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第60回 財務省政策評価懇談会(6月14日開催)議事録

1 日時

平成29年6月14日(水)15:01~16:39

2 場所

財務省第3特別会議室

3 出席者

(懇談会メンバー)

 

秋池 玲子 

ボストンコンサルティンググル-プ

  シニア・パ-トナ-&マネ-ジング・ディレクタ-

 

小林 喜光 

 株式会社三菱ケミカルホールディングス 取締役会長

 

角  和夫 

 阪急電鉄株式会社 代表取締役会長

 

田中  直毅 

 国際公共政策研究センター 理事長

 

田辺 国昭 

 東京大学大学院法学政治学研究科 教授

 座長

吉野 直行 

 慶応義塾大学 名誉教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

  佐藤事務次官、宮崎副財務官、岡本官房長、太田総括審議官、茶谷主計局次長、星野主税局長、
 梶川関税局長
、中村理財局総務課長、武内国際局長、根本財務総合政策研究所長、伊藤秘書課長、
 源新会計課長

 

(国税庁)

 迫田長官、栗原審議官、永田監督評価官室長


(事務局)

 浅野政策評価審議官、阪田文書課長、田平政策評価室長

           

 

4 議題等

(1)「平成28年度財務省政策評価書(案)」について

(2)「平成29事務年度国税庁実績評価実施計画(案)」等について

 

5 議事録

 

  

 

○吉野座長

 それでは、時間になりましたので、ただいまから第60回財務省政策評価懇談会を開催させていただきたいと思います。
 本日、三木大臣政務官、ご挨拶していただく予定でございましたけれども、国会の関係により急遽ご欠席となりましたので、浅野政策評価審議官からご挨拶を代読していただきます。よろしくお願いいたします。

 

○浅野政策評価審議官   

 三木大臣政務官から挨拶を受け取っております。読み上げます。

 本日は、委員の皆様には、大変お忙しい中、財務省政策評価懇談会にご出席いただき、誠にありがとうございます。本日は、財務省が平成28年度に行った政策についての評価結果と、国税庁の平成29事務年度の評価実施計画につきましてご議論をお願いしたいと思います。

 日本経済は、雇用・所得環境が着実に改善するなど、経済の好循環が生まれてきております。この好循環を確かなものとするため、これまでの経済政策を一層充実していくことが重要です。財務省では、こうした状況下において経済再生と財政健全化の両立といった政府方針に沿った財政政策を行っており、今回は平成28年度における政策についての評価を行ったところです。また、執行官庁である国税庁の評価実施計画については、経済取引の国際化に、より一層の対応を行うことなど、現下の課題に的確に対応したものとなるよう努めたところです。

 政策評価の目的は、PDCAサイクルを通じて質の高い行政を実現するとともに、国民への説明責任を果たすことにあり、財務省としても皆様方の忌憚のないご意見を賜り、さらに適切な政策評価に努めてまいりたいと考えております。

 今後とも皆様のご理解とご協力をお願いいたしましてご挨拶に代えさせていただきます。

 以上、代読いたしました。

 

○吉野座長   

 どうもありがとうございました。

 カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、報道関係者の方は退室をお願いしたいと思います。

 それでは、議題に入らせていただきたいと思います。

 議題は、財務省の平成28年度政策評価書と国税庁の平成29事務年度の実績評価実施計画、この2つでございます。一括して扱いたいと思いますので、まず浅野政策評価審議官から2つの議題について説明をお願いしたいと思います。

 

○浅野政策評価審議官  

 それでは、資料の右下にページ番号がついているわけでございますが、その3ページ、資料1、平成28年度財務省政策評価の概要についてご説明いたします。

 次のページ、4ページをご覧ください。財務省の政策目標の体系図です。今回、評定に変化があったものは3つです。目標の符号に下線を付している、下の段にあります政策目標5-2、これは関税局の一部でございます。7-1、政府系金融機関、あと8-1、これは地震再保険でございます。これらが、5-2につきましては「S」から「A」、7-1については「S」から「B」、8-1が「B」から「S」となっているわけでございます。

 次のページをご覧ください。評定数の推移です。政策目標において、先ほど説明した3つの目標の評定変更により「S」が1つ減り、全体で、一番右の合計欄でいきますと「21」が「20」になり、「A」が1つ増えて「8」から「9」になったと。「B」の数は同じ「1」ですけれども、内容が変わっているということでございます。

 次のページをお願いします。このページは、28年度の主な取組みを各局1項目ずつ示したものでございます。

 施策1、財政関係でございますけれども、一般歳出の伸びを対前年比5,305億円に抑制しており、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算とすることができました。

 税制関係でございますけれども、就業調整を意識しなくて済むような配偶者控除の関係で、配偶者給与収入の上限を150万円に引き上げるなど、経済社会の構造変化に対応するための税制改正をしております。

 財政投融資関係でございますが、29年度財投計画では、リニア中央新幹線の全線開業前倒しを図るほか、インフラの海外支援を図るなど、真に必要な資金需要に的確に対応することとしております。

 その次、施策5の関税関係でございますけれども、ASEAN諸国を中心に対前年度増えている数字ですけれども、67カ国から393名の途上国からの研修を受入れ、28カ国へ223名の派遣を行って、アジアにおける貿易円滑化に貢献、協力をしてきました。また、ミャンマーに対しては通関システム、NACCSの、導入支援を行ったところです。

 施策6の国際局部分でございますけれども、質の高いインフラを輸出するということでJICAの円借款や海外投融資の制度改善、迅速化などを決めたとともに、JBICの特別業務を整備して10月から開始されているところです。

 施策7は政府系金融機関でございますけれども、熊本地震への対応として平成28年の熊本地震特別貸付を創設したり、セーフティネット保証第4号を適用するなど、被災企業の資金繰りの円滑化を図りました。

 次のページをお願いいたします。冒頭でお話ししました、評定が厳しくなった2つの目標の評定理由等です。

 上の半分になりますが、関税局の政策目標5-2につきましては、測定指標である「税関相互支援協定等の締結数」で目標値の「32」に対し実績値が「31」となり、目標を満たすということにならなかったわけです。しかし、細かく見ますとブラジル、メキシコについては、28年度中に実質合意に至った後、締結に向け現在両国で必要な手続を行っているほか、4月にはロシアとの署名も行って、ベルギーとは署名に向けた調整を行っているなど、交渉が大きく進展し目標までの差がわずかであることから、評定を「A」としております。

 政策への反映、右側の欄でございますけれども、今後、締結に向け必要な手続を行うなど、着実な実施に努めるということでございます。

 下半分は政策金融に関する部分でございまして、平成28年秋に商工中金に不正行為が行われたことが判明し、主務省として過去の監督において不正行為の防止・発見ができなかったことなどから、測定指標「政府関係金融機関等に対する検査の的確な実施」の達成度を「×」としました。不正の発生を受け、商工中金に対し迅速に検査を行い、本年5月9日には業務改善命令を行いましたが、制度の趣旨に沿った運用を行っていなかったことが一番の問題であり、主務省として監督責任は免れないことなどにより、評定を「B」としたところでございます。

 右側の政策への反映、今後の対応でございますけれども、特に下のパラグラフでございますけれども、今後、特定される根本原因等を踏まえ、今回のような不正行為の発生リスクも勘案した検査内容やさらなる行政対応を検討・実行するなど、監督責任を果たしてまいりたいということを書いてございます。

 次のページに行きまして、昨年度「B」評定であった地震再保険の改善状況です。地震保険の付帯率については、平成27年度は、左の欄に数字がございますけれども、目標値を下回っていましたが、28年度は、政府広報、テレビ番組、ラジオ番組等、様々な媒体を活用して広報活動を行ったことなどにより、目標値「60.2%」に対し実績値「61.7%」と、目標値を上回ったことから「S」としております。

 次のページ、参考1でございます。28年度における政策評価の実施において制度的な改善をしたところです。これまでは政策評価書と附属説明書を別々に作成していたところですが、今回、この財務省の28年度評価から附属説明書を廃止し、その内容を政策評価書へ統合することといたしました。統合に当たっては、附属説明書に記載されていた図表などの内容を評価書へ移行するなど、従来からの情報量を落とさないよう十分留意したところであり、統合後の評価書においてもこれまでと同じレベルの内容が提供できていると考えております。また、財務省ホームページに掲載されている内容は、URL、ウエブサイトのアドレスですけれども、の表記に変えることなどにより簡潔な記述に努め、統合前には2つで合計460ページあった冊子が統合後は約300ページになり、大体160ページ削減され、より読みやすく、分かりやすいものに仕上がったと考えております。

 次の10ページ以降は、割愛させていただきます。

 次に、資料2、国税庁の実施計画の説明に移らせていただきます。

 では、早速ですけれども、次のページをご覧ください。各目標に係る施策の一覧となるわけでございます。施策数は、昨年より1つ増の「44」となっております。ページ左側の網かけ部分、「税務行政の適正な執行」の中に2つあるわけでございますけれども、後ほど説明いたしますけれども、修正・改善がございます。また、新たな施策としてページ右側の真ん中の網かけ、「国際化への取組み」のところで、「(2)CRSに基づく金融口座情報の情報交換の実施に向けた取組み」を追加しました。

