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国の債務管理の在り方に関する懇談会(第39回)議事要旨

. 日時 平成27年12月17日(月)13:00~14:15

. 場所 財務省  第3特別会議室

.内容

平成28年度国債管理政策及び発行計画


平成28年度国債管理政策及び発行計画をテーマとし、理財局から説明(資料①(PDF:862KB)資料②(PDF:594KB)資料③(PDF:1909KB))が行われ、その後、自由に意見交換が行われた。


▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ、以下同)は以下のとおり。

<国債市場の動向について>


・短期債市場は海外勢の短期的な売買が多くなっているが、どのようにしたら短期マーケットに正常な投資家が入ってきて取引が行われるようになるのか、どのように考えているか。


→(理財局より説明)短期市場について何を正常とみるかは非常に難しい。様々な国で非伝統的な金融政策が続く中、構造的な要因としても、本邦勢は海外に進出するため外貨の需要が強い一方、米銀は資金供給を絞っており、ベーシススワップ市場に大きな動きが出ている。オープンな市場における自由な取引の中で、需要と供給がうまく一致するようにしていくということではないか。


・本日、日本銀行の資金循環統計が公表されたが、日銀の国債保有額は315兆円でシェア3割、海外投資家は101.5兆円でシェア9.8%と、いずれも過去最大である。従来の邦銀主体のマーケットが大きく転換し、現在は日銀と海外投資家のマーケットとなっている。ただ、日銀は物価目標を達成したときにどうなるかという問題があること、また海外投資家は海外の金融政策の影響を大きく受けることもあり、国内の本来の最終投資家のシェアが段々落ちているのが心配である。


・アメリカの9年半ぶりの利上げや原油の40年ぶりの輸出解禁は、米国の世界的な地位の再浮上のきっかけではないか。翻って日本はこのまま国力が低下していくのかどうか、少子高齢化の問題も含めてターニングポイントとなる時であり、本懇談会は積極的に議論し発信すべきである。


・日銀の国債の買入れ金額が大きく、保有残高が急激に増えていることもあり、実際のマーケットの需要がどこにあるのかというのが非常にわかりづらくなっている。


・中短期の国債利回りがマイナスまで下がっているため、日本の投資家は海外の投資にシフトしているが、ベーシススワップの拡大によりドル調達コストが上昇し海外への業務展開にも支障を来しつつある状況、また実務上担保で必要とする短期国債がなかなか買えない状況にある。実際の経済と現在の金利水準とのギャップがだんだん大きくなっており、この金利水準が妥当かということを考える機会が必要であろう。


・また国内投資家はより高い利回りを求めて長い年限へ投資をシフトしているが、本当に需要があって伸ばしているわけではないので、どこに本当の需要があるのかということを議論する必要がある。


・流動性について、日本国債は米国債と違いショートができない状況にある。業者がマーケットメイクするうえで、日本銀行が多くの国債を保有していてショートがしにくいということは決定的に不便。米国やドイツには中銀がほぼ無制限に国債を貸し出すというファシリティがあるためにショートがしやすく、中銀による買入れ額に関係なくセカンダリマーケットが形成されている。このあたりの検討もお願いしたい。


・リーマンショック以降、金融機関に対する規制環境が一層強くなっており、金利リスクやソブリンの信用リスクに過敏になりつつある環境である。


・本日は米国の利上げという歴史的な日であり、大きな意味で後から見ると、この局面は日本にとっても大きな転換点を迎えているのではないか。


・ベーシススワップのマイナス幅の拡大によって海外からの投資がしやすく、日本がマイナス金利になっているが、逆に言えば、何かをきっかけに資金が逆流する可能性も当然ありうる。そのターニングポイントはまだ先ではあるものの、そのような状況になっているという認識は非常に重要であると思う。


・米国経済は利上げ後にノーマルな金融情勢になるのか、あるいは、ニューノーマルを依然として模索するのかについて見極めるにはある程度の時間が必要なのではないか。



<国債管理政策について>


・米国の学会では、伝統的な政策に加え、非伝統的な債務管理政策について議論されている。そこでは金融市場の安定や総需要管理を国債管理政策の目的に加え、例えば短期ゾーンにおける流動性向上策の機能や、危機が起こったときに政策手段として年限構成をどう考えるのかという議論が掘り下げてされており、それらを踏まえた最適な平均残存年限はどのくらいかという議論がされている。そういった非伝統的な視点からの分析も今後考えるべきである。


・グローバルで見回しても、低金利の下で金融政策に対する市場の思惑の変化からボラティリティが上昇するため、調達・運用の両面で非常に難しい状況となっている。こうした問題は世界各国で共通しており、グローバルな市場は同じ目線で各国の国債発行政策を見ると思われるので、発行計画等を企画するにあたって、海外の発行当局の問題意識についても適宜チェックしながら検討することが引き続き大事である。


・来年度の発行計画の発行総額が減額方向にあることは、国が国債で調達する額を減らすという意思を簡潔に示すものとして非常に大事であり、評価できる。


・本懇談会で借換リスクとコストの抑制の観点から平均償還年限の長期化が必要という議論をしてきて、その通り実現してきたが、改めて一体どこまで長期化するのが良いのかという議論もそろそろ必要になってくる。


・国債の残存期限が長期化している点は、逆に見れば、将来世代を硬直化した財政構造に直面させることにもなるのではないか。償還年限を長くすれば、短期的には国債の消化に資すると考えている訳であるが、わが国民の将来を更に縛り付けている可能性があり、こうした問題を議論すべき時が来ていると思う。


