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第74回 財務省政策評価懇談会(6月14日開催)議事録

日時    令和4年6月14日(火)14:59~16:50

場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)

出席者(懇談会メンバー)

懇談会メンバー

秋池玲子

ボストン・コンサルティング・グループ 日本共同代表

秋山咲恵

株式会社サキコーポレーションファウンダー

百合

株式会社日本総合研究所理事長

田中直毅

国際公共政策研究センター理事長

田辺国昭

国立社会保障・人口問題研究所所長

冨山和彦

株式会社経営共創基盤(IGPI)IGPIグループ会長

広瀬道明

東京ガス株式会社取締役会長

座長吉野直行

慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長
政策研究大学院大学客員教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

矢野事務次官、新川官房長、茶谷主計局長、住澤主税局長、阪田関税局長、
角田理財局長、三村国際局長、栗原財務総合政策研究所長

(国税庁)

大鹿長官、田村審議官、村松監督評価官室長

(事務局)

水口政策立案総括審議官、伊藤政策評価室長

議題

(1)令和3年度財務省政策評価書(案)について

(2)令和4事務年度国税庁実績評価実施計画等(案)ついて

議事録

○吉野座長 
 それでは、時間よりちょっと早いですけれども、皆様おそろいですので、ただいまから第74回財務省政策評価懇談会を開催させていただきます。
 冨山委員は少し遅れて御参加の予定でございます。
 今回も新型コロナウイルスの感染防止のために、委員の皆様方には御協力いただき、ウェブ会議とさせていただいております。もし音声が聞こえないなど、何かトラブルがございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
 本日は議題に入ります前に、矢野事務次官から一言御発言がございますので、矢野事務次官、よろしくお願いいたします。

○矢野事務次官 
 事務次官の矢野でございます。いつも大変お世話になっております。冒頭に一言、お詫びかたがた御挨拶をさせていただきたいと存じます。 
 日頃より委員の皆様方には政策評価に関しまして、各方面からの多角的な御指導をいただいておりまして本当にありがとうございます。今日もいろいろな御示唆を賜りたいと存じますけれども、さき頃、本省の幹部、総括審議官が暴力行為によって現行犯逮捕されるという不始末を起こしました。また、国税当局におきまして給付金の詐欺事件に加担するというようなこともございました。それやこれや本省の中枢、幹部ともあろう者が、また、現場の最先端で正義を履行する立場にある者がという不祥事が重なりまして、4年前の今頃にセクハラ、あるいはパワハラ、改ざんという恥ずかしいことがあって、出直しを誓ってまいったわけですけれども、4年たってまだこの体たらくかと、本当に二の句が告げない恥ずかしい状態にあります。政策評価云々という以前に、資質、素養の問題ということでございますし、委員の皆様方におかれましても、不名誉といいますか、こんな組織に政策提言しても、それ以前の問題であって、政策以前の問題がありますねという話ですので、本当に申し訳なく存じます。かくなる上はという二の句が告げない恥ずかしい状態ですけれども、心を入れ替えて、信用の回復に努めてまいりたいと存じますので、どうぞ引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。

○吉野座長 
 矢野事務次官、冒頭にありがとうございました。いろいろなところで襟を正しながら、しっかりした財務省としての行動をとっていただきたいと思いますし、また、これに対して国民の方々にお詫びするとすれば、いい政策をすることによって皆さんに、さすが財務省はいい政策をしているなというふうに思われることだと思います。そのためにこの政策評価の懇談会もございますので、ぜひ委員の先生方から前向きのいいコメントをいただいて、さらに財務省の政策が国民の皆さんのためになるように、ぜひ今日もよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、早速ですが、議題に入らせていただきたいと思います。
 議題は、財務省の令和3年度政策評価書及び国税庁の令和4事務年度の実績評価実施計画等の2つでございます。これを一括いたしまして、水口政策立案総括審議官から御説明いただきたいと思います。お願いいたします。 

○水口政策立案総括審議官
 水口でございます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、令和3年度の財務省政策評価書(案)につきまして、概要ペーパーに基づきまして御説明いたします。
 4ページでございますけれども、政策の目標体系、各目標の評定一覧を示してございます。評定の中の括弧書きは令和2年度の評価でございますけれども、黄色の四角で囲んだ部分、5つございますけれども、これが令和2年度と異なる評定となった目標でございまして、令和2年度よりも高くなったものが3つ、低くなったものが2つ、それから理由を付して令和2年度の評定を維持したものもございますので、これらを中心に御説明差し上げたいと思います。
 次に、5ページの財政の総合目標の話でございますが、令和2年度は新型コロナの影響もございまして、財政状況が大幅に悪化したということでC評定、いわゆる「目標に向かっていない」ということでございましたけれども、令和3年度は、まず結論から申し上げますとB評定、「進展が大きくない」へと変更しました。その理由でございますけれども、まず令和3年度におきましては、財政状況は足元では依然極めて厳しいという状況にはございますけれども、本年1月の内閣府の中長期試算では、令和3年度末の国・地方を合わせたプライマリーバランス対GDP比で申しますとマイナス7.8%ということで、令和2年度末のマイナス9.1%の数字と比較して、僅少ではございますけれども、赤字幅の縮小が見込まれてございます。また、令和4年度予算におきましては、歳出面でも骨太の方針に従った歳出改革の取組を継続してございまして、中長期的にもこうした骨太方針に基づく取組を継続した場合には、プライマリーバランスが2025年度に黒字化する姿が示されてございます。また、本年1月の経済財政諮問会議におきましては、現時点で目標年度の変更が求められる状況にはないということが確認されたところでございます。こうしたことから、令和3年度におきましては、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標に向かってはおりますけれども、新型コロナの影響等も引き続きございまして、我が国の財政状況はまだ極めて厳しい状況にある、それが続いているということを勘案しまして、総合目標1の評定はB評定といたしました。
 次に、6ページでございますけれども、2つございます。予算執行に関する目標につきましては、令和2年度においては、予算執行調査につきまして、新型コロナの影響もございまして一部中止もしくは遅れが生じましたけれども、令和3年度においては、個々に選定した各府省での39の事業につきまして、予定どおり全ての調査を実施、公表できましたことから、評定を昨年度のA評定からS評定へと変更してございます。
 次の地方の歳入・歳出に関する目標につきましては、令和2年度におきましては地方創生臨時交付金の創設等、新型コロナへの対応によって財政に大きな負担をかける結果になったことからB評定ということでございましたけれども、令和3年度におきましては、昨年度生じた折半対象財源不足は解消され、さらに臨時財政対策債の発行も縮減したということからA評定とさせていただいてございます。
 次の7ページでございますが、こちらは令和2年度の評定より低くなった政策目標について2つ記載してございます。まず国債に関する目標でございますけれども、令和3年度におきまして、財務省のホームページで国債の入札結果公表をいたしますけれども、その際の作業ミスによって予定時刻より早く公表してしまった事例など2件発生いたしまして、そのため、主要な測定指標でございます「入札結果発表を当日所定の時刻に行った割合」を目標値100%と定めておりますけれども、それを下回ってしまったため、今回の評定はS評定からA評定へと変更してございます。
 次に、下のたばこ・塩事業の目標でございますけれども、これは製造たばこ小売販売業の許可申請の話でございますが、その1つの許可の要件として営業予定場所が購入に著しく不便と認められるかどうかという基準がございますけれども、この処理に関して慎重な検討を要する申請があったということで、標準処理期間を2カ月と定めてございますけれども、それを超過した事案が発生して標準処理期間の達成率が目標値を下回ってしまったので、今回の評定はS評定からA評定としてございます。
 次に、8ページでございますけれども、こちらは昨年度同様、新型コロナの影響が引き続き続いたということも踏まえまして、こうした外部的な要因、やむを得ない事情によって目標未達となったものにつきましては、評価マニュアルに基づいて、目標・施策に従って実施した事務を総合的に考えた上で評価したというものでございます。このやり方によって、昨年度のS評定を維持したものが国有財産の監査実施を含めて3つございます。それぞれの評定理由を記載してございます。
 次に、10ページでございますけれども、これは関税に関する目標についてですが、施策が5つございます。一番下にございます税関に対する情報提供の充実というところがございます。この政策につきまして、密輸取締り活動の認知度アンケートの結果が目標値に達せず、B評定となりました。一方で、他の施策、例えば関税の適切な賦課・徴収や、密輸事犯に対する水際取締りなど、他の重要度の高い施策がS評定もしくはA評定であるということも総合的に勘案しまして、理由を付して政策目標全体としてはA評価というふうにさせていただいてございます。
 最後に、11ページから12ページはデジタル化の取組でございますけれども、令和3年度のものを一覧的にまとめたものでございます。デジタル化については、引き続きしっかりと進めていきたいと考えます。
 次に、国税庁の令和4事務年度の評価実施計画(案)について、概要に従ってポイントを御説明申し上げます。
 まず15ページでございますけれども、国税庁の令和4事務年度の策定方針としては大きく3つ、ここに掲げてございます。1つ目は税務行政のデジタル・トランスフォーメーション推進への対応ということで、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指しまして、昨年12月に税務行政DXについて工程表に基づいて具体的な取組を計画に反映させてございます。
 2つ目は、より適切な評価ができるように、また、国税庁が目指す将来像に即した指標体系となるように、測定指標の所要の見直しを行ったというものでございます。
 3つ目は、様々な環境変化に対応するための取組ですとか、事務運営の状況等を的確に計画に反映しました。これらが大きな3点でございます。
 次に、16ページが令和4事務年度の目標の体系図でございますけれども、令和3事務年度の計画におきましては、中段にございます税務行政のデジタル・トランスフォーメーションということと、その下にございますそれに関する業績目標2つを新たに設置いたしましたけれども、令和4事務年度においてもこの目標体系は継続して維持した上で、内容をさらに深化させていきたいと考えてございます。
 17ページでございますが、これは最初の1つ目の柱、税務行政のDXの推進に関しましては、オンラインによる税務手続の推進という業績目標において、その中で例えばマイナポータル連携による申告書の自動入力データの対象範囲を拡大ですとか、スマホの決済サービスによる税金納付の導入などの取組を今回の計画に反映させてございます。
 次の19ページでございます2つ目の柱、適切な評価のための指標の見直しでございますけれども、例えばオンラインの税務手続の推進という業績目標において、納税者が来署することなく、自宅から確定申告が完了する将来像を踏まえまして、より客観的な指標でございます「確定申告等作成コーナーを利用した自宅等からのe-Taxの申告状況」という指標を新たに設置するなどしてございます。
 次に、20ページでございますけれども、3つ目の柱、事務運営の状況の的確な反映でございますけれども、これについても、例えば上にございますが広報・広聴活動の充実という業績目標のうち、租税教室や税務大学校の一般公開講座等へのオンライン方式の導入などを今回の計画に反映させてございます。
 最後に、参考に24ページの参考2ですが、こちらは国税庁全体のデジタル化の推進の取組を一覧表にまとめたものですけれども、令和4事務年度におきましても税務行政のDXの2つの大きな柱でございます納税者の利便性の向上、及び業務の効率化・高度化の観点から、しっかりと引き続き取り組んでいきたいと思っています。
 冒頭、私からは以上でございます。

