現在位置 : トップページ > 財務省について > 審議会・研究会等 > 地震保険制度に関するプロジェクトチーム > 議事要旨等 > 議事要旨 > 地震保険制度に関するプロジェクトチーム 第10回(平成24年11月9日)議事要旨

地震保険制度に関するプロジェクトチーム 第10回(平成24年11月9日)議事要旨

1.日時 平成24年11月9日(金)14:00〜16:00

2.場所 財務省第一会議室(本庁舎4階)

3.出席者

(メンバー)
佐藤主光(座長)、市川眞一、大谷孝一、清水香、丹野美絵子、畠中誠二郎、堀田一吉

(敬称略)

(オブザーバー)
日本損害保険協会、外国損害保険協会、日本地震再保険(株)、損害保険料率算出機構、金融庁

(事務局)
佐藤総括審議官、岡本参事官、栗原信用機構課長

4.議事内容

  • ○ 報告書のとりまとめに向けた討議。

5.議論経過

  • ○ メンバー等からの主な意見等は以下のとおり。

    【保険料率】

    • 保険料率が改定される場合、引き上げ幅の上限が30%となるよう、激変緩和措置がとられている。仮に等地区分を統合したとしても、必ずしも統合後の等地数になるわけではなく、激変緩和措置の上限にひっかかり、等地区分の中にさらに区分ができる可能性がある。(座長)
    • 地盤が緩い、津波の危険性が高いといった危ない立地については保険料率を高くし、逆に明らかに安全なところは保険料率を低くするといった、等地とは別の地域特性等に応じてメリハリをつけた保険料率にしたほうがよいという意見がある。これは、委員の間で意見が割れている。(座長)
    • 等地区分について、連帯の観点からは保険料率の平準化の意義は認められるが、ただ平準化させるのではなくて、耐震化にかかる割引もセットにして議論すべき。
    • 科学にも限界があり、ローカルな地盤特性を評価して保険料率に差をつけるのは難しい。等地による料率格差は平準化した上で、建物の構造や、個人の耐震化の努力によって差がつくようにメリハリをつけるという2段構えで保険料率を考えることが適当。(座長)
    • 論点を3つに分けて議論する必要がある。1つ目は保険料率の平準化。これまでのプロジェクトチーム(以下「PT」)で考えていた手法は等地区分の統合だったが、この方法以外にも、震度6弱以下の地震は日本全国どこでも起こり得るという観点から地震リスクの一定割合は全国一律に負担することとしているところ、この全国一律に負担する割合を引き上げることでも同じ目的は達成できる。また、保険料率の引上げ幅を30%に止める激変緩和措置もあるので、却って保険料率体系を複雑にしかねない惧れもあり、南海トラフの再評価の結果が見通せない中で、等地区分数に手をつけていいのかどうかは考えどころ。(座長)
    • 2つ目はローカルな地盤特性。具体的には、液状化や津波などの危険度に応じて、等地区分とは別に保険料率に差をつけていいのではないかということ。これについては弱者排除という批判もあり、PTでも意見が分かれている。(座長)
    • 3つ目は建物の耐震構造に応じた割引。よりメリハリのある保険料率の算定があってもよいのではないかということ。(座長)
    • 純保険料率の30%を全国均一で負担しているというのは、震度6弱以下という地震は全国どこでも起こり得るという理屈があり、仮にその割合を引上げるのであれば、その理屈付けもあわせて議論する必要がある。
    • 全国どこでも起こり得る地震を現在の震度6弱から震度6強に変更し、全国一律に負担する割合を計算することは可能だが、震度6強が全国どこでも起こり得ると言えるのか検討が必要。
    • 保険料率に耐震性の効果をさらに取り入れるべきだとは思うが、PTにおいて具体的な議論をしていない。損害保険料率算出機構(以下「料率機構」)には、耐震割引のパターンによって保険料率がどのように変わるかなど、具体的な案はあるのか。
    • これまで具体的な数字を出しているわけではなく、新たな割引制度を提案しているわけでもないが、現行の割引制度の中で、割引率をより拡充できるものはその方向で検討している。
    • 地震保険料の割引制度を見直すにしろ拡充するにしろ、これは基準料率の審査の対象となり、法律の縛りがある。法律では、合理的かつ妥当なものか、不当に差別的ではないかという3点から審査することが求められている。また、合理的かつ妥当かどうかについては、さらに細かく規定されており、データに客観性があって精度が高いものかどうか、保険数理に基づく科学的方法によって算出されているかどうかということが審査の対象になる。したがって、割引制度を見直すのであれば、当局としては、何かしらのデータがあって、それが数理に基づいて合理的に説明できるかどうかということが大前提となり、その上で、国の政策や環境の変化等の周辺事情も勘案して総合的に審査することになる。(金融庁)
