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行政刷新会議「規制・制度改革に係る方針」で示された一連の税関検査の合理性に関する検証について

平成24年2月22日
財務省

1.行政刷新会議からの指示事項

行政刷新会議の下の「規制・制度改革に関する分科会(農林・地域活性化グループ)」において、我が国における現行の旅具通関手続について、観光振興の観点から、ほぼ一律に旅券提示を求める方法を見直すべきではないかとの意見が出され、「規制・制度改革に係る方針」(平成23年4月8日閣議決定)において、『入国時の一連の税関検査に関して、申請書提出の有無や旅券提示の有無を含め、諸外国の対応状況を調査した上で、改めて、当該税関検査の合理性について検証し、結果を公表する。<平成23年度措置>』こととされた(公表期限は平成24年3月末)。

 

2.諸外国における一連の税関検査について

本検証では、「旅客入国時の一連の税関検査」とは、外国からの入国旅客が携行する土産品や本人が使用する身の回り品等の我が国への輸入を許可するため、税関職員が携帯品申告書等の関係書類の提示若しくは提出を求めること及び質問や開披検査を行うことを含めた手続及びその処理に係る税関職員の行為をいうものと整理した。

その上で、上記の行政刷新会議からの指示事項を受け、財務省は、利用旅客数が多い上位30空港(注1)が属する21カ国・地域の税関当局に対し、質問票の送付等により、携帯品申告書提出、旅券提示、検査方式等について実態調査を実施し、18カ国・地域(注2)より回答を得た。

(注1) 国際空港評議会(ACI:Airports Council International)発行の"Year to date International Passenger Traffic 2010"による。

(注2) 韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ベルギー、オーストリア、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、米国、カナダ (順不同)

(1) 税関検査の類型について

質問票への回答等があった国・地域における税関検査方式には、大別して所謂「ピックアップ方式」と「検査選別方式」がある。それぞれの方式の概要等は以下の通り。

イ.「ピックアップ方式」について

調査への回答等があった国・地域のうち、中国、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、スイス、ベルギー、オーストリア、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス及びオランダの13カ国・地域において採用されている「ピックアップ方式」では、一般的にデュアル・チャンネル(注3)を使い、機内預託手荷物を引き取った後に出口通路を通過する入国旅客等の中から検査対象旅客を指定(ピックアップ)する。税関職員は、必ずしも全ての入国旅客に質問を行っているわけではなく、また、携帯品申告書の提出、旅券の提示は原則として求めていない。

(注3) 申告するものがある場合には赤で「Goods to declare」と表示された通路(レッド・チャンネル)、又は、申告するものがない場合には緑で「Nothing to declare」と表示された通路(グリーン・チャンネル)、のいずれかを選択し、それぞれの通路へ進入することで申告したと見なすもの。レッド・チャンネルでは、改めて税関職員に課税対象物品等を口頭で申告する必要がある。グリーン・チャンネルを選択した場合、税関職員から呼び止められて検査指定されない限りは、そのまま出口へ進む。税関検査において申告していない課税物品等が発見された場合には、理由如何に関わらず、直ちに処分の対象となる。

ロ.「検査選別方式」について

調査への回答等があった国・地域のうち、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド及び韓国の5カ国で採用されている「検査選別方式」では、入国旅客等は、機内預託手荷物を引き取った後に出口へ向かう前に、税関職員(Marshal)に携帯品申告書を提示する必要がある。税関職員は、提出された携帯品申告書の内容等を審査し、検査の要否を指定する。この方式では、携帯品検査の要否を指定する税関職員が少人数で事務処理を行うため、到着便が輻輳する時間帯においては長蛇の列を作る場合がある。

(2) 携帯品申告書の提出について

イ.調査への回答等があった国・地域のうち、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド及び韓国の5カ国では携帯品申告書の提出を義務付けている。なお、これらのうち、カナダ、オーストラリア及びニュージーランドにおいては、入国審査用の申告書と兼用となっている。

ロ.上記イの5カ国における携帯品申告書の記入事項を見ると、我が国の携帯品申告書とほぼ同様であり、輸入が禁止・制限されている物品の有無のほか、免税範囲を超過する土産物等の有無、一定額以上の現金の所持の有無等について回答することが求められている(別添1を参照)。また、我が国と同様に署名欄が設けられており、申告者に申告内容が正確であることを宣誓させるとともに、申告内容と齟齬があった場合には、所持品の没収や罰金、起訴、禁固等の刑罰の対象となる場合がある旨の警告が記載されている。

(3) 旅券の提示について

イ.調査への回答等があった国・地域のうち、税関が入管業務の一部を付託されているオーストラリア、米国及びカナダにおいて、また、税関と入管が統合されて新たに国境管理庁等に組織再編されたシンガポール及び英国においては、税関職員への旅券の提示は必須となっている。

