このページの本文へ移動

 

第1章 アジア通貨危機の原因と特徴

 

1.アジア通貨危機の経緯と原因

 タイで発生した通貨危機は、周辺の東南アジア各国に波及し、先進国グループに仲間入りしたばかりの韓国まで通貨・金融市場の混乱に巻き込まれるに至った。このアジア全体を覆った通貨危機は1つの事象としてくくられることが多いが、その発生の背景、要因については必ずしも同一でない面もある。また、今回の通貨危機を契機に、金融セクターの脆弱性、産業構造の転換の遅れ、コーポレート・ガバナンス等のいわゆる構造問題が表面化し、それが各国通貨がなかなか安定しない大きな要因であるとの議論もなされている。
 今次のアジアにおける通貨危機の発生とその進展の経過(資料1参照)について、ここで振り返っておくことが必要であろう。

(1)タイにおける通貨危機の発生

 タイのバーツが97年7月2日にそれまでの実質ドル・ペッグからフロート制に移行し、大幅に通貨価値を減価させ始めたことが今回の通貨危機の発端となったが、バーツについては既に96年以降市場において何度か売り圧力が加わっており、その度ごとにタイ通貨当局は金融引締め、介入等により対応してきた。しかし、97年7月に至り、使用可能な外貨準備の急減により、実質ドル・ペッグを維持することができなくなった。
 かかるバーツ売りの発生は、タイにおいてバーツへの市場の信認が失われたためであるが、その要因としては次のような点が指摘されている。

1為替の過大評価

 「通貨バスケットに対するペッグ制」とはいえ、実質的にはドルに対してリンクしており、95年春以降のドル高推移によりバーツが過大評価となった(資料3参照)。これが96年における輸出の伸びの急激な鈍化(資料5参照)の1つの要因となった。

2巨額の経常収支赤字

 95年以降経常収支赤字がかなりの高水準で推移していたにもかかわらず(経常収支赤字対GDP比:94年5.6%→95年8%、96年7.9%)、それまでの急速な経済成長下、労働コストの上昇に対応した産業構造の転換が遅れたこと、資本財産業が未成熟であったこと等により、経常収支赤字を是正する見通しが立たなかった。中国等後発の諸国の輸出品との競争にもさらされていた。経済成長率も96年以降低下し始め、悲観的な予想へとつながった。

3短期外貨資金の流入

 また、先進諸国における低金利に対しタイの金利は高水準にあったことから、実質ドル・リンクの下、短期外貨資金が大量に流入し、その一部がファイナンス・カンパニー等を通じ不動産等の資産投資に使われバブルの発生を招来し、その崩壊とともに金融機関の不良債権問題が顕在化した。なお、93年に創設されたBIBFを通じて流入した短期資金の一部も、かかる資産投資に用いられたと言われている。

4金融機関の破たん

 96年春以降一部金融機関の破たんも表面化し始めた。更に、情報開示が不十分なことから市場の不信感が金融セクターへの懸念を増大していた。

5投機資金による売り圧力

 これらを背景に、タイの通貨制度は、市場において持続不可能と見られるようになり、その過程でヘッジ・ファンド等の投機資金による先物売り等の動きも加わり、通貨当局はついに市場の圧力に抗しきれなくなった。

 以上要約すると、タイにおいては、金融機関の破たんや投機資金の動きも要因となったが、基本的には、マクロ経済状況の不均衡が持続不可能となり、それが主因となって通貨市場における破たんという結果につながったものと見ることができる。この点、メキシコの94年末の通貨危機との類似性を指摘できる。ただし、メキシコの場合は政府債務、タイの場合は民間銀行債務が問題となった点が異なる。
 7月の変動相場制移行後、タイ・バーツは下落を続けた。これに対し当時のチャワリット政権は7月29日に至りIMFに支援を求めた。IMFはアジア各国に対し支援を呼びかけ、8月11日の日本がホストとなった支援国会合を経て、13日にIMFを中心とする支援パッケージがまとまった。しかし、IMF合意後もしばらくは、歳入増のためのガソリン税引上げを撤回し、蔵相が10月19日に辞任表明する等、政治状況の不安定や波及した近隣諸国の動向の影響を受け安定しない状況が続いた。その後11月に新たに政権に就いたチュアン首相の下、IMFとの合意に従い金融機関の再編を大胆に進める等(例えば12月8日に発表された金融再建措置において、営業停止となっていたファイナンス・カンパニー58社中56社を閉鎖)の政策遂行姿勢に対し市場の信認が相当程度回復しつつあり、98年年初こそ近隣国の通貨下落の影響からバーツは最安値をつけたが、その後は落ち着きを取り戻している。