○吉野座長 
 水口政策立案総括審議官、どうもありがとうございました。
 それでは、委員の先生方から御意見をいただきたいと思います。御発言の際にはミュートボタンを解除していただいて御発言いただきたいと思います。今日は少し長く時間をとっていただきましたので、6分程度お話しいただけると思いますので、いつものように、あいうえお順で秋池委員からお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○秋池委員
 私からは3点でございます。
 まず1点目ですけれども、今回昨年度振り返りである財務省、それから令和4年度の実施計画である国税庁、共に、4ページと16ページとにありますように、大きな目標に向けて政策を体系的に構築している姿があるというのは非常に重要だと思います。企業などでもよくあることで、財務省と国税庁と一緒にしてはいけない規模の違いではありますし、企業独特のものもございますので、その視点で全てを語ることはできませんけれども、いろいろな政策が、1つの方向に向かっていて、仕組み全体として整合的であるということは非常に重要だと思っています。また、1つ1つのベクトルが合わさることによって、より大きな力になるということがなされているということは非常に評価できることだと思っております。それが1つ目です。
 2点目は、今年の財務省の評価につきまして、私は異論はございません。評価がよくなったことの中に、昨年は財政の健全化のことについて、やや衝撃的に受け止めました「目標に向かっていない」というものが、進展が大きくない水準となりました。評価の表現は定義されてしまっているので、そのことにこだわってしまってもいけないのですけれども、それがBになったということで、よかったと思っています。
 ただ、財政のことも含めまして、やはりコロナだったから特別だったとか、進展はしたけれども、まだ目標は先にあるということにつきましては、歩みを止めることなく引き続きお取り組みいただければと思います。とりわけここに大きく掲げられている目標については、国民の期待も大きいところでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に、全てのことがデジタルになっていくということで、言うまでもないこととなりつつありますけれども、デジタル化のためのデジタル化になっているような取組も世の中には見受けられます中、国税庁のデジタル化を見ますと、地に足のついた取組になっていると思います。様々な組織のデジタル化を見ていて難しいと感じますのは、様々なコンセプトとか理念はあるのですけれども、いざそれを実行しようとすると、データを整えたり、横とそろえて比較可能な状態にしたりというようなことでかなりの苦労があります。そこで諦めてしまわずに取り組める組織がデジタル化を成し遂げることができる組織ですので、ぜひ中長期の取組ということで、腰を据えて取り組んでいただければと思います。
 以上でございます。

○吉野座長 
 どうも御意見ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして秋山委員、お願いいたします。

○秋山委員  
 令和3年度の財務省の評価について2点、国税庁の令和4年度の計画について1点、申し上げたいと思います。
 まず1点目です。財政再建について、資料の5ページで、秋池さんからも御指摘がありましたように、昨年度のC評価がB評価ということになっています。数字で確認すると、少し前進はあるけれども、評定理由の最後のところに記載されているように、財政状況は極めて厳しい状況が続いている、これは財務省の皆さんのじくじたる思いがこの文章ににじみ出ているように私は感じます。財政再建のためには、経済成長ということが両輪の1つとして非常に重要ではありますけれども、過去30年の日本の経済成長の実績を見ると、なかなか思い描いた成長戦略のとおりに結果が出せていない、むしろ世界の経済成長から取り残されているような状況がある、そういう実績であるということと、歳出に関しても、今般の場合はコロナであったり、みんなが納得する理由はあれど、財政規律が必ずしも機能しているとはいえない状況になっているということを、一人、財務省の評価というか、責任というふうに評価していいものだろうかという思いは、私は持っております。ただ、与えられた条件の中でどこまでやれるかということで、引き続き皆様の努力に期待したいと思っております。
 それから、7ページの国債の政策目標3の1のところで、1段階評定を低くしていて、その理由についてはかなり事務的なミスというふうに私は受け止めておりますけれども、このことをもってSをAに評価を下げたということが、これが間違ったメッセージにならないといいなということを懸念しております。どちらかというと事務的なミスだと思いますので、こういった軽微なミス、すみません、軽微と言っていいかどうか分かりませんが、こういうミスを許さない、全体の評価が1段階下がるということで、実務の皆さんに大きなプレッシャーを与えるというよりは、国債に関してはいかに格付けが下がらないように継続発行を安定してできるかということに皆さんきっと腐心していらっしゃるというふうに思いますので、結果については、評価としては相当だとは思いますが、職員の皆さんに対して間違ったメッセージにならないようにしていただけるといいなというふうに思っております。
 それから3点目、国税庁の令和4年度の計画についてですけれども、資料の15ページのところ、私は今回このページの取組を大変高く評価したいなと思っています。策定方針に簡潔に書かれていることは時代の変化への対応についての非常に積極的な姿勢を分かりやすく方針として打ち出されていると思います。まずは最初のところで、デジタル・トランスフォーメーション、この言葉自体は今いろいろなところで使われておりますけれども、国税庁としてデジタル・トランスフォーメーションというものはどういうものであるのかということを「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」という、こういう言語化によって目指す姿を関係者みんなで共有ができるような形にした。何がデジタル・トランスフォーメーションなのかといったときに、我々はこういうことを実現していくんだということをしっかり言語化されているということが非常にすばらしいと思います。また、言語化しただけではなく、2番のところで実質的に測定指標をそれに合うような形で適切に評価できるように、評価の物差しを見直したということ、さらに3番目で、事務運営の、実務の状況を的確に反映したものであると見直しをかけたということで、これで実務に携わる皆さんが、自分が日々やっている仕事の現実に合った形で目標があり、そして、それを達成することで自分たちの仕事が評価されるということが組織全体に伝わる非常によい策定方針であるというふうに私は今回評価しております。先ほど不祥事の件、お詫びのメッセージがございましたが、こういった取組が必ず組織の仕事の質を上げていくと信じておりますので、期待をしております。
 以上です。