    • 割引率の合理性を説明できるよう、また、保険財政の悪化を招かぬよう、耐震性と損害の因果関係を分析しておく必要があり、この分析が耐震割引をどの程度拡充するのかの根拠となる。また、地震の揺れの強さと建物の全壊率の関係を見ると、耐震性の低い建物と高い建物の危険率の差は、現行地震保険料の割引率である30%で収まらないという専門家の知見もあり、実際の耐震性と損害の因果関係を明らかにした上で、割引率を決めていく必要がある。(座長)
    • 報告書においては、喫緊の課題、速やかに対応すべき課題、制度の根本に係るので引き続き議論すべき課題の3つに整理したいと思う。喫緊の課題は、強靭性に係る論点であり、概ね意見が一致しているかと思う。保険料率は速やかに対応すべき課題、商品性も保険料率にも関わることになるので同様の扱いということになる。(座長)
    • 報告書においては、意見の集約ができている論点はそれを明確に提示し、意見が分かれている論点については、どちらかの意見を否定するということはしないで、いくつかの前提条件が満たされれば実行可能なのではないかといった形で、引き続き検討すべき課題として提示していくことになるかと思う。(座長)
    • 等地区分の数をどうするかについては、南海トラフの再評価を踏まえずに結論を出すのは難しいと思う。したがって、報告書では南海トラフ等の新しい震源モデルを踏まえて、等地区分のあり方について見直していく必要がある、という形になると思われる。保険料率の平準化を具体的にどのように行うのかとなると、新たな理屈を考える必要はあるが、現行は震度6弱以下の地震は全国どこでも起こりうるとの想定を変更し、全国均等負担の部分を引上げるといった形での対応になるかと思う。これにより、等地区分に手をつけることなく保険料率を平準化させていく方向になるかと考える。(座長)
    • 委員の間で完全に意見が分かれているのは、ローカルな地盤等の特性に応じた保険料率の格差を設けるかどうか。これについては、技術的に可能かどうかという問題や契約者の納得が得られるのかという問題がある。(座長)
    • 等地区分のほかに、立地による保険料率の格差をつけるとなると、保険料率体系が複雑になるのではないか。
    • 金融庁や料率機構が検討することになると思う。ここで議論している津波や立地のリスクに応じた割増、割引であれば、保険料率のマトリックスは現行と同じように縦軸は等地、横軸は構造となり、その二元のマトリックスにおいて、津波や立地のリスクに応じて何%掛けするとか、何%割引するとかといった形で導入するということになるかと思う。(事務局)
    • 要するに、等地は基本料金であって、それに対して立地や建物の耐震性で割引、割増があるという理解でよいか。
    • そのような理解になるかと思う。もともとのベースとなる保険料率に耐震性や立地のリスクについて掛け算することになる。(事務局)
    • 割引、割増には、それなりに説明がつく合理性が求められることになる。
    • 審査する金融庁にとっては大変な作業になると思うが、制度の大枠として、例えば、全壊率と耐震化の関係は30%では収まらないという科学的知見が実証的なデータとしてあるのであれば、それは1つの材料になると思う。(事務局)
    • 立地割引・割増については、そもそもどこで境界の線引きをするのかというところで相当な不公平性が生じるおそれがあるため、審査において不当に差別的でないという点をクリアするのは難しく、また、合理的なデータがあるかということについても疑問がある。そのため、立地に応じた割増、割引は非常に難しいのではないかと思う。また、保険料率の体系が相当複雑なものになるので、保険契約者保護の観点からも、審査する側としては、相当慎重に考えたほうがよいのではないかと考える。(金融庁)
    • 保険料率は全体として平準化するとしても、南海トラフの見直し、立地、液状化など、様々な要因が入りすぎると、保険料を支払う消費者側としては非常に納得感が得にくい。単に平準化するなら許容の範囲かもしれないが、ローカルな地盤特性の部分も加味するとなると、隣の家と保険料が違うというときにどのように理解するのか、かなり難しいと思う。