 内容は次のページでご説明します。施策の修正と追加です。

 まず、一番上の施策1-1-5「ICT化・BPRの推進」ですが、昨年までの「業務・システムの最適化の推進」から「ICT化・BPRの推進」へと変更しています。これは、昨年5月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」の変更に合わせたものです。

 続きまして、2つ目の箱ですけれども、マイナンバーの関係でございます。番号の更なる利活用に向けて、マイナポータルを活用した納税者利便の向上策の検討などの取組みを進めていくことから、その内容について追記しております。

 3つ目の箱でございます。CRS(共通報告基準)に基づく金融口座情報の情報交換を円滑に実施することにより、国際的に公正・公平な課税を実現していくことは国際的な取組みとして重要であることから、新規に施策として設定したものでございます。

 4つ目の最後の箱でございますけれども、ワインの製法・品質表示基準が、国が定める初めてのワインラベルの表示のルールができたわけでございますけれども、平成30年10月30日に適用開始するので、7月以降の事務年度でその周知に努めることを追記しております。

 次のページに行きますと、測定指標数及び昨事務年度からの変更内容となります。昨事務年度と比較しまして測定指標数は2つ増加し、「71」となっております。

 まず、表の上段で、定性的測定指標は昨事務年度から2つ増えて「34」となります。新たに設定した測定指標の1つ目は、「CRSに基づく金融口座情報の情報交換の実施に向けた取組み」でございます。2つ目は、「租税に関する啓発活動の集中的な実施」です。これは、自発的かつ適正な納税義務の履行のため、納税者に租税の意義・役割や税務行政の現状について深く理解していただくことが重要であることから、測定指標として新たに設定したものです。

 続きまして、下段で、定量的測定指標は昨年同様「37」でございます。昨事務年度からの変更点でございますけれども、測定指標のうち審査請求の1年以内の処理件数割合については、相互協議事案や公訴関連事案など審理を留保すべき事由が生じた事案の留保期間等を除いて算定することとします。これは昨年4月施行の改正国税通則法に基づいて公表している事務運営方針の内容と整合的にするものであります。

 次のページをお願いいたします。目標値が変更された測定指標でございますが、大きく分けまして上段、下段ございまして、上段の業績目標1-2-3「電子申告等ICTを活用した申告・納税の推進」に関する指標などが全部で8つあります。これは、平成28事務年度までの目標値は、財務省改善取組計画に定められたものを目標値として設定してきましたが、平成29事務年度以降を対象期間とする新たな改善取組計画は今後策定される予定のため、現時点においては「増加」とか「減少」という言葉を入れ、新たな計画が策定されましたら具体的な数字に置き換えます。

 下段の集中電話催告センターにおける催告回数でございますが、昨年に引き続き目標値を引き上げるものでございます。

 以上で平成28年度の財務省政策評価及び29事務年度の国税庁の実施計画の概要説明を終わります。

 

○吉野座長   

 ご説明ありがとうございました。

 それでは、いつものように委員の先生方からご意見をいただきたいと思います。またアイウエオ順でお願いしたいと思いますが、秋池委員からお願いいたします

 

○秋池委員      

 5つございます。

 まず、この評価の仕組みにつきましては毎回進化がございまして、事務局の皆様のご尽力に敬意を表したいと思っております。その内容についてですが、評点が厳しくなったものについて政策への反映ということを書いていただくようになっておるんですけれども、その年に厳しくなったものだけではなくて、ずっと厳しい評点が続いているものにつきましても、やはり何らかのアクションというのが示されるとよろしいのではないかと感じました。それから、その後のモニタリングの状況といいますか、どのように取り組まれたかということも何らか、詳細の数字は、資料では実は見られるようになっているのですけれども、もしかしたらこのサマリーの部分にうまく表現されてもよろしいのかと思いました。

 それから2点目、少々細かいところになりますが、地震保険の目標値を「60.2%」として、それを「61.7%」にまで達成したというのは非常に大きな成果だと思っております。ただ、この地震国で目標が「60.2%」でいいのかどうかというところの議論もあろうかと思いますので、こちらは引き続きご検討いただければと思います。

 それから、目標と評価から少々離れるところもあるかもしれませんが、3点目以降でございますけれども、社会保障と税の一体改革は本当に待ったなしの課題でございますので、引き続き力強くお取り組みいただければと考えます。

 そして、4点目ですけれども、マイナンバーをはじめとして税の仕組みのICT化というのがございます。こういったところで他国の例の研究というのもしばしばされておりまして、エストニアなどをはじめ、非常に進んだ国の研究はなされているかと思いますが、比較的まっさらなところに仕組みが作れた国で先進的な例を見るのもさることながら、既に税の仕組みがあったところにICT化していったところのほうが、苦労の歴史が日本の役に立つこともあろうかと思っておりますので、そういった視点でのご研究も続けていただけると、この日本で既に仕組みがあるところでどうできるかという、実効力のある学びもあるのではないかというふうに感じます。

 それから、5点目ですが、税関の仕組み、あるいは徴税の仕組みを新興国に指導したりすることもあるということを伺ったことがございます。それは日本ならではでありまして、そういった国に対してソフトパワーを持つという意味でも意義のある取組みだと思っております。ただ、日本の仕組みはきっと、必ずしも標準化とか言語化されているわけではないと思いますので、教えるときに大変なご苦労があるのかもしれないというふうに、これは他の産業の例で推察するところでございますが、そういったところがより効率的にできるような、生産性高くできるようなことも整備されていくとよろしいのかというふうに考えました。

 以上でございます。

 

○吉野座長   

 ありがとうございました。

 では、小林委員、お願いいたします。

 

○小林委員      

 いくつか質問に近いお話をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど、秋池委員からもありましたが、総合目標1、財政について、「A」という評価になっていますが、そもそも政治に関連する内容なので、財務省としてどういうことがクリアされれば「S」になるのか、「A」になるのか、「B」になるのかというのが極めてわかりづらいと感じます。社会保障関係費の伸びを5,000億円に抑えたといった点はかなり評価されますが、今回の骨太の方針あるいは未来投資会議における記述では、28年度から29年度に向けて、消費税に関する文言は消えており、また、債務残高対GDP比の安定的な引き下げに関する内容が追加されています。そうしたいわゆる政治の大前提と財務省の個々のアクションを基本的にもう少し区分しなければ、このクライテリアに対する評価が「A」だとか「S」だということが大変分かりづらいと思います。また、2020年度にプライマリーバランスの黒字化を目指すことについては、内閣府などのいろいろなシミュレーションがありますが、それは政治レベルであって、財務省は我関せず焉ではなかろうと思いますので、やはりこうした評価そのものにどういう意味があるのか、私としては理解できないところがあります。

 一方、政策の基本目標を各政策分野の目標として落とし込んだ部分については、かなり理解しやすいのですが、それを財務省としてどう捉えているのかということをお伺いしたいと思います。

 また、マイナンバーについてはまだ8%程度の普及率しかないという状況で、国税庁はIT化がかなり進んでいるという印象を持っていますが、そうした中で今後このマイナンバーをどううまく取り込み、より効率化していくか、IT化を進めていくかについてのスケジュールをお伺いしたいと思います。

 最後に、質の高いインフラ輸出拡大について、アメリカを含め、今後インフラに対してかなり日本が投資していく中で、例えば原子力は時間軸が相当長いので、ガバナンスをどういった形でしっかりと強化していくのかについての考え方をお伺いしたいと思います。
 以上です。

 

○吉野座長   

 どうもありがとうございます。

 では、角委員、どうぞ。

 

○角委員     

 私も今、小林委員がおっしゃったように、今回の骨太の方針から消費税10%の文言が消えたということについては、やはりかなり危惧をするというか、心配せざるを得ない状況かなと。ただ、その中で2020年の基礎的財政収支については、黒字化するということは堅持されておりますので、ぜひともそういったことは心配が徒労に終わるようによろしくお願いしたいと思います。

 その一方で、2つお願いといいますのは、1つは高等教育無償化の話が巷で出てきておりますが、基本的に戦後70年、憲法が手つかずに来たと。もちろんその間に世界情勢も国内情勢も、あるいは国民の価値観、意識も大きく変わる中で、残念ながら憲法については手つかずに来たということについて、現政権でぜひとも自主憲法制定に向けた扉を開けていただきたいと。そのスタートを切っていただきたいという思いは強いわけですけれども、その問題と高等教育の無償化というのはやはり異質のものだというふうに思います。高等教育よりも、日本が今直面している超少子高齢化の「少子」のほうを改革するのが非常に喫緊の課題であるということは、もう誰もが思っているわけですけれども、その幼児教育の就学前の無償化にしても、ある試算では1兆1,000億を超える財源が必要になるというふうに聞いておりますので、待機児童の問題も含めましてこれをやることが喫緊です。かつ、それを保険というのは、やはりちょっと筋が違うのではないかなというふうに思います。ですから、やはりこれは税というものでやるべきだと思います。そうすると、社会保障全体の中で高齢者とか生活保護の方とか、そういういろんな方に社会保障費が、給付費ベースでは、ちょっと不正確ですが110兆円ぐらいかと思いますけれども、その組み替えをせざるを得ないんじゃないかなというふうに思いますので、その辺のご議論をひとつよろしくお願いしたいと思います。