○吉野座長 
 秋山委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして翁委員、お願いいたします。

○翁委員  
 私からも4点ぐらい申し上げたいと思います。
 まず、政策目標1-3で予算の執行のところ、今回Sになって評価をされておられます。確かに理由を見ると、そのとおりだとは思うのですけれども、昨年コロナの対策で補正がすごく膨らみまして、かつそこで繰越額や不用額が多く計上されているという点が会計検査院からも指摘されていました。こういったことの原因が分析できて、各事業にかかる予算の執行状況がしっかり国民の説明できるようになっているのかというようなところがいま一つ分からないので、このあたりについて、ぜひ後ほど御説明いただければというふうに考えております。
 2点目は、すごくマーケットとか大きく動いてきているので、財政規律とか金利が大きくこれから動いていったときに、どういうふうに財政の健全化や柔軟性を確保するか、しっかり考えていく必要が出てきているのではないかという点です。金融政策が国債管理政策とほとんど一体化していて、マーケットからの財政への警告がほとんどない中で、財政拡大のコスト感覚が今マーケットからはなくなっているような状況かなと思っておりますが、今すごく円安が進んでおりまして、また、長期金利とかもじわじわ上昇してきているということで、日本を取り巻くマーケットの状況が少しずつ変化していることを感じております。そういった中で、財務省としてどういうふうに財政の、しかも円安が進みますと、今年経常収支赤字がどうなるかもすごく気になるところでして、さっき秋山さんからもありましたけれども、格付けとか、そういったところにも影響が出てくる可能性もあります。その意味で、すごくマーケットが動いてきていることについて、しっかり成長もしながら、財政健全化をどういうふうにメッセージとして出していくのか、また、金利が少しずつ、じわじわとプレッシャーとして上がっていく中で、どういうふうに柔軟性を確保しながら財政の健全化を維持していくのか、しっかり考えていかなければならない時期に入ってきているのではないかなと思っております。この点について、マーケットもこれからすごく内外物価情勢、内外金利に格差が出てきて、円安も進む可能性もございますし、このあたりしっかりウォッチしていく必要があるのではないかと思っております。
 3点目ですが、やはり健全化と成長の両立ということが本当に大事だというふうに思っております。しっかりとした長期的な投資もしていかなければならないわけですけれども、その両立という点で、これは今回、新しい資本主義実現会議のほうでも入っていますけれども、GXのトランジションボンドも発行されていくという考えが打ち出されています。このあたりについて、財務省として今後どういうふうに取り組んでいかれるのかにつきまして、もしお考えがあれば教えていただきたいなというふうに思っております。
 それから、国税庁につきましては、まさにここで指摘されているようなデジタル・トランスフォーメーションをぜひ進めていっていただきたいと思っております。非常に重要な課題でございますし、しっかりとこの計画に立って進めていただきたいと思っております。一方で、税の徴収という点で、ますます働き方が多様化したり、ギグワーカーとかいろいろな働き方が出てきています。副業、兼業も出てきています。こういった中で、フェアネス、公正な税の徴収というのがますます求められる時代に入ってきているかなと思っておりまして、このあたりもしっかり取り組んでいただければと思っております。
 以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして田中委員、お願いいたします。

○田中委員 
 これまで秋池さん、秋山さん、翁さんが言われたこと、私もそのまま賛成することばかりなんですが、今日申し上げたいなと思ったのは、日本の財政がこれだけ累積赤字が増えているにもかかわらず、増税措置ということが議論されない。コロナのための対策費がかかるというのは、これは世界中どこでも一緒ですけれども、欧米について言えば、次の段階では増税で財政収支じりに恒久的な赤字は残さないという、そういう対応を前提に議論がされています。しかし、我が国の場合は、財政赤字はあってはならないという保守、要するに現在ただいまの秩序を根底から揺るがす可能性がある財政赤字については決して認めるわけにはいかないという保守の立場の人が本当に微々たる存在でしかありません。米国の保守と比べたときに、圧倒的に我が国のいわゆる保守陣営の特性を示しているというふうに思います。翁さんがマーケットの話をされました。確かにトリプル安の可能性というのは、前々から指摘する人はいっぱいいたんですけれども、現実が少しずつこれを織り込み始めているということです。その中に、今は巨額な財政赤字というものが当面議論はされていないようですが、これが議論されるようになったときには、トリプル安の水準はこんなものではないという可能性が来ているわけです。そういう意味からいくと、私は増税措置を正面から議論する場が必要だろうと思います。増税案が真っ当に国民の間で議論されるためには、歳出の内容について、果たして歳出の内容というのは税の税率を上げる、増税を通じて賄わなければいけないような歳出になっているのかというのが当然議論されるわけです。
 持続化給付金について、どうも基準がおかしいんじゃないか、要するに的確な支出になっていないんじゃないかという気持ちを持っている国民は多いわけです。霞が関は企画部門で、例えば持続化給付金を配付するとなれば、それは別の、要するに企画部門じゃなくて現場、現場は国家公務員が抱えているわけじゃないから誰かにお願いする。でも、そのお願いの仕方もそれほど的確なものがあるわけではありませんから、結果として給付金の配付に当たって、どうも基準がおかしいと。実際はどういう形でなされているのか、リポートがないではないかという、そういう感じを納税者は持っている。そういう状況のもとにおいて増税措置を議論するというのは、かなり荷が重いことになってくるんだろうと私は思っています。
 今日、国税庁のお話がありました。これまでも国税庁はまさに実務の、企画部門というよりは効率的な実行部門としての機能を果たしてこられているわけですし、国税に関する効率的実務という点について、国際的な評価も私は高いというふうに思っていますし、今年もそうですが、いろいろチェックをされて、企画じゃなくて実務の担い手としての能力を証明されているわけです。先ほど言いました給付金について言うと、これは国税庁と何の関係もない話だと、普通の割り切り方からすればそうなるんですが、しかし、相手は事業体ですから、民間の。民間の事業体のありようについて、国税庁が結果として持っているサーベイの能力は極めて高いわけです。そうすると、今回の場合のように、コロナによって打撃を受けた、持続化給付金を個別に配付しなければいけないというときに、その事業体について、コメントするかどうかはともかく、それはオブザベーションというか、具体的に日々何らかの形で指標をとって、あるいは部分的に調査をして、事業体のありようについて実務的な感覚、評価実績をお持ちなんですから、政府部門の中で何で国税庁が給付金のありようについて口出しするのか、それは行政システムにおいてそんな位置づけにはなっていないと言われるかもしれませんが、私はここは工夫のしどころだというふうに思っています。増税の議論をどうしてもしなければいけませんので、そのためには今回のような臨時に行われた持続化給付金のありよう、これは企画部門の話じゃないという、これまたそうなんですよ。これは企画の話じゃないから、それは霞が関の話では基本的にはないと。外出しだという扱いになっている。ここがやっぱり問題で、自分のお金、自分の財布だったら、出と入りについては持ち得ている知識、サーベイする能力を、全てを使って的確にしようとするわけで、政策評価書の中に持続化給付金の支給に関わるところで国税庁の意見聴取をしたらどうかと。書くかどうかというのはまた別問題なんですが、少なくともこれまでの行政実績に基づいて、同じ民間事業体なんですから、この給付金を欲しいと言って申請してきているのは。果たしてそういう対象なのかどうか、いわゆる詐欺行為があるかどうかについて、最も政府部門の中で近い知見を持っておられるのは国税庁のはずです。これはもう少し真剣になって考えるべきではないか。少なくともそこをくぐらないと増税措置を天下に、要するに皆で議論するというだけの仕立てにならないんじゃないかなという懸念を持っておりまして、ぜひ御高察いただければと思います。
 以上です。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして田辺委員、お願いいたします。

○田辺委員 
 田辺でございます。3点ほど申し上げたいと思います。
 まず1点目は、財務省のほうの政策目標1-3の予算の執行に関わる部分でございます。基本的にAからSに上げたというところの判断基準といたしましては、透明性が確保されたであるとか、公表をきちんと行ったということが理由になっております。この中の特に執行調査というのが割と影響力が大きいのではないのかなと私自身は思っているところです。例えば、先ほど翁委員から御指摘がありました会計検査院の報告で、アベノマスクに関する状況をかなり赤裸々に明らかにして、改善へのフィードバックを試みていますし、それから総務省の行政評価で、外部から行政にどういう問題があるのかというところを指摘するということを行っています。この2つに加えて予算執行調査、もちろん財務省が他の省庁を見るということで、政府の中ではあり、外部的な監査ではないと思いますけれども、評価、それからフィードバックを果たす意味で非常に大きな役割を担っていると思っております。評価のところは透明性、公表というところでSに評価したということですけれども、ただ、実際執行調査は、何を執行調査の対象とするのかという点と、それから執行調査した後に調査の対象になった省庁に対して何をフィードバックするのかという、この2つが恐らく個人的には決定的に重要ではないかなと思っている次第でございます。長期的にはこの予算執行調査、特にコロナ禍で執行の調査の件数を伸ばすというのは非常に難しいとは思いますけれども、何を対象とするのかという点、それをどうフィードバックするという点に関して、今年どういう配慮をしたのかということに関してお伺いしたいと思いますし、また、その方向で質を高めるような予算執行調査のやり方というのを展開していただくことを期待しております。以上が1点目でございます。
 2点目は、国税庁のDXでございます。DX、いろいろな側面があると思います。国税庁の中でも、例えば業務の効率化のためにDXを推進すると。これは組織の中の話でありますから、経営の見せどころと言えばそうなんですけれども、問題は対国民に対するDXの広がりというものでございます。一般国民を対象としない、例えばプロ対政府みたいな関係で、特許庁等は、DXは割とやりやすいと考えられるわけで、恐らく特許申請、それから商標申請などはほぼ100%に近い数字が出ているのではないかと思います。これが一般国民になると、その裾野を広げるという作業が非常に難しいという気がしております。ただ、私自身は税というのが一番裾野を広げるために重要な側面であり、2番目は、なかなか残念ながら進んでおりませんけれども、どうも医療だなという感じがしております。この2つがそろうと、恐らく国民が政府に対するという関係の中でのDXが、ビッグプッシュをかけることによって一挙に浸透するという役割を担っていると思いますので、その点よろしくお願いしたいと思います。
 先ほど秋山委員がおっしゃいましたように、税務署に行かなくても税務処理ができるという非常に分かりやすい目標を持っていて、それを達成するために前進しているというのは非常にいい指標だなと思っております。他方、医療のほうは、何のためにDXを進めるのかというのが相変わらず新聞で問い返されておりまして、ちょっと戦略的に失敗しているなという感じはいたします。その点、特に今回挙げていただいた自宅からの申請の率は、今36%ぐらいですけれども、これが50%を突破すると全然違う世界ができ上がってくると思いますので、そういった点に向けて進んでいっていただければと思います。これが2点目でございます。 
 3点目は、今回の評価に関わる部分というよりは、今年の評価作業全体の中の注文みたいなものでございます。総務省の政策評価の審議会等に出させていただきまして、かなり大きな変更というのを現在やろうとしているところでございます。それは骨太の方針の中にも反映されておりまして、効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化ということで、半ページぐらい使って打ち出されているところでございます。基本は、いわゆる行政事業のレビューシートを、つまり評価の対象を事業のほうに落とし込んで、その中で評価を回していく。かつ、これをある種のプラットフォームとして、例えば予算編成の中で要求書に変えて、従来レビューシートだったものに情報を付け加えて使っていただくというようなこと、それを事後的にも見ていって、うまくいったか、いっていないかというのを見ていこうというような動きだと考えているところです。これはもちろん担当は総務省の行政評価局でございますけれども、ただ、予算とリンクして、それを全政府の中で回していくとなりますと、恐らく財務省の出方というもの、ありていに言うと各省も、総務省だけがやっているのだったら動かないかもしれないけれども、財務省が加わって、かつ予算というところからスタートするとなりますと非常に大きなインセンティブ、ないしはモチベーションを生じさせますので、そういった点に関してこの1年間、できるだけうまい方向で進めていっていただければと思っている次第でございます。
 最後のところは要望でございます。以上、3点ほど申し上げました。 

