政策コスト分析について:V部 資料編
政策コスト分析について
1.政策コスト分析とは
- (1) 政策コスト分析の内容
政策コスト分析とは、財政投融資を活用する事業について、一定の前提条件(将来金利、事業規模、利用見込みなど)を設定して将来キャッシュフロー(資金収支)などを推計し、これに基づいて、事業の実施に関して(1)将来、国から支出されると見込まれる補助金等と、(2)将来、国に納付されると見込まれる国庫納付・法人税等、及び(3)既に投入された出資金等による利払軽減効果(国にとっての機会費用)の額を、各財投機関が試算したものです。なお、算出された政策コストは、財投対象事業の実施によって生じる将来の資金移転を伴う財政負担を示すものではありません(将来の資金移転を伴う財政負担は(1)のみ)。
- (2) 政策コスト分析の目的
財投対象事業は、受益と負担の関係が明確であり、受益者(利用者)にその負担を求めることが適当なことから、基本的に受益者負担によって有償資金の償還が行われています。その受益者負担を軽減するため、国(一般会計など)から事業を実施する財投機関に対して、補助金等や出資金等が投入される場合があります。このような事業の妥当性を判断する材料として、将来、その事業に対する補助金等の支出がどの程度見込まれるか、あるいは既に投入された出資金等によるメリットがどの程度になるかを試算し、これを「政策コスト」としてディスクローズすることには、財政投融資の透明性を高める意義があります。
- (3) 政策コストの評価
政策コストは、財投対象事業の受益者負担を軽減するために用いられるものですから、その額の大小をもって単純に評価することは適当ではなく、あくまでもその事業の実施に伴う社会・経済的便益と併せて総合的に評価されるべきです。
また、政策コストは、財政政策として財投対象事業への支援の度合いを強めるものであって、財投機関の財務の健全性に問題があることを示すものではありません。
2.政策コスト分析の枠組み
- (1) 政策コストの構成要素
- (i) 国(一般会計など)からの補助金等
将来の各年度において国(一般会計など)から財投機関に投入されると推計された補助金・補給金・交付金の額を、それぞれ割引現在価値に換算し、その合計額を政策コストの構成要素としています。 - (ii) 国への納付金等
将来の各年度において財投機関から国に納付されると推計された国庫納付金・法人税・配当の額を、それぞれ割引現在価値に換算し、その合計額を政策コストのマイナス(△)の構成要素として捉えています。 - (iii) 国からの出資金等による利払軽減効果(機会費用)
財投機関が国からの出資金及び無利子貸付金を受け入れたことによって得られた利払軽減効果(=分析期間の最終年度までに出資金等が国に全額返還されるものとみなした場合の機会費用)の相当額を、政策コストの構成要素としています。
- (i) 国(一般会計など)からの補助金等
- (2) 政策コスト分析の対象
政策コスト分析は、各年度の財政投融資の対象事業に限定して行います。財政投融資の対象となっていない事業を実施するために、財投機関が国から補助金等を受けるとしても、その部分は分析対象に含まれません。そのため、政策コスト分析の利用にあたっては、分析手法の仕組みや対象事業の範囲などに留意が必要です。
- (3) 前提条件の設定
- [分析期間]
政策コスト分析における分析期間は、分析年度から財投機関が財投対象事業を終了する年度までの期間としています。融資系機関(政策金融機関など)の場合は、原則として次年度以降に新規融資を行わないという前提をおき、財投機関が貸出債権の回収を終えるまでを分析期間としています。事業系機関の場合は、実施・継続中の事業と中期計画などによって既に新規着手が予定されている事業のみを実施するという前提をおき、事業終了後、財投機関が調達した財政融資資金などの償還が終わるまでを分析期間としています。
- [将来の財政投融資金利、割引率など]
政策コスト分析においては、分析年度の予算及び財政投融資計画の概算決定日を基準日とした国債流通利回りの実績値を基に、理論式による機械計算によって、将来の財政投融資金利や、将来キャッシュフローを割引現在価値に換算するための割引率を、分析の共通前提としてあらかじめ設定しています。
3.社会・経済的便益の試算
政策コストは、あくまでも事業の実施に伴う社会・経済的便益と併せて総合的に評価されるべきものです。しかし、個々に異なる事業の社会・経済的便益を統一的かつ定量的に把握することは難しい面があります。そこで、事業系機関においては、公共事業について関係府省が策定している「費用便益分析マニュアル」などを活用することによって、概ね統一的な基準で社会・経済的便益を定量的に試算することが可能なことから、下記のような前提条件に基づいて、社会・経済的便益を試算しています。
- [対象事業]
政策コスト分析と同様に、実施・継続中の事業と中期計画などにより既に新規着手が予定されている事業を、試算の対象としています(既に完成・終了した事業については、試算の対象から除外されます)。
- [便益の計測方法]
「費用便益分析マニュアル」などで定められている便益の計測方法に従って試算を行います。
- [適用割引率]
「費用便益分析マニュアル」などで定められている社会的割引率(4%)と、政策コスト分析で用いる割引率の2種類を試算しています。
- [分析期間]
「費用便益分析マニュアル」などで定められている対象事業の実施期間に耐用年数を考慮した分析期間(供用期間)と、政策コスト分析と同じ分析期間(償還期間)の2種類を試算しています。
- 〔試算の始期〕
基本的には政策コスト分析と同じです。但し、「費用便益分析マニュアル」などに基づく試算において、基礎データの取得や更新の負担などやむを得ない場合には、過去の社会・経済的便益の試算結果を活用しています。
なお、一部の事業系機関及び事業には、試算の根拠となるマニュアルが整備されていないこと、社会・経済的便益を試算するための適当な基礎データが取得できないことなどの理由により、定量的な試算ができないものがあります。また、融資系機関には確立された手法がないため、統一的な試算は行っていません。