    • 地盤の特性が描かれた地図で東京都を見ると、沿岸部と多摩地方で立地のリスクが全然違うことが分かる。そうすると、一般の人は、危険な地域とそうでない地域とでなぜ保険料率が一緒なのかという疑問を抱くと思う。境界線を特定するのは困難だが、湾岸部と多摩の山奥とでは立地のリスクが全然違うというのは技術的には立証でき、一つの説得材料になると思う。
    • 保険料率に差をつけると、政策的に好ましくないことがあるのか。
    • 政策的に好ましくないということではなくて、納得感、公平感や合意に係る問題と理解したほうがよい。(座長)
    • 立地に係る論点については、委員の間で意見が分かれているが、反対も賛成も真っ当な意見なので、報告書においては、どちらの意見を採用するというよりは、科学的な知見がきちんとあるということと、保険加入者に対して説明が尽くされるという、いくつかの条件のもとにおいて検討するべきオプションとして残すことにしたいと思う。(座長)
    • なぜ保険料率が同じなのか、なぜ保険料率が違うのかということを地盤特性で説明できるのか、そこに合理性が認められるかが重要。
    • 耐震割引によって保険料が割引かれる場合、耐震化によって損害率が下がれば、必ずしも保険料が上がるということにはならないのではないか。
    • 耐震割引がない場合の基本保険料が割引のない家にとって妥当な数字であり、割引を導入したから、その分耐震化してない人の保険料率が上げるということではない。耐震化によってリスク量が軽減されている部分があり、その軽減されたリスク量の部分を、耐震性のあるところに還元するというのが基本的な考え方。(座長)
    • 耐震化の論点は、割引によって耐震化インセンティブを持たせるということがある種の仮説になっているが、この仮説をネガティブに考え、それほど大きな効果はないのではないかという意見もある。ただ、料率体系の中に耐震化インセンティブを持たせたいという意図があるので、割引により、耐震化を促進するという意図があることを国民に理解してもらいたい。
    • 耐震割引はそのようなメッセージ性を持たせることだが重要だと思う。(座長)
    • 割引は何のための割引かというと、耐震化を促す、あるいは耐震化してくれた住宅に対して利益を還元するというところにあると思う。したがって、必ずしも耐震化の努力に基づかない形での割引はどうかという話は出てくる。建築年割引はたまたま新しく建設した建物に適用するだけであり、積極的な意味で耐震化に資するものではない。メリハリを割引制度の中でもつけていく必要があるとすると、この建築年割引をどうするのか考える必要がある。保険料率の体系をあまり複雑にしないためにも、耐震化したところで大きく割引くほうが耐震化インセンティブは大きいと思う。(座長)
    • 建築年割引が導入されたのは、阪神・淡路大震災の被害状況の調査をしたところ、改正建築基準法に基づいて建築された住宅はそれ以前に建設された住宅に比べて耐震性が高いことが証明されたことによる。仮にこれを廃止するとなると、改正建築基準法に基づいて建築された住宅は耐震性がないことを証明しなければならないので、それは難しいのではないかと考える。(金融庁)
    • 耐震割引にメリハリをつけるというのは、建築年割引や耐震等級割引などのバランスを考えなければならないということ。建築年割引は10%の割引率だが、それを廃止するのではなく、割引率の引き下げという選択肢もあると思う。(座長)
    • 割引適用に必要な住宅性能評価書などの取得に費用や手間がかかるので割引があまり活用されていないという問題がある。一般論として、この手続を簡素化したほうがいいのではないかという議論はPTで何度も出ている。この点については、損保業界から提案があるとのことなのでお願いしたい。(座長)
    • 耐震等級割引や免震構造割引については、15万円ほどかけて住宅性能評価書を取得しなければならず、それが契約者の負担となり、現実にはこれらの割引制度が普及できていない。一方で、本当に耐震性が高い建物かどうかを証明されなければ割引の適用は困難である。そこで、住宅性能評価書と同一の基準に基づき耐震性を証明している評価書以外の書類を準用すること、例えば、住宅金融支援機構は高い耐震性を確認した建物についてはフラット35Sという融資をしており、その際に耐震性を確認した書類を準用するということなど、合理的な範囲で、契約者にとって使いやすい制度となるよう、損保業界としてしっかり考えていきたい。
    • 新しい基準が適用されたとして、例えば、フラット35Sの融資によって過去に建てた建物も遡って対象になるということか。
    • それは制度の作り方次第だと思うが、その時点で建物を調べ、基準に合致していれば、割引を適用するという考え方もあると思う。
  • 【損害区分】