・引き続き長期的な観点で平均償還年限長期化の方針を維持するということで結構だと思う。他方、流動性の維持・向上については、売買回転率、特に売切り・買切りの取引の回転率が低下していることが重要であり、今後ますます問題になると思っている。


・流動性供給入札について新しく1年超5年以下のゾーンを追加するということであるが、円滑に入札を行うためにも人員が更に必要になると思う。流動性供給入札が各ゾーンについて十分スムーズに行われるよう、是非態勢を確保していただきたい。


→(理財局より説明)入札の態勢については、当方の人員不足だけではなく、日銀オペの日程も勘案しながら入札をやっている中、複数の入札が重なると今度は証券会社のオペレーション上のリスクも増すということがある。このため当面は流動性供給入札の回数は月2回にとどめることとしたいが、マーケットとの関係ではできるだけ流動性が供給される機会が多い方が良いという面もあり、事務フローの工夫・改善等で対応できることがあるかも含め、中期的な検討課題として考えている。


・流動性対策は引き続き重要である。あるヘッジファンドからは、日本市場は先物の流動性は高いが現物の流動性が落ちている、日本人の独自のマーケットになっており海外勢が参入しようにも日本人ディーラーには勝てない、といったことが指摘されている。短期的には5年以下のゾーンの流動性供給入札への追加が超長期ゾーンに与える影響に引き続き目配りが必要である。


・流動性供給入札は今後非常に重要な位置を占める。長期債の投資家としては、長期ゾーンの入札回数が隔月になっても、ある程度の発行量が確保される必要があると考える。


・流動性供給入札に対する需要が高いことはマーケットが機能していないというシグナルでもある。従来はブローカーである証券会社がポジションを持ち、レポマーケットを使って銘柄の調整をしていたが、このような調整ができなくなってきており、埋め合わせに流動性供給入札の需要が高まっている。流動性供給入札の必要性は理解するが、これを便利にしてしまうと将来の流動性の低下の一要因となる可能性もあり、気をつけるべき。


・レポ市場の機能低下の背景に金融規制の強化がある。2018年からレバレッジ比率規制が導入されると、バランスシート上の制約から証券会社としてもコストが上昇し、レポ取引のインセンティブがわかないという状況となる。流動性供給入札をどんどん進めれば良いというわけではないが、従来と違う環境になりつつあることを踏まえて流動性供給入札の計画を立てるべき


・当局が流動性供給入札を充実させればさせるほど、長期的に見た場合、市場の声を消しているという可能性についてどう思うか。


→(理財局より説明)市場の声を消すというより市場の声をしっかり聞いてきめ細かに対応するというのが主旨。国債管理政策の推進にあたり、市場との間のインターフェイスをできるだけスムーズにしお互いにとって利益となる方向で政策を進めることが最も重要であると考えている。


・海外金融環境の急変等の危機時における対応は重要な論点であり、今後も議論すべきである。


・マーケットも今はとても良い状況に見えるが、何かイベントが起きたときに、国債市場が逆向きに動くような材料が徐々に整ってきているので、引き続き市場と十分な対話を行いながら国債管理政策を進めてほしい。



<その他(財政健全化等)>


・これ以上の国債格下げをさせないためには何が必要か。格付けがこれ以上下がったら大変な問題になるということをどうやって広く国民に理解してもらうかが重要である。


→(理財局より説明)過去1年間の間に、3大格付け会社それぞれによる日本国債の格下げがあったが、その理由が異なっている。財政再建の遅さを懸念する社もあれば、アベノミクスの成長促進の勢い減速という理由を示すところもあり、必ずしも目線があっていない面がある。しかしながら、過去からの格下げの背景を見れば、いずれも財政の悪化がポイントとなっている。この点、市場においてはこれ以上の国債格下げが邦銀の外貨調達コストに影響を与えるのではないかとの懸念があると承知しているが、こうした視点からの、財政健全化の必要性に関するマーケットからの警告もますます重要になっているのではないか。


・何といっても財政の信頼性が重要である。この懇談会の場を通じて、着実に財政を健全化していかなければ国債市場が悪い方向に向かう、という発信をさらに行うべきと感じている。


・中国における市場の混乱を始めとして、最近の世界的な資金循環を俯瞰する際に違和感を覚えることが多いが、その背景には資金の偏在が起こっているという問題が必ずある。例えば米国においては、資金の出し手となっている主体が特定のファンドに集中し、一方で借り手が一部の低格付企業に集中しており、こうしたことが現在のハイイールド債市場の混乱の背景にある。


・過去に先進主要国の金利が低くコントロールできた背景には、主な資金の借り手がソブリン、資金の出し手が銀行という構図があった。今後銀行に対する規制が強化される中、主要国の財政再建が進まない場合、ソブリンが再び借り手になると思うが、銀行や生保などの安定した資金の出し手がいる保証はないのではないか。


・そうした不安が表面化しないためには財政再建へのコミットが必要との当たり前の議論だが、その当たり前の議論の後ろに、マネーフローが足下でグローバルに偏った状況にあるという事実を常に意識しておく必要がある。


・財政については、日本国債の格付けがこれ以上下がることになれば何らかの影響が出てくることにもなる。本懇談会を含め、市場が財政状況を常に注視し、状況によっては市場と当局が協調できるような仕組みづくりが重要となっている。



(以上)



連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565