 高等教育については、要するに教育投資だからいいじゃないかというお話がありますけれども、もちろん教育投資は非常に重要であることは誰もが思うわけですけれども、税を使って教育を受ける以上、やはり総量として結果を出していただかなきゃいけないというふうに思います。しかし、今の大学で定員割れしている大学もかなり多くて、私学ではもうできないから公立と合併するとか、あるいは公立大学に変わるとか、税を入れて授業料を安くして定員割れを防ぐとか、そういうことも行われております。ですから、その高等教育の無償化のために税を使うのであれば、その前に大学を抜本的に改革していただかないと、投資をするに見合う大学にしていただかないと困るのではないかなと。あまり勉強しなくても単位が取れて卒業していくというのは変えていただかないと、そこに税金を使うのは国民の納得が得られないのではないかなというふうに思います。

 もう1点は、先ほどもマイナンバーの話が出ました。今、健康医療については非常にいろいろ改革が進んでいるように思いますけれども、やはり個人情報の問題もありますけれども、マイナンバーと個人情報とうまくリンクさせて、今後の日本の健康医療産業の、あるいは、健康寿命を延ばすというところに使っていただければというふうに思います。去年でしたかね、大きなリスクは共助、小さなリスクは自助、あるいは、負担能力に応じて負担をするという柱を立てていただきましたので、それは非常にいい柱だと思いますので、それをやるためにもマイナンバーで所得、資産をきちっと捕捉していくということが、今のスケジュール感では2020年以降になってしまうと思いますので、それを少しでも前倒しをお願いできないかなというふうに思います。

 以上です。

 

○吉野座長   

 ありがとうございます。

 では、田中先生、どうぞ。

 

○田中委員   

 2つ申し上げようと思うんですが、1つはこの政策評価の仕組み、ある程度年季が入って、行政の事務に当たっている人にとっては、こういう目に見える基準で評価されるということがそれなりに定着したんだろうと思いますので、これは今まで各委員が言われましたように、相当程度改善が重ねられていることは事実だと思います。しかし、本来財務省が歳出と歳入という一番大きな2つの窓口を持って、国民生活、それから、政府の仕事そのものを仕切る立場からいくと、そこにエビデンスベーストの議論が行えるような、そういう資料の出し方が要るのではないかというふうに思います。ですから、政策評価室で果たしてできるか。人員の問題もありますし、そういう位置付けになっているわけじゃないと思いますけれども、次官、官房長、以下皆さんおられますので、私が考えてもらいたいと思うのは、「財政の崖」ということ。崖に行くまでは平べったいところを行きますが、崖というのは突然転落するわけでして、我々にとって「財政の崖」というのは、どこから崖になるのか分かりませんけれども、近づいてきているというのは皆が直感的に思っているわけです。

 したがって、財務省が議論すべきはエビデンスベーストの議論。ああ言えばこう言うという水かけ論をやっていても始まりませんので、財政のこれからはエビデンスベーストのものにする。そうすると、政策評価室の仕事は、あるいは、財務省の政策評価懇談会の仕事は、エビデンスベーストのものを国民に提示して、この「財政の崖」と言われる将来の時代、あるいは、現実に厳しい財政事情の中で幾つかの歪みが起きていますので、そのことについての指標を出すということが重要じゃないかと思うんです。

 崖のほうは先行きの話ですから、これはいろんな議論がありますが、これもエビデンスベーストにしてほしいと思いますが、既に起きていることで言えば、最近私の周辺で多くの人が言うのは、日本の科学技術に関する論文が、国際的にリファーされるものの数があまりにも少なくなり過ぎたということです。いろんな指標が、これはもう国際的にも発表されているわけですが、なぜ日本の科学技術面における基礎能力みたいなものが低下したのか。いろんな理由があると思いますが、エビデンスベーストですぐできることは、特任教授という、例えば助教授というか准教授の方もおられるでしょうけども、あなたの仕事は5年間ですよというふうに出されれば、5年後には就職運動をしなきゃいけないかと思うと、あまり大きなテーマはやれないので、そこら辺のものを取りまとめて少しだけ新しいものをつけ加えるという類の論文がいっぱい出るということになれば、そんなものをリファーする人は内外にいないわけです。ご苦労さまでしたというご苦労さま印が付くぐらいの論文がいっぱい出てきて、明日を展望するに足る概念とか、あるいは、それに至る道筋を書いた論文というのが出にくくなっているという状態。東大の学長さんが、とにかく特任教授の数がそうでない人に比べて増えた、そのほうが多いというふうに言っておられますので、それはエビデンスが本当につけられると思うんですけれども、そういう状態を長く置いておけば、我が国は資源もなく狭い国土で、科学技術でも立てないというんじゃ、21世紀は日本は立てないというのとほぼ同義ですから。

 問題はどこにあるのか。別に文科省に関わる主計局の査定がおかしいと言っているわけじゃない。全体として財政が困窮化すれば、あらゆるところで問題が起きるんですが、どうしてここはこういうことになったのかという因果関係が分かるような提示のされ方をしないと、国民には分かりにくいということなんです。こういう材料を、財務省の中にあるデータを、芥川賞作家とは言いませんが、芥川賞候補ぐらいの人によく読みこんでもらって、ストーリーとして国民が広く、このエビデンスベーストというのはやっぱり重要なんだと分かるようなものを、全部自前でやるよりはそのくらいのことを考えてもいいんじゃないかと。そうすると、これはやっぱり多くの国民に読んでもらえる。我が国の財政の現状、あるいは、それがもたらしてきたひずみと、今後あるかもしれない、あるいは、ほぼ確実にある「崖」というものについて、国民的な議論がそれをきっかけに起きると。そういうものを用意するというのが、この政策評価の基準になり始めているんじゃないかというふうに思うんです。

 国税庁の中で私がぜひやってもらいたいと思うのは、Common Reporting StandardとかBEPSという、税源が浸食されて利益の移転が起きているという話なんですが、これ、非常に重い話でして、世界で起きているAnti-globalismというものの根っこに何があるのか。Occupy Wall Streetというのが起きたときは、金融の連中は自分たちで勝手にばくちをやっておいて、穴をあけたものを公的資金の注入を受けてのうのうとしていると。そんなことは許せないというのがOccupy Wall Streetの運動の背景にあったセンチメントですけれども、最近のAnti-globalismは税金を納めていないじゃないかと。税金を取れるところから取れという議論です。確かにアメリカのアップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、時価総額が大きいものですが、これみんなプロフィットが上がる。それが、課税をできるだけ回避できるようにいろんな仕組みで、そういうオペレーションが可能だし、やっているわけですね。それはAnti-globalismがベースにある。

 我が国の場合はそういう企業がそんなに多いとは思いませんけれども、パナマ文書等もありましたけれども、このBEPSの話とCommon Reporting Standardの話は、普通の人に分かりやすく、しかし、国税庁として、これはもう極めて重要な話なので、国際社会をリードするぐらいに前に進みますと。そのためにこういうスタディー、あるいは、具体的な研究のベースをつくって、それを国際社会に提示しますというぐらいの構えが、我が国における政治的ポピュリズムを避けるためには、幸いなことに、我が国ではまだそこまでは行っていない。ポピュリズムにあらわれているとは思いませんけれども、将来は分からない。「財政の崖」まで議論すればポピュリズムは出てきます。ですから、今国際社会の中にあるDeglobalizationというものの根っこにある税金をめぐる問題については、やっぱり広く当局の立場を理解してもらうような、これも国税庁長官、本気になって1冊本を書いていただくと、迫田さんにぜひやってもらわないといけないと思うんですけど。要するに、そういう努力が要るんだと思うんですね。そういう努力が行われていることが、それぞれの司司でちゃんと将来をにらんで仕事をしているんだということが分かるような提示の仕方が、我が国においてポピュリズムを回避できる極めて重要なことだと思います。国際社会で起きていることからいっても、私は、これはもっと本気になって、何回報告したとか、そんな数値を出してもらっても一向に腹の足しにはならんというのが正直な感想です。

 

○吉野座長   

 ありがとうございます。

 では、田辺先生、よろしくお願いします。

 

○田辺委員   

 まず、このペーパーレス化というのはなかなかすばらしいことで、各省でいかにもやっていそうですけど、私が出ている会議でこういう形でペーパーレスなのは財務省が初めてでございますので、この点は非常に高く評価したいと思います。特に、今週でしたか、人事院か何かの行政官に対するアンケートというのが出ていまして、係員と係長が仕事をこなせないというので、課長とか課長補佐、それから局長と比べると不満が非常に高いというので、こういうことを積極的に進めていただいて、彼らのヒューマンリソースを他に積極的に振り向ける余地を増やしていただければと思います。

 あと2点、コメントでございます。

 1つは、7-1のところの商工中金の問題でございます。評価が「B」というのは、まあ、そうなんだろうなという気がしております。

 2点ほど質問でございますけれども、1つは、この商工中金に関しましては中小企業庁と金融庁と、あと財務省が主管ということで、共管になっていると思うのですけれども、この割振りがどういう形になっているのか。私、商工中金の問題に対する一番の責任は、こんなところで言うのも何ですけど、財務省より中小企業庁じゃないのかなとか思ったりするものですから、どういう役割分担になっていて、財務省がどういう責任を負うのかという点に関して若干ご説明いただければというのが1点目です。