(2)近隣国への波及

 タイにおける通貨・金融市場の混乱は、数週間後には、インドネシア、マレーシア、フィリピン、また、これら3国に比べ程度は小さいもののシンガポール、台湾に波及し、更に香港にまで及んだ。
 タイ・バーツの下落を受け、インドネシアは7月11日に変動バンドを拡大、8月14日にはバンドを撤廃してフロート制に移行、フィリピンも為替取引バンドを7月11日に撤廃した。インドネシア、フィリピン、マレーシアの通貨はタイ・バーツの下落につれて下落し、株価の下落も生じた。下落率は比較的小さいもののシンガポールや台湾でも通貨・株価の下落が起こった。
 これらの国々は、マクロ経済状況から見る限り通貨・金融市場の混乱が起こる要素は少なかったし、タイの場合と違いそれ以前に市場において徴候があったわけでもない。また、各国それぞれについて見ると、その経済構造、産業構造は、一次産品への依存度が依然高い国から、ハイテク製品の輸出が主流となっている国まで、また、一人当たりGDPをとってみても大きな違いがあった。
 にもかかわらず、通貨・金融市場の混乱は瞬く間にこれらの国に波及し、いわゆる「contagion(伝染)」が生じた。伝染が生じた要因としては、市場におけるこれら各国通貨に対するパーセプションが、タイ・バーツの大幅下落を受けて一挙に変わったことが指摘されている。そのような市場の変化をもたらした1つの背景としては、それまでのアジアの高成長の過程でこれら各国が域内貿易の依存度(資料8参照)をはじめ、相互依存の程度を高めていたことが挙げられる。また、特に波及の大きかったインドネシア、マレーシア、フィリピンについては、以下のような点につきマーケットが着目したことが指摘されている。

1為替の過大評価

 程度の差はあれ自国通貨をドルにリンクしており、ドル高に伴い実質実効為替レートが上昇し、輸出競争力の低下が懸念された。これにより、タイ同様中国等の後発国との競争にさらされるようになった。

2輸出主導型の経済構造

 各国とも輸出主導型の経済構造を有しており(資料9参照)、輸出競争力の低下(為替相場の上昇・労働コストの上昇等による)の影響を受けやすい。

3短期対外民間債務の積み上がり

 これまでの外資導入促進に基づく成長政策の中で、民間債務、その中でも短期の債務の積み上がりに対する懸念が生じた。(特にインドネシア)

4構造問題等

 ファミリービジネス等に代表される採算性への考慮を欠いた過剰投資とそれを支えた金融セクターの不透明さ、脆弱性が表面化したほか、一部の国では政治的安定性に関する疑念が生じた。

 いずれにしても、タイの場合には、96年ごろより通貨市場への圧力が高まっており、97年7月にタイにおいて通貨危機が発生したことは、必ずしも驚きではなかった。しかし、これらの国においては、同様の兆候は市場において表面化しておらず、これらの国にタイの通貨危機が大規模に波及し、更にそれが各国経済に大きなインパクトを与えることになったのは、予想を超えるものであった。
 このような東南アジアにおける通貨・金融市場の混乱により不安定性を増した国際資金の動きは、国際金融市場の1つである香港にまで影響を及ぼし、10月下旬には香港株式市場が大幅下落した(23日前日比10%、28日同13%下落)。これがニューヨーク等の株式市場にも波及し、アジアにおける通貨・金融市場の混乱は世界的な問題と捉えられるようになった。