    • 3区分を維持した上で、一部損と半損の格差を縮小する方法を考えられないかという提案があったので検討を行った。
    • 1つ目は、主要構造部の損壊割合が3%から30%までを一部損とし、かつ、保険金支払い割合を10%に引上げるというもの。この場合、現行では半損となる主要構造部の損害割合20%から30%までが一部損となるが、10倍もある一部損と半損の格差は5倍に縮小される。保険料負担は現行より3%増加する。(提案1)
    • 2つ目は、主要構造部の損害割合3%から5%の部分を支払いの対象外とし、主要構造部の損害割合が5%から30%までを一部損とし、かつ、保険金支払い割合を10%に引上げるというもの。これも一部損と半損の格差が5倍になり、保険料は現行どおり、リスク量は約3%減少する。(提案2)
    • 3つ目は、現行の半損部分を2つに分割して、保険金支払い割合を3割支払う部分と6割支払う部分に分けるというもの。この場合、保険金の格差は縮小することができ、保険料、リスク量が据置となる。仮に6割支払う部分を5割に据え置いた場合は、保険料が約6%、リスク量は約5%下がることになる。震源モデルの見直しにより、今後、保険料が引上げることが見込まれるとなると、このような形でその引き上げ分を吸収する効果も期待できる。当然、4区分となるので査定ロードは増えるが、東日本大震災の経験からすると、半損部分の件数は多くないので、許容範囲であると考える。(提案3)
    • 損害区分をあまり細分化するのは好ましくないというのが多くの委員の意見。その理由は、1つ目に損害区分の細分化がリスク量の増加となり、保険料の引き上げになるのではないかということ。2つ目に査定ロードに関わる問題ではあるが、損害査定の現場が混乱するのではないかということ。3つ目に区分を増やすことが必ずしも不満の解消にはつながらないのではないかということ。(座長)
    • 提案2では、リスク量が減少するにも関わらず、保険料負担は現行通りとなっているが、リスク量が減少すれば保険料負担も減少するのではないのか。
    • リスク量は関東大震災を想定した総支払限度額を指し、保険料負担は全ての保険金支払いについてシミュレーションした結果、保険料がどの程度増減するかを示している。
    • 提案2では、損壊割合3%から5%を支払い対象外としているが、今回の東日本大震災の場合、3%から5%の間に入っている全体の件数というのはどれぐらいあるのか。
    • 推計値ではあるが、東日本大震災では、全体の約80%が一部損となり、全体の約30%が主要構造部の損害割合3%から6%の間に入っている。
    • 傾向的に言って、損害割合が低いものほど件数が多いということ。(事務局)
    • 提案2では、大ざっぱに言うと、これまで一部損となっていた損害のうち3分の1ぐらいの件数が補償されなくなる可能性はある。
    • 提案1では、今までは半損認定されていたのだけれども、今度は一部損になってしまう契約者がいると思うが、それにもかかわらず、保険料は上がるということが非常にわかりにくい。
    • 一部損の部分の支払いを10%に引き上げたことが要因。
    • 提案1でいくと、実際の損害よりも補償のほうがはるかに低く抑え気味になっているということになる。にもかかわらず、3%ではあるが保険料が上がるのが気になる。
    • 3区分を維持し、かつ、保険料もほとんど一緒でとやるためには、どこかを下げてどこかで上げることになる。提案1では一部損の支払割合が10%になっているが、これまでのPTの議論では、一部損の被災者よりも、もっと甚大な被害の人にしっかり補償しなければいけないとの意見もあった。実際に制度を仕組もうとすると、どこかでこのような無理が生じることをご理解いただきたい。
    • 一部損と半損の差が10倍であるのを見直そうというときに、一部損を手厚くして見直すというのが提案1と提案2。リスク中立的に仕組めば、今まで半損だった人たちが一部損になったり、一部損をもらっていた人が支払対象外になったりということになるので、どこかで不利益が生じることとなる。提案3だと何とかなりそうなのか。(座長)
    • これは非常に単純な議論で、刻みを細かくすれば不公平は小さくなるかわりに作業量がふえるというトレードオフの関係。査定ロードはあくまで東日本大震災を基準に算出しているため、例えば、これが3連動地震や首都直下になったときには、査定ロードは大きくなるであろうし、要はそこに対応できるのかどうかというところが最大のポイントなのではないかと思う。
    • 査定ロードは、あくまでも一部損が非常に多かった東日本大震災と同じという仮定。そのため、首都直下で件数規模が3倍になれば、その分比例してロードが増えるのではなく、それ以上の増加となる。現在、鑑定人の実働数が約1,000人いるが、仮の計算では、首都直下で件数規模が2.5倍から3.5倍になったときに全体で5,000人から1.75万人の鑑定人の増員が必要になってしまう。
    • 例えば今回の東日本大震災のように飛行機やヘリコプターを飛ばして損害を査定するのは、首都直下ではあり得ない。ビルの谷間に小さい家がたくさんあるようなところでこれができるのかという問題があるが、損保業界では、いずれの案であれば何とかいくだろうというのはあるのか。提案3でも、査定ロードの点で何とかなると考えているのか。