 それから、商工中金絡みのことで2点目にお聞きしたいのは、この商工中金の危機対応の融資に関しまして非常に問題が出たということですけれども、ある意味これ、政策融資の中で営業という側面と政策的な目的を達するという2つのはざまに置かれているところでは、どこでも出かねない問題のような気がしております。その中で、例えば財投のほうの3-2の目標は、「S」と非常にいいものがついていますけれども、例えば財投計画の推移みたいなのを見ると、全体の額というのは、トレンドとしては減っています。それから、計画よりも実績のほうがかなり低いという額が出ているわけであります。そのときに商工中金のところでいいますと、逆に融資する側が申請に基づいて融資するというよりも、むしろ売り込んで融資を受けてもらうというような活動が非常に多くなっているのではないか。それはある意味、財投の実績が減っている中で、下部の機関というのはそれを維持しようとしてこういうことをやってしまったという側面がある。個々の問題はやはり商工中金だと思いますけれども、財投の全体の運用というか、計画というか、立て方みたいなところは、果たして全然知らないふりをしていていいのかなというところで、何かコメントがあればお伺いしたいというのが商工中金絡みの2番目の質問です。

 それから、2つ目は、国税庁の計画に関わる問題でございます。先ほど各委員からご指摘がございましたけれども、この中で1-1-6のところで、マイナンバーの利用に関しては積極的にやろうという形で打ち出されて、それは評価できます。しかし、1-2-3のICTの利用というところで、マイナンバーカードの普及に関しては、ある意味公的認証だからという形で外に出しているのですけれども、実際マイナンバーカードを取りに行く、それをもらうというのは、公務員の方々はそこに身分証が入っていますから、みんな取りに行くのだと思うのですけど、一般の方々が取りに行く最大の理由というのは、恐らくe-Taxを使うときに認証をその中に入れてもらってという理由で取りに行くのが一番多いのだろうと考えるわけです。そこのところを、マイナンバーの利用はいいのですけど、マイナンバーカードの普及に関して、恐らく国税が利用される中心になると思うのですけれども、数字が増加するという目標だけで果たしていいのか。もう少し何かアクション、それから、広報等々をやっていただくような余地はないのかというのが2番目のコメントでございます。

 以上申し上げました。

 

○吉野座長   

 どうもありがとうございます。
 それでは、私からも幾つかコメントさせていただきたいと思います。

 1つは、本文が250ページで、全体でも460から300ページにまとめられて、非常にすっきりしている報告書になったと思います。その点は高く評価させていただきたいと思います。
 それから、各政策の総合目標に関してですけれども、総合目標1のところで債務残高のGDP比率、これの安定化というのがプライマリーバランスと同時に両方入っているということは、非常に必要だと思います。もう1つ必要なことは、歳出と歳入を一体として、数式でいくと連立方程式で考えて、以下の3つの変数を見ながらいつも考える必要があるということです。1つは、ここに書いてある債務残高のGDP比率、2番目は、毎年のフローとしての財政赤字のGDP比率、3番目はGDPギャップ、あるいは経済成長率です。この3つの変数を考えて、歳出と歳入を同時方程式で、一体として考えなくてはいけないということです。ですから、先ほど角委員のコメントのように、高等教育を無償化にするのであれば歳出が増えるわけですから、そのときは歳入も増やさなくてはいけないのは当たり前で、ぜひ国民の方に提案されるときには歳出・歳入を一体としての連立方程式でいつも見て欲しいことを、うまく発信していただければと思います。

 つぎに、最近私たちがやっている研究で、高齢化が進みますと財政政策とか金融政策の効き方が悪くなるということが顕著になりました。簡単に直感的な説明をしますと、若い人たちは財政政策、金融政策で経済が活発になると、所得が増えてボーナスが増え、消費が増えるわけです。しかし、退職者の人たちは年金、社会保障に依存していますから、財政政策、金融政策の範囲の外になってしまっています。財政・金融政策の効果が退職者の方々には、ほとんど効かないことになります。また、金融を緩和することは利子が下がりますから、退職された方というのは過去に貯蓄した資金の利子収入を得ているわけですが、その利子収入が低くなるわけです。ですから、退職した方々にとっては、金融緩和とか財政政策はむしろマイナスに働いてしまって、その層が増えれば増えるほど景気への財政刺激優先策の効果が弱くなるというのが出てきました。ということは、構造改革が本当に必要なのであって、日本の今の経済の問題を解決するのは、財政金融政策ではだんだん難しくなってきていると。もし金融政策によって景気回復を促そうとすれば、マネーサプライを従来よりはもっと極端に増やなければならなくなります。

 欧米の有名な先生たちは、高齢化を自分たちが経験していませんから、その状況が分からないと思われます。金融政策がもっと強力化すべきである、あるいは財政の発動がもっと必要である、こういうふうに海外からは言われているように感じます。そういう意味では、日本の景気回復のためには、構造が改革できているかどうかにかかっていると思います。民間企業の生産性がきちんと上がっているかどうか。特にホワイトカラーの生産性の効率性が、日本の場合には低いとよく言われますので、そこの部分ができているかどうかだと思います。

 総合目標の3の国債のところで、私、ある程度勉強させていただいていますので、国債の市場から見て、先ほど田中先生が「財政の崖」がどういうとき来るだろうかという点について述べさせていただきます。私の予測ですけれども、恐らく「財政の崖」は2つ来ると思います。1つは国債保有の外国人比率がどんどん高まっていって、外国人は逃げ足が速いですから、ちょっとしたことでぱっと日本市場から逃げてしまう傾向があります。ギリシャが財政破綻で潰れてしまったのは、ギリシャ国債の3分の2程度が外国人による国債の保有であったためです。日本は90%程度が国内ですから安定しているわけです。ところが、最近、短期国債は半分以上が外国人に保有されています。国債を国内の資金では持ち切れなくなり、外国人保有が増えていったときが、1つの崖の点かなと思います。2番目は、金融政策で今国債を買って緩和しているため、国債の利払費が全然増えないわけですけれども、金融が今度引締めに行って金利が上がり出したときに、国債費の利払いの部分がものすごく増えていくと思います。今、国債は長期化されていますから少しは持てますけれども、結局は持ち切れなくて利払費がどんどん増えていって、それが財政赤字に拍車をかけるという。この2つが私は「崖」ではないかと思います。そのようにならないように早い段階で財政をうまく健全化させないといけないと思います。

 それから、総合目標の4のところですが、通貨の偽造問題が、アジアの諸国を回るとあります。日本の紙幣はすごくよくできていると思います。こういう高い品質の紙幣が海外でも、利用してもらうことができれば、偽造も防ぎ安く、非常にいいことではないか。特にアジアの途上国にとってはいいことではないかと思います。

 総合目標5のところの、質の高いインフラであります。これはちょうど田中先生と私、3週間前、中国の一帯一路の会議に出させていただきましたけれども、質の高いインフラというのは、日本が一番これを重要視しているんですけれども、先ほど田中先生から技術の低下というお話がありましたが、インフラ技術も日本は今相当低下しているそうなんです。それはやっぱり実験する市場がなくなっているためなんですね。中国がものすごくインフラ技術を高めているというわけです。これは、自分たちの国でどんどん建設事業をやっていますので。この質の高いインフラというのは本当に必要で、今やっていただきたいと思いますけれども、やっぱり日本の質の高い技術をいかに維持していくかと。そうでないと必ず早晩中国に負けて、今度は向こうが質の高いインフラということを言い出すと思います。

 それから、大学の関係で高等教育の無償化、それから、保育所の無償化のことですけれども、やっぱりこれも歳出と歳入を一体で常に国民に提示していただいて、歳出を増やすときには歳入が増えないとだめなんだという形で、常にその両方を見てということを必ずやっていただきたいと思います。高等教育の無償化はドイツかスウェーデン、ヨーロッパ大陸はみんな無償をやりまして、これが所得格差を是正するには働いていると思います。ドイツは消費税率が19%ですし、スウェーデンが24%ですから、教育費がかからない分を税金で取っているということになります。

 先ほどちょっと大学のご批判が幾つかございましたが、私は大学にずっといたものですからお答えさせていただきたいと思います。1つ企業の方にお願いしたいのは、面接試験のときに「大学の成績表を持って来るように」と、言っていただきたいですね。それを言っていただくと絶対学生は勉強します。それがないですから、よく面接の方が、冗談なんですけど、面接官が「おれも大学では勉強しなかったし」と言われることがあるようで、面接に言った学生も、大学で勉強しなくてよいのかと、思ってしまうことが多いように見えます。大学の成績表は就職試験の選別のためには、見ても見なくても結構なんですけど、学生には「成績表を見せなさい」、こういうふうに言っていただくと相当学生の勉学意欲は変わると思います。

 特任教授、短い期限付きの先生が増えてきたことは、田中先生がおっしゃるように、みんな論文の数を一生懸命増やすために小手先の論文が増えているという傾向を助長しているかもしれません。ただ、昔の悪かったところは、一部の先生は、何十年もの間論文を出さないでずっといると。そういう先生もおられたわけです。ですから、バランスがあって、しっかりとした研究をするということが、大学教授にとって必要ではないかと思います。

