財務省 採用案内 2013
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主査の一日学生へのメッセージ32起床後、欧米メディアから配信される最新報道をダウンロードし、国内で報じられない海外情勢等を通勤途上に把握。大規模自然災害や動乱等、日本にも飛び火し得るニュースは特に注意。外務省から連絡が入る。途上国支援のための国際会議で我が国の新たな貢献策を発表したいらしい。もちろん予算に余裕は無いが、国際的プレゼンスの確保も重要である。限られた財源で新たな支援を行うには優先順位の低い分野を更に切り詰めねばならぬ。様々な可能性を追求したいが時間も少ない。悩みつつ実現可能な案を練る。新興国の台頭等により二国間関係を深めるべき案件は増え、地球規模課題の多様化・複雑化は国際機関数の増加をもたらす。これらは全て予算に跳ね返る。「この分野は極めて重要。国益に照らし措置は不可欠」と熱く語る説明者に対し、「カネだけ出せば評価されるのか」「国益の軽重に照らした取捨選択も必要では」と反論。内心では「カネの切れ目が縁の切れ目」という国際社会の現実を理解し、外交を費用対効果で図ることの違和感も抱きつつも、財政当局としての立場は崩せない。華やかに見える外交活動の裏では、毎年400万件にも上るパスポートの発給事務や海外の日本人保護、情報通信の体制整備等、地味な仕事も多い。大使館の賃料や現地職員給与の手当も必要だ。細かい単価も記載された要求資料は何千ページにも上るが、「新規要求に際して無駄のカットは十分か」「ニーズが減った分野の予算は大胆にスリム化しているか」といった観点から根気強く見直す。ヒアリングを終え、頭を整理した上で幹部に説明。「今の財政事情でODAを出す意義がどれだけあるのか」と聞かれる。説明しつつ、要求側の理屈と似ていることに気付き、鵜呑みにしてないかと弱気になる。しかし情報は取捨選択しているはず。理解し納得した事案は自信を持って説明せねば、と自分を励ます。悩んだ時は思い切って上司に相談。情報は常に不完全であり、上司のアドバイスも実現可能性の不断の検証が必要だ。「言われた通りにした。自分のせいではない」との態度は主査失格。手を抜けば最後は自分に跳ね返る。あれこれ考えを巡らす内に夜が更ける。。。 高校の漢文で習った「鼓腹撃壌」という言葉を時々思い返す。食べ物にも困らず平和に暮らせ、帝の存在などあってもなくても同じだ、と国民が感じる状況、との意味と勝手に理解しているが、こうした状況を作り維持するための下働きこそが我々の任務だと考えている。財務省の仕事は、学生の活動に譬えれば文化祭の実行委員会に似ていると思うが、限りある財源や日程の中で、関係者の誰もが満足できる(不満を表にしない)案をまとめるため、時には(大抵は)嫌われ役を引き受けながら様々な調整を行うこと、と御理解頂いて良い。 我が国の財政事情の厳しさは近年広く認識されているところであり、「国民全体での議論が必要」といった主張もよく見るが、私はそのような立場に敢えて与しない。国民が財政への関心を高め、様々な意見を頂戴するのは歓迎だが、本来は国民が財政など気にせず各々の生活に専念できる状況を作ることこそが我々の仕事と考えるからである。「国民全体で議論」とは、ともすれば責任を負うべき立場の人間の逃げ口上になりかねない。知恵を絞り、汗をかくことを避けるようでは、税金ドロボーと批判されても仕方あるまい。 この考え方は、官僚の思い上がり、との批判を受けるかもしれない。しかし、「自分達が国を支えるのだ」という矜持を捨て、「公務員なんて嫌われ者だから」と卑下して過ごす事が果たして誰かの為になるのだろうか。政策について最終的な決定を行い責任を負うのは無論政治の責任であるが、情報を集め、的確な判断に必要な分析・提案を行う任務はしっかりと行政官が担わなければならない。 今後の財政状況を展望するに、我々が背負うべき課題はますます重いものとなることが予想される。しかし敢えて前向きに考えれば、我が国の歴史の中でも類を見ない大きな転換期に立ち会え、チャレンジする機会を与えられている。これまでの人生で、学業や部活動等で壁にぶつかりながら、苦労してそれを突き破ったときの快感を味わったことのある人も多いだろう。そういう思いを共有できる人の挑戦を是非とも歓迎したい。

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