    • あくまでも東日本大震災であればという仮定であり、全く規模が変わってしまえば、難しいかもしれない。
    • この提案1と提案2の最大の難点は、建物が半分近く壊れているのに一部損というところに納得が得られるかどうか。現行の主要構造部の30%が壊れても保険金を半分もらえるほうが、まだ消費者にとって納得感があるのではないか。
    • いずれの見直し案も必ずしも消費者側にとってメリットばかりではない以上、現行制度のままいくほうが良いのではないか。
    • 巨大地震と中小規模地震を区別するという考え方もありうる。イメージだが、中越地震くらいの地震であれば、損害区分についてある程度きめ細かく対応するということは、人員的にも可能だが、首都直下地震などでは、提案3はかなり難しいということかと思う。(座長)
    • 本来は実損での保険金支払いが原則のところを、迅速性に重きを置いて3分割にしている。これは、妥協案として、適正性や公平性を犠牲にし、支払の迅速性を優先させたことによるものであり、必ずしもこれが最善なものではない。例えばJA共済では、建物は基本的に実損害額の2分の1を補償しているため、査定に時間がかかっており、そういう違いがある。どちらがいいというよりも、それがこの地震保険制度の趣旨だというくらいに考えればよく、3区分を4区分にしても、実損填補ではない以上、どちらでも良いという考え方もある。
    • 現行の制度維持に賛成。確実に早く保険金が支払わなければならない中、現場からネガティブな意見も出ている。一旦増やせば、将来減らすことができるかというとそれは難しく、相当慎重に臨むべき。
    • この提案3というのは形としては非常によくできている。ただ、今回の東日本大震災のときに、地震保険は非常に迅速で払われる一方、義援金が全く払われず政府に対する不信感が高まったことからすると、決して今の形が最善でないとしても、地震保険の趣旨からすれば現行制度でやむを得ない。
    • 一部損と半損で、僅か1%の損壊割合の差で保険金に10倍も差が生じることは保険契約者にとっては不満の大きな原因である。例えば建物全体の損害の約5%から40%を一部損とし、保険金支払い割合を倍の10%にするという改訂は可能か。
    • 計算上は可能。ただし、その場合であっても損害に対して支払いが少ないというところがあって、今の提案でもその部分の格差というのは相当出てくるかと思う。
    • 半損認定が一部損認定になってしまうのは、建物全体の損壊割合30%〜40%の10%分。提案1では、建物全体の損害割合30%〜50%の20%分が、半損認定から一部損認定となるのであり、これに比べれば格差は縮小される。
    • 考えられるのは、幾つかのオプションとして一部損のところを少し手厚くし、リスク量を変えないとすると、それは半損のエリアを小さくするということに当たるので、果たしてこれが妥当かどうか。それから、提案3のように半損を2つに分けるということであれば、一部損のところには手をつけずに済み、今の10倍の格差が縮小するが、査定の事務量のところで果たして迅速性が担保できるかどうかという点が課題としては残る。(座長)
    • 消費者は、迅速な支払いや、確実に払ってもらえるのかを心配しており、それには適切に応える必要。無理に現行損害区分を見直す必要はないのではないか。
    • 一部損と半損でもらえる保険金に10倍の差があるということに対する不満もかなりあり、対処する必要があるのではないか。
    • 議論を整理すると、1損害区分をきめ細かくする必要はない一方で、できるだけ格差を縮めるべきであるということ。2リスク量には中立でなければならないということ。3査定の迅速性を損なってはいけないということ。4区分数、境界の増加がかえって不満を増幅させるようなことがあってはならないということ。5小損害については家計でやりくりできる範囲内の損害であってそれほど手厚い補償をする必要はないのではないかということ。この5本の連立方程式を解いていかなければならない。5からすると提案1と提案2は外れることになる。もらえる保険金の格差を縮めるためにはやはり区分数の刻みはふやす必要があるとなると、34の問題が出てくるが、損保業界の説明によれば、もともと件数がそれほど多くない半損に刻みを入れるのであれば、査定の迅速性に与える影響もさほど大きくなく、境界が増えることによる不満もそれほど増えないということだと思う。ただ、首都直下地震が起きたときに対応できないのではないかということは別途の問題としてあり、これについては中小規模地震と、首都直下地震や南海トラフの巨大地震のような最悪の事態を分けて制度設計を考える必要がある。必ずしも巨大地震と中小規模地震を一義的に線引きするのではなくて、どうしても対応できない事態に備えて何かのオプションを用意することについてもご議論いただきたい。(事務局)
    • 4区分にすることについて。境界周辺にいる人というのは必ず存在しており、区分をふやせば境界周辺の人も増えるため、クレームが逆にふえるのではないか。4区分にすれば、全体として実損払いに近づくように見えるが、被災者は自分の立ち位置で判断するため、慎重であるべき。
    • 現行区分は最善ではないが、迅速性、実効性を担保する上ではセカンドベスト的な位置づけになっている。細かくすればするほどどこかで不満が出るのは間違いないため、見直しするにしてもハードルは高いというのが印象。(座長)
  • 【強靭性】