 最後はセーフティネットのところで、これは信用保証のところとか財投に関係しますけれども、地震とか災害のときのセーフティネットは、政府が提供せざるを得ないと思いますから、中小企業向けの信用保証制度、あるいは、政策金融機関による貸出し、あるいはセーフティネットの貸出しは、ぜひ続けていただく必要があると思います。

 私の意見は以上でございます。

 つぎに、本日は、山本先生と江川先生がご欠席ですけれども、ご意見をいただいていますので、書面を読み上げていただきたいと思います。

 

○田平政策評価室長   

 それでは、資料の3、18ページをご覧ください。山本委員のご意見の概要をご紹介いたします。

 財務省の評価につきましては、主に政策目標1の財政に関してご意見をいただいております。国及び地方の基礎的財政収支が平成32年度予測において赤字になっていることを踏まえ、引き続き黒字化に向けた努力が必要というものでございます。さらに、広報活動及び税収見積もりについてのご意見がございます。

 国税庁の計画につきましては、国民の意見、要望への的確な対応という観点からの国税モニターの構成の見直し、また、納税者からの相談への対応、酒類業の構造、経営戦略上の問題への対応に関するご意見でございます。

 続きまして、江川委員のご意見の概要をご紹介いたします。

 評価制度全般につきまして、評価の実効性、効率性を高める観点からの見直しの継続、省庁間でのベストプラクティスの共有についてのご意見でございます。財務省の政策につきましては、財政健全化が重要である旨の内容のご意見を、国税庁の政策につきましては、国際化への対応において業績目標の追加設定、さらに、働き方の多様化に対応した税制の見直しについてのご意見をいただいております。

 以上でございます。

 

○吉野座長   

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまのご意見を踏まえまして、財務省の側からコメントをいただきたいと思います。

 まず最初に、浅野政策評価審議官からお願いいたします。

 

○浅野政策評価審議官   

 まず、秋池委員から、評定が変わった、厳しくなったものだけではなくて、「A」のままのものについてもきちんと取り扱うようにということで、肝に銘じて翌年から概要説明資料のほうでもそういうふうにしたいと思います。委員ご指摘のとおり分厚い評価書の中には、確かにいろいろ評価結果をどう反映させるかということで来年の対応を書かせていただいているんですが、事前の説明のところでもきちんとそういうのを活用させていただきたいと思います。

 あと、これは私から答える部分かどうか分かりませんが、田中委員からエビデンスベースで厳しい財政の姿を国民に示していくべきというお話がございました。事柄の重要性から政策評価室だけでとても対応できるわけではなくて、財務省の広報とか、あと主計局自体がやはりいろんな広報もやっているということで、多分省の総力を挙げて行うことだと思います。政策評価室としては、こういう政策評価を通じてアカウンタビリティーという形で、その中の一助となればという思いでございます。

 あと、先ほど政策評価室長が読み上げた江川委員の意見の中に、政策評価においてマンネリになっていないかとか、さらに評価の実効性を高めよというようなご指摘がございまして、もちろんそういうことできちんとやっていきたいと思っております。その中で省庁間、他省庁のベストプラクティスみたいなものを共有しているのかという質問も江川委員からいただいておりまして、それは、現実には総務省が全省庁の政策評価を取りまとめて国会へ報告するほか、その上で総務省のほうで政策評価審議会を開いて、やはりいろんな見直し等を提言して、それがフィードバックされるという形になっております。もちろんそういう受け身だけではなく、我々自身も他省庁はどうなっているのかということで、いいものは取り入れていくという姿勢で引き続きやっていきたいと思っております。

 以上です。

 

○吉野座長   

 ありがとうございます。

 それでは、主計局、よろしいでしょうか。お願いいたします。

 

○茶谷主計局次長   

 局長は所用ですので、次長の茶谷から話をさせていただきます。

 ほとんど全ての先生から、財政は危機的な状況なのできちっと改革という話を頂戴しました。足元もそろそろ平成30年度予算がスタートいたしますが、2015年に決まりました3年間の経済・財政再生計画の3年目ということで、その目安というのが決められて、3年間で1.6兆円、社会保障だけだと1.5兆円、これが最終年度ということなので、まずこれを達成するということが一番足元の基本的に必要なことでしょうし、その過程において、やっぱり一番大きいのは社会保障ですから、これは同じく改革工程表、社会保障だけで44の大きな改革項目があって、これを一つ一つ実現していくのは正直言って相当難易度が高いかと思いますが、これを予定どおりにまずやっていくと。その上で、もともと平成30年度、2018年度に1回、2020年度PB黒字化の途中の中間検証をするということになっているものですから、来年度予算をきちっと作った時点で、進捗状況と30年度予算の姿があり、そのときの経済財政状況を見た上で、必要ならば歳入歳出について追加的な措置も講ずるとなっているものですから、改めてそこでよく全体として検証していった上で、2020年度まで8.3兆円のPBギャップ、これは相当大きなものですから、これをどうするかというのをしっかりと政府全体でよく検討していきたいと思います。

 その上で、よく新聞なんかでPB黒字化目標、後退したじゃないかと。債務残高対GDP比が入ったことによってと書かれたりしますが、我々としては、PB黒字化がまずあって、同時に債務残高対GDP比ということで、PB黒字化が目標というのはしっかりと堅持していくと。それは達成まで相当困難を伴うのは分かっておりますが、これは政府を挙げて、非常に重要な課題なのでやっていくということだと思います。その中で、これは国民の方々の理解を当然得ていかないとなかなかできない大作業ですので、先ほど分かりやすくという話もございましたが、ともすれば財政の話というのはいつも、国債は日本人ばかりが買っているからとか、資産があるからとか、あるいは、東奔西走したら債務が消えるかとか、正直言って甘い話が繰り返し繰り返し非常に出てくると。これについては、我々もいろいろ反論しているんですけれども、これを国民の方にいかに理解してもらいながらやっていくかというのは、おっしゃるとおり非常に重要なものですので、どういう形で分かりやすくPRしていくかということは、我々もその手法も含めてよく考えて、これからのPB黒字化に向けた中で考えていかなければならない課題だと思っています。

 その中でまさに出てきた話で、教育無償化などの大きな話がございますけれども、これも先程角委員がおっしゃったように、そもそも大学改革、今定員割れしている大学が5割ぐらいあるはずですので、そういうところに予算をつぎ込むだけでは単に大学の経営陣みたいな、要は企業でもゾンビ企業みたいな話になってしまいます。あるいは、授業料を無償化するとなると、これは授業料が無償となった学生個人だけに帰着する話なので、それは本当に税でやる話なのか。あるいは、高校を卒業して就職する人、大学へ入った人でその不公平はどうするのかという、多々論点があると思いますので、これもしっかりと慎重によく議論していかなければならない話だと思います。幼児教育の無償化にしろ、もともと財源を確保しながら段階的にとなっていますので、その財源をどうするかと。これは、財源を確保しなければこうなりますよという、財源を確保することがいかに重要かというのも、よく皆さんのご理解を得ながらやっていきたいと思っております。

 あと、吉野先生から質の高いインフラの話がございました。これは、国交省が非常に大きな責務を負っているかと思いますが、国交省も昔は、正直言ってあまり海外には目を向けていなかったと思うんですが、最近は港湾にしろ道路にしろ、各インフラ担当の局長も海外に出張したりして、今、海外向けのインフラ輸出ということには政府全体として相当目を向けています。ただ、まだまだ各省間の連携がとれていない、不十分な部分もあると思いますので、これは政府を挙げてどうファイナンスするかも含めて、今後よく取り組んでいきたいと思っているところでございます。

 とりあえず以上でございます。

 

○吉野座長   

 ありがとうございます。

 では、お隣の主税局、お願いします。

 

○星野主税局長   

 主税局長でございます。

 財政の関係につきましては、今、茶谷次長から縷々説明があったところでございまして、歳出歳入を一体で考えていかないといけないと思っております。問題意識は全く同様に持っておりますので、取り組んでまいりたいと思っております。

 骨太の関連で、小林委員と角委員から消費税の記述が消えたということについてご懸念がありました。ご懸念の気持ちも分かります。やや形式的な話になりますけれども、去年の骨太はちょうど総理が延期を決められた直後だったものですから、それで19年の10月に上げますという記述を一応入れたわけですけど、今回は予定どおりということで、特にそういうのはないので、それで消えているということでございます。いずれにしても財政の取組みは、繰り返しになりますけれども、きちんとやっていきたいと思っております。

 それから、秋池委員から今後の税の仕組みのICT化などに関連して、エストニアのような国だけではなくて、既に税の仕組みがあった国々でどのようにICT化していったのかも研究すべきというお話がございました。そういった、ICT化に伴って税制なり税の執行をどういうふうに行っているかという点については、まさに問題意識を持っているところでございまして、ちょうど4月末から5月上旬にかけて政府税調の委員の方々に調査に行って頂いたところで、来週の月曜日に総会を開き、その内容のご報告を頂くことになっております。エストニアも含まれておりますけれども、そのほかにも、例えばイギリス、フランスですとか、アメリカ、カナダなどの対応についていろいろと調べて頂いてまいりましたので、そういった国々の現状、苦労のようなものも踏まえながら検討を進めていきたいと思っております。

