このページの本文へ移動

財務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領

平成27年12月2日

財務省訓令第32号

  •  (目的)

    • 第1条 財務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、財務省(国税庁を除く。以下同じ。)の職員(非常勤職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。

  •  (不当な差別的取扱いの禁止)

    • 第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)をいう。以下同じ。)を理由として、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

      なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ)。

  •  (合理的配慮の提供)

    • 第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

  •  (監督者の責務)

    • 第4条 職員のうち、課長相当職以上の地位にある者(以下「監督者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。

    •  一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

    •  二 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。

    •  三 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

    • 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。

  •  (服務上の措置)

    • 第5条 職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は、過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の不提供をした場合、その態様及び結果並びに故意又は過失の度合い等によっては職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、懲戒処分等に付されることがあることに留意するものとする。

  •  (相談体制の整備)

    • 第6条 職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他関係者からの相談等に的確に対応するための相談窓口を別表のとおり指定する。

    • 2 相談等を受ける場合は、性別、年齢及び状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を、相談者の障害特性に応じて可能な範囲で用意して対応するものとする。

    • 3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。

    • 4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。

  •  (研修・啓発)

    • 第7条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、法や基本方針等の周知や、障害者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修・啓発を行うものとする。

    • 2 新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施する。

    • 3 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、性別、年齢及び状態等にも配慮しつつ障害者に適切に対応するために必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図る。

    • 附則

      この訓令は、平成28年4月1日から施行する。

    • 附則(令和6年財務省訓令第6号)  

      この訓令は、令和6年4月1日から施行する。

別表

本省 大臣官房文書課行政相談官
大臣官房総合政策課政策推進室
北海道財務局 総務部財務広報相談室
東北財務局 総務部財務広報相談室
関東財務局 総務部財務広報相談室
北陸財務局 財務広報相談室
東海財務局 総務部財務広報相談室
近畿財務局 総務部財務広報相談室
中国財務局 総務部財務広報相談室
四国財務局 総務部財務広報相談室
九州財務局 総務部財務広報相談室
福岡財務支局 財務広報相談室
函館税関 総務部総務課
東京税関 総務部総務課
横浜税関 総務部総務課
名古屋税関 総務部総務課
大阪税関 総務部総務課
神戸税関 総務部総務課
門司税関 総務部総務課
長崎税関 総務部総務課
沖縄地区税関 総務部総務課

別紙

財務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項

  • 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

    法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付すことなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。

    なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の同行等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。また、障害者の事実上の平等を促進し又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。

    したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。
     このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

  • 第2 正当な理由の判断の視点

    正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。財務省においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び財務省の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

    職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、職員と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。

  • 第3 不当な差別的取扱いの例

    正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例は以下のとおりである。
     なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。
    (正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例)

    障害を理由として、以下の取扱いを行うこと。

ア 一律に窓口対応を拒否すること、又は一律に対応の順序を後回しにすること。

イ 一律に資料等の送交付、パンフレットの提供、説明会やシンポジウム等への出席等を拒んだり、必要な説明を省略したりすること。

ウ 事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、来庁の際に支援者・介助者の同行を求めるなどの条件を付したり、特に支障がないにもかかわらず、支援者・介助者の同行を拒んだりすること。

エ 障害の種類及び程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること。

オ 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行うこと。

カ 障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げること。

キ 具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、障害者に対し一律に保護者や支援者・介助者の同行をサービスの利用条件とすること。

(正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例)

ア 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、対応可能な取組について、障害者との対話の中で共有するなどした上で、当該実習とは別の実習を設定すること。(障害者本人の安全確保の観点)

イ 車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと。(行政機関の損害発生の防止の観点)

ウ 行政手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や手続の意思等を確認すること。(障害者本人の損害発生の防止の観点)

  • 第4 合理的配慮の基本的な考え方

    1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。

    法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。

    2 合理的配慮は、財務省の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たっては、これらの点に留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。

    建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と職員が共に考えていくために、双方が対等な立場に立った上で、障害者の障害の種類及び程度に応じたコミュニケーション手段を選択して十分な意思疎通を行い、お互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、当該行政機関として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢及び状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。

    なお、障害者との関係性が長期にわたる場合には、その都度の合理的配慮の提供とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。

    3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられるが、その際、障害者による情報の取得の機会が十分に保障される必要があることに留意する必要がある。