    (民間準備金枯渇後の対応)

    • 民間準備金枯渇後の対応としては、PTとしてはレイヤーの自動改訂を1つの案として考えているが、法技術的に難しいということであれば、民間の準備金の水準に対して民間の責任額をある程度抑えてバッファーを持たせておいて、補正まで間のつなぎにするという案もある。これは決して準備金の枠の中に民間の責任がとどまるという意味ではないが、その負担を可能な限り抑える、過度な負担は避けるということが強靱性のかぎとなる。(座長)
    • 日本地震再保険株式会社(以下「地再社」)固有の問題として、政府支援の問題と債務超過の問題がある。当然これは短期的にどうにかなる問題ではないが、民間準備金がない状態で地震リスクを負担することになった場合、元受者の他の保険への影響を避けるために、苦肉の策として連続地震を地再社に片寄せすることになっている。そのため、地再社は巨大連続地震が起きると債務超過になる。この点を長期的課題という観点から引き続き検討をお願いしたい。

    (総支払限度額)

    • 総支払限度額について、現行が関東大震災を想定していて、加入者への約束は関東大震災級の地震でも耐えられるというふうに決めているため、特に変更する強い理由はないように思う。むしろ、連続地震にどう対応するか、まさに民間の過度な債務超過を避ける対処措置のほうが優先ではないかと思う。(座長)

    (「1回の地震等」の定義)

    • 1回の地震の定義が72時間になっているが、これには賛否両論あり、72時間を延ばすと契約者に不利になるのではないかという意見もあった。また、民間準備金枯渇後の対応としての方策を導入することで対応可能なのではないか。(座長)
    • 実務においては、例えば72時間が1週間や1カ月になったとしても、実際の保険金支払いのシステムにおいては最後の1カ月間を待ってから支払うということではなく、とりあえず一番大きな本震が起きたときをもとにお支払いをして、その後連続地震が起きた場合は、足りない場合は追加で支払うというやり方をとる。

    (加入制限)

    • 加入制限について、これも消費者にとっては制度後退と受け取られる上に、加入の機会を奪うということにつながるのではないかという指摘もある。大規模地震対策特別措置法という東海地震を念頭に置いた制度があり、これが発動されたときは加入制限がかかり、これが南海トラフに援用されるかどうかで今、議論があるようだが、これはこのPTだけで議論できることでもないため、中長期的な観点からの問題提起でとどめようと思う。(座長)
    • 長期的課題として、総支払限度額も含めたレイヤーの全体の枠組みについて、民と官の役割、責任の分担のところを見直すということまで将来視野に入れるのであれば、3rdレイヤーに係る民間保険責任のあり方や、3rdレイヤーに係る民間保険責任の免責とし、総支払限度額も無制限とすることも考えられると思う。
    • 強靱性について結論を得ることは、このPTの最大の成果だと思う。「(2)政府による資金支援」と「(3)民間準備金枯渇時の民間保険責任のあり方」に対してある程度の方向性は出せた。これは強靱性や近々の課題に対応するべき成果。地再社の債務超過など残された問題はあるが、それは長期的な課題として引き続き検討していく必要がある。(座長)
  • 【商品性】