 それから、田中委員から国税庁長官にエールが送られましたBEPSの議論ですけども、これは国税庁と、主税局も一体でいろいろと検討をしております。こういった国際的な課税逃れの問題というのは、納税者の税に対する信頼感に非常に大きな不利益を及ぼしますし、きちんと対応していかないといけないと考えております。ご案内のとおりこのBEPSの議論というのは、日本はかなり主導して頑張ってこれまでもやってきました。一昨年の秋に最終報告書が出たのですけれども、OECDの租税委員会を中心に、あとG20なども含めて検討しました。当省の浅川財務官が昨年まで租税委員会の議長をしておりまして、その関係でかなり議論をリードし、また、どういう議論が行われているかというのを積極的に、対外的になるべく発信していこうというようなことをしております。後で国税庁からも説明があるかもしれませんが、国税庁での取組みも昨年の秋に公表しております。あと、例えば政府税調ですとか、このBEPS関係、国際課税の今の取組みをどうやっているかということについては、なるべく広報に努めているところでございます。なかなか話が難しゅうございますので、分かりやすくやっていくというのは非常に大事だと思っております。ご指摘も踏まえて、さらにいろいろと工夫を重ねていきたいと思っております。あと、国内法制化を順次進めている途中でございまして、そういった制度面の対応もきちんとやっていきたいと考えております。

 それから、先ほど読み上げられたご意見の中で税の関係がありますので、2点だけ簡単に触れたいと思います。

 山本委員から、必要な歳入の確保、税収の見積もりとの誤差がどのようになっているかの情報を、というようなことをご指摘されております。予算における税収は、経済指標や課税実績の幅広い要素を基に見積もりを行っておりますけれども、決算税収自体は予算の見積もり後に様々な要因でもって左右されるということですので、これがこういう理由でこう変わりましたよというのを詳細に説明することは、なかなか難しいということでございますけれども、予算における税収見積もりと決算税収の係数につきましては、参考情報として掲載させていただいておりますので、そちらをご参照いただきたいというふうに考えております。

 それから、江川先生から、働き方が大きく変わりつつある中で、税金の仕組みをできるだけそれにあわせて見直しをしていく必要があるのではないか、といったご指摘がございます。こういったご指摘は、まさに我々としても考えていくべき重要なファクターだと考えておりまして、与党の税制改正大綱ですとか政府税調のレポートの中でも、多様な働き方を踏まえて、例えば給与所得控除などの所得の種類に応じた控除と基礎控除などの人的控除、これをどういうふうに考えるかといった方向性が示されておりまして、個人所得課税改革全体の中でこういった方向性も踏まえながら検討を行っておりますので、引き続き丁寧に検討を行ってまいりたいと考えております。

 以上です。

 

○吉野座長 

 ありがとうございます。

 では、お隣の関税局、お願いします。

 

○梶川関税局長  

 関税局長でございます。

 秋池委員から税関行政の分野における標準化の話、あるいは、日本の支援のソフトパワー化の話がございましたので、そこについてご説明したいと思います。

 まず、税関行政の標準化ということですけれども、他の国内施策と違いまして、税関行政はある意味標準化が進むメカニズムがございます。1つは条約等を通じたメカニズムでありまして、例えばWTOの貿易円滑化協定というのを先般発効いたしましたけれども、これで標準的にここまではやってくれというようなことが定められておりますし、発効はしておりませんけど、TPPの中では、例えば何時間以内に通関せよとか、そういう取極めが結ばれたり、そういう仕組みがございます。

 それから、もう1つ、恐らく税関行政の特徴なのは、国際比較されやすいというところがございまして、1つの輸出者から見ますと、A国、B国、C国と輸出するわけですから、例えばA国ではこんなことをしてくれるのに、日本じゃこうしてくれないのかみたいな話が割と入りやすいという。そういう国際的な比較が事実上されやすいという傾向はあると思います。ただ、ご指摘のとおり、じゃあ、何が標準かという、標準テキストというものが必ずしもないというのはそのとおりでありまして、これは国際機関を通じた努力というのが今のやり方だと思います。1つは、WCO(世界税関機構)という機構がございまして、そこでの議論に積極的に参加していくということが1つのやり方だと思います。これは、事務総長は日本人が務めておりますけれども、そういった機構がございます。

 それから、もう1つは、IMFに技術支援ができる専門家の認定制度、ロースターという制度がありまして、今年職員を何人か受験させまして、何人か合格いたしました。国際水準での税関の技術支援ができる専門家であるという認定を受けた職員が、何名か今回出ております。そうした中で、日本のソフトパワーをどう生かしていけばいいかということですけど、もちろんこういった技術者、技術的レベルの高い者を派遣したり、あるいは外から来てもらったりしておりますけれども、特に1つご説明したいのは、NACCSの国際展開という話でございます。今の税関行政というのは、事実上電算システムと表裏一体でありまして、いかにその電算システムを使えるようにするかというのが一番大きな技術支援になるかと思いますが、日本ではNACCSというシステムで運用しております。これはアジアにNACCS型のシステムの輸出ということで展開しておりまして、輸出といいますか、支援ということで展開しております。ベトナムとミャンマーが既に稼働しておりまして、さらに要請があれば応えていきたいというふうに思っております。システムですから、システムのソフト・ハードのみならず、それを税関行政と一体になってどう運用していくかということが重要なものですから、職員をかなり積極的に派遣させていただいて、そこでの支援に資するようにというふうにやっているところでございます。

 以上です。

 

○吉野座長  

  ありがとうございます。

 では、理財局、お願いいたします。

 

○中村理財局総務課長 

 理財局の総務課長でございます。私から3点ほど。

 まず、吉野座長、それから、田中委員から財政の関係のお話がございました。吉野座長からは、国債マーケットについての言及がございましたけれども、私ども国債の発行当局として、まずマーケットと対話を通じて安定的な償還に努めていくということが何より大事かなというふうに考えております。

 それから、2点目、吉野座長からお話がございました外国の政府などの通貨の製造ということでございます。日本の通貨の製造技術、かなり評価が外国でも高いというのは吉野先生のご指摘のとおりでございまして、貨幣については既に受注した実績がございます。それから、紙幣について作った実績はございませんが、技術協力は続けてやっていくということにしたいと思っています。今後ともこうした取組みを進めていくことが肝要かと思います。

 もう1点、最後に山本委員のコメントとして、庁舎の効率的な活用の推進というのが非常に進んだのではないかというコメントがございました。私どもとして、これからも省庁横断的な入れ替え調整というのを進めていきたいと考えておりますけれども、28年度につきましては、平成30年度に日本郵政のビルが国のものとなるということがございまして、これの関係で入れ替え調整がうまく進んだということがあり、成果が大きく出たということをちょっと補足させていただきます。

 以上でございます。

 

○吉野座長

 ありがとうございます。

 では、お隣の国際局、お願いいたします。

 

○武内国際局長 

 国際局長でございます。

 質の高いインフラについてお話がございました。平成27年5月に質の高いインフラパートナーシップを発表して以来、質の高いインフラ輸出拡大に一生懸命取り組んでいるところでございますけれども、これは価格競争力がなくなってきている今、日本企業のビジネスチャンスにつながるように始めたものであります。合わせて、相手国から見ても、いわゆるライフ・サイクル・コストが安くメリットがあるものだということで、一生懸命これからも取り組んでいく価値があると思っております。

 これに関連して吉野座長から、質の高いインフラ輸出というのは良いけれども、日本の技術はそれだけ高い水準を維持できるのかという主旨のご指摘がありました。実際のところ、むしろ逆に、質の高いインフラを輸出するだけの技術力を維持するために質の高いインフラ輸出を続けるという面もあります。つまり、そういう形でビジネスチャンスを確保しない限り、日本国内では需要が徐々に落ちてきて、技術力が落ちてしまうという悪循環を防ぐためにも続ける必要があるのではないかと思っております。それでは、その質の高いインフラ輸出のためにどのようなことをしているかということですけれども、直近の例で申し上げますと、例えば円借款の場合にはハイスペック借款という新しい借款を導入しまして、質の高いインフラの推進に資すると特に認める案件については、譲許性の高い貸付けをするというような試みを、今年の5月から基本的考え方を公表して運用を開始しているところでございます。

 もう1つ、JBICとの関係でも法律を改正いたしまして、リスクマネーを供給するために特別業務勘定というものを設けました。それまでJBICは、プロジェクトごとに採算がとれるのかどうかということをチェックして収支相償性を判断していたわけでございますけれども、リスクマネーを供給するためにはということで、特別業務勘定全体で見てそれなりに採算がとれれば、個々のプロジェクトでマイナスになり得るものについても、ある程度は頑張ってやってみたらどうかという考え方のもとに設けられたものであります。他方で、この点につきましては、小林委員からご指摘いただきましたように、ガバナンスは大丈夫なのかということもありますので、JBICのリスク管理のための機構の強化などもしているところでございます。

 もう1つ、最後に付言させていただきますと、質の高いインフラというときに、構造物を輸出するというだけではなく、輸出した後のオペレーション、運営、こういったものも含めて輸出することによってビジネスチャンスの拡大を図っているところでございます。となりますと、やはり売り切りの場合に比べて一層時間軸が長くなることは確かでございますので、その点についてもよくよく見ていく必要があろうかと思っております。そういう意味からは、いわゆるエグジットを確保しておくということかと思っております。最初のうちはオペレーションをするけれども、徐々に相手国に運用を任せるように手順を踏んでやっていくということで、ビジネスチャンスを広げつつ、いつまでもそこに入らないということも考えていく必要があろうかと思っているところでございます。