(3)韓国への波及

 アジアにおける通貨危機は、10月下旬以降韓国に波及し、更にその深刻度を増した。しかし、既に伝染を受けていたインドネシア等と韓国とでは、通貨危機発生の要因は異なるようである。
 アジアにおける通貨混乱により不安定性を増した市場の動向が、韓国における通貨危機の要因となったことは間違いないが、韓国においては、既に国内において、産業構造及び金融セクターを巡る諸問題が通貨市場の混乱が発生する以前に噴出していた。すなわち、マクロの経済状況自体は、97年第2四半期以降それまでの景気停滞を徐々に脱却し回復傾向にあったが、財閥主導の過剰な投資、それを支えた銀行融資の不良債権化、といった問題が表面化していた。97年1月の韓宝グループの破たんに始まり、財閥の経営行き詰まりが続々と表面化し、7月には財閥8位の起亜グループの破たんにまで発展した。そしてこれら財閥を資金面で支えてきた金融機関の資産内容の悪化が懸念されるようになってきた。更に、総合金融会社(ノンバンク)の短期外貨調達に基づく積極的な国内外での資金運用が行き詰まりをきたしていた。
 このような経済状況が、韓国経済に対する信認を急速に低下させ、東南アジアで発生していた通貨危機により投資資金の回収可能性に敏感になっていた外国資金は、急速に韓国から流出するという事態に立ち至った。韓国通貨当局は、このような事態が金融セクターの破たんという状況に陥るのを防止するため、8月から11月にかけ数次にわたり金融市場安定化対策を講じるとともに、外貨準備により金融セクターの資金支援を行ってきたが、ついに支えきれなくなり、11月末にはIMFを中心とする国際的な支援を要請することとなった。
 韓国も、IMFとの合意直後は、大統領選を控えた政治状況の下、依然不安定な状況が続き市場の信認はなかなか回復せず資金流出も止まらなかった。しかし12月末に至り、新大統領の選出後、円滑な新体制の準備が進んだことや新大統領がプログラム実施に強い意志を見せたことによる政治に対する不安感の解消、IMF等の国際支援の前倒し決定、更には日米欧の主要民間銀行と韓国当局との間で韓国向け短期債権の長期化に関し検討の方向が合意されたこと等により、落ち着きを取り戻した。

(4)インドネシアを巡る状況

 波及した国の中で最も深刻な状況となったのはインドネシアであった。インドネシア・ルピアはタイ・バーツ以上に下落し、通貨の下落により民間の対外外貨建て債務負担の増嵩、それが対外債務の返済能力に対する市場の不安感を招きルピアの下落をもたらすという悪循環に陥った。このため10月には、外貨準備の状況は危機的ではなかったが事態の保全を図るため、IMFへの支援を要請するという事態にまで立ち至ることになった。
 10月31日のIMFとの経済調整プログラム合意後、インドネシア・ルピアは、一時小康状態の時期もあったが、大統領の健康不安説、調整政策の遂行を巡るインドネシア政府の姿勢(例えば、大統領の家族の経営する銀行が閉鎖されたが別の法人の形で実質的に復活した)等に対し市場は疑心暗鬼となり、12月から本年にかけてルピアは大きく下落し不安定な状況が続いた。特に1月6日に発表された予算案の前提が極めて楽観的であったこと(98年経済成長率4%[97年10月末のIMF見通しでは3%]、対ドルレート4,000ルピア[97年末同6,000台]を見込んでいた)に加え、IMFとの間で合意されていた財政黒字対GDP比1%を盛り込んでおらず、市場はインドネシア政府の政策遂行態度への不信感を一層強めた。金融面について見ると、インドネシアの場合、韓国のような銀行債務というよりは、全体像の把握がより困難な企業の外貨建て債務が主たる問題となったことが特色であった。
 1月15日にはIMFとの間で新たな政策措置につき合意したが、その実施見通し、特に独占の廃止、補助金の廃止等、インドネシアの経済構造に深く根差している改革項目の実施見通しにつき市場の不信感が根強く、また民間債務問題についての解決策が含まれていなかったことからも、ルピアは大きく下落した。更に、1月28日に民間債務問題解決の枠組みが作られたが、交渉が必ずしも進展しなかったこと、大統領の再選決定に伴う副大統領選出を巡る憶測が市場を不安定化した。その後、3月中旬に橋本総理が同国を訪問し、IMFとの政策プログラムについても協議が進展、4月8日にその修正・強化につき合意されたこと、民間債務問題についても交渉の進展が期待されるようになってきたこと等により、ルピアも落ち着く動きを示した。しかし、本報告書作成の直近の状況を見ると、5月4日の燃料価格値上げ発表等をきっかけに、社会・政治面での混乱が深刻化しており、今後の状況の推移については予断を許さない。また、このようなインドネシアの混乱の近隣諸国への影響を懸念する意見もあった。

