整合的に国際基準を実施するよう、各エコノミーレベル及び国際レベルで基準を引き上げる行動を取ることにコミット。 |
| V.財政運営と人口の高齢化 | |
| ・ | 健全な財政運営を確保し、信頼性が高く、成長に配慮した財政再建計画を策定することは、成長戦略の不可欠な要素。 |
| ・ | APECエコノミーの中でも、高い水準の公的債務を負っているエコノミーは、特に、公的財政管理の効率性の改善も重要。 |
| ・ | APECエコノミーの中には、現地通貨建て債券市場を育成するためのイニシアティブを立ち上げることで、域内の投資のファイナンスのためにエコノミー内の貯蓄を活用し、外国借入に伴う為替リスクの回避に努めているところも存在。こうした措置は、慎重な財政政策によって生み出されたフィスカル・スペースと相まって、金融危機に際し、経済対策を実施するために必要な資金をファイナンスするのにも貢献。 |
| ・ | 高齢化が進めば、年金・医療等の社会保障費が増大。健全な財政運営の確保に当たり、高齢化は中長期的に大きな課題。 |
| ・ | 社会保障のカバレッジが広く、かつ、給付水準が高いエコノミーでは、社会保障費の伸びの長期的な抑制が重要。その他のエコノミーでは、社会保障制度の充実を図る一方、制度の設計に当たっては、将来世代に過大な負担をもたらさないよう、財政の持続可能性を確保することが課題。 |
| ・ | 既に、一部のエコノミーにおいて実施されているように、年金について、支給開始年齢の引上げや支給額の引下げ、賃金スライド制から物価スライド制への移行、医療について、診療報酬の抑制や、患者自己負担の見直し、医療ITの促進、ジェネリック薬品の導入等を推進することが考えられる。 |
| ・ | APECエコノミー同士で経験を共有することで、各エコノミーにおいて、社会保障分野で必要な改革を実施するためのコンセンサスの形成を促進。 |
| W.インフラ・ファイナンス | |
| ・ | インフラ・ファイナンスは、成長・競争力・貧困削減のために重要。インフラが十分か否かは、投資環境はもとより、病院や学校などの社会サービスへのアクセスにも影響。 |
| ・ | インフラ整備には多額の資金が必要であり、多くのエコノミーにとって、インフラ・ファイナンスは課題。 |
| ・ | 民間セクターの役割も高まりつつあるが、引き続き、政府の役割も重要。政府の役割としては、市場を通じては十分な資金が供給されない場合における長期性資金の供給が考えられる。また、民間投資促進に必要な環境整備として、投資コスト回収の観点からの料金政策見直し、恣意的な介入からの民間投資家の保護、料金不払い者に対する差し押さえの強化等を実施し、PPP(官民パートナーシップ)振興を図ることが重要。 |
| ・ | 世界銀行やアジア開発銀行(ADB)など国際開発金融機関(MDBs)の役割も重要であり、長期性資金の供給や信用補完の供与、技術協力の実施に加え、国際協力銀行(JBIC)などの輸出信用機関(ECA)や民間セクターとの協働が必要。ABAC・ADB・JBICが、横浜で開催するインフラ・フォーラムを歓迎。 |
| ・ | インフラ整備に対する民間ファイナンスを促進するため、APECで実施されている様々なイニシアティブを歓迎。 |
| ・ | 国境を越えたインフラの整備により、地域全体として経済発展を実現。ADBによる大メコン河流域地域協力(GMS)の取組みなど、MDBsの役割は大きい。 |
| ・ | インフラ整備に当たっては、マクロ経済運営や成長戦略との整合性を確保するとともに、環境への影響を最小化する必要。 |
| X.中小企業ファイナンス | |
| ・ | 成長と雇用創出のエンジンの役割を担う中小企業に対するファイナンスの充実は、成長戦略の重要な要素。APECエコノミーでは、中小企業は、企業数の90%以上、GDPの20%〜50%、雇用の25%以上を占める。 |
| ・ | 金融危機に際して、大半のAPECエコノミーは、政策金融の拡充などの措置を講じ一定の成果。今後、経済成長の回復に合わせ、危機対応として講じられた措置を見直すとともに、民間ファイナンス促進のための環境整備を図ること等により、中小企業の長期的な成長ポテンシャルを強化することが重要。 |
| ・ | 民間ファイナンスは、今後とも、中小企業向けファイナンスの主役。政府は、民間セクターと協力して、中小企業向けファイナンスにおける構造的な障害を取り除くため、@中小企業の財務諸表の信頼度を高めるための支援、Aマイナス面だけでなくプラス面のものも含めた信用情報を金融機関と共有するための仕組み作り、B売掛債権や知的財産権を担保とする融資の拡大や、担保付融資を行った金融機関が行う差押えに係る法制度改善、C複雑化した制度金融の見直し、D成長性の高い中小企業の株式上場、等を図る必要。 |
| Y.近年における、金融サービスを十分に受けられない者(零細企業や家計)に対するサービス拡充を図るための先進的な取組み(金融包摂(financial inclusion)) | |
| ・ | 世界の成人人口の半分は、金融サービスにアクセス出来ない状況。成長をあまねく広げるため、零細企業や家計の金融サービスに対するアクセス拡充が重要。近年、携帯電話などを活用したモバイル・バンキングや、銀行代理店網(小売商店を銀行支店の出先窓口として活用)の拡大により、金融サービスの提供コストが低下。 |
| ・ | 本日、APEC金融包摂イニシアティブを立ち上げ、これまで十分な金融サービスを受けられなかった人々に対して、商業ベースに乗る形で、金融サービスを提供するためのモデルを開発。身分証明書を持たない証明弱者の救済や、金融サービスに係る消費者教育の充実など、公的セクターに求められる役回りを検討。 |
| Z.グリーン・ファイナンス | |
| ・ | グリーン・ファイナンスは、経済成長と地球温暖化対策の両立を図るために、強力かつ効果的な手段。 |
| ・ | 低炭素社会への移行を図るには、スマート・グリッドや再生エネルギー、高効率型火力発電所、都市部における公共輸送機関を整備するなど、グリーン技術の活用が必要。 |
| ・ | MDBsや公的金融機関は、民間資金を動員するための触媒として、長期性資金の供給や、関係者間におけるリスクの適切な配分の促進等を実施。専門的な知見や能力を有するMDBsは、自らの経験の共有や政策提言、気候変動対策に資するプロジェクトを組成するに当たってのファイナンシャル・アレンジャーとしての役割を果たす。 |
| ・ | ベスト・プラクティスの共有や、グリーン成長を促進するための政策提言を行うAPECグリーン成長イニシアティブを歓迎。 |
| ・ | グリーン・ファイナンスを促進するため、@グリーン投資を行う企業を対象とする投資ファンドの立ち上げ、A温室効果ガスの排出に対して課金するなど市場メカニズムの活用、B太陽光発電などに対する固定価格買取り制度や二酸化炭素排出量の多い設備に対する使用規制の導入等の措置が考えられる。 |
| [.今後の進め方 | |
| ・ | 来年のAPEC財務大臣会議(於:ホノルル)は、「成長戦略とファイナンスに関する京都レポート」の進捗状況をレビュー。 |
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