ロ.「ピックアップ方式」を採用している欧州地域などの国・地域においては、税関検査の際に全ての旅客から携帯品申告書の提出及び旅券の提示を求めているものではない。

ハ.他方、調査への回答等があったいずれの国・地域においても、我が国と同様に、税関業務を遂行する上で必要があると認められる場合には、税関職員は関税法等の規定に基づき、旅客に対して旅券の提示を求めている。税関検査方式の如何に関わらず、実態として、税関検査を実施する際には口頭による渡航先等に関する質問を行い、人物特定や検査回避又は検査中の逃亡抑止のため、入国旅客から旅券の提示を求めている。また、必要に応じ、航空券やホテル予約票等の旅行関係書類の提示も求めている。

 

3.我が国における旅客入国時の一連の税関検査について

上記2.を踏まえ、我が国における旅客入国時の一連の税関検査に関する合理性について以下の通り検証する。

(1) 我が国の税関検査の概要

イ.我が国税関では、国民の安全・安心確保のため、不正薬物等の密輸入阻止を最重要課題の一つとして位置づけ、関係省庁との連携を強化しつつ、水際での取締りに努めている。税関による水際での密輸対策の対象としては、不正薬物・銃器の他、知的財産侵害物品、希少動植物の国際取引を規制するワシントン条約対象物品等の輸入が禁止又は制限されている物品も含まれる。税関は、密輸取締りの他にも、免税範囲を超える物品への課税等も行っている。

ロ.検査台においては、適正な取締りを期すため、原則として外国から入国(帰国)する旅客等に対し、輸入が禁止・規制されている物品の有無、一定額以上の現金の有無、免税範囲を超える物品の有無等について確認している。また、対面形式での税関職員による質問への対応の様子や個別情報の内容等を考慮しつつ、携帯品申告書の提出及び旅券の提示を求め、申告書の内容や旅券からわかる渡航歴、渡航先、滞在期間等に鑑みながら、携帯品等の開披検査の要否を判断している。

ハ.一方で、携帯品が免税の範囲を超えていない旅客(グリーン)と課税事務を必要とする旅客(レッド)を別々の検査台へ誘導することで、課税事務を適正に処理し、また、課税事務を要しない者の円滑な税関検査を妨げとならないよう配慮しているところである。

(2) 航空機旅客からの不正薬物密輸摘発状況と税関による取締りの効果

我が国において最も乱用されている覚醒剤については、平成18年から同22年までの5年間における全国の総押収量(1,582キロ)のうち約94%(1,490キロ)が税関によって水際で摘発されている。コカイン、ヘロイン等の麻薬類についても同期間で約86%が税関による水際での摘発であり、我が国における不正薬物対策における水際取締の効果は際立っている。覚醒剤の密輸入形態別で見ると、平成22年の税関による航空機旅客等からの覚醒剤の摘発件数(119件)、押収数量(235キロ)は、税関による覚醒剤密輸事犯の摘発全体のうち、件数で78%、押収量で73%を占め、平成23年においても件数で76%(141件)となっている。(別添2を参照)

(3) 携帯品申告書の提出について

イ.テロの未然防止や不正薬物等の社会悪物品等の密輸阻止を図りつつ、迅速かつ適正な通関を行うため、平成19年6月に関税法基本通達の一部を改正し、従来は免税範囲を超える携帯品のある旅客及び別送品のある旅客にのみ提出を求めていた携帯品申告書を、国賓等一部の旅客を除き、全ての入国旅客に携帯品申告書の提出を求めることとした。

ロ.原則、全ての入国旅客に携帯品申告書の提出を求めることとする以前は、税関職員が入国旅客に対して輸入が禁止・制限されている物品の有無等について質問し、入国旅客等は口頭により申告手続を行っていたが、迅速かつ適正な通関のため、携帯品申告書にこれらの事項について記入欄を設けるとともに、携帯品申告書の記入が入国旅客等に過大な負担とならないよう、簡易な記入方法とするなどの配慮を行った。

(4) 旅券の提示について

イ.税関では、国内外における過去の摘発事例等から密輸リスクの高い地域やルートを分析し、税関検査官はこのようなリスク分析結果を開披検査等の要否の判断のひとつとして活用している。税関職員は、関税法等に基づき、必要に応じて入国(帰国)旅客等に旅券の提示を求めている(注4)が、渡航先や渡航歴等について詳細に質問することに代えて、旅券に押印されている出入国印等を確認することで上記のリスク分析結果と比較することが可能となり、迅速かつ的確に開披検査等の要否の判断を行うことができる。仮に旅券の提示を求めないこととした場合、開披検査の要否の判断材料がないため、密輸取締り対策の観点から、より多くの入国旅客の携帯品等を検査する必要が生じるため、より長い検査時間が必要となる。

     (注4) 関税法第105条及び出入国管理及び難民認定法第23条

ロ.また、税関では、入国旅客の事前情報(事前旅客情報(API)や予約記録(PNR))を活用し、関係取締機関から提供される情報や過去の密輸摘発事件の調査等で判明した不審旅客、また、国内外における過去の摘発事例等の傾向分析結果と合致する、密輸リスクが高い入国旅客を選定している。現状では、当該旅客を現場で確実に特定する方策としては、旅券による氏名等の確認以外に術が無い。