 私からは以上でございます。

 

○吉野座長 

 では、総括審議官、お願いいたします。 
 

○太田総括審議官 

 総括審議官の太田でございます。政府系の金融機関と地震再保険が担当でございますので、お答え申し上げます。

 まず1点、秋池先生から地震保険について目標値の件でお話をいただきました。「B」から「S」になっていますが、胸を張れるような数字ではなくて、これは要するに目標値を変えたので「S」になっているだけと言ってしまえば、そういう数字になっています。もともと目標値、地震再保険のこの付帯率というのは、結局大きい地震があると皆さん心配されて割と契約されるのでということで、そのときには上がるんですが、それ以降そんなに上がらないということで、直近、東日本大震災があって非常に上がっていた。その勢いで目標値を設定していたのが、無理が来るのでということで、前回、その目標の見直しをさせていただいて、その結果としてこういう評定になっているということでございます。

 秋池委員からお話をいただいたのは、目標値そのものをどうするかということを考えるべきだというお話だと思いますが、それは全く先生のおっしゃっているとおりだと私も思っています。正直に言えばまだしばらくいけるので、とにかく前年よりは上回るようにという、ある意味では分かりやすい、誰でも思いつきそうな目標にしているんですが、およそ義務化しているわけではない中では、どこが本当のしかるべきところなのか、やれる目標としていいのかというのは考えなきゃいけないと、真面目にそう思っています。今回は目標を変えたばっかりだったのでと思っていますが、すぐ簡単にこうだという結論が出せると思っていませんけれども、60という数字はなかなか、これで限界だ、あるいはぎりぎりだというふうには、普通の方には理解いただける数字ではないと思っているんですが、民間保険だけというか、この世界だけではなくて、共済の世界でも結構似たような状況をつくっているのがあります。そういうことも含めて、単純な今のこの数字だけではなくて、もうちょっと広い視点を見ていろんなものを考えて、どこら辺が真に、今の仕組みのもとで強制はしない中でどこまでできるか、それを目標とすべきかというのは、ちょっとお時間をいただいてきちんと用意させていただきたいと、そういうふうに思っております。

 それから、商工中金の関係で田辺先生から2点いただきました。1点は理財局も絡む話ですから、まとめてお答え申し上げます。

 まず1点目の、この件については中小企業庁、経産省と財務省、金融庁、3省庁の共管ですけれども、一番メインなのは、というか、一番責任があるのはという感じの言い方でしたでしょうか、中小企業庁ではないかというお話をいただきました。そうなので、だから我々に責任がないなんていうことを申し上げるつもりは毛頭ありませんけれども、やはり商工中金というのは中小企業の方の支援、あるいは、金融の円滑化を図るというのが目的でございますので、どうしても主管というかメインになっているのが経産省、中小企業庁であることは事実であります。ただ、今回のこの事件の経験と反省も含めて考えますと、金融庁なり財務省がある意味で共管しているということは、中小企業者のことをメインに考える中小企業庁と、一方で、およそ金融機関として、あるいは、財務省からすると政府のお金、あるいは財投のお金が入っているという観点の政府系金融機関としてどう見るかという観点があると思いますので、ちょっと違う観点で見られると思います。そういう意味で、ある意味での主担当は確かに中小企業庁かもしれませんが、若干第三者的な目で金融庁なり、あるいは財務省なりがきちんとした役割を果たすというのが、今回の経験、反省に鑑みても非常に重要ではないかと思っています。逆に、そういう役割を我々がきちんと果たさなければいけないというふうに思っているということでございます。

 それから、2点目は、この話は、基本的には財投の計画なりがあったので、その実績を出さなきゃいかんという観点があって、そのことからこういうことを結局は招いているのではないかというお話だったかなとお聞きしました。私なりに過去のことも含めて考えますと、私が役所に入ったころ、あるいは若かったころは、財政投融資というのは当時第二の予算だというようなことを申し上げていて、正直に言えば、割と量を増やすことを是とするというか、その勢いでやっていた時代がありました。一方で、小泉内閣を中心とした時代の頃には、むしろそれを縮小することを是とするような時代もあったような気がします。そのころは、いずれにせよ量を非常に重視していたということだと思いますが、現時点は、基本的に量を増やすこと、あるいは減らすことがメインだという感覚にはなっていなくて、1つは民業補完だということが随分徹底されたと思います。一方で、例えば震災が起きたときにはきちんと対応するという意味で、量を増やすこと、減らすことがメインではなくて、そのときの必要に応じてきちんと対応すると。そういう状況になってきているというふうに思っています。そういう意味で、財投で計画をつけたので、その実績がちゃんと出るようにしてくださいということは、本当にそういうことを申し上げているつもりもないし、やっているつもりもないんですが、今回の話はその政府系金融機関側に若干昔的な雰囲気が残っていたことでこういうことになってしまったんじゃないのかなと。反省を込めて真面目にそういうふうに思っておるというところでございます。

 

○吉野座長 

 ありがとうございます。

 それでは、国税庁、お願いいたします。
 

○迫田国税庁長官 

 国税庁の迫田でございます。

 まず第1に、マイナンバー、それからICT化につきまして、秋池委員、小林委員、角委員、田辺委員からお話をいただきました。一括してお話をいたします。

 まず、事実関係で申し上げますと、今年の確定申告、マイナンバーの記載が義務付けられたわけでありますけど、記載率は83%でございました。初年度のこの数字を高いと見るかどう見るかということですけれども、これはさらに進めていく必要があるというふうに思っております。

 それから、それとの関係でe-Taxの利用件数、これも個人の所得税や消費税の申告について言いますと、前年比で4.6%の増。それから、法人税の関係での手続で言いますと、前年に比べまして5.8%の増ということで、ICT化なりマイナンバーの活用の土台というものは少しできてきているのかなというふうに思っております。

 それで、小林委員からは、ICT化について結構進んでいるのではないかというふうなご指摘をいただきましたけれども、私は、実は逆に思っておりまして、特に諸外国と比べますと、ICT化、国税の組織で決して威張れるものではないというのが私の基本的な認識です。もちろん制度の違いとか国情の違いもあるので、一概に比較は難しいと思いますけど、私はまだまだICT化はできると、国税の組織は。(小林委員「私が申し上げたのは、他の官庁と比べてという意味です。」と発言)あ、そういう意味ですか。それは素直に受けとめたいと思いますけれど、他国との比較でいうと、私はもう少しやりようがあるのかなと思っております。これは技術の進歩の度合いとか、あるいは、私どもの予算の獲得の度合いとかによって、どういうふうな形でさらにグレードアップしていくかというのは難しいところがあるわけですけれども、私どもは税務行政の将来像みたいなもの、10年後ぐらいを睨んで、どんな感じになるのかというのをちょっと今整理しておりまして、近々、対外的に公表しようと思っております。ICT化の進展というようなものは、恐らく納税者の観点からもプラスでありますし、我々の事務効率化という観点からも当然プラスになるわけでありますので、結局10年後ぐらいに我々の税務行政がどういうことになっているのかと。納税者の視点、それから我々の視点、その辺をきちっと整理して、近々外に出してみようかなというふうに思っております。これは、先ほど主税局長からお話がありましたように、税制調査会でもいろんな議論がなされるようでありますので、その前の段階で国税庁なりの現時点でのイメージというか考え方というものを出してみようかなと、そういう意味でございます。

 それから、田辺委員からマイナンバーカードの普及のお話がありましたけれども、マイナンバーカードの有用性みたいなものが税に限らず広がっていけば、当然普及はすると思いますけれども、私どももマイナンバーカードでの申告がさらに便利になるということでの普及への後押しというようなことは、当然できるのかなというふうに思っておりますので、その辺も少し検討を進めていきたいというふうに思っております。

 それから、田中委員、それから江川委員から国際課税のお話でご意見をいただいたわけであります。BEPSプロジェクトの進展とか、あるいは、去年ですけれどもパナマ文書の公開とか、いろんな動きがありまして、国際的な租税回避に対しての国民的な関心というのは非常に高まっているというふうに思っております。我々も従来から国際課税にも対応しておりましたけれども、ややもすると我々の組織は、適正・公平な課税といった場合に国内のイメージを常に持ち続けていたというのが正直なところだろうと思いますが、私は、それはもはや違うと思っています。国際課税についての我々の取組み、今どういう取組みをしているのか、今後どういう方向に向かっているのかというのを、先ほど主税局長からちょっとお話がありましたけど、昨年10月に国際戦略トータルプランという形で公表いたしております。あまり国税庁というのは外に対して物を言わない組織でありましたけれども、私は、それはあまりいいことではないと思っておりまして、執行官庁ではありますけれども、どういう姿勢で我々が行政を進めようとしているのかというのは、なるべく外に向かって情報発信すべきであるというふうにこの1年間ずっと思っておりました。その取っ掛かりが今申し上げた昨年10月の国際戦略トータルプランであり、2つ目ぐらいが、先ほどちょっと申し上げた税務行政の将来像みたいな、そんなものになるわけであります。今まで以上に国際課税については、我々は力を入れてやらなくちゃいけないと思っております。