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 続きまして冨山委員、お願いいたします。

○冨山委員 
 どうもありがとうございます。細かいところというか、個別の話から先にすると、さっきの政策目標1-3のところですね、執行調査、執行状況の話で申し上げると、財務省の守備範囲の中で言うとこういう評価だと思うんですけど、今回のそれこそ持続化給付金関連、要は緊急給付を実質個人に対してやるに近いようなオペレーションに関して、いろいろな問題が起きているわけですけど、多分個人に対して慌てて金を出すという、実は今のオペレーションの原形は、東京電力のあのときにつくっているんですよね。あのとき、私も深く関わっていたので。あのときは会計系コンサルを使ったんですよね。あの仕組みをつくって、大慌てで金を配るということをやったわけです。実は今回も結構同じ会社がやったんじゃないかな、たしかそこもオペレーションをやっていました。何が言いたいかというと、要するに極めて非効率な仕組みで配っているんですね。ああいうことが起きるような仕組みでやっているんですよ。さらにルーツ構造をもっとさかのぼると、何でああなのかというと、これはここにいらっしゃる皆さんには釈迦に説法なんですが、日本の今の仕組みというのは、これはマイナンバーの問題になっちゃいますけど、個人の口座にひもづいてお金を配れる仕組みになっていないわけです、基本的に。なので、毎回毎回あんな大騒ぎして、何千人も雇って、末端でやっている人はバイトですから、そんなもの、ずさんになるに決まっているじゃないですか。リアルオペレーションを知っているので、あんなことが起きるに決まっているんですよ。これはすみません、財務省の守備範囲ではないんですけど、さらにルーツ構造をさかのぼると、要するにこの国のいろいろな意味での共助というか、セーフティネットは、法人が何とかするというのにすごく依存しているんですよね。だから、法人の枠の中で正社員がいてくれれば何とでも配りようがあるし、そこでそんな変なことは比較的起きにくいんですけど、ちゃんとした法人ですね、ずっと税も納めている、ずっとやっている法人であればいいんだけど、個人に対して直接セーフティネットをかぶせるという仕組みが全くこの国は脆弱なわけです。そういう意味で言っちゃうと、法人共助主義みたいなものがうまく機能していればよかったんだけど、今回そこから外れている人がピンチになっちゃったし、今、正社員の比率が下がっていますから、法人共助主義で何とかするというのは、もう無理だと僕は思っているんですね、もともと。だって戻らないですよ、これ。いわゆるそういう意味で安定した共助になるような大企業、10億円以上の資本金の会社の正社員は今2割ぐらいしかいないんじゃないですか。だから春闘も2割春闘になっちゃうし、要はそういう話なんですね。8割の人が中小企業に勤めているか、非正規ということになります。ですので、すみません、矢野さんには申し訳ないけど、財務省の守備範囲を超えちゃっているんだけど、この問題はそろそろ、共助の在り方というものを、法人に圧倒的に依存するという仕組みからそろそろ脱却しないとまずいのではないかと私は思っていて、ですから、財務省の守備範囲の中では全然この評価で結構なんですけど、これを誰がどこで提起していくかというのは、ついついああいう事件が起きちゃうと、こいつがけしからんとかという話になっちゃうんですけど、よく言われる最良の刑事政策は社会政策であるという言葉がありますけど、ルーツ構造にぜひとも切り込んでもらえればと。また矢野さんに文藝春秋に論文を書けとは言いませんけど、そこはちょっと期待したいなと思って、私もあちこちで言っていますけど、期待したいなと思っております。
 それからDXの議論、国税のところは、これも皆さんの意見とほぼ一緒で、いろいろな意味でDXが進んできているのは事実で、納税のあの仕組みも大分楽になってきています。それから、標語として「家からできる」というところは私も全く賛成で、ただ、そのときに、これを続けていくときに考えておいていただきたいのは、結局テクノロジーがどんどん進化していって、変化していっちゃうので、それに対して、どう柔軟に対応できるかというのはやっぱり大事で、変な話、いろいろなシステムが変わることによって古いシステムは使えなくなっちゃうということがしょっちゅう起きますから。あと、家からというよりは、みんなアプリからやる世界ですから。そういった意味で今後のいろいろなテクノロジーの変化にどう柔軟についていけるかというのは、これは全て企業共通、DXの課題なんですけど、よくありがちなのは、すごく頑張ってつくって、でき上がった頃には既にそのテクノロジーが時代遅れというのはずっと日本の大企業が繰り返してきた失敗パターンです。要はいかにフレキシブルに、迅速に、アジャイルにいけるかという、ここはなかなか税金の問題なので、そうアジャイルに、失敗して直すというわけにいかないと思いますけど、その制約の中でどうアジャイルするかというのは、これは国税の皆さんの腕の見せどころかなと思っております。
 最後に、財政の議論なんですが、これも財務省の守備範囲を超えちゃっているので大変と言えば大変なんですけど、私のような企業再生屋さんから今の景色を見ていると、とにかく事業が苦しくなっちゃって赤字が続いているので、頑張って借金で赤字を補填してきましたと。どんどん借金が積み上がっていって、金融が緩いうちは借金ができるから借金を膨らませて、とにかく赤字を補填して会社をもたしてきたんだけど、いよいよ株価がすごい勢いで下がり始めましたという感じなんですよ、この円の下落の感じは。要するに国が発行する株みたいなものですからね、通貨というのは。だから、いよいよ株が下がり始めましたというので、ある種のシグナルがついに出始めている感じがしていて、今まで株が下がっていなかったので、もっと借金しちゃっていいんじゃないのという感じだったんですけど、いよいよ株が急落し始めているという感じですね。ここで、そう簡単に金利を上げるということをやっちゃうと、財政が非常に厳しくなるという悪循環に入るわけで、だから典型的に、企業再生的には末期症状的な現象が起き始めていると私は理解しています。これはなかなか、誰が考えても今のマクロ経済はすごい難しい状況で、私も残念ながらそんな、この前の新しい資本主義の会議でもっと中長期の議論をしていましたから、中長期はあの議論で僕はいいと思っているんですけど、実は短期、中期かな、短中期的にやや危機モードに入っているので、これをどう乗り越えるかというのは大変、多分皆さんも頭を悩ませているでしょうし、当然、日銀もすごく頭を悩ませて、それはそうだよなという感じは正直しているんですが、ちょっと思っているのは、ある種の危機モードに入っている、ややプランBといいましょうか、危機対応的な、いろいろな意味でのシナリオというんでしょうか、こういうときというのは、危機対応の原則は、基本的にバッドシナリオを想定して、その中で最善の準備もしておくという、だから必ずプランBとしてはワーストシナリオの準備をしておくということが基本なんですね。もちろん、私も民間経済人なので、そういった状況に陥らないように、何とかうまいことを、ナローパスを、この円安局面を切り抜けられることをもちろん希望するところではありますけれど、そうならない可能性もあるわけで、正直。そういう意味で言っちゃうと、プランBを誰かが考えておかなきゃいけないのではなかろうかという感じが正直しています。これは企業再生もそうですけど、プランBを考えるのは大体CFOの人と決まっているので、国家のCFOは財務省ですから、そこはぜひとも矢野次官以下の皆さんに期待したいというところ、これは今日の議論から外れますけども、割とシリアスに、私は非常に心配しておりますので、ぜひぜひ皆さんによろしくお願いしたいというふうに申し上げたいと思います。
 以上であります。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは、広瀬委員、お願いいたします。