(BOX-アジア通貨危機の影響)

1.世界経済への影響

 アジア経済が世界経済に占めるウェイトの高まり(資料13参照)を反映し、同地域の通貨・金融市場の混乱や経済状況の悪化は、国・地域によりその程度は異なるものの、貿易や直接投資等を通じて世界経済に影響を与えている。

(1)日本への影響(資料14参照)

1貿易

 アジアの経済減速・需要低迷が、同地域に対する輸出伸率の鈍化をもたらしている(ASEAN4ヶ国及び韓国向け輸出は、対前年同期比で97年上期の9.3%から同下期は▲4.2%と減少に転じた。なお、同地域向けの97年の輸出は我が国の輸出総額の17.6%を占める)。また、アジアの需要低迷による国際市況品の価格低下は、原油輸入額の減少等輸入面で影響を与える一方、鉄鋼等の輸出額を減少させている。更に、今後、アジア諸国通貨の下落によりアジア製品の価格競争力が高まり、同諸国からの輸入増加、あるいは第三国市場での競争が激化することも考えられる。

2進出企業への影響

 アジアに進出している企業は、生産・販売体制等により異なった影響を受けている。すなわち、原材料を輸入に依存し販売先がアジア域内である企業では、生産コストの上昇・需要低迷から収益悪化が生じ、また、資金調達難から原材料等の輸入が困難となり、稼動率が低下している例も見られる。他方、原材料を現地で調達している企業への影響は比較的軽微であり、更に域外輸出を主としている企業の場合、むしろ価格競争力の向上による輸出の増加が期待されている。

3経済成長

 アジアの経済混乱が、日本国内の大型金融機関の破たんとあいまって家計や企業の景況感を悪化させ、景気が停滞し、一層厳しさを増す要因の1つとなっている。アジア通貨危機による98年のGDP押し下げ効果につき、OECDは1.3%(エコノミック・アウトルック63〔98年4月〕)と、IMFは3/4%(ワールド・エコノミック・アウトルック〔98年4月〕)と試算している。

4融資

 BISの国際与信統計によれば、97年6月末現在のASEAN4ヶ国及び韓国に対する邦銀の債権残高は約970億ドルとなっている。アジア現地企業の経営悪化等により、これらの債権の一部が不良債権化することを懸念する意見があった。しかし、邦銀のアジア向け債権のかなりの部分が日系企業ないし地場の大手優良企業等であること等から、邦銀の経営に直ちに重大な影響を与えるとは考えられないとの見方が一般的であった。

(2)その他の地域(欧米・南米)への影響

 我が国への影響に比べれば程度は小さいと見込まれるものの、同地域との経済関係が近年深まりつつある欧米や、アジアとともに新興市場の一翼を担う南米等にも、基本的には同様のチャネルにより様々な影響が及んでいる。