    (対象物件)

    • 車両とか中小企業物件について、それは地震保険の対象としてやるべきものではなく、別途制度を設ける必要があり、実際に民間商品等もある。地震保険はあくまで被災者の生活の安定に寄与するものであるため、実際に枠組みも基本的には住宅・家財ということになっており、これをあえて対象拡大する必要はないだろうというのが、このPTでの大体の意見だったと思う。(座長)

    (保険金限度額)

    • 保険金の限度額は今5,000万円だが、これを付保割合の引き上げとセットで引き下げるという話があった。ただ、実際に限度額をかけている人があまりいないということで、リスク量削減効果は小さく、特に措置しないということでいいかと思う。(座長)

    (付保割合)

    • 付保割合を一方的に上げることについて賛成意見はないと思うが、ポイントになってくるのは、「付保割合100%、全損のみ補償」というオプションの導入について。これについては意見が分かれており、あくまでも1つのオプションなので、商品の多様性を高めるという観点からはあってもよいという意見と、却って消費者に合理的な判断がつかない選択困難なものの選択を迫ることになるのではないかという意見、両面あった。実際、このオプションを導入するというのは原則論として是としても、仮に全損オプションを導入する場合は、消費者に必要な情報を提供した上で合理的な判断がなされるようにしなければいけない。つまり、消費者が合理的判断できるよう情報提供を行う、リスクコンサルティングといった体制が整備されることが前提であり、こうした前提条件を含めて中長期的な観点から引き続き検討していく必要がある。(座長)
    • 全損のみ100%保険金を払うというのは、損害保険会社としてどうなのか。関東大震災のときに大審院判決で地震免責条項の有効性が認められたにもかかわらず、損保会社として見舞金を支払った。これを考えると、一銭も払われないということに対してやはり社会的な圧力があって、見舞金は払わなければだめだということが出てくるのではないか。
    • これはあくまでオプションであり、従来型の保険と併用し、消費者の方に正しく判断をしてもらって、全損しか出ないということを理解して買っていただくことになる。保険会社サイドにとってみると、ちゃんとしたリスクコンサルティングが今の販売網の中できちんとやり得るかという点は、まだそこまでできないのではないかという心配をしている。自動車保険や火災保険と違い、地震保険は超長期のリスクをカバーするものであり、入ったときはその説明を聞いていたとしても、何十年後に地震が起きたときにそのことが分かっているか難しい。かなり慎重にやらないといけないというのが率直なところ。
    • そもそも地震保険制度自体が国の信用力を背景としない限りはできない仕組みであり、国が信用力を使って支える制度の中で、保険料を払ったにもかかわらず支払いがゼロというときの被保険者の反発と、またそれにメディアが乗っかって、こういうやり方はおかしいのではないかという話になることを懸念する。極めて合理的な国民性で市場というものを理解し、最初の契約のところでこれを選択したのだからやむを得ないということを理解できるような状況になっていれば、確かに「付保割合100%、全損のみ補償」という商品は成り立つと思うが、今の日本人のメンタリティーを考えると、なかなかそう割り切った形というのはとりにくいのではないかと思う。
    • 100%全損のみ補償というものは保険料が安く設定されるのではないか。そうすると、加入する側の立場からすれば安い保険料で100%の補償だけはもらえるという形で、ある種完全な掛け捨てのつもりで入るということはあり得る。同じ保険料で設定されると、問題は起こると思うが。
    • 住宅ローンを返済中の方が、借金の返済をすることで生活再建にまでお金が回らないという状況だと、国や自治体の負担も増えてしまうということになる。被災後にお金が出ることよりも、自助努力できる1つのオプションをつくることでそれを未然に防ぐ、あるいはできるだけ小さくするという意味でも「全損のみ100%補償」のオプションは必要ではないか。
    • 確かにリスクコンサルティングは必要だが、それはそれほど難しくない。体制を整えるとかではなくて、契約時にきちんと説明すればいいだけの話。料率機構のアンケートでも、地震保険が半分しか出ないということを知らない人は山のようにいる。まだ商品もきちんと理解されていないような状況であるため、そこをきちんとやれば、オプション導入は難しい選択ではないように思う。
    • 「付保割合100%、全損のみ補償」という商品は2つのうち1つをチョイスすることなので、商品としてはわかりやすいが、結果として選べないものを選ばせることになり、いざ地震が起きて保険金が払われたときに、自分が選んだのだからしようがないと、いさぎよくそう言ってくれるメンタリティーがあるかどうかというところに疑問がある。
    • 被災者生活支援制度ができたのは、阪神・淡路大震災がきっかけで、それまで基本的に国は、いわゆる国民個々人に対する支援は原則としてはしないということであったのが、阪神・淡路大震災の大きな被害の中で、やはり何らかの補償をするべきではないかということになり、ある一定の生活支援をするという仕組みができている。それを考えると、果たして保険料を支払った人たちが本当に納得するのか。1つは契約時に商品性の説明があったかどうかということと、もう1つは被害査定のところで裁判が起こる可能性がある。その2つで訴訟が爆発的に起こる可能性があるというところまで覚悟した上で、かつ、絶対にオプションを選ばれた方に対しては払わないという固い決意を持ってやる必要がある。