○広瀬委員  
 ありがとうございます。2点とも、特に大きな違和感はございません。その上で感じたことを何点か申し上げます。
 最初に財務省の評価について、いろいろな課題はありますが、最大の課題はやはり財政再建だと考えております。ほかの先進諸国に比べて異常とも言える今の財政状況は、少なくとも1回歯止めをかけて改善する方向に持っていく必要があります。そのためには、やはりプライマリーバランスが重要であり、今回一応2025年というのは維持されたことになっている一方で、最終的に25年というのがどこかにいったなどの話を聞くと、危機感を抱きます。国民の中にもそのような危機感を持つ方が相当いらっしゃるのではないかと思います。
 毎回申し上げているとおり、これからの財政を考えますと、グリーンとかデジタルとかレジリエンスとか、さらに当然国防費の問題も出てきますし、社会保障もこれからさらに高齢化が進むわけですから、相当厳しい中で本当にどうするのか。今、冨山さんからもプランBの話が出ましたが、いずれにしても政治的な問題であり、財務省が財政の番人、最後の砦として、きちんと財政について発言し、発信していくということは、期待も大きいし、そういう役割だと思うので、是非頑張っていただきたい、これは本当にお願いです。
 2つ目は、予算執行の透明性の向上、適正な予算執行の確保について、これも何人かの方からお話がありましたが、補正予算の在り方や予算執行あるいは予算そのものの透明性に対して、様々な疑問が出てきていると思います。特に補正予算といっても、毎年毎年補正で、15カ月予算とか、あるいは規模が本体予算に比べて非常に大きくなっているという面では、予算の透明性や予算執行の適正性という面で、真剣に考えるべきと思います。これも政治的なところが大きいですが、特に今回、コロナに絡んで補正予算が本予算の半分ぐらい組まれましたが、その検証がこれから問われてきます。様々な検証の視点がありますが、迅速性、利便性、あるいは様々な不正事件が最近特に報道されていますから適正性のような観点もあります。私は基本的には、ざっくり失業者あるいは倒産件数を見れば相当な効果はあったと思いますが、これだけの規模の補正を組んだわけですから、効果検証がこれから求められてくると思います。
 3つ目は、財政状況の的確な開示について、もちろん開示も必要ですが、それだけでは最低限であり、さらにもう一歩進めて、開示した上で国民に理解していただき、できれば危機感を共有していただく、さらには応援者になっていただく、そういうところまでいかないといけないと思います。最近、財務省が資料とかパンフレットを出していただきましたが、専門家の方に見ていただくとか、あるいは若い人に見てもらえるにようにするなど、地道にやっていくしかないので、引き続きそのような工夫はしていただきたいと思います。
 最後に、国税庁の評価について、やはり税は、1つは信頼性・公平性、もう1つは簡便性と効率性をどう高めていくかだと考えます。その中で大きな影響を与えているのが高齢化とグローバル化だと思います。
 高齢化については、これから本格的に始まるという見方もありますが、例えば所得税の申告がなかなかオンライン化しないのは、徐々にオンライン世代が所得税を申告する層になれば改善されていくと思いますが、贈与税、相続税の世界は、高齢者層が多いので、オンライン化がなかなか進まないと思います。これは一生に1回ぐらいの話なので当然ですが、一方で、税の信頼性・公平性という面では非常に大きなポイントと考えます。先日も最高裁で出ましたが、国税庁としてよく頑張ってくれているので、私は評価したいと思っています。いずれにしても公平性・信頼性というのは税の基本なので、ぜひこれは堅持していただきたいと思います。
 一方で、グローバル化が進むと、企業ですと法人税、個人ですと所得税ですが、これも世間的にはいろいろな見方・批判があると思いますので、ぜひこれも税の信頼性・公平性を担保するために、力を入れてやっていただければと思います。
 いずれにしても、全体としては今回の評価、あるいは新年度の評価項目につきましては、特に異議はございません。以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に私からも数点コメントさせていただきたいと思います。
 第1番目は、広瀬委員からもございましたけども、コロナ対策として様々な持続化給付金を含めて政策がなされたと思いますが、それをぜひトランスペアレントに一覧表のような形にしていただいて、こういう政策がこれくらい行われたということをしっかり財務省の側で発表していただきたいと思います。それをすることによって、学者の若い人たちはそういうものを使って、その効果がどうだっただろうかということを分析する糧にもなりますので、それによって評価、効果、それを見るということが可能になるのではないかと思います。
 2番目は、これも翁委員を含め皆さんから御意見がございましたけれども、債券市場、国債市場、そこで心配なのは経常収支が、これまでは黒字であったために財政が赤字でも日本は信頼されてきたわけですけども、今回のいろいろな危機のときに日本円が買われずに、ドルとかユーロは買われたんですけども、日本円が買われなかったと。これはひょっとすると円に対する信頼というものがなくなってきているのかもしれない。そうだとしますと、経常収支が黒字でなくなってきたときに、それが多分財政の信頼性に大きく影響するというふうに思います。ですから、構造変化が海外から見ても起こってきている可能性があると思います。それに対しては、先ほどからずっと、冨山委員がおっしゃっていたように、日本がいかに成長を戻していくかということだと思うんですけども、日本経済学会が2週間ほど前にありまして、そのときに議論されたことは、財政政策というのは、例えば失業なんかを少し改善しようとか、そういうことには使えるけども、イノベーションとか経済成長、ここには財政政策は効かないんだというふうにケインズまで言っているんですね。ケインズはアニマルスピリット、イノベーション、テクノロジカル・プログレス、これが経済成長を支えていくんだというのが、彼の本ですらそう言っているぐらいで、ですから財政金融で経済が成長を支えられるかというと、そうではないということではないかと思います。下がったものをある程度戻すというのはできるんですけども。そうだとすると、いかにデジタル化の中で経済成長の方向に持っていくかというところが非常に重要で、それから高齢者などももっと長く働いてもらえるような、いろいろな技術進歩というのが出てくると思いますので、財政政策、金融政策には頼らない、まさに成長戦略というのが必要だと思います。そのキーは、やはりテクノロジカル・プログレスであり、そういうことが達成されると給与も上がっていくと。今は何か逆の議論になっていて、まず給与を上げてというんですけども、そうじゃなくて、生産性が上がり、そして経済が成長し、それによって給料も上がる、そういう方向に議論がいかないといけないと思います。
 それから、4番目のところなんですけども、グリーンとか環境という問題を、日本がピンチをチャンスに使える、大変だとは思うんですけども使えるんじゃないかと。1つは炭素税とか、あるいはグリーンタックスとか、そういう形で様々なところで税をかけると。このときには、G7とかG20と一緒に全世界で同じ税率にしなくちゃいけないんですけども、そういう形で税をかける。これがうまくいけば、2050年まではこの税金が取れますから、現在の日本の大赤字、ここのところを対処すると。ただ、その言い方としては、世界に向けてグリーンのために、環境改善のために、このために全世界的にCO2タックスなり、グリーンタックスをやりましょうと。それを同じ税率で全世界でやっていきましょうと。これが特に途上国も今赤字になってきていますから、各国とも新しい税が必要なので、全ての国にとって不満はないと。ただ、もちろん企業の方々は大変になるとは思うんですけれども、それが一つあり得るんじゃないかというふうに思います。
 それから、国税庁のほうに関しましては、デジタル化をどんどん進めていただいて、非常にいいことだと思いますけども、デジタル化によって国税庁の、これまで税務のほうに携わっていた方々が調査のほうにもっと回れると。こういうようなDXによる効果が国税庁自身にどういうふうになってきているのかというのもぜひ見ていただいて、それが国税庁の業務の効率化につながっているということまで進めていただきたいと思います。
 それから、利用者の方々に自宅でe-Taxをやっていただく、これはすごくいいと思うんですけども、冨山委員がおっしゃったように、もちろんやり方がどんどん変わってくると思うんです。そのときに例えば10分と15分ぐらいのビデオを、簡単なのをつくっていただいて、どんな庶民の方でもそれを見れば自分の自宅からe-Taxができる、このビデオというのは長過ぎるといけないので10分か15分ぐらいで、しかもそれを毎年改善しながらやっていって、そういうことがうまくできれば、さらに自宅からの納税というのも可能になるのではないかというふうに思います。
 以上が私からのコメントでございます。
 委員の方々からたくさんのコメントありがとうございました。
 それでは、財務省の側から順番に御発言いただいて、まず最初は水口政策立案総括審議官、それから茶谷主計局長にお願いします。

○水口政策立案総括審議官  
 委員の皆様、大変貴重な御意見及び御示唆を誠にありがとうございました。私からは2点、政策評価一般の話と財務省のデジタル化について、若干の補足をさせていただきたいと思います。
 田辺先生からもございましたけれども、先月末に総務省から政策評価につきまして、先生おっしゃったような提言が出されました。同時に財務省としても、現在5年の期間の基本計画というのが走っておりますけれども、来年4月からは新しい中期計画を作成することになります。その過程の中で、先ほど政策評価に関する政府の最近の流れも踏まえながら、来事務年度を通じまして財務省として適切な政策評価について、もちろん委員の皆様方の御意見もいろいろ伺いながら、しっかり検討していきたいと思います。
 次に財務省のデジタル化ですが、これも先週、政府全体でデジタル社会の実現に向けた重点計画が一部改定されましたが、そういうものを踏まえて財務省としても、現在の財務省デジタルガバメント中長期計画の見直しも含めて、デジタル庁とも連携をしながら、デジタル化について引き続きしっかりと進めていきたいと思います。