ハ.上記のほか、申告者の本人確認、また、年齢制限のある酒類、たばこ等の免税枠の適用のため、或いは課税対象となる貨物の申告等があった場合に納税告知書を作成するためにも、旅券の確認が必要となっている。

(5) 税関検査に関する利用者アンケート結果

関税局・税関では、財務省の政策評価による政策目標・業績目標の業績指標等として、例年1月中旬頃に、入国旅客等の携帯品に対する税関検査(旅具通関)に関する利用者の評価、及び税関広報等に関する利用者の評価(認知度・好感度)をアンケート方式で調査し、その結果を今後の行政サービスに活かすよう努めている。

平成23年1月に実施した「税関検査に関するアンケート」結果の概要は以下のとおり
(評価結果の詳細は別添3のとおり)。

イ.申告書の解り易さについては、「大変満足」、「満足」及び「やや満足」を含む肯定的意見が66.4%であった。

ロ.申告書の記入の容易さについては、「大変満足」、「満足」及び「やや満足」を含む肯定的意見が67.9%であった。また、携帯品申告書の記入の容易さについて、外国の携帯品申告書と比較した場合、我が国の携帯品申告書が優れているとする意見が52.6%を占めた。「劣っている」とする回答は4.1%であった。

ハ.携帯品申告書については「必要」とする意見が66.5%であり、「必要ない」とする意見は8%であった。

ニ.税関検査については「必要」とする意見が86.7%であった。一方、「必要ない」とする意見は0.7%であった。

ホ.税関検査全体については、「大変満足」、「満足」及び「やや満足」を含む肯定的意見は72%であった。

4.結論

  1. 我が国税関は、対面での税関職員による入国旅客への質問によって、効果的な密輸取締りと迅速な税関手続きの両立に努めている。とりわけ、空港における入国旅客からの不正薬物の摘発の相当程度が、税関職員による質問への回答ぶりや挙動不審等に基づく検査によるものであることから、対面による質問の効果は大きい。

  2. 全ての外国・地域において全入国旅客に対して税関職員が質問を行っているわけではないが、所謂「検査選別方式」を採っている米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド及び韓国等では携帯品申告書を受領する際に質問を行っている。税関職員による質問を原則として行っていない欧州地域等の国・地域では、同地域内において相当量の不正薬物が密造されているとの国連等の報告がある上、多くの場合、陸上国境により近隣諸国と接していることから空・海港以外にも密輸取締り等のための資源配分が求められるといった事情がある。他方、我が国は四方を海に囲まれており、また、国内で最も乱用されている覚醒剤のほとんどが外国から密輸されたものであることから、欧州地域等とは地理的条件や密輸事情が大きく異なる。我が国では、過去5年間における税関による覚醒剤の摘発が全国の総押収量の94%を占めており、また、税関による航空機旅客等からの覚醒剤密輸摘発件数が税関全体の摘発件数に占める割合で平成22年、同23年においてそれぞれ78%、76%となっているように、空港等における税関の効果的な密輸取締りは我が国国民生活の安全と犯罪防止のために必要不可欠である。

  3. 我が国への入国(帰国)時に携帯品申告書の提出及び旅券の提示を求めているのは、税関職員による入国旅客に対して行うべき質問内容のうち、必須確認事項が網羅されている旅券を閲覧することによって携帯品等の円滑な通関を実現させるためであり、また、密輸取締りの観点から渡航実績等を確認するためである。仮に携帯品申告書の提出等を求めることとしない場合、携帯品等の開披検査の要否について判断を下すために多くの事項について質問することが必要となり、徒に税関検査時間を長引かせることにつながる。したがって、我が国における対応は、適正かつ迅速な税関検査を行うためにも合理的であると考える。

  4. 例年、財務省が税関利用者に対して実施している「税関検査に関するアンケート」の結果は、上記の財務省の結論を客観的に補完するものである。平成23年1月に実施した同アンケートの結果では、携帯品申告書の記入の容易さについて、外国の携帯品申告書よりも我が国の携帯品申告書の方が優れているとの認識や、携帯品申告書は必要であるとする意見が全体の約3分の2を占めている。また、税関検査全体について満足とする肯定的意見が全回答数の約4分の3近くを占めたことは、携帯品申告書の提出に併せて旅券を提示することが、入国旅客の過度な負担となってはいないことの証左であり、また、税関職員による質問を極力軽減すること等を通じ、全体として検査時間の短縮につながっているとの合理的な評価がなされているものと考える。

(以上)

別添資料PDF(273kb)

問い合わせ先

(担当)   
 財務省関税局監視課  課長補佐 五十嵐
   旅具係長 越前谷

電話 03−3581−4111(内線2504、2508)