    また、障害者からの意思の表明のみでなく、障害の特性により本人の意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。

    なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。

    4 合理的配慮は、不特定多数の障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

    なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・紛争事案を事前に防止する観点から、合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることは有効である。

第5 過重な負担の基本的な考え方

過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。

職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には前述のとおり、職員と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。

ア 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的・内容・機能を損なうか否か)

イ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

ウ 費用・負担の程度

なお、「過重な負担」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「過重な負担」を根拠に、合理的配慮の提供を求める法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく合理的配慮の提供を行わないといったことは適切ではない。

第6 合理的配慮の例

第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、例としては、次のようなものがある。

なお、記載した例はあくまでも例示であり、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であることに留意する必要がある。

(合理的配慮に該当すると考えられる物理的環境への配慮の例)

ア 施設・敷地内において、車椅子・歩行器利用者のためにキャスター上げ等の補助をし、又は段差に携帯スロープを渡すこと。

イ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡すことやパンフレット等の位置を分かりやすく伝えること。

ウ 目的の場所までの案内の際に、エレベーターを利用したコース設定や前後・左右・距離の位置取りなどについて障害者の希望を聞いたり、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたりすること。

エ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席を扉付近にすること。

オ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりすること。

カ 災害や事故が発生した際に、障害者本人に対し直接、知らせたり誘導をしたりすること。

キ イベント会場において知的障害のあるこどもが発声やこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者からこどもの特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子のときは希望に応じて個室等に案内すること。

ク 視覚障害のある者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、職員が障害者本人の希望に応じて個室トイレまで付き添うなどして案内すること。

ケ 頻繁にトイレを利用するとの申出があった際には、いつでも申し出て構わない旨を伝えるとともに、休憩の回数を増やすこと。

(合理的配慮に該当すると考えられる情報の取得、利用及び意思疎通への配慮の例)

ア 筆談、要約筆記、読み上げ、手話、点字、コミュニケーションボードの活用、触覚による意思伝達などによる多様なコミュニケーション、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明するなどの意思疎通の配慮を行うこと。

イ 情報保障の観点から、見えにくさに応じた情報の提供(聞くことで内容が理解できる説明・資料や、拡大コピー、拡大文字又は点字を用いた資料、遠くのものや動きの速いものなど触れることができないものを確認できる模型や写真等の提供等)、聞こえにくさに応じた視覚的な情報の提供(筆談による面談、読み上げ原稿や図などを活用した見やすい資料の提供、要約筆記者や手話通訳者の用意等)、見えにくさと聞こえにくさの両方がある場合に応じた情報の提供(手のひらに文字を書いて伝える等)、知的障害に配慮した情報の提供(伝える内容の要点を筆記する、漢字にルビを振る、なじみのない外来語は避ける等)を行うこと。

ウ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認すること。

エ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いず、具体的に説明すること。

オ 障害者から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対し、必要に応じてメモを渡すなどすること。

(ルール・慣行の柔軟な変更の例)

ア 障害者が立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで椅子などを用意すること。

イ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保すること。

ウ 聴覚障害のある者から聞こえにくいとの申出があった際に、障害者に聞こえやすいボリュームや方向を確認した上で、席の配置などを変更すること。

エ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、緊張等を緩和するため、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備すること。

オ 事務手続の際に、障害者から申出があった際には、職員等が必要書類の代筆を行うこと。

カ 障害の特性に応じて休憩時間を設けたり、必要なデジタル機器の使用の許可などを行ったりすること。

キ 敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更すること。

ク 入館時にICカードゲート等を通過することが困難な場合、別ルートからの入館を認めること。

ケ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認めること。


また、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある。

(合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例)

ア 試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。

イ イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。

ウ 電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続を行うことができるよう対応を求められた場合に、マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とするとされていることを理由として、メール・電話リレーサービスを介した電話などの代替措置を検討せずに対応を断ること。

エ 介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断ること。

オ 自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。

(合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる例)

ア 事務の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)

イ 抽選申込みとなっている講座への参加について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、講座への参加を事前に確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)

ウ イベント当日に、視覚障害のある者から職員に対し、イベント会場内を付き添ってブースを回ってほしい旨頼まれたが、混雑時であり、対応できる人員がいないことから対応を断ること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)