    (マンション問題)

    • エレベーター等、高層マンション固有のものを損害査定に加えることについて、検討する意義はあるのではないか。(座長)
    • マンションの場合、そもそも専有部分の保険金額というのは壁の内側からの金額になるので、保険金額が相当低くなる。例えばマンションが全損となった場合、6,000万円で買ったマンションであっても保険金額が1,000万円であれば保険金は500万円しか支払われないということになる。
    • 6,000万円というマンションの値段の中には土地も含まれており、恐らく建物の金額は、普通70〜80平米で言えば2,000万円くらいの金額になる。さらに区分所有だと、専有部分は4割程度であり、専有部分の火災保険額は1,000万円くらいの金額となる。6,000万円との比較でいうと誤解が生じる。
    • 東京都の住宅ローンの残高は24兆円という試算もあり、多額の住宅ローンを組んで買っている方もいる。共用部分の加入率が不十分で、かつ専有部分の保険金額が火災保険金額の50%が上限となると、大きな地震で、大変な被害を被り、マンションが再建できないという問題が認識されていない現実がある。
    • これは火災保険金額が1,000万円程度になることに起因する問題であり、地震保険の問題ではないのではないか。(座長)
  • 【総論】

    • 「地震保険制度の位置付け・役割」については、財物保険か費用保険かという論点。官民負担のあり方については、ノーロス・ノープロフィット、と官民保険責任の2つの論点がある。ノーロス・ノープロフィットについては、現行を変えようという意図はないと思うので、このままで良いかと思う。官民の保険責任については、地震保険が官民でリスクを分担し合った保険制度であり、民間が過度な負担を負わないという配慮は必要だが、民間にも応分のリスクを負ってもらう必要があるのだと思う。(座長)
    • 官民保険責任分担の基本的な考え方は、民間保険は中小地震を中心にカバーし、巨大地震は国がカバーするということ。
    • もともと津波などの問題は切り離した話で、巨大災害に関しては民間の責任から外して官が中心に働くということだが、津波の問題というのは完全に国がカバーするという考え方もある。つまり津波リスクを民間の責任から外し、専ら国のカバーの責任範囲内で補償するという話。
    • やはり3rdレイヤーで何らかの形で民間にも応分の負担を求めるということが損害査定の適切性、経済学者が言うところのインセンティブになるという話はこれまでも出ていたと思う。ただ、官民のリスク分担については今後とも議論していくべきと思う。(座長)
    • 財物保険、費用保険について。地震保険は「被災者の生活の安定に寄与する」ための資金を支給する費用保険と考えられるが、失われた財産価値に応じて払うということが生活の安定に寄与するものであると考えることもできる。このあたりをどう整理するべきか。(座長)
    • 地震保険は、構造的には財物保険である。しかし、機能的には費用保険という、この2つの性格を持った保険だということ。例えば、自賠責保険でも責任保険の構造をとりつつ被害者救済の機能を負うという形になっており、それ自体はおかしな話ではなく、どちらかによるべきというものではないのではないか。
    • 大地震と中小地震を分けた仕組みが不可能なのかどうか。つまり、迅速性のために、地震の規模などで切り分けて、例えば総理大臣がトリガーを引いた場合など、ある種のトリガーが引かれた途端に別な枠組みを発動させるようなこともあり得るのではないか。
    • 何らかの形で巨大地震と中小規模地震を分けることは、実務的に難しいのではないか。(座長)

(以上)

財務省の政策
予算・決算
税制
関税制度
国債
財政投融資

国庫

通貨

国有財産

たばこ塩


国際政策
政策金融・金融危機管理
財務総合政策研究所