○吉野座長  
 ありがとうございます。
 それでは、茶谷主計局長、お願いいたします。

○茶谷主計局長  
 主計局長の茶谷でございます。財政についてたくさんの御指摘、御意見を賜りました。私の答えられる範囲でお話しさせていただければと思いますが、まず1つは、評価に関して、財政健全化の部分が昨年のCからBになったということについて、何人かの先生からお話を頂戴しました。これは理由にも書いてあるとおり、いわゆるプライマリーバランスの対GDP比が若干改善したということと、令和4年度当初予算の目安を達成したということで、正直言ってCにほとんど近いようなBというか、ぎりぎりBにさせていただいたということですが、いずれにせよ、先ほどお話もありましたが、当初予算をいくら頑張っても補正予算で大きいものを編成したら元も子もないわけで、今後の予算編成、財政をどうしていくかということで、Bということを今後の予算編成過程で財務省自身が身を持って示していく必要があろうと考えているところでございます。
 また、予算の執行について、たくさんの御意見を頂戴しました。予算の執行については、特にコロナ予算について、1つは不用額や繰越額が非常に多かったではないか、何に使われているか分からないじゃないか、どんな効果があったのかという様々な観点から、あるいは不適正な執行事例がたくさんあるんじゃないかというようなことが、多々御指摘ありますが、1つ目の不用額や繰越額が多額になったと。これにつきましては、もともと最初は未知のウイルスで、どうしたらいいか分からないからというので、かなり多めに計上して、かつ、それぞれが申請ベースで来るものですから、例えば典型的にはコロナのゼロゼロ融資の財源などというのはかなりの繰越額と不用額になりますが、こういうのは結局どれだけ申請が来るか分からないからというので繰越額、不用額が多額になった面というのはございます。ただ、これにつきましては、基本的には不用になりますと国庫へ戻ってくるわけですから、そこでぎりぎり不適切な流出は防げるかなと思うんですが、どちらかといえば、何に使われるかよく分からないというので、典型的に金額が大きく、よく指摘されるのが地方への臨時交付金が何に使われていたか分からないと。これは実は財務省でも、財政制度等審議会などで、一部の事例なども我々のほうでも紹介させていただきました。これについては制度上、地方公共団体の支出というのは、最後は地方公共団体自身が明らかにしてもらわないと分からない部分がございまして、そこは地方公共団体とよくよく連携を密にするとともに、今の臨時交付金であれば、取りまとめの内閣府が地方を取りまとめて公表するように進めているところでございますが、ただ、予算の執行そのものというのは、最終的には財務省も当然責任を負うべきでして、その観点から言いますと、田辺先生からもお話ございましたが、執行の状況を今後の予算編成にどう生かしていくかという観点が非常に重要になってくるわけでして、今年の骨太でも先ほど田辺先生が読み上げられた「効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化」という欄が新しく設けられました。これは経緯をたどりますと、自民党の中に財政政策について2つの本部が設けられたと。設けられたのは、去年からございましたが、この中の1つの財政健全化推進本部というところでも予算執行の在り方というのは議論になりまして、そこでいろいろ行政評価やレビューシートがあるけれども、これをどううまく活用していくかというのが大きい議題になりまして、最終的には今回の骨太方針で、肝のところを言いますとEBPMの指標の実践に向け、行政事業レビューシートを順次見直し、予算編成プロセスでのプラットフォームとしての活用等を進めるということで、今後は行政事業のレビューシートを機軸にしながら、執行がどうなっているのかというのも極力予算編成に生かしていこうという形にして、これは実際どう実践していくかが重要ですが、財務省としても、一応制度上は執行というのは各省、各庁の責任となっておりますが、当然財務省自身が予算編成に責任を負っている以上は、執行についても極力いろいろなツールを使って把握していこうと今後も努力をしていきたいと思っているところでございます。
 ただ、その上で、給付金の在り方をどうするかと。給付金も実は、例えば児童手当とか児童扶養手当とか、既存の制度があるものと同じ対象者に給付する場合には、その制度を活用してプッシュ型で、これについては不正受給もなく適切にできるわけですが、特に申請ベースのものというのは、冨山先生からもございましたけれども、マイナンバーをどう活用するかということ、これは従来から指摘されているところですが、これが正直言って一番肝だと思います。口座のひもづけも、証券のほうは法律上義務づけられているものですから、もう5割か6割、かなり上っていると思いますが、金融機関のほうは、銀行には義務づけても、預金者に義務づけられていないものですから、まだ数%レベルにとどまっていると思います。ただ、今回のもろもろのコロナでの給付金のことを踏まえて、官邸でも真剣にやろうということで、副長官をヘッドにした大きなPTが今動き始めましたので、政府としてきちんとやっていく必要があろうと思っているところでございます。
 執行については、今回何でAからSになったのかというので、基本的には、理由は財務省の制度的にできるような予算執行調査や、あるいは繰越の活用という部分が適切であったからということでSということですが、これに関して、予算執行調査について田辺先生からお話を頂戴しました。予算執行調査自身は、塩川財務大臣の頃に始まったので20年ぐらい歴史がございますが、これにつきましては、実は最初はいろいろな論点がないかというので一通りずっと、毎年毎年新規の論点を発掘していたんですけれども、ある程度こなしていきますと、新規の論点というのは、どちらかと言えば何年か前に指摘したものがきちんとなっているかということにかなり力点を置いて予算執行調査をやり始めているところでございまして、そっちのほうが案外いろいろな論点が生まれてきて、改善もできるんじゃないかということで、そういう観点で従来から言われているものをより深掘りしていくというふうな観点で今予算執行の調査に取りかかっているところでございます。
 財源確保という面では、例えばGXボンドの話を頂戴しました。これにつきましては、閣議決定した骨太方針なんかでも財源の裏づけを持ったGXボンドとなっていますが、イメージするところは2011年の東日本大震災のときに復興債を発行して、あれは償還財源で、所得税や法人税の臨時特別税というのを償還財源で法定して、そのつなぎとしての復興債を発行しましたが、ああいうことを想定してグリーンボンド、償還財源をどうするかというのは、この夏から官邸でGX実現会議を立ち上げて、そこで今後10年間のロードマップを検討していくことになっていまして、そこで償還財源というのも検討していきますが、GX債については政府が10年で20兆円と、この財源をきちんと議論してセットでやっていこうということを考えているところでございまして、実は同じ発想というのは子ども予算を増やしていくというときに、安定した財源と一緒にというのを閣議決定文書にも書かれていますが、これについては同じように、その財源をどうしていくかというのがすぐに議論になってくると思います。
 さらに、防衛費につきまして、これはいつも総理が答弁されていますが、今後どうしていくかというときに、防衛力の内容と予算と財源、この3点を一緒に議論していこうということなので、ここでも財源という切り口が出てきます。これについては国民の御理解を得るということがまさに一番出発点であって、そこから先、結局元に戻りますが、これまでの予算が適正に執行されているかということに立ち返ってくるわけなので、これについては財務省も真剣に取り組んでいく必要があろうかと思っています。
 また、例えば給付金のところで国税庁をどこまで活用できるかと。これは後で国税庁のほうからお答えすると思いますが、税務情報をどこまで使えるかというのは、なかなか非常に難しい部分もございますので、そことの兼ね合いでどこまでできるかということがあろうかと思います。
 とりあえず私からは一旦は以上で、回答にさせていただきたいと思います。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは住澤主税局長、お願いいたします。

○住澤主税局長  
 本日はありがとうございました。幾つかコメントいただいたことについてお答えいたします。
 まず冨山委員から、いろいろな仕組みが法人を通じた共助ということになっていて、こういった在り方から脱却すべき時期に来ているのではないかという御指摘をいただきました。細かい話までは入りませんが、税制の中でもそういった面は多々あろうかと思います。
 それとの関連で翁委員からも、働き方が多様化してきている中で、よりフェアな制度にしていく必要があるという御指摘もいただいております。これまでの制度というのは、どうしても会社とそこで働いている個人、雇用されている個人を前提に組み上げられてきた部分が今の税制の骨格になっている部分もございますので、フリーランスですとか、あるいはギグワーカー、複数の仕事を持つ人々、こういった人たちが増えてきたときに、国と個人の間の関係で制度をどう再構築していくのかということが、やや抽象的な言い方になりますが、税制にとっても大きな課題になっていると存じます。そうした中で、給与所得控除ですとか公的年金等控除、退職所得控除といったような諸控除の在り方もやはり曲がり角に来ているということで、近年少しずつ見直しをやっておりますが、引き続きこの辺の見直しもしていく必要があるということかと思いますし、また、老後に備えた様々な自助努力を支援するための私的年金関係の制度についても、どういった場所で働いているのかということにかかわらず、等しく税制上の恩恵が受けられるような仕組みへの移行ということも課題になっておりますので、引き続きしっかりと御議論いただきながら取り組んでいきたいというふうに思います。
 また、田中委員から国税当局が有している事業体に対するサーベイ能力と給付金との関係についてもお話をいただきました。これについては、政府税調の場でも話題にはなっておりまして、近年、諸外国においてこういった税務当局が把握する情報と様々な給付との関係であるとか、あるいはそもそも税務当局がどこまでの情報を把握できており、それをどういうふうに活用しているのかといった点についても調査・研究も行われてきておりますので、今後の在り方については引き続き御議論いただきたいと思っております。
 他方で、特に事業所得のような世界になってきますと、諸外国においても必ずしも給付とダイレクトに関連づけて活用できているのかというと、やや限界があるところもあると思いますので、その辺は事実関係をきちんと整理しながら議論していく必要があろうかと思います。
 また、広瀬委員から高齢化、グローバル化の中での法人税、所得税をはじめ、公平な税制の確保ということで御指摘をいただきました。重要な課題ですので、引き続き留意して、検討していきたいというふうに思います。
 また、吉野委員から前回に引き続きだったと思いますけれども、炭素税についての御提言をいただいております。これについては、やはりこういったエネルギー関係諸税、あるいは自動車に関連する諸税について、今後の在り方をどうしていくのかということについては、脱炭素目標との関係で非常に大きな曲がり角に来ているというふうに思いますので、こういった原因者負担的な税制の在り方ということについて、中長期的な視点からきちんと議論を進めていく必要があるかというふうに考えております。
 以上でございます。