 特に田中委員からご指摘のあったCRSは、私が見るところ、質的にも量的にも今まで我々が得ていた情報が飛躍的に変化するというふうに思っておりますので、あとは、それを我々がどういうふうに活用できるかということになると思っております。最近の税制改正でも、我々が国際課税に取り組むためのツールみたいなものは着々と整備されているように思っております。それを執行官庁たる我々がどういうふうに活用できるかというのが我々の課題だと思っておりますので、今まで以上に国際課税については力を込めてやっていきたいというふうに思っております。

 最後に、山本委員から3点ご指摘がありましたので、手短に申し上げておきますと、1点目は国税モニターの構成の見直しということでございますけれども、これは国税モニターに我々が何を求めるかということによると思っております。従来は税務行政全般に関してご意見をということでございましたけれども、今は広報広聴施策に関しての意見というのを伺うというふうなことにしておりますので、相手方としてそれに即した方にお願いしているということが1点です。

 2点目は、閉庁日における申告相談ということでございます。確定申告の間、2月中2日だけ日曜日、税務署は開いておりまして、特にサラリーマンの方なんかの申告はその日でも結構ですよというふうに申し上げております。今年は2月19日と2月26日に228の税務署でやっておりました。全国で524署ありますので、44%ぐらいの税務署でやっていると。これは、ご利用できますよということはあらかじめ広報等をしているということでございます。

 山本委員からの3点目は、酒類業に関する補助金のお話でございます。これは、日本酒造組合中央会の事業を支援するための補助金ということでございます。いろいろ補助金を受けて、日本酒造組合中央会がいろんな事業をしておられるということでございます。参考指標としてどうするかということについては、国税庁自身の取組みの参考となるかどうかというふうなことから判断していきたいというふうに思っているわけであります。

 以上でございます。

 

○吉野座長 

 ありがとうございます。

 1つ、伊藤秘書課長から、前回3月に開催されました政策評価懇談会で、幸田委員から財務省の働き方改革についてご質問がありましたので、付け加えていただきたいと思います。伊藤秘書課長、お願いいたします。

 

○伊藤秘書課長 

  ありがとうございます。資料の一番最後をご覧いただければと思います。前回、幸田委員、3月7日の会のときにご指摘いただいた後で、3月28日に政府全体として働き方改革実行計画ということで決定されております。財務省も政府の一員として取り組んでいくわけですけれども、政府全体でやっているから財務省もやりますということではなくて、財務省自身の問題意識としてやらなければならないということで議論を進めております。

 資料の一番上の箱のところに3行書いてございます。ここが肝でございますけれども、今後、財務省としてのミッションを果たし続けていくために、男女問わず、年齢も問わず、育児・介護等の制約を抱えているか否かにかかわらず活躍できるよう、全ての職員が定時退庁を前提とした業務運営とし、勤務時間内に業務を濃縮させるワークスタイルに転換する。このために職員意識の醸成、業務効率化、時間管理に取り組むということでございまして、今まで無定量に働くという前提で仕事をしてきた、プランをしてきたということを、定時退庁を前提に物を考えるということに転換できないかという取組みをしておりまして、先週の6月5日から一応今までの議論を踏まえて全省で試行を開始しているところでございます。

 下の箱の中、簡単にご説明させていただきますけれども、まずは意識の問題がとても大事だということで、事務次官からメッセージを出す。それから、各局で膝詰め議論をするというようなことをしておりますし、これからもしていかなければならないということでございます。それから、限られた時間の中で同じパフォーマンスをするということでございますので、真ん中のところですが、タイムマネジメントが大事だろうと。無駄なことをやっていられないということなので、もちろん外的な問題がございますけれども、中でもまだまだできるのではないかという問題意識でございます。右側、3番目、時間管理でございますけれども、これはチェックして改善していかないといけないので、定時退庁が原則だということですから、定時、18時15分の者が多いんですけれども、19時以降に退庁するという場合には、きちんと自分の上司に報告をして了解をもらうということを、他でももう既に、民間企業なんかは特にやっておられるところはたくさんございますけれども、この6月5日から全省庁で取組みを始めているということでございます。

 以上でございます。

 

○吉野座長 

 ありがとうございました。

 それでは、最後に佐藤事務次官からまとめの発言をお願いいたします。

○佐藤事務次官
 
今日は、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。闊達なご意見、ご指摘をいただきましてありがとうございました。

 評価をいただいている部分もございましたが、厳しいご注文もいただきました。なかでも、政策評価の在り方そのものに及ぶご指摘もございました。政策評価というのは、政策目標を設定してそれをどこまで達成したかという視点から評価するというものですので、どうしても、政策目標の立て方のそもそも論には及びにくい傾向がありますが、ご指摘は、それでいいのかということだと思います。至極もっともなご指摘であり、言い換えれば、政策目標の前提となる政策論そのものをしっかり議論すべしということかと思われます。今後とも政策論のあり方ということを財務省全体としてよく考えていきたいというふうに思ったところです。

 本日のご議論の中で、各委員共通してご指摘があったのは財政の現状についてであり、それだけご心配いただいているということかと思います。この点についてコメントさせていただきます。我が国経済社会の将来を展望すると、抱えているリスクとして、人口減少というリスクとともに、財政の潜在的なリスクを挙げることができると思います。特に長期にわたって超低金利状況が続いているため、累積する財政赤字の潜在的リスクが膨らんでいるにもかかわらずこれを感じにくくなっており、いざというときにそのリスクが爆発するのではないかという懸念をご指摘いただいたのだと思います。今後の財政運営においては、こうした危機意識を持ちながら、財政健全化に向けてどうしていくべきかが我々として為すべき政策論の一番のポイントだと思います。ただこれについては、抽象的な議論では意味がないので、我々としては、「経済・財政再生計画」というものを構築する中で、それをどこまで具体的に深度あるものとしていくかということが大切になってくると思っております。

 先ほど主計局からご説明申し上げましたように、現在は、「経済・財政再生計画」という形のものが2020年度までの5か年計画として既に策定されており、今まさに進行途上にあります。この年末までの2018年度予算編成は、計画の3年目に当たる年であり、まずは、「計画」に沿って歳出の「目安」をしっかりとやり遂げる必要がございます。そのうえで、2018年度にこの「計画」の中間レビューが予定されており、この時に、いかなる形でレビューを行うかが、財政健全化に向けた今後の取組みの方向性を決める重要なターニング・ポイントになるものと思っております。

 その際どのような議論がなされるかは今後の問題であり、現時点では全くの白紙ですが、若干個人的な感想をも含めて申し上げると、大切なことは、世にいう「シムズ理論」と称するようなものが蔓延していますが、これには与するべきではない、他方で、財政健全化といっても、やはり経済を殺してはいけないということも重要です。これらは財政の量的側面の話ですが、質的側面も重要で、歳入歳出の構造的改革を、特に世代間の受益と負担の構造をどういうふうに再調整していくかという観点から取り組んでいく。これこそが制度の持続可能性というものを確保する道であり、ひいては国民の将来不安を取り除いて、安定的な個人消費の拡大につながっていく、こういうことかと思います。中間レビューにおける作業というのは、今指摘した3つの観点からなる連立方程式を解いて、これらを調和させるようなスイートスポットを見出していく作業に他ならないと私は思っております。

 そして、その際重要なことは、やはり財政をコントロールする意思を市場や国民にしっかりと示していくこと、さらに、内容的にクレディブルなものにしていくということだと思います。これに関連して、田中委員がおっしゃったようにエビデンス・ベースという視点、言い換えればファクトに基づいたしっかりした議論を行っていくべきということかと思いますが、この点はしっかりと押さえていくべきだと思います。また、「税と社会保障の一体改革」という大きなパッケージはきちんと完結させる必要があること、さらには、吉野座長のご指摘のように、歳入歳出をパッケージで考えるという視点、いわばペイ・アズ・ユー・ゴーの視点も重要であることなど、こうした視点を一体としてどう位置付けていくかということが検討されることになるものと思います。いずれにしましても、2018年度の中間レビューは、極めて重要な作業であり、我々としても心して取り組まなければならないと考えております。

 現時点では、このように抽象的なお答えしかできませんけれども、まずは、2018年度予算編成をしっかりと仕上げていくことが肝心です。今後とも、さまざまな機会に、多角的なご指摘、ご忠告、ご指導を賜りますようよろしくお願いいたします。以上です。本日はありがとうございました。

○吉野座長
 
佐藤事務次官、どうもありがとうございました。

 今日は皆様から大変貴重なご意見をいただきましたけれども、このご意見を踏まえて今後の政策評価のあり方、それから、施策の見直しなど、ぜひ活用していただきたいというふうに思います。

 それから、最後ですけれども、今日の議事内容につきましては、各委員にご確認の上、財務省のホームページに公表する予定でございます。

 次回の懇談会ですが、通例ですと国税庁の実績評価について10月頃の開催予定でございますけれども、詳しいことにつきましては、また後日改めて事務局から連絡させていただきたいと思います。

 それでは、ちょっと時間をオーバーしましたけれども、第60回の政策評価懇談会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

 

──了──