1上記OECD試算によれば、98年のGDP押し下げ効果は米国・EUともに主として貿易面の影響から0.4%とされている。

2新興市場に対する信認の低下により、リスク回避の観点から資金が欧米先進国市場に逆流し(「質への逃避」)、債券利回り等長期金利が低下している。

3米国では輸入物価の低下により、少なくとも短期的には、景気過熱の緩和効果が生じていると言われている。

4南米は貿易・直接投資等の面でアジアとの関係が薄いため直接の影響は小さいものの、実質的にドルに連動する為替制度を採用している国がある等の背景もあり、アジア諸国と同じ新興市場経済地域であるとの連想から市場のパーセプションが変化して、資金流入減や資金流出等の圧力がかかり、通貨は総じて下落傾向。これに対しブラジル等は、金利引上げ、財政引締め等の措置を予防的に講じており、通貨・金融市場における影響は軽微であるものの、内需低迷や失業増大等の副作用が生じている国もある。こうした動向は米国に影響を及ぼす可能性がある。

5欧州は金融機関のアジア向けエクスポージャーが日本や米国と比べて大きいこと、東欧・ロシアに影響が及べば間接的に影響が生じることに留意する必要がある。なお、金融機関のアジア向けエクスポージャーは、欧州(特に独・仏・英)、日本、米国の順に大きいが、貸付先の経営内容や、リスク・ヘッジの有無等によっても影響の度合いは左右される。

2.アジアへの影響

(1)アジア諸国の実体経済への影響

 国により程度の差はあるものの、通貨下落に伴う経済混乱や、IMF調整プログラムにおける財政・金融引締め策の実施等により、タイやインドネシアばかりでなく、ラオスやミャンマーといった国々に至るまでアジア各国は総じて厳しい経済状況にある。

1不良債権の顕在化等により金融機関が資金調達難に直面しており、貸渋りが発生していると言われる。次に見られる企業経営の悪化が不良債権の更なる増加を招来し、悪循環となっている。

2為替下落による外貨建て債務の返済負担増、輸入物価上昇によるインフレ高進、高金利政策による不動産・株式市場の低迷、金融機関の貸渋り等があり、しかも地場企業(特に中小企業)は外資(親会社・パートナー)の援助も受けられないため、経営が悪化し、倒産も多発している。

3経営が悪化した企業が人員・生産調整を余儀なくされ、失業が増加するとともに、生産活動・消費ともに低迷している。

4景気低迷や貿易金融の停滞等により、これまでのところ輸出の伸びはむしろ鈍化している。また、輸入物価上昇・内需低迷・資金繰り悪化等により輸入も低迷している。(資料7参照)

(2)香港・中国・台湾の動向

 通貨・金融市場の混乱の影響が比較的軽微に止まっている香港、中国、台湾について見ると以下のような状況にある。

1香港については、アジア金融市場の混乱が影響して株価等が低迷しており、成長率への影響も避けられないと見られる。かかる影響にもかかわらず、当局がペッグ制維持に強い意志を示している背景としては、外貨準備を十分に保有していること、ペッグ制が国際金融センターとしての香港に対する信認の基礎となっていること等の事情が指摘されている。

2中国については人民元は対ドルでむしろ強含んでいる。輸出競争力維持のために人民元の切下げがあるのではないかとの観測に対し、当局が公の場でこれを繰り返し否定している。その背景としては、資本取引の自由化が比較的進んでいない制度の下、十分な外貨準備や貿易収支黒字の存在、人民元の切下げはアジア諸国通貨への下落圧力を再燃させるとの懸念、切下げによる対外債務の負担増等が指摘されている。中国経済は、マクロ経済面では総じて良好な状態にあり、今後アジアの中で中国の相対的プレゼンスが高まるのではないかとの意見があった。他方、中国の輸出伸率は鈍化しており(対前年同期比で97年上期の26.3%から同下期の17.0%に鈍化)、また、国有企業改革、金融セクター改革等の重要課題を解決していく必要もあり、今後中国の通貨動向、経済情勢には注視が必要であるとの意見もあった。

3台湾では、アジア通貨変動の影響を受けて、為替が下落したが、下落率は小さい。また内需がしっかりしていることもあり、高い成長率を維持している。影響が軽微である背景としては、十分な外貨準備や比較的小さい対外債務のほか、高付加価値製品への特化が進んでいること、中小企業の層の厚さといった産業構造面の特質が指摘されている。

 


[続きがあります]

[目次に戻る]