○吉野座長  
 ありがとうございます。
 大鹿国税庁長官、お願いいたします。 

○大鹿国税庁長官  
 国税庁長官の大鹿でございます。本日は、来月7月から始まります令和4事務年度の実施計画に関しまして、沢山の貴重なご意見・ご指摘をいただきましてありがとうございます。できる限り具体的にお答えしていきたいと思いますけれども、その前に、何点かお話をさせていただきたいと思います。
 まず、冒頭、次官からもお話がありましたけれども、大変残念な事件でありますが、国税職員逮捕の件であります。税務署の職員が持続化給付金の詐欺に加担した容疑で逮捕されまして、現在、勾留・拘束をされています。国民の皆様の国税職員への信頼を損ねる事態を招いたということで、大変遺憾なことでありますし、深くお詫びを申し上げたいと思います。
 国税庁では毎年、全職員を対象とした非行防止の研修や、組織理念の浸透・実践のための取組を鋭意行っております。それにより税務行政の信頼確保であるとか、職員のモラル向上に努めてきたところではありますけれども、今回、こうした事件が起きたということを重く受け止めまして、一層、職員に綱紀の厳正な保持について徹底を図るとともに、実行性ある再発防止策をしっかりと検討して、可及的速やかに実施していきたいと考えております。
 なお、この実施計画との関係におきましては、税務行政に対する信頼の確保、あるいは綱紀の保持、モラルの維持向上といいますのは、税務行政の大前提でありますことから、実施計画の適切なところに、例えば職員研修の充実といった施策の中に、その旨を盛り込んでいくことを至急検討したいと考えています。
 次に、何人かの委員の方からいただいたDXについてですけれども、既にご案内のとおり昨年6月「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」、副題が「税務行政の将来像2.0」というものを公表しまして、従来の紙ベース、あるいは対面を基本とした税務行政から、デジタルを活用して、国税に関する様々な手続や業務をより効率的で効果的なものにしていくという方針を明確にしました。
 今事務年度に入りまして、12月にこの「将来像2.0」で掲げたビジョンの実現に向けた、今後数年間を射程においた「工程表」を公表いたしました。
 その後、年明けには、国税庁の部内の検討でありますけれども、長官であります私を本部長とする「DX・BPR推進本部」というものを立ち上げまして、部局横断的な検討を行うとともに、各国税局長から現場の意見を吸い上げまして、その意見を踏まえた上で、先般、部内の基本方針であります「DX・BPRの推進に関する基本方針」、副題を「ビジネスモデルを変える」としたものを取りまとめました。ここでは、税務行政におけるDXの意義、目的、何故必要か、取り組む姿勢、共通指針といったものを定めるとともに、税務行政の5つの分野における具体的な行動計画を、現状、制約要因、来事務年度における具体的な行動、あるべき姿という4象限に分けて、分かりやすく明示をしたものをまとめました。近くこれを5万6,000人の全職員に周知をして、意思統一を図って行きたいというふうに考えております。
 なお、こうしたDXの推進というのは、当たり前のことですが、個人情報に関するセキュリティの確保や、システムの安定運用が大前提となるわけでありますが、先般、令和3年分の確定申告の期限間際、3月14日・15日に、e-Taxの接続障害が断続的に発生いたしまして、利用者の皆様に大変なご不便をおかけすることになりました。納税者の皆様にe-Taxの積極的な利用を呼び掛けているなか、こうしたことが発生してしまい、所得税の目標もこれによって達成できなかったという面がありまして、その意味でも大変残念に思っております。
 電子システムの高度化を図るべくシステムの大幅な更新ですとか、新たな機能の追加というのが頻繁に行われている中で、システム障害の発生を完全になくすというのは、なかなか難しい課題であるというふうに認識しておりますけれども、電子申告・納税を安心して利用いただけるように、運用事業者・ベンダー側と連携して、より深度ある再発防止策の検討・実施を進めておりまして、システムの安定運用のために、万全を期して取り組んでいかなければならないという思いを新たにしています。
 こうしたセキュリティとシステムの安定運用を確保した上で、DXを実現するための大きな柱の一つであるe-Taxの利用率については、特に他国と比べて見劣りのする個人の所得税について、令和5年度の目標値を前倒しするということで、一段高い目標を掲げさせていただきました。これは単に努力目標という趣旨ではなくて、我々の取組が的を射たものであれば、十分に達成できるという見込みも踏まえた数字であるというふうにご理解いただければと思います。
 以下、皆様から頂いたご質問等にお答えしたいと思いますが、まず秋池委員からはDXについては中長期的な取組、腰を据えた取組が必要であるというご指摘がございまして、まさしくその通りであります。他方で私共の時間軸としては、令和8事務年度に現行の国税庁の業務システムでありますKSKというシステムを刷新することが決まっております。従来のクローズドなシステム(メインフレーム)からオープンシステムに刷新する予定になっておりまして、ここを一つのターゲットイヤーに据えて様々なDXの施策に取り組んでおります。納税者サービスの点では、やはり最新の技術をできるだけ取り込んで利便性の向上を図るということがまず基本であると思っています。一方で、従来型の紙ベースあるいは対面ベースの申告や相談をされたいという方々に対しては、きちんと適切なサービスを効率よく提供していくという視点が必要だと思っております。一方で我々の業務の高度化という点については、こうした新システムの導入を踏まえて、様々な情報のデータ化に今取り組んでおりますが、中々、ご指摘のとおり、まさに腰を据えた地道な取組が必要でございます。よくデータクレンジングと言われますが、データクレンジングの前のデータの入蓄、様々な書式フォーマットの統一、用語の調整、そういった地道な作業に今後1、2年は組織を挙げて取り組んでいく必要があるというふうに認識しておりますが、令和8事務年度の新システムの導入に際して、新しいビジネスモデルで税務行政を展開していきたいという思いで取り組んでいます。
 それから秋山委員からは、非常に高い評価と望外のコメントをいただきましてありがとうございます。今申し上げた気持ちで更に深化させていきたいと思います。
 それから翁委員からはDXに関連して、今後副業あるいはニューワーカー、副業・兼業といったワーキングスタイルが一般化するだろうけれども、フェアネスの観点からしっかりとした取組をというお話がありました。私共全く同じ認識でございまして、こういうシェアリングエコノミーといった新分野の経済活動を通じて所得を得た方に対しても、自発的かつ適正に申告をしていただく必要があるわけですが、そのためにも申告の必要性や方法等については幅広く周知・広報に努める、そして一方で利便性の高い申告・納付手段を提供していくということが必要だと考えています。具体的にはホームページを通じた様々な情報発信をしておりますほか、仲介業者であるとか業界団体等を通じて適正申告の呼びかけも行っております。それからオンラインのプラットフォームにおける取引情報について、一昨年、令和2年の1月からは、事業者等への協力要請規定というのが法令上明確化されましたので、これを活用してプラットフォームの運営事業者から任意の情報提供を受けるといった様々な形で課税上有効な資料情報の収集に努めて、これを活用して必要な場合には税務調査も行っているということでございます。
 それからDXの関連を先にお答えしますけれども、田辺委員からは対一般国民向けのDXの浸透というのは、ある意味で裾野を広げるのは難しいけれども一番重要だというお話がございまして、全く私共も同様の認識でございます。だからこそ所得税のオンライン利用率を65%と、令和5年度に当初設定していた目標を令和4事務年度の目標に一年前倒しで掲げさせていただきました。国内的には目標の水準自体を高く評価される方もいらっしゃいますけれども、諸外国の実態を見ますと、既に韓国やシンガポールといったデジタル先進国のみならず、アメリカやイギリスといった国においても、所得税でも90%を超えているという実態があります。現状は制度も違いますし、マイナンバーをめぐる様々な制度も違いますので、一概に比較はできませんが、やはりここは一段の推進を図っていく必要が高いと考えて取り組んでいるところでございます。
 それから冨山委員からは、テクノロジーの進化に柔軟に対応し、また迅速にフレキシブル、アジャイルに対応するようにという話がございました。これもまさにご指摘のとおりでありまして、民間における技術進歩に追いついていくというのはなかなか大変ですけれども、あまり遅れないように、様々なツールの開発を進めております。例えば、少し前までは電子申告もパソコンから、そしてマイナンバーカードの読み取りはICカードリーダーを使ってでないと申告ができませんでしたが、今年からはスマホでマイナンバーカードを読み取れて、しかも源泉徴収票も読み取れるというようなツールも開発して、より一層の利便性向上を図っております。また、来年からはスマホで納付まで完結できるようにする予定としておりますので、民間における技術進歩の果実をうまく活用して利便性を高めていきたいというふうに思っております。
 それから広瀬委員からは、贈与税、相続税におけるオンライン化、高齢化の下で信頼性、公平性という観点から、贈与税、相続税の重要性といったお話がございました。まさしく仰るとおりでございまして、相続税のオンライン利用率は所得税より低くなっておりますけれども、一方で相続税は主として税理士を通じた代理申告が比較的多くあります。その分、電子申告の条件も整っているわけですが、どうしても添付資料が多く必要だという問題があって、これが電子申告を妨げている要因になっているという実態がありますので、添付書類の精査を行って、そしてフォーマットなどもデータ化できるものはデータ化するというような検討を進めているところであります。それからグローバル化の点では、法人税、所得税が公平性を担保する観点から問題になってくるというご指摘、まさしくそのとおりでありまして、国際的な課税逃れ、あるいは国際的な取引を利用した節税スキームといったものの指摘は枚挙にいとまがありません。我々は外部調査と呼んでいますが、実地調査に充てられる事務量は限りがある中で、特に国際的な事案、それから消費税の不正還付事案、この2点については最重点分野として取り組んでいるところであります。
 それから吉野委員からはDXに対する効果の測定というご指摘がございました。まさにその点も検討していかなければいけないと考えております。従来は内部事務の事務量をなるべく効率化して、その部分を実地調査に充てるという発想で長らくやってまいりましたが、DXにおいてはデータを活用することで、実地調査だけではなくて、その実地調査の手前の行政指導、私共の用語では簡易な接触と呼んでいますけれども、実地に事業所に行って帳簿を見させていただくまでに至らない段階での固有の納税者との接触・やり取り、ここを充実させることによって、納税者あるいは国民の税務コンプライアンスの向上を図っていきたいと考えております。ゼロサムではなくてデータ化によって事務量が実質的に飛躍的に増大する、そういった姿を期待してそれを目指しているということを一言申し添えたいと思います。それからe-Taxについての簡単なビデオをというお話がありました。まさしくそのとおりでございまして、今ホームページ上からも入れるようになってますが、YouTubeであるとかWeb-Tax-TVというところで、e-Taxの使い方についての動画もいくつか作っております。そのような取組もしているということをご紹介申し上げたいと思います。
 最後に田中委員から、国税庁の持っているサーベイランス能力、特に事業者に対するサーベイランス能力を、給付金の支給の事務の適正確保に活用すべきではないかというご指摘がございました。大所高所からのご指摘であるというふうに受け止めておりますが、先ほど主計局長も言われたとおり、現行の制度上では国税庁の任務との関係、それから国税当局が所得情報等を、仮にどこかの当局が給付をする場合にその当局に提供するということについては、守秘義務との観点から問題になり得るという点がございます。このほか、どのような給付金かということにもよりますけれども、例えば事業収入の減少を要件とするというような給付金であるとすると、国税当局が所得情報を正確に把握しているという前提に立たなければならないわけですけれども、個人の納税者については、個人事業主を含めて所得を稼得している全ての者に確定申告義務があるわけではないために、国税当局が全国民の所得を網羅的に把握はしていないといった問題もございます。それから資産を何らかの要件にする場合については、更に国税当局には情報が足りないというような問題もあります。私共として議論にはしっかりと参加しなければいけないと思っておりますが、こういった大きな課題があるということを認識しているところでございます。
 以上でございます、ありがとうございました。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは、最後に矢野事務次官から、お願いいたします。

○矢野事務次官  
 どうもいろいろと有益な御示唆をいただきましてありがとうございます。私がコメントをすることはございませんので、各審議官、局長、長官がお答えをさせていただいたとおりですけれど、ちょっとだけ感じたことと言うと失礼ですけれど、申し添えさせていただきますと、ある意味ちょっと新しいお話として、物価や金利や為替や、あるいは格付けといったマーケットに絡む話が、今日多くお話をいただきました。我々も全く、年明けからずっとという感じですけれど、そういったマーケットの動きというものに日々といいますか、時々刻々といいますか、非常に注目をして仕事をしている珍しい時期になっていると思います。この先、先ほどトリプル安の兆しみたいなお話もいただきましたけれど、まさにそういうおそれもありますので、政策評価、あるいは立案において、従来からそうですけれど、さらに従来以上にマーケットをタイムリーに注視して、あるいはマーケットの動きに先見性を持って政策を考察していかなければいけないと自覚しております。
 それから、税制の話、あるいはDXとの絡みもあって、法人に依拠した共助という話もございましたけれど、主税局長からお答えしたとおりなんですけれど、これまでの半世紀、あるいは1世紀の税制、先進国の税制を振り返りますと、アングロサクソンの申告納税のパターンと、それからドイツを中心とする源泉徴収という、これは企業に御迷惑をおかけするわけですけれど、でも企業に御迷惑をおかけするコストをちょっと度外視すると、それが政府にとっては効率的で、結果的には公正であるみたいな、ドイツは相当自慢していたわけですけれど、我々もそれに倣って追従してきたというのが正直なところでしたけれど、さっきのギガワーカー云々という主税局長の話もこれあり、また、会計実務のすさまじいDXの流れというのもあって、もはやリアルタイムの申告納税みたいなことが、SF小説のようなことが一部の国で、アジアでもヨーロッパでも現に起こっていますので、日本ですぐにということは難しいにしても、それは単なる夢物語ではなくて、1つの理想形であり、実はもうデファクトにもなりつつあるということをよく勉強して進めていかなきゃいけないと、これも自戒しております。
 それから、財政の番人たれという御叱咤もいただきましたし、また、プランBという話もいただきました。財政の番人としてきちんと政策提言を、かくあるべしということも中では言っていかなきゃいけないと、あるいは発信という御指摘もありましたが、していかなきゃいけないと思いますし、一方で、残念ながらという危機対応ということがあり得るということも想定をして、プランBということについて後手に回ることがないようにということもしていかなければいけないと自戒をしております。
 もう1つ、財政規律ということと保守というお言葉もございました。ずっと我々、思い抱いている課題ではありますけれど、日本の財政赤字と保守、あるいは国のありようという話は、欧米先進国の中にはない異質の形になっているというのは皆さんもおっしゃるとおりです。ほんの一例で言えば、あの自由な国アメリカでも50州のうちの49州は均衡財政を州法で義務づけています。じゃ不景気のときは財政を赤字にしなくていいのかと。当然赤字財政をするわけですけれど、その財源はどうするかというと、ほかの州から、あるいは連邦政府からもらってくるというわけにいかないので、自分で景気がいいと思ったときにはためておくと。基金というのを各州が持っていて、景気がいいときは黒字財政にして基金にためておくと。イソップ童話のアリのような話ですけれど、景気がいいというのは、日本でそんな議論をすると、今は景気が悪いんだという話になって、すぐ話が、議論が崩れるんですけれども、とにかくそれを頭ごなしといいますか、法律上、均衡予算、赤字は駄目だと。その赤字は駄目だとすると、黒字をためておいて、それを自分で使う、人に迷惑をかけない。これは財政のためではなくて民主主義のためなんですね。ドイツも憲法で均衡財政を書いていますけれど、これも財政規律のためとか、将来世代のためとかと日本では意訳されていますけれど、そうではなくて、政権が変わっても人気とり政策をやらないようにするためというのがドイツです。いずれも財政のためとか、将来世代のためではなくてと言うと言い過ぎですけど、財政のためという日本で言うところの狭量な話とか、財政至上主義とか、ややもするとさげすまれる発想ではなくて、民主主義を成り立たせるために、他州に迷惑をかけない、あるいは政権選択においていい加減なことを、人気とりをしない、その民主主義を保つためにそういうルールがあるということなので、我々ももう少し工夫をして、財政のための規律ではなくて、民主主義のためのみんなのルールということを、懐深く説明責任を果たしていかないと、毛嫌いされるだけに終わっているのが日本の現状なので、工夫が必要だなと思ったりしております。
 いずれにいたしましても、毎回いろいろと深遠な御示唆をいただいておりまして、私ども、なかなかはかばかしくグレードが上がっていかないで、上がったり下りたりしておりますけれども、しっかり頑張っていきたいと思いますし、前回も申しましたけれど、我々は省の中で上からと下からと活発に議論をするだけではなくて、外からこうやって高い所見をいただいて、上からと下からと外からと、立体的な視点で政策を高度化して、実施していきたいと思っておりますので、今後ともよろしく御指導をお願いします。
 今日はどうもありがとうございました。

○吉野座長  
 矢野事務次官、どうもありがとうございました。今の矢野事務次官からのお話から、例えば予算でもいろいろな省庁で、全部使わないで基金としてためた省庁に対しては、非常によくやったと、そういうような形を含めると今のようなお話がさらに実際にうまくいくのではないかと思いましたけれども、どうもありがとうございました。
 それでは、今日の皆様方の御意見を踏まえまして、ぜひ財務省としてもPDCAサイクルを回していただきたいと思います。
 次回でございますけれども、通例ですと10月頃の開催の予定でございます。議事内容としましては、現時点では国税庁の令和3事務年度の実績評価書を予定しておりますけれども、具体的な議題や開催日時につきましては、改めて事務局から委員の先生方に御連絡させていただきたいと思います。
 本日の懇談会の議事内容につきましては、通常のように各委員の御確認の上、財務省のウェブサイトで公表させていただく予定でございます。
 それでは、これをもちまして第74回の財務省政策評価懇談会を閉会させていただきます。今日は活発な御意見ありがとうございました。


──了──